8月の投稿書籍

   デキる人の敬語の       正しい使い方
クッキングパパ 1
なるへそ
落    盤
プリズンホテル
監獄学園
調理場という戦場
ヒストリエ1
ミス・ジャッジ
晴れでも雨でも
ファイアスターター
湯川さん

鬼切丸伝

  
サムネイルをクリックすると元記事にジャンプします

鬼切丸伝 楠 桂

鬼切丸伝

『序章 鬼嗣子(おにじし)の章』
寛永12年(1635年)
伊予松山城のお濠(ほり)では蛙も鳴かぬ。
城主の蒲生忠知(がもうただとも)があまりにも恐ろしい
鬼藩主のため、斬られてはならぬと、
蛙は恐怖に慄いているからだ。

忠知は自分に跡とりができないのに、
簡単に妊娠する町民たちを憎み羨み妬んで、
次々と妊婦を俎石(まないたいし)にくくりつけ、
胎児とともに斬りさいていた。
妊婦は苦痛と憎悪に歪んだ顔で
「鬼の天敵・鬼のなかの鬼が神器名剣・鬼切丸を携えて、
鬼を斬ってくれる」と叫んで生き絶える。

それでもようやく奥方様が懐妊されて、
妊婦斬りはいったんおさまったものの、
生まれてきた赤子の顔は鬼そのもので、
奥方様も出産と同時に他界。
赤子は乳を飲まず、胎児の肉を食(は)むために、
また妊婦斬りが始まったのである。

そして同族殺し純血の鬼が、
鬼切丸で鬼の親子を征伐するために登場する。
鬼藩主は31歳で絶命し、蒲生家はお家断絶となったが、
俎石からは女のすすり泣く声が……

『第一話 鬼畜生(きちくしょう)の章』
『第二話 秀次鬼事件の章』
『第三話 鬼冥利の章』
『第四話 鬼切丸誕生秘話の章』

人間に妖怪、物の怪(もののけ)や神が
共存していたというその昔、
鬼だけは残虐非道の存在だった。
下剋上の戦乱の時代へ突入した戦国時代。
鬼が暗躍する暗黒鬼時代がはじまる。

人間には鬼を斬ることはできないが、
角のない鬼のなかの鬼が鬼切丸で人を救う。
秀吉や秀次、三成や千利休など
歴史上の人物も登場する、同族殺しを天命に
鬼の忌み子で名を持たぬ純血の鬼であり、
祀られなかった神の物語。

ただ、鬼とはおとぎ話に出てくるような
想像上だとしても実在する “あの鬼” ではなく、
人の心のなかで生まれ、人の心にあってこそ、
存在するのかもしれない。

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

ファイアスターター湯川さん  中田永一

ファイアスターター湯川さん

数年前、ろくでもない両親が行方不明で、
行くあてのない高校生だった《俺》をあわれんだ叔父が、
彼の所有する古い木造建てのアパート六花荘に
住まわせてくれた。
そのアパートで《俺》は大学に通いながら、
管理人の仕事をし給料をもらって、
そこから家賃を払っていたのだ。

あまりに古い六花荘では、
日常的に修理をしなければならなかったため、
大学の仲間との付き合いを断わることも多く、
その結果女の子と出会う機会もない。
だからいまだに自分だけが独り身なのである。

しかし管理人の仕事は嫌いではなかった。
ひとり暮らしの立花さんが煮物を持ってきてくれたり、
母子家庭の少女・秋山伊織ちゃんがラムネをくれたり、
アパートに住む住人たちは、まるで家族のような
温かさを感じさせてくれる。

そんな六花荘に若い女性が引っ越してきたのである。
彼女の名前は湯川四季。25歳。
ロシア人とのクォーターで、ストレートヘアと
綺麗な顔立ちに、新雪のような肌をした女性だったが、
彼女は火を発生させる超能力を持つパイロキネシスだった。

家では家政婦さんが身の周りのことをしてくれたという
湯川さんは、スーパーでの買い物の仕方も分からない
世間知らずなお嬢さまで、お財布には
大量の1万円札が入っている。

