10月の投稿書籍

ガダラの豚おいらん姐さん逆境に強い人小袖日記蟲師(むしし)
任侠病院禁断のレシピまほろ駅前多田便利軒じこまん1サウダージ
EVERNOTEスゴ技
日本の歴史 ① 新寂庵説法愛なくばイギリス英語学校
ブッダ ①

ブッダ ① 手塚治虫

ブッダ ①

今から3,500年ほど前、インダス河流域に
アリアン人と呼ばれる民族が住み着き、
厳しい自然環境と闘いながら、
彼らの文化を築いて南へ広めていった。
それがインド文化の始まりだった。

由緒正しいアリアン人はやがて指導者となり、
自分たちをバラモンと呼んだ。
その名は絶対権力の象徴であり、バラモンの下に
武士、平民、奴隷などの階級をつくったため、
インドの人々は長年その差別によって苦しむことになる。

またバラモンは神に仕え、生け贄を捧げ、まつりごとを
おこなったが、やがて堕落し、人々は幸せと安らぎを
求めて、新しい教えを与えてくれる人を
待ち望むようになった。

そのころ、動物たちが食料を調達して、
餓死寸前の僧ガシャラの前に現れる。
そしてウサギがみずから火に飛び込んで、
自分の身をガシャラに捧げたのである。

ガシャラはその信じられないできごとに強いショックを受け、
10日間寝込み、そのあいだに世界の大いなる因果の
摂理である悟りを開いたと、ガシャラの弟子であるアシタが、
自分の弟子たちに説く。

また、アシタはウサギが身を焼いた謎を理解できるのは、
神になるような人か、世界の大王になる人だと言い、
南の方角に強い力を感じるから、そちらへ向かいその方を
探しなさいとナラダッタに命じるのであった。

南へ進む途中トラに襲われるが、トラは噛みつきもせずに
立ち去ったことを、不思議に思いながら里に
到着したナラダッタが聞いた話では、不思議な力を
持っているのは、バラモンではなく、奴隷より
身分の低いバリアのタッタだという。

タッタは他人のものを盗んで生計を立てていた。
そしてタッタはトラや鳥やウサギなどケダモノの心に入り、
彼らの身体を借りたり、彼らの気持ちに
なることができるのだった。

奴隷であるヌードラのチャプラがタッタに反物を
盗まれたことがきっかけとなり、タッタとチャプラ、
それにチャプラの母とナラダッタは行動を
ともにするようになる。

そこへコーサラ国の軍勢がやってきた。
シャカ族とコーリヤ族が住んでいるカピラパストウ
という城を、ブダイ将軍率いるコーサラ軍が
攻め落とそうと進軍してきたのである。
ところがイナゴの大群が現れたため、カピラパストウ城は
救われ、それはマーヤ王女のお腹にいる赤ん坊が
不思議な力を持っているためと、シャカ族の
スッドーダナ王は予感していた。

一方チャプラは奴隷という身分を嘆き、その身分を
隠してえらくなろうと固く決意する。
そしてワニに襲われたブダイ将軍を助け、
将軍の息子となったのである。

身分の卑しさで苦しみ、戦さでは虐殺される奴隷たち。
人を人とみなさない身分制度。
不思議な力を持ち、ケダモノも仲間だと信じて、
すべての動物に平等に接するタッタ。
自然の神秘や脅威には、神をまつり、
仕えて祈ることしかできずに、ひでりや嵐、
疫病と飢えのなかで大勢が死んでいく
紀元前のインドの人々。
生と死を繰り返す輪廻から、
永遠に逃れることのできない運命。

