11月の投稿書籍

柔らかな頬 上柔らかな頬 下幸せな経済自由人赤・黒ピンポン 第5集
朗 読 者マシュマロ通信行きどまり酒のほそ道 壱ダ ナ エ
過去を変える一言横道世之介おうちオフィス美  丘朝活のススメ
サムネイルをクリックすると元記事にジャンプします

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

朝活のススメ 徳本昌大 小川晋平 ほか

朝活のススメ

「朝活」とは、出勤前や休日の朝を利用して、
志の高い仲間が集まっておこなう
グループワークのことである。
メリットとしては、仕事関係以外の出会いや、
仲間との活動の喜び、それが成果につながることもあり、
さらに恋人ができるという副産物に
巡り会えるかもしれない。

本書は、そんな朝活の魅力が10人以上の
有名人によって語られる。
今の人生を変えたい、朝活に興味があると
感じている人のために、参加方法や主催方法、
朝活を愉しむコツや、朝活の魅力、コミュニティ作りの
ノウハウが詳しく解説されている。

目次
まえがき
1章 出会いとプロジェクトをデザインする
ソーシャルおじさんスタイル朝活(徳本昌大)
2章 「ソーシャル」のススメ朝活を
主催してみたい人のために(鈴木拓)
3章 朝活初!ソーシャルを活用した女性の
集団『ソーシャルAnegoes』(斉藤洋子)
4章 「無欲で単純に楽しむことこそが、
盛り上がる朝活運営の秘訣!」(高木芳紀)
5章 人生を180度変えたのは、価値観で
つながれる仲間と出逢える朝活(福島宏明)
6章 フツーの会社員によるおいしい
パンケーキ朝食会(河部裕一)
7章 ひとり朝活の達人が語る「ひとり朝活」と
「一般朝活」のコラボレーションの効果
8章 【弁護士が語る!めくるめく夜の
世界からトキメク朝の世界へ】
9章 地方で朝活をはじめる、地方で朝活を
続ける朝活は都心だけのものじゃない!
10章 エビカツ!朝活で始める、ファンが増えてく
「巻き込むマーケティング」(小川晋平)
11章 朝活ガイド あなたにピッタリの朝活を
探しに出かけてみませんか?(ガイド : 楠田武史)

《朝の時間を有効活用して、人生を豊かに
しませんか?》という冒頭で始まる本書には
有名ホテルの朝食をゆったりと食べながら、3分間で
好きな本のプレゼンをして議論する朝活や朝カフェの会、
文具朝活会、パンケーキ朝食会だったり、English Breakfast
Circle 、集まった参加者が、読書でも編み物でも自由に
自習形式で勉強するなど、さまざまなグループが
紹介されている。

朝活に参加、あるいは主催することで得られるもの……
新たなビジネス展開に繋がる。
人と情報が集まる。
人との対面による人間関係構築で、
有益な情報が得られる。
人とのつながりが、無縁社会という社会問題解決に導く。
本の出版や結婚に結びつくことも。

自分の知識を、前向きな価値観を持つ仲間と共有し、
インプットアウトプットすることで、クリエイティブな
化学反応が起きる……などなど。

活動の時間を変える(朝活動する)。
場所・環境を変える(家や職場ではない
開催プレース)。
付き合う人を変える(さまざまなバックグラウンドを
持つ人との出会い)。
ソーシャルメディアの活用。
以上を実践することで、今までの生活が、
人生が変わる。
そして自分が望むテーマで、気軽に
コミュニティ作りができる。

多くの人との出会いに、仲間ができることにドキドキし、
自分が変わろうとすることに、変われそうな思いに
ワクワクする、期待と活力と希望をもらえる朝活ガイドブック。

1時間の違いですべてが捗る 朝活のススメ 安心して参加できる 厳選朝活ガイド付き(選び方、参加のコツも指南) impress QuickBooks1時間の違いですべてが捗る 朝活のススメ 安心して参加できる 厳選朝活ガイド付き(選び方、参加のコツも指南) impress QuickBooks
(2013/05/24)
徳本昌大、鈴木拓 他

商品詳細を見る



テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

美丘 石田衣良

美丘

“美しい丘” というより、“嵐の丘” の方がぴったりくる美丘。
美丘と出逢ったのは、11月の穏やかな月曜日の午後だった。

青山通り沿いのマンモス校、明知大学の22階ある校舎の
屋上で、太一が北村洋次と笠木邦彦とともに、授業を
サボッていると、ジーンズにライダースを着た
小柄な女の子がフェンスを登りはじめたのである。

3人は慌てて「自殺なんかするな」と叫んでダッシュし、
太一がフェンスを越えて女の子の前に着地すると、
彼女は笑顔で訊いてくる。
「私は峰岸美丘、文学部2年。あなたは?」
「橋本太一、経済学部2年」と、太一は答え、どうして
フェンスを越えたのか訊くと、空の近くに寄りたいからと
言いながら、両手を広げて歩き出した。

太一は震えながら、美丘の後ろを歩くが、ガードマンから
怒鳴られ、ふたりは笑ってフェンスをよじのぼり
戻ったのである。

2度めに彼女と会ったのは数日後のランチタイム、
学食兼カフェでのことだった。
アルミのトレイが床に落ち、あたりは静まり返る。
4人の女子が、友だちの彼を寝とったと美丘を責めたて、
その後ろでひとりの女の子が泣いていたが、美丘は
平然と丸テーブルに座り、ミネストローネを食べていた。

そしてゆっくり立ち上がり
「私はHがしたかったからしただけ。あんな男を
好きになった方にも責任があるんじゃない」と、
冷静に言い放つ。
するとリーダー格の女子の手のひらが美丘の頬を打ち、
次の瞬間には、美丘の手のひらが相手の頬を打ち、
破裂するような音が4回リズミカルに響いた。

太一は自分のトレイを勢いよく床に叩きつけ、
周りの注目を引きつけて、彼女たちの仲裁にはいった。
その場は収拾したものの、邪悪な笑みを顔に
貼り付けたままの美丘に呆れ、腹立ち、
そして何かが始まったと感じるのだった。

その件以来、美丘は大学で悪名高くなったが、
昴然と胸を張って歩いている。
そして言う「私はただ生きるために生きてる」と。
それから美丘は太一のグループ、洋次、邦彦、
五島麻理、佐々木直美たちになじみ、
クリスマス・イヴにいっしょにパーティを
することになった。

当日、6人は礼拝室に入り、祭壇の前で黙とうするが、
美丘だけは部屋の隅でそっぽを向いている。
神さまは信じないし、流れるドイツの音楽が
気に入らないという。
美丘はドイツをとても憎んでいたのである。