湯川さんがアパートの住人になってくれて喜んでいたのだが、
それから奇妙なできごとが多くなったのである。
給湯器が壊れてお湯にならずに水で満たされた
バスタブの中が、追い焚き機能もないのに熱湯に
変わっていたり、ヤカンも電気ケトルもない湯川さんの部屋で、
熱々のインスタントコーヒーを淹れてもらったり、
壁にはりついて触覚を動かしているゴキブリに、
湯川さんが振り返り悲鳴をあげた直後、
光と煙がふきあがって、一瞬にして灰と化したり……。

ソ連時代、祖母が投薬の実験台になって、
その影響が孫に現れたらしいと、湯川さんは言う。
思い通りの場所に熱を発生させ、炎が生じる。
湯川さんはこともなげに、その能力を使うことができるが、
寝ぼけているときやくしゃみをしたときなど、
無意識にしてしまうこともあるという。

火災を起こされることがいちばん怖ろしいと
思っている《俺》は、湯川さんに退居してもらうべきか
悩むが、危険なつららを溶かしてくれたり、
熱で除雪してくれたりする彼女の温かい人間性に触れ、
その思いは日ごとに薄れていった。

しかし事態は《俺》の想像をはるかに超え……

世界には人体発火現象というものがいくつも報告されている。
1か月ほど前、港の倉庫で膝から上は灰になり、
足だけが残った数人の焼死体が発見されたが、
それも人体発火現象なのか、それとも……

決して幸福とは言えない生い立ちの主人公《俺》が
六花荘の管理人となり、そこの住人たちと家族のような
関係を築いて幸せな日々を送っていたところへ現れた
パイロキネシスの湯川さん。
《俺》が、色白で奇麗な顔立ちをした彼女に関わることで、
じわじわと恐怖が忍び寄り、物語はハードボルイルドへと
急展開していく短編小説。

続きを読む

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

晴れでも雨でも -Shiny Side-  晋太郎

晴れでも雨でも

小学校の夏休みに辞書を読み、
国語力だけは自慢できるほどに伸びて、
今は “奢り” にめっぽう弱い百田拓郎(ももたたくろう)。

偏差値69、誰ひとり合格すると信じていなかった
多摩教育大に合格した百田が、そこで出逢ったのは……

鉢巻きをすればテキ屋そのもので、正論が似合わない
社会専攻の猿川建(さるかわたつる)と、
高校時代甲子園の星で、社会体育専攻の
犬伏健太(いぬふしけんた)、
人が好く温厚な委員長タイプで数学専攻の
鳥谷至(とりたにいたる)。

軽音楽部に入ろうと思っていた百田は、
胡乱な猿川に関心を抱き、戸惑いながらも、
胡散臭くなにかと厄介を持ち込むトラブルメーカーの
彼に惹かれていく。

鳥谷だからチュン、犬と健でケンケン、
猿(モンキー)だからモン、百田だからモモタと、
それぞれのあだ名で呼び合いながら、
桃太郎軍団が結成され、
その本拠地を作るために4人は映画部に入部する。

なぜ映画部だったのか、そこには切実な理由があった。

不健全なのに健全な明るさを持ち、
はた迷惑でハチャメチャなのに優しさを覗かせたり、
不思議な魅力と不穏で変人に見えるが
毅然とした意思と深い情を持つ奇妙な仲間たち。

熊本から上京したごくごく平凡な青年の、
個性が光る仲間とのさまざまな出来事が、
読み手まで「問題はそこ ⁉︎ 」とツッコんでしまいたくなる
コメディ満載に描かれたキャンパスライフ小説。



続きを読む

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ミス・ジャッジ   堂場瞬一

ミス・ジャッジ

橘由樹(たちばなよしき)は
渋谷シティタワーホテルに泊まっていた。
大阪のチームから大リーグ・レッドソックスに移籍し、
日本で行われるヤンキースとの開幕戦に
登板するためである。