そして人間が苦しまなければならない理由、
世界の存在、それらを解く偉大な人が
4か月後に産声をあげるのである。

過酷な時代、神と大自然、人間と動物、
人が作った身分制度。
さまざまなメッセージが、表情豊かで
感情のこもった絵で綴られる仏教物語コミック第1巻。

ブッダ 1ブッダ 1
(2014/04/25)
手塚治虫

商品詳細を見る


テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

イギリス英語学校のジーン先生が教える英語講座 JEAN GUEVARA 藤木雅治 翻訳

イギリス英語学校のジーン先生が教える英語講座

CONTENTS
「01. Going to」から
「89.Inversion used for emphasis」まで

「01.to bite off more than you can chew」から
から「74.to do someone good」まで

「01.to go out with someone」から
「71.to give something away」まで

「01.Every cloud has a silver lining」から
「16.Never say die」まで

「01.You can’t teach an old dog new tricks」から
「09.first come , first served」までの259の例文が、
文法 / Grammar、熟語 / Idiom、句動詞 / Phrasal Verb、
ことわざ、格言・言い習わし / Proverb・Saying に
分類されて収録された本書は、英文に対し、
英語と日本語両方の説明があり、とても理解しやすい。

英国という国の文化や考え方もうかがえ、
英語が苦手なわたしでも、易しい例文が
すんなり脳に馴染む。
コーヒーを片手にゆったり小説を
読んでいるような、気軽に楽しめる1書。

それは先月、河口湖へのスモールトリップでの
できごとだった。
我が家のご長老・パピヨン犬のルルといっしょに
高速道路の双葉サービスエリアで休憩していると、
キュートな外国人の男の子とお母さんらしき女性が
よって来てカメラをかざし、男の子がルルを
抱っこしているわたしの隣りに並んだ。

いっしょに写真を撮りたいということらしい。
もちろん喜んで笑顔を振りまく。
2〜3回シャッター音が鳴り、男の子は
「Thank you. What’s name?」と言う。
私は「ルル」とだけ答えた。

本当は「あなたは?」と聞き返したかったのに
「And you?」という簡単な英語が出てこなかった。
日本語にどっぷり浸かっている今のわたしには、
イングリッシュは宇宙人の言語という感覚のようである。

本書に触れ、これからは活字でも音声でも、
一日わずかな時間、英語とふれあおう!と決意する。


イギリス英語学校のジーン先生が教える英語講座 完全版イギリス英語学校のジーン先生が教える英語講座 完全版
(2013/02/04)
Jean Guevara

商品詳細を見る



テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

新寂庵説法 ーー愛なくば 瀬戸内 寂聴

新寂庵説法ー愛なくば

『第一話 渇愛』
26歳のとき、妻であり、4歳の子の母であった著者は、
手も握ったことのない男性に恋をした。
そして嘘をつくことができず、夫に打ち明け、3人による、
馬鹿純情で誠実かつ大真面目な話し合いが繰り返され、
2人はかえって恋心がつのり、著者である寂聴さんは、
夫と子を捨て家を出てしまったという。

今考えると、浅慮なことだと思うが、それが恋であり、
それは打算のない恋だったけれど、自分を落とし、
周りを傷つけてしまったと、昔日の悔恨を
かえりみる著者が、井上ひさし・好子夫妻の離婚に
端を発し、愛とは、恋とは、結婚とはなにかを説いていく。

自分に正直で素直、不器用で行動型の好子さんは、
著者自身に似ているので、彼女の心の動きが
分かる気がするという。

好子さんは本気の恋をし、それを隠すことができずに
告白して、みずからさらし者になったが、このことが
「妻と女のあいだ」という永遠のテーマを
熟考することになる。

長年夫婦をしていれば、性的な興味も胸のときめきも
なくなってしまうが、心の底ではそのときめきを
期待しているのが人間の性であり、どんなに
高齢になっても狂おしい恋をすることもある。

そしていくつになっても、人の心は16-17歳のままなのに、
肉体が衰えていくから不幸が起こる。
恋は必ずやがて冷め、
尊敬し愛しあった夫婦の愛でさえもろく儚い。
仏教では男女の性愛を渇愛といい、
最強の煩悩とあげられる。