礼拝堂を出て、6人が青山通りを歩いていると、
透明なカーテンのように落ちている陽射しを見て、
太一が「あれはヤコブのはしごっていうんだよね。
あのはしごをのぼると天国に行けるらしい」という言葉に、
美丘が「あんなはしごにはのぼらないし、
天国にも行かない」と反発する。
ヤコブと天国というフレーズに反応してしまったのだ。

西麻布にある、モダンな麻理の家に到着した6人は、
2階の白色で統一された広い部屋に通され、
シャンパンで乾杯した。
そしてプレゼント交換で、洋次からの贈り物が
当たった美丘は、包み紙を裂いて中を見た途端に
怒りだし、大きなクリスマスツリーに回し蹴りを放ち、
部屋を飛び出した。
そのプレゼントは、少女が難病に罹って亡くなるという、
高校生同士の恋人の物語の原作本と映画のDVDだった。

年が明けて、新年会をするため、6人が渋谷に
集まっていたとき、恐怖と不安でおどおどしている
全身ピンクの老女をみかけた美丘は、忍耐強く老女が
置かれている状況を探り、太一とともに
アルツハイマーらしいその老女をタクシーで家まで
送ったのである。
そしてタクシーの中で、老女は美丘に言うのである、
「この人を放したらダメ」と。

2月の冬の底、毎日のように美丘を待つ女の子が
校門の近くで立ちすくんでいた。
見かねた太一と麻理は、その女の子・ちえみを
いつも仲間が集うカフェに誘う。
ちえみは彼にDVを受けていたのを美丘に救われ、
美丘に恋してしまったが、美丘にもかまってもらえず、
「もう、嫌。死んだほうがいい」と言ってカッターを
ポケットから取り出した。
美丘はちえみの頬を張り、「死ぬなんて言うんじゃない。
誰かに依存するんじゃなくて、自分の足でしっかり
立っている人以外とは付き合わない」と、
ちえみの頬を挟んでキスをした。

恋を始めるのに一番いい季節、春。
太一は麻理と付き合うことを決めたが、
頭で考えた恋が成就するはずはなく、
麻理を振りまわし傷つける結果となった。

美しい麻理の顔を見ても高鳴らなかった胸が、
美丘を見ているだけで苦しくなる。
これ以上麻理と付き合う振りはできないと、
6人で行った山中湖で、太一は美丘に打ち明け、
ふたりは激しいキスをかわす。

梅雨の開け切らない7月、恋がスタートした。
前期試験が終わって、太一と美丘はスペイン坂で
ランチを摂り、道玄坂に建つリゾートのような
ホテルの最高級の部屋で結ばれたあと、
美丘は「太一くん、ありがとう」と言って続けた。
幼稚園のとき交通事故に遭い、ドイツから輸入された
ライオデュラを硬膜に移植されて、
クロイツフェルト=ヤコブ病に感染してしまった。
治療方法はなく、発症したら記憶が薄れていき、
3か月ぐらいで死に至ると。

過酷な話を打ち明けられた太一は、
美丘とできるだけ長くいっしょにいよう、
いっしょに今を生きようと決意したのである。

福島県出身で、なまりが抜けない北村洋次。
横浜出身で、言葉になまりはないが、
重みもない笠木邦彦。
育ちがよく、冷静な氷の王女で、
鋭い核心をつく五島麻理。
明るい金髪で、グループの書記長、
小柄でリスのような泣き虫の佐々木直美。
幼い表情で、あけすけにエロトークをし、欲望に
まっすぐで自由奔放だけれど、観察眼の鋭い美丘。
東京生まれの東京育ちで、本が大好きな橋本太一。

それぞれ個性を持つ彼らの、東京での大学生活。
都会の街を背景に、著者ならではの、深い音楽と
ファッションの知識と、洗練された文章に、四季を
通してその情景がありありと脳裏を満たす。
愛する美丘をすぐそばに感じ、あふれる想いで
美丘を語り続ける太一の、辛くて、切なくて、哀しくて、
でも優しく温かい恋のものがたり。

美丘 (角川文庫)美丘 (角川文庫)
(2009/02/25)
石田 衣良

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ママの「働きたい」をかなえる おうち(通勤0分)オフィス 熊田美佐 中村佳子

おうち(通勤0分)オフィス

本書は、おしゃれなふくさ専門店 choco*t(ちょこっと)
代表の熊田美佐女史と、マスターライフオーガナイザーの
中村佳子女史の共著による、妻でありママでありながら、
自分の夢を実現していくまでの軌跡を描いた物語。

甲子園球場近くの自宅の一室「おうちオフィス」から、
この原稿を書いているという出だしで始まる本書は、
結婚と同時に退職して3人の男の子を出産して
ママとなった著者・熊田女史が、働くママのコンテスト
【PowerWomenContest2013】西宮代表として本選に
出場して企業賞を受賞したことをきっかけとして、
おしゃれなふくさのオーダーメイド制作を中心に
事業展開するまでの道のりが語られている。

そしてその過程で知り合った、共著である
ライフオーガナイザーの中村佳子女史の共演と
彼女の思いや生き方についても語られる。

2LDK+納戸だった熊田女史の自宅を、
ワークスペースを付け足した間取り・2LDKWに
変身させたのが、ライフオーガナイザーの
中村女史だった。

ライフオーガナイズとは、空間だけではなく、
思考の整理も重要視する、アメリカの
オーガナイザーをベースにした片付術である。
方を付ける(思考の整理)+形を付ける(空間の整理)
=片付ける、これがオーガナイズの考え方である。
気持ちを整えると、片付けもスムーズにいく。
それは価値観や理想が基盤となるため、本書には
利き脳(右脳タイプ・左脳タイプ)診断方法なども
載っていて興味深い。

「捨てるのではなく、大切なものを選ぶ」という視点の
片付けに感嘆し、服や雑貨に食器などの、自分の周りを
取り巻くモノに対する味方も変わってくる。

《身の丈に合わせて働くスタッフを少しずつ増やす》という、
熊田女史の考え方にとても共鳴できる。

著者と同じ個人事業主であるわたしの夢も、働ける時間、
その人個人ができること、さまざまな制限があるなかで、
可能な部分を共有していっしょに働けるスタッフとともに、
ひとつの空間を築いていきたいという未来への青写真が
重なったことで、お会いしたこともない著者への
親近感を覚え、わたし自身の夢への勇気も増幅される。

本書は、出産・子育て・介護などにより
働くことを諦めている方にも、会社での地位の
高い役職に就いている方にも、
未来の可能性と夢をもらえる「身の丈」起業ノウハウ本。

ママの「働きたい」をかなえる 通勤0分 おうちオフィスママの「働きたい」をかなえる 通勤0分 おうちオフィス
(2014/07/02)
熊田 美佐、中村 佳子 他