高校入学と同時に家を出た橘は、野球部の先輩だった
竹本速人(たけもとはやと)の投球を見て自信をなくしてから、
頭で勝負する術を学んできた。

高校・大学といっしょだった竹本は、橘にとって
絶対に越えられない大きな壁だったが、
大学4年のときに肩を壊し、日本人初のメジャー審判となって、
この開幕戦で審判をつとめるという。

竹本への疑念と動揺を抑えられないまま、
東京スタジアムでの橘の大リーグデビュー戦・
レッドソックス対ヤンキース戦は幕を開けた。
チームのエース・ギブソン登板の初戦は、
威力ある速球と切れのいい変化球で完封勝ちしたものの、
竹本のジャッジに抗議した監督のホルツマンに、
竹本は退場を宣告したのである。

2戦目、橘が先発投手の1回表はストライクゾーンと
竹本の判定許容の癖を見極めながら投げて、
あっさり3人で交代。
その裏でブロックが待望の先制点を稼ぐ。
ダグアウトに戻ってきたブロックとハイタッチを交わした橘は、
チームとの一体感を覚え頬が緩む。

レッドソックスは4回にも2点を追加し、橘の投球も
ヤンキースにとって厄介な存在のようで、打者は凡打が続き、
試合は滑らかに動いているように思われた。
しかし9回表、今までと同じコースに投げたはずなのに、
竹本は突然「ボール」の判定をくだしはじめたのである。
納得のいかないまま四球、内野安打と続き、
橘は監督からピッチャー交代を告げられる。
そしてリリーフのロバーツの1球めが、
さよなら満塁ホームランとなり、橘の初勝利は砕け散った。

竹本はなぜ、それまでストライクにしていたコースを
ボールにしたのか?
彼のマイナー時代に作った、退場のシーズン新記録。
竹本の判定はミスジャッジなのか?
ふたりの過去にあった確執とは?
真相は……

大リーグオタクで、国際線の客室乗務員をしていた
橘の妻の美野里(みのり)。
昨年退職するまで、横浜の高校で野球部の監督をし、
5回甲子園出場の実績を持つ父の東次郎(とうじろう)。
精神力と静かな威厳が圧倒的な魅力の、
レッドソックスのエース・ギブソン。
10年にひとりの逸材と言われたにもかかわらず、
選手の道を断たれ、10年かけてメジャーの審判に
這い上がった竹本。
打者の顔を見て直感的に投げる球を決める投手ではなく、
データがすべてだと思っている橘。

大リーグ初登板で初先発、完封まであと1イニング3人、
伝説に名前を連ねる直前に起きた疑惑。
魂を抜き取る力のある逆転さよなら満塁ホームラン。
厳しい試合を経て生まれるチームの一体感。
平常心とアドレナリン。

疑心暗鬼、チームプレイの落とし穴、傲慢、身勝手、プライド、
敗北感などの感情がどろどろと渦巻く大リーグを舞台に、
その後の野球人生をも狂わせてしまう1球の判定と、
ふたりの人生がそれぞれの立場や感情で描かれた
野球エンターテイメント。

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ヒストリエ1 岩明 均

ヒストリエ1

紀元前343年、ベルシア帝国の西端アッソスの町で、
この物語は幕を開ける。

ギリシア・マケドニア・ペルシアを舞台に
古代オリエント世界が描かれた本書は、
実在の人物であり、カルディアの名家の息子である
エウメネスが主人公で、1巻にはスパイ容疑で
ベルシア帝国から追われている哲学者の
アリストテレスも登場する。

離れていた故郷・カルディアに戻ってきたエウメネスは、
没落し廃墟となった生家に佇み、
過去の記憶のなかをさまようのである。

まるで舞を舞っているように華麗に剣を振りまわし、
周りにいる男たちを斬り倒していく異民族(バルバロイ)の
若い女。
顔がはっきり見えたわけではないが、エウメネスが
その女と眼が合うと動きが止まって男たちの剣が
彼女の身体を貫いた。
エウメネスは何度もその夢を見る。

そして女は男たちに犯され、そのあいだ眼は
エウメネスの方を見ているが、やがて斬り裂かれて
屍体が置き去りにされる。
エウメネスはその視線の向く先へ移動して、
なぜか淋しい気持ちに包まれるのだ。