瀬戸内寂聴さんによる人生の教えはさらに続く。
『第二話 愛のゆくえ』
『第三話 愛別離苦』
『第四話 不倫の告白』
『第五話 逆縁の苦しみ』
『第六話 心で聴く』
『第七話 孤独に耐える』
『第八話 愛のさめる時』
『第九話 若い友だち』
『第十話 性は生の終りまで』
『第十一話 美空ひばりさんへの手紙』
『第十二話 別れと金銭』
『第十三話 得度式』
『第十四話 生きるための健康』
『最終話 嫉妬について』

生きることに、愛することに迷って、孤独や嫉妬に
いたたまれなくなったり、辛かったり、
苦しくなったりしたときに読み返したい1書。

新寂庵説法―愛なくば新寂庵説法―愛なくば
(1988/03/15)
瀬戸内 寂聴

商品詳細を見る

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

日本の歴史 ① 日本のあけぼの 原始時代 監修/国学院大学名誉教授・文学博士 樋口清之 まんが/伊東章夫

日本の歴史 ① 日本のあけぼの 原始時代

1877年(明治10年)、東京都大田区山王1丁目付近で、
アメリカの動物学者モースにより、大森貝塚が発見される。
それは4,000年から3,000年くらい前の、
縄文時代後期のものだった。

その後、1946年(昭和21年)、相沢忠洋氏により、
群馬県笠縣村岩宿から石器が発見され、
縄文時代以前の無土器時代・旧石器時代が
あったことが判明する。

【もくじ】
1. 縄文時代の発見
2. 縄文時代の暮らし
3. 金属器といねが伝わる
4. 登呂の村見学
5. 弥生時代の暮らし
6. 村から国へ
7. 邪馬台国と卑弥呼

縄文時代の狩猟生活から、弥生時代で農耕生活へと
変わり、米づくりが村を作り、小さな国から大きな国に
発展して、やがて大和朝廷に組み込まれていく。

まんがで描かれるその時代の生活や人々の様子。
魂が動き出さないように、手足を縛って弔う土葬。
水葬・風葬・火葬。
石器・鉄器の種類や、土器・釣り針の作り方、
狩猟や漁の方法、米づくり、竪穴住居や高床倉庫、
巫女の雨乞い、はた織りに衣服など、イラストによる解説。

家族から大家族へ、族長から王(きみ)へ。
そして小さな国どおしの争いを鎮めるため、
占いに優れた巫女の卑弥呼が邪馬台国の
女王となり国を治める。

魏と邪馬台国の関係。
男の王では国が治まらず、卑弥呼の死後も
台与(とよ)という女王が君臨し、
九州説と近畿地方説がある謎の邪馬台国。

縄文時代から弥生時代、邪馬台国までの歴史が
詳細な説明と、ユーモラスなまんがで
分かりやすく綴られた
『日本の歴史』シリーズコミック第1巻。

中学・高校と、歴史が苦手だった。
さまざまな時代が好き勝手に交錯し、
頭のなかで時系列に並べることが困難に思えた。
あの頃、もし歴史の教科書がまんがだったら、
すんなり理解できるのにと、よく感じたものである。
学校で勉強する前に、現役を離れてから改めて、
ぜひ触れてほしい1冊。

日本の歴史1 日本のあけぼの 原始時代 (学研まんが日本の歴史)日本の歴史1 日本のあけぼの 原始時代 (学研まんが日本の歴史)
(2012/09/05)
伊東 章夫

商品詳細を見る


テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

EVERNOTE スゴ技BOOK 情報の収集や整理、検索のコツが満載! 田中拓也

EVERNOTE スゴ技BOOK

クラウドを利用したオンラインメモサービスである EVERNOTE は、
テキストのみならず、写真や音声、Office文書、PDFファイルなど、
さまざまなデータを貼り付けるメモ機能がある、強力な
クリエーティブツールである。