商品詳細を見る

続きを読む

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

秋 と 哀愁 と オータムジャンボ

宝くじのコピー  

なにを隠そう……いや、隠さなければならないような、
大した人生は送っていないのだけれど……
宝くじ購入歴は長い。

そして、すでにずいぶん過去の話ではありますが、
夢というその名の通り、なんとドリームジャンボの1等賞を
獲得した経験がある……またまたちょっと真実がずれて
お話しておりますが、“1等賞” は正確ではなく、
“1等賞の組違い賞” 獲得……賞金額は10万円。

だからというか、そうでなくても、夢を買うことから
逃れられない性格なので、今もジャンボの
宝くじだけは……夢を……買い続けております。

秋が来る心の準備もさせてもらえず、
突然涼しくなってしまった今年の夏。
でも、秋といえばオータムジャンボ!
もう、待ってました!なのです。

なぜなら、あの奇跡的な1等組違い賞当選から、
それ以上の栄光を経験できないまま、いくとしつき
宝くじ購入の歴史を刻みつつ迎えた、一昨年の
オータムジャンボで、な、なんと、オータムサンキュウ賞
(39,000円)をいただいてしまったのです。

もう、その感慨と言ったら、言葉には表せないほど!
ですから、必ず購入するジャンボのなかでも、
オータムは決して外せないと決めつつ臨んだ昨年でしたが、
結果はちょっと残念なことに当選金は3,000円。
それが今年は、また、な、なんと、10,000円獲得!と
復活したのです。

幼いころから感じていた、なぜかもの哀しくて、少し苦手な秋。
でもここ数年、私にとって “秋” は、絶対なにかあると
確信できる特別な季節に変化してきたのです。

宝くじという、大きな夢を見られるイベントはもちろん、
苦手な季節 “秋” へのわたしの偏見が、実は逆の意味を
持つことを知らしめてくれているのかもしれない……
そんなポジティブに思える10,000円効果!

さあ、そのとんでもなく大きな価値を持つ10,000円を、どう使おっか ⁈
それは、やっぱり……えへへへ!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

横道世之介 吉田修一



『四月 桜』
新宿駅東口駅前広場で、重そうな鞄を
肩にかけて、ふらふら歩いてくる若者。
大学進学のために東京へ出てきたばかりの
横道世之介は、西武新宿駅で準急電車に乗り、
東久留米に向かった。
そこからバスに乗り、8つ目のバス停を降りると、
世之介の東京生活が始まるワンルームマンションがある。

3階建てで50戸ほど部屋があるマンションの、
205号室が世之介の新居だった。
自分の城にときめきながら鍵を開けると、6畳ほどの
ワンルームが目の前に現れ、なぜか留守らしい隣室
203号室から目覚まし時計の音が聴こえてくる。

部屋の床を磨いたあと、外の電話ボックスで実家に
電話をかけて戻ると、203号室の前に女性が立っていた。
202号室の住人だというその女性から、
シチューを作りすぎて……
目覚ましの音にイライラするし……
と、部屋に誘われる。

202号室で、近所のスポーツクラブでヨガの
インストラクターをしているという小暮京子と、
シチューを食べながら話に夢中になっていた。
大学を卒業して就職した会社を退職し、
インド留学ののちヨガのインストラクターに
なったという京子の経歴に、世之介は圧倒される。

桜も散り始めたころ、武道館で入学式があり、
関わりたくないと思いながら、同じ経営学部の
倉持一平が、東京生活で初の友人となった。
オリエンテーションでは、クラスに2人しかいない
女子の1人・阿久津唯に声をかけられ、いっしょに
倉持と合流する。

ところが倉持が唯のアイプチを指摘して
大笑いしたのである。
そして「変わりたいと思った」と言って涙を落とす唯の
肩に手をかけて、「いっしょに変わろう」と慰める倉持を
見て、世之介は呆気にとられるが、流れのまま3人は
サンバサークルに入部することになった。

4月はガイダンスや授業登録などで、あっという間に
過ぎていき、最後の日曜日、早稲田大学4年生で、
従兄の清志が住む幕張の県人寮を訪ねた。
久しぶりに会う清志の変貌ぶりは顕著で、
読書家になりスタンダードなジャズを聴いている。
そんな清志を見て世之介は思わず口走ってしまうのである
「清志兄ちゃんには似合わない」と。

清志にベルギービールを勧められた世之介は、
高校2年生のとき友人5人で居酒屋に行き、
酔った勢いで大好きな大崎さくらの家へ、
告白に向かった思い出に浸っていた。

こうして世之介の東京での大学生活は
『五月 ゴールデンウィーク』
『六月 梅雨』
『七月 海水浴』
『八月 帰省』
『九月 新学期』
『十月 十九歳』
『十一月 学祭』
『十二月 クリスマス』
『一月 正月』
『二月 バレンタインデー』
『三月 東京』
と続いていくが、のちに待ち受けていた運命に……

往生際が悪く、まず妥協。
周りに影響を受けやすいが、実は強い信念を隠し持つ、
井原西鶴『好色一代男』の主人公の名前が由来の世之介。

女優気質で一世一代の見せ場を逃さない世之介の母。
マイペースで馴れ馴れしいが、見かけによらず
真面目な倉持一平。
いっしょに教習所へ通い、女の子に興味が
ないという加藤雄介。
口では厭世的なことを言いながら、実際にそういう
人間に会うと腹が立つらしい従兄の清志。

フォトグラファーで、同じマンションの住人・室田恵介。
世之介の彼女だが、目の前で変態していく感じの
お嬢さま・与謝野祥子。
倉持の隣室に住む韓国人留学生のキム。

世之介を取り巻くさまざまな人々と関わりながら、
影響を受けたり、及ぼしたりして、温かい心を刻んでいく。
いろいろなことに「NO」ではなく、「YES」と言っているような、
絶望ではなく、希望を持ち続ける世之介。
ほのぼのとボケたりツッコんだり、そこここにユーモアを
撒き散らした青春物語のなかに、
確かに世之介は存在していた。

横道世之介 (文春文庫)横道世之介 (文春文庫)
(2012/11/09)
吉田 修一

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

親孝行のつもりが……

北海道物産展  

哀しくて切ない本を読んだ。
けれど、描かれていたのは、哀しいだけではなく、
包み込むような深い愛。

とても愛し合っている若いふたり。
でも、彼女は治療法のない病に冒され、
だから明日を期待せず、今を生きる。
そしてふたりを待っていたのは……

本を閉じて、なぜか我が家のご長老である
パピヨン犬のルルと、実家にいる母に思いが募った。
誰しも年齢に関係なく、明日こうして同じように
ここにいられるとは限らない。
突然の不運に見舞われるかもしれないし、
不治の病を宣告されるかもしれない。
と言いつつ、平均寿命が迫っていれば、
より別の世界への扉も近いのは確率的には正論だろう。
だからなのかなぁ、ルルと母が、ふっと現れたのは。