幼少時代から聡慧で、裕福な名家の次男として
歴史書を読みふけっていたエウメネス。

マケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた
エウメネスによる波乱の生涯が始まる歴史コミック第1巻。

続きを読む

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 斉須政雄

調理場という戦場

あまり恐怖ということを熟知していないため、
怖くても突っ走ってしまう若さの素晴らしさ。
無限の可能性を持つ若人は、社会の常識に
とらわれることなく、多少傷ついたとしても
思うままに行動して、自分の常識で社会を
振り向かせてほしいと語る、
フランス料理店「コート・ドール」のオーナーシェフである
著者自身の仕事論が語られる。

「コート・ドール」の料理長になっても鍋洗いも掃除もする。
料理長が率先して雑用をこなせば、
新人だってしないわけにはいかないし、
雑用もするから力を宿すと著者は言う。

日本から離れたいと願い、技術指導に来ていた
フランス人シェフに頼んで、彼の店で働くことになったのは
はるか昔、23歳のときだった。
若いがゆえの気負いだけを持って渡仏したのである。

パリから東へ40kmほど離れているラニーという町の、
ホテルのなかにある1つ星レストラン・カンカングローニュ。
文明生活からサバンナに来てしまったような驚きのなかで、
環境も仕事量も日本とはまるで違う調理場と
下宿を往復する毎日からの12年間が綴られる。

日常生活の下地と心がけが重要な料理人の仕事。
感情の昂りで失ってしまう味覚だからこそ、大切な環境保全。
人とのつながりが深く人情味あるオーナーシェフ・ケラーさんから
学んだコネクションの作り方。
こなさなければならない不可能な仕事量など、フランスでの
下積み修行、1つ星から3つ星までレストラン6店での体験が、
料理と仕事への情熱が熱く語られる物語。

続きを読む

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

監獄学園 プリズンスクール 1 平本アキラ

監獄学園 プリズンスクール 1

東京郊外にある、もともと女子校だった
由緒正しい私立全寮制高校八光(はちみつ)学園は、
今年から男女共学に転換したため、
全校生徒1,021名中、男子5名という
いびつな男女比となってしまった。

キヨシ、シンゴ、ガクト、ジョー、アンドレは
期待に胸を膨らませて入学したが、
女子の圧倒的多数に彼らは口をきくことはおろか、
正視することもできない状況に、
募る欲求不満を解消しようと女子風呂のノゾキを企てる。

しかしこの学園には学校公安警察の役を果たす
“裏生徒会” が存在していた。
そして不浄な行為に及んだ生徒は、
懲罰棟での懲役が課せられる。

はたしてノゾキを決行しようとした5人は……
絶体絶命?
しかし “女王さま” のようなナリの生徒会副会長にムチ打たれ、
跪かされ、人間の尊厳を奪われているように見える、
キヨシを除く4人は、実は……
エロくてバカバカしくて、コケそうな展開に笑いを呼ぶ
ハイスクールコメディコミック。

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

プリズンホテル   浅田次郎

プリズンホテル

あじさいに囲まれた瀟洒な建物・あじさいホテル。
町の人々からはプリズンホテルと呼ばれていた。
オーナーは、愛車ゴールドエンブレムの付いた
ベンツ600SELを持つ木戸仲蔵。

館内にあふれる、正体不明の骨董類や
捕り物道具が並べられた調度品は
どこか異様な雰囲気をもたらし、
客はヤクザものばかりで、その客に向かって
従業員は「てめえ」と叫び、仲居たちの
タガログ語が飛び交う。
そこはヤクザが経営し、ムショ帰りが客となる
任侠団体専用ホテルだったのである。

前の経営者は借金を背負って一家心中し、
仲蔵があこぎなヤクザを蹴散らしてホテルを
取り戻したが、ここにはワケアリの客が
あつまってくるのだった。

凶暴で偏屈、不純な作家・木戸孝之介。
彼は仲蔵の甥で、仲おじ(仲蔵)が他界すれば、
いずれリゾートホテルは自分のもの、
そんな思考が猛然と回転してやって来たのである。