情報の最小単位であるノートと、ノートを複数集めた
手帳のようなノートブックが基本形で、
ノートは最大10万個まで作成でき、
ノートブックも自由に増やすことができる。

画像の文字も探せる検索機能やタグがあるため、
ノートが埋もれることなく、必要なときに
取り出すことができ、EVERNOTEを使うときは、
情報収集のみに集中できる。

【 CONTENTS 】
Over View
Part 1 アカウントの取得とクライアントのインストール
Part 2 iOS 版 EVERNOTE のキホン技
Part 3 Android 版 EVERNOTEのキホン技
Part 4 Web ブラウザー版 EVERNOTE のキホン技
Part 5 Windows 版 EVERNOTE のキホン技
Part 6 OS X 版 EVERNOTE のキホン技
Part 7 デジタル情報収集のスゴ技
Part 8 アナログ情報収集のスゴ技
Part 9 情報整理のスゴ技
Part 10 情報検索のスゴ技
Part 11 EVERNOTE をさらに活用するスゴ技

わたしも随分 EVERNOTE のお世話になっている。
家では Mac から、外出すれば iPad や
iPhone からアクセスする。
iPhone で本を開いて、重要な記述を iPadから
EVERNOTEにメモする。
あるいは、iPadで本を開いて、同じく Mac から
EVERNOTEにメモする。
ときには iPhone や iPad で撮った写真を
EVERNOTE に保存するなどなど。

けれど EVERNOTE の便利な機能を1/100も
知らないだろうと、不甲斐なく思っていた矢先、
Amazonの日替わりセールに登場した本書に、
悦び飛びついた。
さぁ、もっともっと EVERNOTE を活用できるよう、
本書のレクチャーを受けて研鑽に励もう!

Evernote スゴ技BOOKEvernote スゴ技BOOK
(2013/04/26)
田中 拓也

商品詳細を見る



テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

サウダージ 盛田隆二

サウダージ

日本人の父とインド人の母を持つ風間裕一は、
ボンベイで生まれてロサンゼルスで育ち、
13歳のとき日本にやってきた。

バークレイのサンドイッチハウスで働く放浪青年・風間博は、
図書館学専攻のインド人留学生ゼリアと出会い、
半年後ゼリアは妊娠する。
そのことが原因でゼリアは精神を病み、博は彼女を
ボンベイに帰したが、それからゼリアの両親は博を
拒絶し、彼女に会わせようとはしなかった。

博は帰国して日本で働きながら、ゼリアに手紙を書いた。
やがて裕一が生まれ、ふたりは結婚したが、ゼリアの父は
娘が日本に行くことは許さず、2年後、博がロサンゼルスで
就職して、念願の3人暮らしが始まったものの、
その生活は10年後に破綻する。
独立記念日から半年後、裕一の両親は離婚したのである。

日本に戻ってから、博は旅行代理店の開業準備で、
ほとんど家を不在にしていたため、裕一は
目黒にある祖父母の家で育った。

裕一が大学生のころ、博は誰とでも寝ることで有名な
モデルの衿子と出会い、そんな彼女の生き方に同情して
保護者になろうと結婚したが、今も衿子の性癖は
変わらなかった。

度重なる堕胎が原因で、衿子は子どもの産めない身体に
なったことも心のどこかに棲みついているのか、
博は半年前、新宿の路上でうずくまっていたフェーを
車に乗せ、ホテルに運んだ。
それから博はフェーのために部屋を借りて彼女と
過ごし、フェーは博の子どもを身ごもった。
マニラの貧しい家に生まれたフェーは、15歳で身体を
売るようになり、日本に連れてこられてキャバレーに
売り飛ばされたという。