条件反射のように、わたしは母の携帯番号を
プッシュしていた。
「ほら、今、北海道物産展を開催してるでしょ?
いっしょに行ってみない?」
「そうだね、特に欲しいものがあるわけでもないけど、
行ってみようか」

30分後、母を乗せ、老舗のデパートに到着。
そのデパートの7階、特設会場で開かれている
北海道物産展には、特産の昆布や鮭、蟹などの
北海道ならではの専門店が所狭しと並んでいた。
ちょうどお昼前の時間帯ということもあってか、
海鮮弁当のブースは並んでいる人の波でメニューも
見えないほどの人気ぶりである。

新鮮な海の幸が目的だったが、長蛇の列に怯み、
お弁当購入は諦めて、とりあえず場所を移動して
ランチを摂ることにする。

そこは、デパートの道路を挟んで向かい側のビルの4階、
店員さんの態度もとても礼儀正しく、リーズナブルなのに
お料理も本格的な和食のお店。

前菜の小さな茶碗蒸しと湯葉に野菜の蒸し物。
メインディッシュは深みのある器の中央に、
上品に載った焼きなすとフィレ肉。

落ち着いた民芸調の家具に囲まれ、日々の喧噪を忘れて
いただく上品な味に、舌も心も至福の感慨に包まれる。

母と娘というのは、たぶんとても複雑な関係で、
ふたりっきりになったとき、沈黙が怖かったり、
でも静かなときを感じたかったり……

長年、母娘を演じていると、しがらみも愛憎も、
さまざまな感情が蓄積されているものの、
たぶんそんなに長く今の状態が保てないと
感じているこのごろは、少しだけ親孝行らしいことを
したいと思ったのに……

結局、ご飯をおごってもらって、北海道物産展で
いろいろお土産を買ってもらい……

親孝行のつもりが、子孝行されてしまいました……
それが母と娘なのかなぁ……
などと、自分に都合のいい解釈をしつつ、神さまに祈る。
どうか来年もこの北海道物産展に来られますように!


テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

過去を変える一言キーワード 人生の迷い・過去・未来編 佐藤康行

K0003307.jpg

《思いもよらない人生》
よく「思い通りになる人生」が最高と言われるが、
それよりもっと素晴らしいのが
「思いもよらない人生」である。
なにか欲しいものがあったとき、お金を貯め苦労して
手に入れるのが、「思い通りになる」ことであるが、
それを友人がプレゼントしてくれたとしたら、
「思いもよらない」ことになる。

それは思いもよらない感動と悦びを得られ、
価値観の幅が大きくなると同時に、
感謝と成長にもつながる。
目標に向かうばかりではなく、いちど目標をはずして、
思考を一旦停止することによって、新しい発想が
生まれ、思いもよらない恩恵を受けるのである。

《人生とは自分の心の中にある素晴らしさを
発見する産業である》
すべて心でできているこの世では、心を身につけ
知らなければならない。
自分の素晴らしさを発見し、前向きで積極的になれば、
元気な人が集まってくる。

《がんばって咲く花は一輪もない
チューリップはバラになれない》
人は何かを得るためにがんばるが、動植物は
がんばって生きてはいない。
チューリップはチューリップとして自然のまま生きている。
川は自然に沿って流れていく。

人間も自分自身の足下を見つめ、使命の方向に沿って
進めば、がんばらなくても綺麗な花を咲かせることができる。
ほかの人と比べるのをやめると心が平穏になり、
自分を見つめてあらゆる行動を楽しむことで幸せになれる。
などなど、言葉の贈り物は続いていく。

人には天命・使命があり、それに沿って生きれば幸せになれる。
己を知る、本当の自分=真我を体感する。
本書は、心のスイッチを入れる力を持つのが
言葉の力だと語る著者から、人生、過去、未来の捉え方、
苦しいときや悩んでいるとき、心を目覚めさせてくれる
27の言葉が贈られる、人生のバイブル書。

過去を変える一言キーワード 人生の迷い・過去・未来編過去を変える一言キーワード 人生の迷い・過去・未来編
(2014/10/04)
佐藤康行

商品詳細を見る


続きを読む

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ダナエ 藤原伊織

ダナエ

長年、美術界の裏方を務めてきた礼儀正しい瀬田も、
温厚な豊明画廊のオーナー井口も狼狽を
隠せない様子だった。

60号の作品は鋭利な刃物で切り裂かれ、この国の
権力者だった老人の顔は絵の具が溶けて、影も形もない。
それは宇佐美真司が描いた唯一の肖像画だった。

宇佐美は、警察に通報するという井口の言葉を頑なに拒み、
どこかでこの事件をおもしろがりはじめていた。
撒かれた液体が硫酸なら、ダナエ事件を彷彿とさせる。

応接セットに宇佐美と井口に瀬田が腰かけ、
受付の長谷川と庄野が状況を説明する。
大御所ではなく若い宇佐美の個展は、批評記事が
きっかけとなり盛況を博して、作品にはすべて売約済の
マークが添えられるほど、会場は賑わっていた。

長谷川が、5時半ごろ、高校生らしい女の子が
大きなバッグを持って、記帳せずに受付を
通ったと口を開く。
背が高くスリムなその少女は、被害に遭った絵が
掛けられた、死角になるところに
長い時間いた可能性があると続けた。

そのとき事務員が宇佐美に電話だと言って、
コードレス電話を持ってきたのである。
受話器の向こうからあどけない声が響く。
「今日は予行演習で、近いうちに本番を実行する」と
告げる声に、宇佐美は「君との会話は楽しい」と、
自分の携帯番号まで教えていた。

1985年に、当時のソ連で起きたダナエ事件には、
ある老夫婦が頻繁にレンプラントのダナエを
観にきていたが、やがてお婆さんが亡くなったことを
悲しんだお爺さんが、思い出を破壊しようとして、
作品を切り裂き硫酸をかけたという逸話があった。

服部重工業社長のひとり息子だった宇佐美は、
美術に夢中になっていることで父親から勘当されたが、
最初の妻・早苗に生活を支えられ、20代でなんとか
個展を開き、そこでトリノ美術大学のピエトロ・トレンテ教授に
見初められて、トリノ・ビエンナーレに応募し、
今の地位を築いたのである。

宇佐美が自宅に戻ると、妻の恭子はいつものように
リビングでグラスを傾けていた。
宇佐美もグラスを持ってきて水割りを作りながら、
恭子に訊いた。
「君には娘さんがいたな」と。

