ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短編小説   開高 健

ロマネ

出国のときには不安の新鮮な輝きがあるのに、
帰国となると不安の閃きもない。
歳をとるにつれて昂揚が感じられなくなってきた。
身体に黴(かび)が繁殖するだけだと
分かっていても戻るしかない。

張のニコチン染めで汚らしい歯を見ると、
黴がしりぞく気がする。
香港では張と肩を並べて歩き、話し、
食事するのが習慣になっていた。

帰国前日、張に垢も落とし、按摩もし、
爪も削ってくれる風呂屋に連れられ、
帰りには垢でできた垢の玉までもらった。

翌日、見送りに来た張に垢の玉を見せるが、
反応がおかしい。
そして暗澹とした目をして喋りはじめた。
「文学代表団団長の老舎が死んだ」と……

川端康成文学賞受賞の
本編『玉、砕ける』をはじめ『飽満の種子』
『貝塚をつくる』『黄昏の力』『港にて』
『ロマネ・コンティ・一九三五年』が収録された
珠玉の短編集。

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

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Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。