フェーに妊娠を告げられた博は55歳、もう打ち止めかも
しれないと弱気になるが、そういうときには
いつものように若き日々に思いを馳せるのだった。

小学1年生のとき、母は若い愛人と家を出て、
衿子は父親とふたりになった。
父親は衿子をモデルにして自分の夢を託した。
18歳でパリに渡り、半年後に帰国した衿子はスターと
呼ばれる存在になったが、今、博を失いつつある現実に
嫉妬と孤独に苛まれる。

3年前、父の博と衿子が再婚したのを機に、裕一は
目黒の家を出て、それまで衿子が住んでいた
マンションを譲り受けた。
部屋の机に置かれた写真立てには、白いサリーを
まとった30年前の母がいる。

一人暮らしを始め、人材派遣会社に就職した裕一は、
毎日ブローカーにより送り込まれた、何十人もの
外国人と向き合う生活を送っていた。

4人のパキスタン人と同じ部屋で暮らしているシカンデルは、
小麦粉を練りながら、裕一に故郷であるパキスタンの
話を懐かしそうに口ずさむ。
18~9歳くらいにしか見えないシカンデルは、1か月ほど前に
裕一が面接して、大手商社の社員食堂に派遣され、
初めての給料日にラジカセを買ったと自慢しながら故郷の
話をし、チャパティと、マトン・ヨーグルト・トマトに
香辛料たっぷりのカレーを裕一に振る舞う。

フィリピンとスペインの血を引くミルナは20歳のとき、
メイドとしてマニラから香港に渡り、妻子持ちの主人の
子を身ごもったが、生まれたばかりの娘を母親に預け
香港から日本にやってきた。
そして歌舞伎町のフィリピンパブで、BARセシルの
オーナーである野口と出会い、宮野を紹介され結婚した。
母に預けていた子どもを呼び寄せ、宮野とのあいだに
できた子どもとともに託児所に入れて、ミルナは
BARセシルを切り盛りしている。

BARセシルの前で男たちに襲われそうになった、
ハワイから来たばかりの日系四世で資産家の美人娘
ルイーズ・アヤコ・マキノを助けた裕一は、ルイーズと
マンションで一夜を過ごすことになるが、
彼女の誘いに対して臆病な態度しかとれない。
外国人の派遣登録のみならず、日本人女性スタッフの
登録にも従事する裕一は、彼女たちから絡まれたり、
誘われることも多い。

スタッフ登録希望者が増え、面倒な仕事もしなければ
ならなくなった裕一が、筆記試験の採点をしていると、
電話が鳴った。
かけてきたのは、以前派遣に登録し、経理の仕事を
していた梶井多恵子だった。
多恵子は二女の流産が原因でアルコール依存症に
罹って精神病院に入院し、退院したときには夫は家を出て、
長女とふたりの生活になってしまった。
そして今朝、その中学2年生の娘も家出したという。

シカンデルからも電話があり、いっしょの部屋に
住んでいる仲間がズボンを万引きして捕まったが
どうしたらいいかとまくしたてる。

そんな折り、裕一はレストランのポリバケツを
あさっている少女を見かけた。
普通の中学生にしか見えないその少女は
「寝てあげるから、お金をくれない?」
と言ってしゃがみ込む。
梶井多恵子の娘と重なり、そのままにできずに
裕一はお腹が空いて動けないという少女を
おぶって、マンションに連れていった。
奇妙な同居が始まり、女性に臆病な裕一が、
その中学生・あずさに教えてもらう。
「あれは同じ相手と繰り返しやらないと
気持ちよくならない」と。

義理の息子・裕一に執着し、博と結婚しているのに、
遊びだと言って若い男と身体を重ねる衿子。

結婚して子どももいるのに、仕事を得るためなのか、
あるいは満たされない心から解放されたいためなのか、
若い男を誘う派遣の女たち。

毎日青山通りを走り、そして走りながら
美しい母ゼリアとボンベイを思い出す裕一。
規則正しい生活を送ることで、奥深くに
棲む想いをごまかす心。
血縁からは逃れられない宿命。