再婚した妻の恭子には離婚したコンサートマスターの
大西良樹とのあいだに、高校3年生になる娘・
真澄がいたが、もう5年半も娘には会っていない。
大物財界人である恭子の父・古川宗三郎は、
今日被害に遭った絵のモデルだった。

ギリシャ神話で、ダナエはお姫さまという意味だという。
王アクリシオスは娘のダナエが産んだ男の子が自分を
殺すと予言され、ダナエを幽閉するが、大神ゼウスが
ダナエを見初めて交わり、ペルセウスが生まれた。
アクリシオスはふたりを箱に閉じ込めて海に流したが、
島に漂着してふたりは生き残ったのである。
やがてスポーツ競技会に参加したペルセウスの投げた
円盤が観客席に飛び込み、ひとりの老人が亡くなった。
それがアクリシオスだった。

現代のアクリシオスと呼ばれる、財界の大物・古川宗三郎。
生後半年で実母と別れることになってしまった
恭子の娘で、宗三郎の孫・真澄。
聡明でキュレーターの資格を持つ
豊明画廊の受付・庄野紗枝。

繭に閉じ込められたようなアトリエの生活。
宇佐美が諳んじる萩原朔太郎の詩句
「我れは何者をも喪失せず また一切を失ひ尽せり」は、
このアトリエにいたるまでの生活そのものだった。
絵描きであることを望む代わりに失ったもの。

肖像画壊滅事件はギリシャ神話と
関係があるのだろうか……
あるいは……

あふれる想い、止まらない涙、ただよう寂寥、
わずかな温みに包まれる傑作中編小説
ほかに『まぼろしの虹』『水母(くらげ)』収録。

ダナエ (文春文庫)ダナエ (文春文庫)
(2009/05/08)
藤原 伊織

商品詳細を見る

続きを読む

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

酒のほそ道《酒と肴の歳時記》壱  ラズウェル細木

酒のほそ道 壱

お酒は飲んでいるときはもちろん、これから飲みに行く
という高揚感が最高で、酒を飲むときの “気分” が
楽しいのである。
本書は酒や酒場の雰囲気に焦点をあてて、その “気” を
漫画として描いた『酒のほそ道』シリーズ第1巻。

『第1話 雪夜』
主人公は岩間宗達、29歳で俳句が趣味の会社員。
都会では珍しい大雪の日、こんな特別な日は
仕事も手につかない。
とにかく自宅ではないどこか、酒屋で飲みたいと、
終業時間と同時に会社を飛び出した。

雪道をワクワクしながら、前から気になっていた、
いまどき珍しい一軒家の居酒屋「酒亭藤ノ木」に向かう。
ひっそり静まりかえった店内で、ガンコ主人が
囲炉裏で燗をつけている。
そこに “出羽の雪” をぬる燗で頼めば
「この客、できる」と主人の目がキラリと光るだろうと
想像しながら、期待と緊張感を抱いて暖簾をくぐる。

すると、な、なんと、その想像は木っ端微塵に
砕かれるほどの雑多な騒がしさ。
しかも満席で入店は断られる。

仕方なく安いだけがとりえで、会社御用達の
定食屋兼飲み屋の「おかめ」に行くと、ドアには
「雪のため休業」の貼り紙。
根性なしっ!と怒る宗達は、入り口に作られた
小さな雪だるまを見ながら一句詠む。
《軒下や 盛り塩がわりの 雪だるま》

『第2話 隠れ家』
『第3話 二軒目』
『第4話 天気晴朗』
『第5話 草野球』
『第6話 アウトドア仙人』
『第7話 道連れは……』
『第8話 茄子の里』
『第9話 焼き鳥の極意』
『第10話 秋刀魚の心』
『第11話 天ヌキ』
『第12話 呑兵衛おせち』
『第13話 雪見酒』
『第14話 おでん屋台』
『第15話 古美術な酒場』
『第16話 日本酒地図』
『第17話 本日のおすすめ』
『第18話 野草天ぷら』
『第19話 立ち飲み酒』
『第20話 夏の夜を楽しむ方』
『第21話 天上天下唯我独尊?』
『第22話 知らず知らずの……』
『第23話 異国の屋台(前編)』
『第24話 異国の屋台(後編)』
『第25話 磯の味』
『第26話 風流風呂』
『第27話 湯気立つ河原』
『第28話 福を呼ぶもの』

「そうそう!」「そうなんだよね!」と、お酒好きのわたしも
同意し共鳴し、苦笑したり失笑したり、28話にも及ぶ、
お酒を飲むときの “気分” の薀蓄が、ユーモアや
自省とともに、独特のアルコール感で語られる。

さらにふき味噌、うなぎの柳川風、アワビや貝にイカのワタ、
焼きナス、ナスもみ、芋煮鍋、カキのホイル焼きのレシピや、
知らなかった日本酒の銘柄を目にするのも
新鮮な感慨を味わえる。

香港でアルコール60度という強いスピリットを飲んで
グリグリに酔いながら、出くわした路地の先の
細道でのできごと。
大雑把な定番のオーダーや、飲む前からお米料理の
オーダーへの心の中の抗議。
大勢で飲むときのマナー、カツオや秋刀魚の食べ方、
イワナの焼き方、ヤム・ちくわの作り方、そば屋の
天ヌキや鴨ヌキ、カワハギのキモなど、珍味や実用的な話。
各駅停車での酒の旅、お酒の席だからこそ見えてくる
身近な人の魅力だったり、見知らぬ人と仲良くなったりと、
ホロっとくるエピソードが満載。

お酒を飲む機会がこんなにもたくさんあることを再認識し、
そのシーンごとに変わる物語に感嘆しつつ、
いつしか主人公が自分と重なるような、
ちょっぴり自戒はするものの、呑兵衛にとって愉快な1書。

酒のほそ道 1 (ニチブンコミックス)酒のほそ道 1 (ニチブンコミックス)
(1996/01/19)
ラズウェル細木

商品詳細を見る

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

行きどまり 北方謙三

行きどまり

湿った夜、畠のなかの古びたアパートの前で、
新井安彦はもう2時間も久野を待っていた。
山口敬二が60万円以上もする新車のバイクを、
敬二が行きつけのBARナオミの経営者である久野に
いかさま博奕(ばくち)の負けで取られ、
そのことを話し合うためだった。
しかしバイクは自分のものだと言い張る久野との話は
埒があかず、安彦は諦めて自分の部屋に帰ることにした。

中学時代からの付き合いで、
安彦は敬二の性格をよく知っている。
ふたりとも6年間空手をやっていた。
敬二は博奕の負けはきれいだが、
いかさまとなったら相手をフクロにしかねない。

法学部に通う大学生の安彦は、アルバイトが
見つからないと、土建専門の会社に
勤めている敬二が担当する仕事を
世話してもらうことも多い。
狭いアパートでひとり暮らしをしているが、
月10万円の仕送りでは足りないのだ。