東大なんて楽勝だと豪語しておいて、
予備校の試験まで落ち、自衛隊に入隊した卑怯者が、
いつしか懸賞小説の新人賞を取って
小説家になった孝之介だったが、実直な父とは正反対、
色気のある顔に滲み出るちゃらんぽらんで
享楽的な叔父でヤクザの仲おじが嫌いだった。

孝之介の著書『仁義の黄昏』PART6は、
今や翻訳本まで出ている人気小説だが、
短気で人の言うことを悪意にとる彼は、
暴力のありがたみを自衛隊時代に体験し、
校正中の小説のセリフを現実で叫び、自分の屈折を
みずから業界に証明してしまった経験がある。

父はすでに他界しているが、実母は30年前に
彼を捨てて出て行った。
ひとまわりしか違わないのに、
ひとまわりは老けて見える、美しい母とは正反対の
まま母の富江を、安定剤代わりに、
日記帳で額を叩いている。

5歳の娘(美加)と、心臓病で寝たきりの母親と同居し、
生活保護家庭の暮らしをしている
清楚で百合のような美人でありながら、
孝之介のいいなりで頭がちと足りないが純真。
場末の安キャバレーで摘み取り、3年間、
月々20万円で買っている田村清子にも、
同じく日記帳で額を叩く。
彼女は本物の “極道の女” であったため、
ヤクザの知識を得るための生き字引でもあった。

一流大学を卒業後、世界有数の業界ガリバーに
のしあがったクラウンホテルチェーンのホテルマンとして
30年勤め、ようやく手に入れた支配人の肩書きを持ったが、
酔客ボヤ騒ぎが原因で地方ホテルを転々として
あじさいホテルにやってきた花沢一馬支配人。

巨体に坊主刈りの巨顔、筋肉に埋もれ首はなく、
浅黒い肌と後頭部に刻まれた傷跡を持つ黒田副支配人。

定年を迎え、高原の駅で、ダーク色の背広とネクタイに
使い古した事務鞄を持ち、
すえた老人の匂いを漂わす若林隆明。
夫に言いたいことを言わせて、最期の夜に
離婚届を突きつける計画を立てている妻の志保。
隆明は孝之介の密かなファンで、
志保は孝之介のマニアだった。

小さなパーティで赤痢を出したとでっち上げられ、
左遷された服部正彦シェフ。
前オーナーのときから勤めている、
一流和食料理人で板長の梶平太郎。
日本に出稼ぎに来た外国人労働者のアニタとゴンザレス。

孝之介の著書『仁義の黄昏』の文句に
ラインマーカーを引き、組の若い衆に
説教しているという仲蔵の弟分である大曽根組長。

紫陽花の精のような、女将とおぼしき謎の婦人。

凶事が続き、経営していた空調関係の修理屋が
破綻して排ガス心中を失敗した小田島仙次、
妻の八重子と子どもたち。

清子の別れた亭主矢野政男。

階段の前にたゆたう、薄紫のかげろうに包まれた
小さな男の子と女の子。
これから心中しようとする家族が滞在している部屋の
次の間で晩酌している、すでに心中した家族の亡霊。

舌と腹と心を満たす食事。
一泊二日ソフトボール付きと書かれたユニークなパンフ。
紫の絨毯にえんじの壁、祭提灯や光物が
ぶら下がっている超悪趣味なカラオケバー「しがらみ」と、
豪華で下品なソファー。
任侠路線の硬派演歌の選曲に、自分の人生を
あてはめるように神妙に聴き入る礼儀正しい団体。

客が支配人や組長を出迎え、宴会で使った食器を片付ける。
世間は監獄ホテルだと言うが、子分や弟分が
ゆっくり羽根を伸ばせる極楽リゾートを目指して、
本物の任侠・木戸仲蔵がオープンさせた
あじさいホテルを山と空の唸り声が包み、嵐がやってくる。
そして夢なのか現実なのか、たびたび映像となって
よみがえる母の失踪事件の真相が明かされる。

