被告人、ウィザーズ&マローン スチュアート・パーマー&クレイグ・ライス 宮澤洋司訳

被告人、ウィザーズ&マローン  


本書の著者、長年の友人だったスチュアート・パーマーと
クレイグ・ライス。
ふたりは文通でリメリックや物語を送りあっていた。
ライスは完全にスチュアートの裁量に任せて、
完成したのが幸運で平和的な共作であり、
個性的なふたりの主人公が活躍する短編集
『被告人、ウィザーズ&マローン』だった。

『今宵、夢の特急で』
シカゴでも名高い店パンプ・ルームで、
悪徳政治家スティーブ・ラーセンの無罪判決を
祝うパーティーが開かれていた。

ラーセンの友人たちがグラスを仰いでいるなか、
小柄な弁護士ジョン・J・マローンは会場を見まわすが、
ラーセンの姿はない。

ほかの連中に金を奪われる前に
ラーセンから3,000ドルの弁護料を回収しなければと
焦りながらも、マローンは隣りのテーブルにいる曲線美人で
赤毛の女性が気になって仕方なかった。

パーティーには検察側の証人に立った私立探偵で
抜け目ないバート・グリックも出席していた。
そして彼は言う。
「このパーティーに主役は現れない。
ラーセンはスーパー・センチュリー号で
ニューヨークに旅立つようだ」と。

目の前が真っ暗になったマローンは大急ぎで
天使のジョーに切符代を借りて駅に向かい、
老婦人や海兵たちに司教、そして赤毛の女性や
キャリーに入れられて泣き叫ぶ猫やオウムとともに
列車に飛び乗った。

赤毛女性の隣室を確保したマローンはラーセン探しを
後回しにし、隣りの客室にいる女性に魅惑的な薔薇の
花束といっしょにラウンジに誘うメモを渡し、
食堂車に入って彼女を待った。

しかし赤毛女性は現れず、話しかけてきたのは長身で
三歳馬を思い起こさせるような女性だった。

学校教師でヒルデガード・ウィザーズと名乗る彼女から、
まるで千里眼を持っているような口調で、
今回の裁判を非難されたマローンは居心地が悪くなって、
そそくさと食堂車を出るが、酔って車内をさまよい、
ふらつく足でデッキに出ると、そこでまたウィザーズと出くわす。

マローンは「食堂車で新聞紙を顔に乗せて居眠りしていた
妖しい水兵がマローンの車室に入ろうとしていた」
というウィザーズの言葉に歓喜し、車内を迷いながら
車室に戻るが、隣室にいるはずの赤毛の女性の姿はなく、
そこにいたのはウィザーズで、
しかもその部屋でラーセンが裸で死んでいると聞かされる。

そして名コンビの探偵物語がはじまる。

親指に噛みついたオウムに、マローンが
「ありがとう。いつかその首をへし折ってやるからな!」と言うと、
「マヌケ頭をフライにしちまいな!」と奇声を浴びせるオウム。
それを聞いて、やれやれと
「シンドバッド、あなたは禁固刑よ」とオウムをたしなめるウィザーズ。

そこかしこに散りばめられた笑いと幸せへの誘歩道。

酒と女と歌に目のない三文弁護士・ジョン・J・マローンと、
馬面の独身女性教師で、淑女ぶったお節介焼きの
ヒルデガード・ウィザーズ。
それぞれの著名な作家が生み出した主人公たち、
いかれたふたり組を共演させた、
類い稀な傑作短編小説はさらに続いていく。

『罠を探せ』
『エヴァと三人のならず者』
『薔薇の下に眠る』
『被告人、ウィザーズとマローン』
『ウィザーズとマローン、知恵を絞る』

マローンというユニークなキャラクターを生み出した
ストーリーテラー、ライスのアイデアを
パーマーが消化し融合して完成した
唯一無二のユーモア・ミステリー共演シリーズ。

先日、久しぶりに前職の同窓会に出席した。
その日、仕事のため遅れて会場に着いたわたしの
隣りには、すでにほろ酔いかげんの元先輩がいた。
そして彼はおもむろに1冊の本を差し出して言う。
本が好きだったよね、と。

「えっ、いただけるんですか?」
「いやぁ、これ僕が訳したんだよ」
「す、すごいですね!英語、堪能なんですか?」
「訳すぐらいはね。問題は文章力さ」

はぁ〜、いとも簡単に……
さすが、最高峰の大学出身者だなぁと
畏敬の念を抱きつつ拝読する。
数ページ読み進むうちに、違和感がないことに気づく。
海外文学の翻訳書でありがちな
不自然な言いまわしをいっさい感じなかった。

知人の書ということ抜きに、多くの方に読んでほしい1書。

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

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コメント、ありがとうございます

す、すみません、勝手に解釈してしまって……

博識で知性的な宮澤さんに対する
わたしの先入観から、勝手にイメージ
してしまいました、申し訳ありません。

でも、それも決して間違ってはいないような
気がするのは、宮澤さんの翻訳は
とてもすんなり入ってきたことに尽きると
思います。

次回作はぜひ購入させてください。

No title

米丸@「翻訳道楽」こと宮澤です。
ブログで紹介してくれてありがとうです\(^o^)/。
(コメント遅くなってしまって、ごめんなさい)

ところで、

>「す、すごいですね!英語、堪能なんですか?」
>「訳すぐらいはね。問題は文章力さ」

なんですけど、僕としては

「読むくらいならね~。でも訳すとなると日本語力の問題だから(=僕にはちと荷が重いのさ~~(^^;))」

てな流れのつもりだったんだけど……

楽しんで貰えたのなら幸い。全ては作者たちのお手柄で、訳者としては、足を引っ張っていなけりゃいいんだけど……と天に祈るような気分で訳してます。
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Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。