いかさま博奕は、敬二と久野に松山という
男3人でのポーカーだった。
バイクは諦めても、いかさまだったことを証明しないと
気が済まないと言って、敬二は安彦を連れて
大井埠頭に向かい、敬二の会社の資材置き場の
シャッターを開けた。

そこには後ろ手に縛りあげられた松山がいた。
腕にまわされた針金を切り、敬二がいかさまの
顛末を話すよう促がすと、松山はニューカードが
ふた組あり、久野と組んで敬二をはめたことを白状した。
そのあと敬二はひとりで松山の両腕をへし折ったのである。

同じ大学に通い、ときどきボロ車のサニークーペを
貸してもらう小林と、ほかに顔見知りのふたりの面子で
麻雀をしたあと、彼女である由美子に会おうと電話するが
留守電だっため、安彦はひとり行きつけの
BARハルマッタンへ向かう。
するとマスターの尾崎から「久野がおまえを探してたぞ」と
聞かされる。
久野が敬二ではなく自分を探しているということを
訝しく思い、敬二に電話するがつながらない。

翌日、敬二の会社にも電話を入れ、敬二が
無断欠勤していることを知り、
監禁されているかもしれないと心配になって、
久野のアパートの近くに車を停めて様子をうかがった。

しばらくして、男たちが久野の部屋から
隣室に入っていったのが見える。
不意に闇を貫くような叫び声が響き、
それが長く尾を曳いた。

部屋には数人の男がいるようだった。
深夜2時30分、灯りが消え、物音がしなくなったのを
確認して、隣室に入った。
暗闇のなか、懐中電灯を頼りに部屋を見渡すと、
バスタブのなかに敬二がいた。
素っ裸で後ろ手に縛りあげられ、
ロープで首と蛇口が繋がれていたのである。

片眼は腫れて潰れ、全身傷だらけだった。
切り傷は大したことないようだが、肋骨が2本折れている。

敬二は安彦の部屋でシャワーを浴び、顔に氷水をあてて、
ふたりは横になったが、敬二の涙を見て、彼がひとりで
何かしようとしていることを感じとった安彦は、
行動する前に必ず俺に話せと約束させる。

安彦は気になっていた。
相手は4人だ。ひとりで闘ってやられたからといって、
それが涙を見せるほどのことではない。
では、なぜ……

あの部屋で、耐え難い暴行があったのである。
敬二は呟く「絶対に殺してやるからな」と。
そしてふたりは、引き返すことのできない暗闇へ
引きずりこまれていく。

保険も保証もなく、安い賃金で働かざるをえない
非正規労働者と、アルファロメオ・スパイダーを
乗り回すお嬢様の由美子などとの格差社会。
四畳半の部屋でで5人が共同生活し、
故郷に仕送りしている外国人労働者。
などの社会問題も含みながら……

“段突きの敬二” と “アドレナリン安” という異名を持つふたりの、
お互いを自分のことのように感じる熱い友情と、
頑固なまでの漢気を持ち、キレるとなにをするか
分からない性質から被る災い。
しんしんと忍び寄る恐怖に、
読者はそこから逃れられなくなる。

バイオレンスの波が押し寄せ、恐怖に慄きつつも、
安彦と敬二の、なにが起きても怯まない強い精神に
惹きつけられる北方ハードボイルド。

行きどまり (講談社文庫)行きどまり (講談社文庫)
(2004/07/15)
北方 謙三

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

マシュマロ通信 山本ルンルン

マシュマロ通信

『クラウドがやってきた』
マシュマロタウンに住んでいるサンディは非売品や
限定品のおもちゃを集めるのが趣味で、
今はヒナギク食品「クラウドシリアル」のキャンペーンで当たる
ぬいぐるみ・からだを起こすと目を開ける「お目覚めクラウド」に
夢中だった。

キャンペーンに応募するため、優しくて暢気なパパや
料理上手なママ、双子の弟チョコとミントたちに、
毎朝たっぷり「クラウドシリアル」を食べさせるのである。

応募ハガキには「もう20回も応募しているのに当たりません。
これで当たらなかったら覚えていなさい」と
脅迫まがいのメッセージまで書く始末。

サンディはマシュマロ学院では新聞部の部長で、
カメラの腕がイマイチのバジルやうぬぼれ屋のジャスミン、
モテ男のライムやメルヘンと占い大好きなシナモン、
有機野菜を作っているナッツに音楽マニアの
クローブらとともに、マシュマロ通信(タイムス)の
スクープネタを探している。

新聞部で特集を何にしようか議論してから帰宅すると、
ママやチョコとミントに「はやく、はやく〜」と急かされ、
なにごとかとリビングに入ったサンディが目にしたのは、
テーブルに置かれた大きな箱だった。

包装紙をビリビリ破り中を確認すると、そこには
「お目覚めクラウド」のぬいぐるみが。
「やった〜、ついに当たった〜!」と大喜びして、
化粧箱のまま起こすが、クラウドは目を開けない。

苛立つサンディはヒナギク食品に文句を言って
交換してもらおうと、受話器を耳にあてているとき、
化粧箱の中から「開けて」と声がする。
そして化粧箱から出てきたぬいぐるみは
「ぼくシープクラウドです」と自己紹介までしたのである。

サンディは真っ青になって叫んだ。
「大スクープよ〜!」と。

『クラウドの記者会見』
『はじめてのおつかい』
『恐怖!ドッペルゲンガー』
と続く物語は、ヨーロッパを思わせる街並の
マシュマロタウンで、サンディの家族となった
シープクラウドが、パパやママ、チョコやミントに
囲まれながら、やんちゃに飛びまわる、
全ページフルカラーのふわふわハートフルコメディコミック。

マシュマロ通信1マシュマロ通信1
(2013/07/03)
山本 ルンルン

商品詳細を見る

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

朗読者 ベルンハルト・シュリンク 松永美穂 訳

朗読者

15歳のとき、黄疸に罹っていたミヒャエル・ベルクは、
学校の帰り道で吐いてしまった。
そのときハンナ・シュミッツが、泣き出したミヒャエルを
「坊や」と言って抱きしめ、家まで送ってくれたのである。

体調がよくなったら、お礼を言わなくてはいけないと
母に言われ、ミヒャエルは花束を持って、
バーンホーフ通りにあるハンナのアパートを訪ねた。
そして台所に通され、アイロンをかけている
彼女の美しさに魅了される。

帰ろうとして玄関の前に立っているミヒャエルを、
いっしょに出かけるから待ってとハンナが呼び止め、
ミヒャエルはドアの隙間から、台所でストッキングを
はく彼女の姿に、目が離せなくなってしまった。