新幹線と高速道路のデットポイントにあたる、
終着する山間のひなびた温泉・奥湯元あじさいホテル。
粗野で凶暴で非常識なエネルギーが、苦悩の一片を
ひと株の花と成長させ解決してしまう、あじさいの群落に立つ、
夢の砦で繰り広げられる二泊三日の旅傑作コメディ。

読者の心をもてあそび、どんな言葉がその心を掴むか
熟知している著者の技巧が分かっていながら、
みずから蟻地獄に入っていくことに悦びを覚える。
読み手をその蟻地獄に誘い込む技法は、天才という言葉以外
思い浮かばない文章の魔術師。
生きていてよかった……こういう本に出逢えたとき、そう感じる1書。

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

落盤  手塚治虫

落盤

『落盤』
前橋がまだ若い炭坑員だった20年前、
竪穴で落盤が起きた。
前橋は懐かしそうに当時のことを
大村に話すのである。

その現場に負傷者はふたり。
ふたり一度に助け出すのは不可能だと、
前橋はひとりを先に担いで竪穴から脱出し、
もうひとりを助けようと戻ったときには
不運にも彼は息絶えていたというが……

実はその男から、前橋は30円借りていたのだ。
30円といえば当時は大金であり、
返済することができないとにらんだ前橋が、
彼を殺すために落盤するように細工したのである。

そして大村と名乗った青年の本当の名前は……

ほか
『花とあらくれ』
『人食岬の決戦』
『ジェット基地の幽霊』
『火の谷』
『タツマキ号航海記』
『羽と星くず』
の6編が収録され、人間ドラマ、戦争、
社会的テーマなどが描かれた中期短編集。

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

なるへそ  池井戸 潤

なるへそ

中目黒の住宅街にひっそり佇む、
カウンターのみの小さな寿司屋「皆藤(かいどう)」は、
店主の皆藤一志(かずし)が一見客を入れないため、
引き戸にはいつも「準備中」の札がかかっている。

けれんがなく、寿司の美味さと店主の見事な手並みには
目を瞠るものがあるその店では、貸切状態で
『黒後家(くろごけ)蜘蛛の会』が開催されていた。

メンバーは各界で活躍している6人。
プロ野球チーム東京ジャガーズのコーチ・
箱田塔吾(はこたとうご)。
大毎(おおまい)電機に勤める
小坂和彦(こさかかずひこ)。
売れないミステリー作家・
猫魔洋(ねこまひろし)。
スポーツ音痴な弁護士・
北沢圭太(きたざわけいた)。
いかにも二枚目俳優らしい
中村英二郎(なかむらえいじろう)。
会のゲストで、真打に昇進した落語家・
笑福家(しょうふくや)ごぼう。

気配りの行き届いた食事に至高の時間はあっという間に過ぎ、
空腹が満たされると、行為リスク管理の議論が再開されたが、
なぜかごぼうだけが浮かない顔をしている。
皆心配し、ごぼうの悩みを聞くことになって、
ごぼうは話りだしたのである。

3か月前、真打昇進が取り沙汰されたとき、
小心者のごぼうは精神的に追い込まれ、
見かねた中村が映画関係のパーティに誘った。
そこで小柄で色白の女性から、
ごぼうは本名の岡本弘の名前で呼ばれて驚いたという。

彼女の名前は高橋雅子。
18歳まで山形の天童市に住んでいたときの幼なじみで、
ごぼうはひとつ年上の雅子に恋心を抱いていたが、
彼女が高校3年生のときに父親の会社が倒産して
姿を消してしまった。

それ以来ずっと忘れられなかったのに、偶然出逢い、
昔話に花を咲かせていると、雅子がごぼうの落語を
聴いたことがあることを知り、
ごぼうは思い切って悩みを打ち明けた。
昔と変わらず包容力のある雅子に励まされたあと、
さらにパーティは盛況になって
彼女を見失ってしまったというのである。