それに気づいたハンナの視線に、恥ずかしさで
いたたまれなくなったミヒャエルは、部屋から飛び出し
外に出て歩きまわりながら、どうしてもっと
クールな振る舞いができなかったのか、
自分自身に腹が立った。
ミヒャエルよりずっと年上のハンナは、
「私のなかで世界を忘れなさい」と言っているように、
優雅で魅惑的なのだった。

医師からは登校の許可が出ず、病気は迷宮を作り出して、
罪深い考えがやめられなくなり、ミヒャエルはまた
ハンナのアパートを訪ねる。
そこに路面電車の車掌の制服を着たハンナが帰ってきた。

彼女に地下室からコークスを運ぶよう頼まれたミヒャエルは、
そこで崩れてきた石炭に埋まり、真っ黒になってしまう。
その滑稽な顔を見てふたりはいっしょに笑った。
ミヒャエルはお風呂に入り、ハンナは服の埃をはたいてくれた。
そして裸の彼女が、バスタオルでミヒャエルをくるみ、
ぴったり寄り添い、抱き合い、そのままハンナは
ミヒャエルの上になったのだ。

ミヒャエルはハンナに恋をした。
力が満ち溢れるのを感じ、女性に償わなければならない気持ちが
芽生え、家族に明日から学校に行くと宣言して、
毎日最後の授業をさぼって、ハンナのアパートで愛し合った。

彼女の部屋に行くと、ハンナはミヒャエルが学校で何を
勉強しているのか知りたがり、ミヒャエルは
ハンナのために本を朗読してから、シャワーを浴び、
そして愛し合う日々が続いた。
ミヒャエルはハンナを深く愛し、そのため彼女に
去られるのが怖くて、ささいな喧嘩もできなくなった。
ヴィムブフェンへの4日間の自転車旅行にも行った。
ハンナの強いだけではなく、弱い部分も、優しい面も
知ることができ、ふたりはより親密になっていく。

その日、『戦争と平和』を朗読したとき、
彼女の態度がいつもと違っていた。
進学したミヒャエルは徐々にクラスメートとの時間を
楽しむようになるが、なぜかハンナのことは隠し続け、
そのことが彼女への裏切りのように感じるのであった。
『戦争と平和』を読み終えると、次の本を選ぼうとはせず、
お風呂の方がいいと言って、ふたりは入浴し愛し合ったが、
ハンナはまるで溺れようとしているように感じられた。

それから彼女に送り出されて、同級生といつもの
プールでの午後を過ごしていると、遠くからこちらを
眺めているハンナの姿が見えた。
ハンナがプールに来たことは一度もなかったのに。

翌日、ハンナはアパートを引っ越し、会社も辞めていた。
彼女は姿を消してしまった。
ミヒャエルはあのとき、すぐにハンナのもとに
駆け寄らなかったことをひどく後悔する。

ハンナを失ってから、無意識のまま彼女を探し、
寝ているときも彼女の名前を呼んでいたらしいが、
少しずつ焦がれていた想いも遠のき、
やがてミヒャエルは法学部に進学した。

そして法廷でハンナと再会する。
かつて彼女は自分の意志で親衛隊に入り、
強制収容所で看守をしていたのである。

物語はミヒャエルの回想で進んでいく。
第二次世界大戦、ナチスドイツのホロコーストという
悲惨な過去を背景に、その時代に生きた
人間の哀しみと愛、父と息子、人と本の関係、
自責の念と罪悪感、憧憬や郷愁、苦悩が描かれる。

醜い真実が隠されていることで、壊れてしまう
素晴らしかった想い出。
結末が辛ければ、幸せな過程もすべて
不幸になるのだろうか。
守られることのなかった約束に支えられていた幸福 。
哀しみや辛い心も、真実と対峙することで
見えてくる景色。
ドイツ文学の最高峰、何か国もの言語に
翻訳された大ベストセラー。

朗読者 (新潮文庫)朗読者 (新潮文庫)
(2003/05/28)
ベルンハルト シュリンク

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ピンポン 第5集 松本大洋

ピンポン 第5集

「ヒーロー見参!」と3回唱えれば、ヒーローは帰ってくる。
スマイルはずっとずっと、待っていたのだ、ヒーローを。
「ピンチのときにはオイラを呼びな」
幼いころのペコの言葉を信じて唱える「ヒーロー見参!」

だからペコは立っているのもやっとなほどの膝の故障を
押し殺して、試合に臨む。

準決勝、スマイル対猫田(海王学園)戦は、準々決勝の
対真田(海王学園)戦同様、1セットも与えず、
圧倒的な強さでスマイルが勝利する。

同じく準決勝、海王学園の天才ドラゴン・風間竜一は
ペコとの壮絶な試合によって、強者を極めなければ
ならなかった孤独と苦痛、怯えから解放されていく。
ふたりは遮断された世界を楽しみ狂喜する。
ペコはつぶやく「愛してるぜ、ドラゴン」と。

そして決勝は……

天性の才能で加速し、卓球が好きで仕方ないペコ。
サイボーグと呼ばれるほど、次元が違う強さを
持っているにもかかわらず、寡黙に
ヒーローを待ち続けるスマイル。
彼らを育て見守り続けるオババと小泉コーチ。

鬼気迫る迫力、目を瞠るスピード感。
卓球を通して友情と成長を育む熱血青春コミック。
信じていたヒーローが復活し、ついに迎える最終話。

ピンポン (5) (Big spirits comics special)ピンポン (5) (Big spirits comics special)
(1997/08)
松本 大洋

商品詳細を見る

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

赤・黒(ルージュ・ノワール) 池袋ウエストゲートパーク外伝   石田衣良

赤・黒池袋ウエストゲートパーク外伝

8月の日曜日早朝、池袋のひかり町で、
売れない映像ディレクター・小峰渉は、
「10分間で1,000万円」と呟いていた。
3日前、村瀬勝也から池袋最大のカジノバー
「セブンライブス」の売上金強奪の話を持ちかけられ、
今まさにその大仕事が始まろうとしていたのである。

路地に入ってきた「セブンライブス」の雇われ店長が
ビデオ屋を通り過ぎたとき、村瀬と小峰に
バーコードハゲの中年男が前をふさぎ、
ナイキのトレーニングウエアを着たスキンヘッドの
若い男が、後頭部を軽く殴る。

中年男が店長の肩に向けてリヴォルヴァーの
引き金をひき、村瀬がアタッシュを手にする。
肩から血を流しながら、店長が「人が来るから
早く行け」と言うと、それぞれに散っていった。

小峰は4年前に仕事の関係で村瀬と知り合い、
その夜カジノバーに連れて行かれた。
そしてビギナーズラックを起こし、その後3年の
あいだにゆっくりと転落して、狂言強盗の
片棒を担ぐ羽目に陥ったのである。

要町のワンルームマンションに戻った小峰は、
DVDで映画を観たあとテレビニュースをはしごして、
上池袋にある村瀬の事務所に向かった。
先に事務所で待っていたスキンヘッドと村瀬の3人が、
バールでアタッシュをこじ開けると、1万円札の束が
溢れ出し、そこにバーコードハゲもやってきた。

村瀬が強奪金を紙袋に分け入れていると、
リヴォルヴァーを村瀬に向け「この金を私にください」と、
バーコードハゲが蚊の鳴くような声でささやく。
激怒した村瀬が事務机の引き出しから自動拳銃を
取り出したとき、「すみません」と謝りながら
バーコードハゲが引き金を絞る。

村瀬は左目に黒い穴を開けて、床に落ちた。
バーコードハゲはおどおどしながら、スキンヘッドに
140の札束を紙袋に入れさせ「村瀬さん、ごめんなさい」と
謝って出ていった。
いちかばちかの大仕事は最後に横から
さらわれてしまったのだ。

小峰が重い足を引きずり、マンションのドアに鍵を
差したとき、肩に手をかけられ「小峰渉さんだろ」と
重みのある声が轟いた。
振り向くと、悪趣味なヤクザファッションの男が3人、
小峰を取り巻き、そのままセルシオに乗せられて
氷高組のオフィスに連れ込まれた。

そこにはすでにスキンヘッドが横たわっていた。
小峰はうしろ手錠をかけられ、関東賛和会羽沢組
財務担当で、氷高クリエイティブの社長・氷高善美から
狂言強盗のことを詰問される。

すべてを話すと、手錠をはずされた小峰の前に
差し出されたのは、5.000万円の借用書だった。
「残りの一生、生かさず殺さず働かしてやる」という
氷高の言葉に、絶望のなかから怒りがこみ上げ、
「羽沢組のボンクラが……」と、小峰は自分でも
思ってもみなかった台詞が飛び出していた。

即座に地下室の隅に立っていた男たちのつま先と
こぶしが飛んできたのを歯を食いしばって
耐えた小峰は、氷高に交換条件を提示する。
「ぼくはそこらに立っているマヌケよりは使えるはずだ。
黒幕を探し出して金を回収するから、
借金をチャラにして、報酬1,000万円がほしい」と。

氷高は「1億や2億さらわれても、うちの屋台骨は
揺るぎもしないが、おまえの提案には久しぶりに
笑わせてもらった。ポケットマネーで1,000万円やろう」と
言って、裏拳で小峰の頬を打った。

銃声が響いているのに、誰も顔をのぞかせる者はなく、
風俗のチラシがふきだまる池袋という街で、見張り役に
つけられたサル(斉藤富士男)とともに、
小峰のバーコードハゲ探しが始まる。

大人気シリーズ『池袋ウエストゲートパーク』は、
ご存知の通り、生家の果物店を手伝いながらライターの
仕事もこなす、池袋のトラブルシューター・マコトが
主人公である。

本書はその外伝であり、主人公は屁理屈は立っても暴力には
からきし弱く、売れない映像ディレクター・小峰渉である。
朝1,000万円儲けそこね、その夜にはヤクザから5,000万円の
借金を背負うという、とんでもない運命の1日から始まる物語。
バカラの赤・黒の枠、人生は常に2分の一の賭けなのだ。

スクリーンが映し出されているような躍動感あふれる筆致で
描かれ、崖っぷちを歩かされているような危うさに
ヒヤヒヤしながらも、物語の行方で待つ確固たる安心感と、
センス抜群のユーモアに包まれるクライム・サスペンス。

赤(ルージュ)・黒(ノワール)―池袋ウエストゲートパーク外伝 (文春文庫 (い47-7))赤(ルージュ)・黒(ノワール)―池袋ウエストゲートパーク外伝 (文春文庫 (い47-7))
(2006/01)
石田 衣良

商品詳細を見る

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

幸せな経済自由人の60の習慣 本田 健

幸せな経済自由人の60の習慣

経済自由人とは、好きなことをして人生を
謳歌している人のことであり、彼らはビジネスを
所有していたり、配当収入があるため、
世界のどこにでも住むことができる。
ビジネスオーナーや投資家、アーティストに作家や
発明家などの職業が多く、ユニークな視点と
自由な感覚を持っている。

自分にも人生にも絶望し、そこから希望を見出して
幸せと自由を手に入れると語る著者が、なにをすれば、
どう生きれば、経済自由人になれるかが、
著者の経験とともに親切に解説されている。

目次
幸せな経済自由人の60の習慣(新書)新版まえがきによせて
プロローグ 幸せな経済自由人ってどんな人?
第1章 幸せな経済自由人はお金についてこう考える
第2章 幸せな経済自由人は仕事についてこう考える
第3章 幸せな経済自由人はクリエイティブに人生をとらえている
第4章 幸せな経済自由人は人間関係を大切にする
第5章 幸せな経済自由人はどうやって問題を乗り越えるのか
あとがき

本書にあるユニークな具体的実践例として
・嫌いなこと&好きなことリスト
・大切なことリスト
・ご馳走できそうな人のリスト
・ワクワクするイメージを描いた人生を楽しむアイデア帳
などの作成があげられている。

無理せず楽しみながら、ビジネスオーナーという意識で、
ビジョンを明確にし、機が熟す判断とリスクも視野にいれて、
ワクワクした未来に向かう。

「幸せ」と「経済的自由」は誰にでも実現可能で、
その方法を実際に見ることで身近なものに感じるのである。
大金持ちは人生のバランスを崩してしまいがちだから、
小金持ち的自由人を目指すのが賢く、自分の大好きなことを
仕事にして、経済的・時間的自由を手に入れ、
さらに家族や友人との時間に幸せと喜びを見出す。

感性を研ぎ澄まして辺りを観察し、
自分の周りに好きなものを増やす、
自身を楽しませる時間を持つなど、
何気ない日常のなかに、たくさんのヒントが
あることを知らされ、ページが進むにつれ、
ワクワクしている自分に気づく。

会社という大きな後ろ盾のない、ちっぽけな個人事業主の
わたしは、まだまだ経済的自由という身分には
ほど遠いけれど、本書に触れ、
10年後の未来を想像してみる。

今はいくつかの仕事を持ち、収入源の柱として
性に合わない仕事もしなければならないのが
現状ではあるが、10年後には、精神的にも社会的にも、
そして経済的にも自由になって、いちばん好きな仕事と、
友人や家族に囲まれる幸せな日々が、
現実に近い映像となって脳裡を埋めている。
未来への希望とともに、明日からの毎日が
楽しくなりそうな1書。

幸せな経済自由人の60の習慣幸せな経済自由人の60の習慣
(2012/11/01)
本田健

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学