数日後、ラッシュ時のバスに揺られていると、
彼女が乗ってきたのを後部座席から見かけたが、
車内は満員で身動きがとれず、
連日のハードスケジュールもわざわいして眠ってしまい、
気がつくと彼女の姿はなかった。
失意にかられバスを降りようとしたとき、
車中で彼女がキャンディをあげていた女の子を
見かけたので、その子に訊いてみると、
雅子は なるへそ という店の前で降りたと
教えてくれたのである。

それから何度か同じバスに乗ってはみたものの、
なるへそ という店は見つからなかった。
もう一度彼女に会って、自分の想いを伝えたいという、
気が弱くシャイな青年落語家に、
なんとかいいアドバイスをあげたいと、
店主を含め、会のメンバーは知恵を絞る。
キーワードは なるへそ という店名だったが……

小さな寿司屋「皆藤」で月1回開催される
『黒後家(くろごけ)蜘蛛の会』。
そこでゲストの落語家が悩みを打ち明け、
メンバーたちが悩みを解決すべく謎を
解いていく短編パロディー。



テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

クッキングパパ(1) うえやまとち

クッキングパパ 1s

金丸産業営業二課主任・
荒岩一味(あらいわかずみ)31歳。
小学2年生・荒岩誠(あらいわまこと)7歳。
地元ニチフク新聞社文化部記者・
荒岩虹子(あらいわにじこ)。
一味の勤務先・金丸産業から5分の場所にある
アパートに住む荒岩家。

料理があまり得意ではなく、新聞社の激務で忙しい
ママ・虹子の代わりに、パパ一味は、終業時間の5時になると
ダッシュでアパートに帰り、お腹を空かせて待っている
ひとり息子の誠のために自慢の腕を振るう。

息子といっしょに夕飯を摂ったあと、残っている仕事を
片付けるために会社に戻るが、そのあと帰宅してからもうどんを
打ったりと、かなりの料理好きパパである。

一味手作り弁当は毎日常務が料亭のお弁当と交換を迫るほど、
プロ顔負けの本格派。
残業疲れのためのアイスクリーム、単身赴任者のためのカレー、
ダイエットのためのヘルシークッキングなど、周りのひとたちに
幸せをばらまくレシビが満載。

仕事には厳しく部下思いで、奥さんにも息子にも優しい
理想のパパが、思いやりあふれるストーリーを展開しながら、
各章に必ず紹介されるレシピに胸を膨らませる、
料理辞典でありグルメコミック第1巻。

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

デキる人の敬語の正しい使い方  スマートな大人の教養 半谷進彦

デキる人の敬語の正しい使い方

言葉は生きている。
だから変化していくのが常である。
とはいえ、よく耳にする言葉には、
やはりちょっと首をひねってしまうような、
違和感を覚える敬語〔らしき言葉?〕が溢れている。

というわたし自身も、目の前の相手に使う尊敬語と、
自分の行為を伝える謙譲語で迷うことは数知れない。

長い日本の歴史のなかで、身分や立場、
相手への配慮から生まれた敬語。

本書は、とても複雑で難しい敬語が、
現代の言葉使いを例にとりながら、
分かりやすく解説されている。

例えば
「お子さまはお連れしないでください」
のように、「お……する」は、謙譲語であるため、
相手の行為には使えない。つまり尊敬語ではない。

正しくは
「お子さまはお連れにならないでください」
「お……になる」にしなければならない。
「なる」は尊敬語、「する」は謙譲語。

「皆さまお元気でございますか?」
「ございます」は自分側に使う丁寧語なので、
相手に対しては「いらっしゃいます」を使う。
つまり「皆さまお元気でいらっしゃいますか?」
となる。

このように具体的な例をあげ、間違いを正して、
相互尊重の精神に基づく自己表現である敬語を
正しく示してくれる。
本書は話す相手に対して失礼な言動を避けるため、
また社会人として恥をかかないための
礼節敬語教養書。

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

カウンタ
Kindle 電子書籍の購入
電子書籍リーダー
honto 電子書籍の購入
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
07 | 2015/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新トラックバック
検索フォーム
カテゴリ
リンク
おすすめ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示
プロフィール

Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。