「サウダージ」とはポルトガル語で、失ったものを
懐かしむ感情で、故郷に思いを馳せる
哀しい言葉だと著者は言う。
さまざまな国の、さまざまな事情を持つ人々が、
それぞれにサウダージを抱えながら生きている。

学生時代に東京で暮らしていた以外、
生まれ育った街の住人であるわたしにとって、
望郷といった少し哀切な感情とは無縁だ。
ただ昔の自分が脳裡に映像となってよみがえったとき、
それは自分に酷似している別の自分のような、
不思議な感覚に陥る。

この世界が刹那に重なり合って、まるで断層のように
いくつもの時間の世界を作っているような、
そのときどきのわたしはわたしではないような……

幼いころ、思春期のころ、少し大人になったころの
自分が思い出となって映し出されたとき、自分ではないと
感じたとき、サウダージという感情がしっくりくる。
それが本書を拝読したわたしの、独断と偏見に満ちた
サウダージのイメージだった。

サウダージ (角川文庫)サウダージ (角川文庫)
(2013/07/17)
盛田 隆二

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

じこまん1 玉井雪雄

じこまん1のコピー

漫画を描くために、パソコン操作を繰り返す毎日に
飽きあきしていた玉井は、チーフアシスタントのK林から、
Y田が自転車で箱根越えをしたことを聞かされ、
じこまんへの道……自転車にハマっていく。

CONTENTS
其の1 四十の決断
其の2 房総快走(房総半島を半周)
其の3 ライディングハイ(霞ヶ浦サイクリングロード)
其の4 一生モノ
其の5 漕ぎ行きて……佐渡(佐渡ロングライド210)
其の6 仁義なき自転車道
其の7 ウェアあれやこれや
其の8 減量、是と非
其の9 坂に挑む(Mt. 富士ヒルクライム)
其の10 宿敵に挑む(Mt. 富士ヒルクライム)
其の11 身体制御
其の12 ツール観戦術(ツール・ド・フランス)
其の13 じことの闘い(前編)
其の14 じことの闘い(後編)
其の15 観るじこまん(JAPAN CUP)
其の16 ショップもよしあし
其の17 逃避自転車行(北関東東平地ルート)

ライディングハイ!走ってハイ!
人に残された最後の価値観……じこまん(自己満足)。
若いころは他人の評価のみでもよかったが、
40歳を迎えると、じこまんが生きる糧となる。

クロスバイクにロードバイク、マウンテンバイク。
ブロックタイヤにスリックタイヤ。
マウンテンバイク用のピンディングペダル。
ロードバイクの購入方法、構造、部品、ウェア、
サイクリングロード、ヒルクライムなどなど、
じこまんの究極のアイテム、自転車の魅力が満載。

じこまんのために自転車と付き合う、40歳の
漫画家・玉井雪緒が山盛りの多幸感を覚えながら、
風を切って走るロードバイクコミックス。

じこまん~自己漫~ 1 (ニチブンコミックス)じこまん~自己漫~ 1 (ニチブンコミックス)
(2012/11/17)
玉井 雪雄

商品詳細を見る

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん

まほろ駅前多田便利軒のコピー

『◯ 曽根田のばあちゃん、予言する』
便利屋の多田啓介は曽根田正敏からの依頼で、
息子の代理として、正敏の母のお見舞いに来ていた。
多田が持参したカステラを切って紙皿に乗せ、
お茶とともに差し出すと、曽根田のばあちゃんは
お茶にカステラを浸しながら多田に言う。
「来年は自分のことで忙しくなるよ」と。

看護師がやってきて、多田は「母さん、よいお年を」と
別れの挨拶をすると、ばあちゃんは
「うん」と小声で答えてうつむいていた。
携帯電話で曽根田正敏に業務完了の報告をして、
複雑な感情を抱えつつ、多田はまほろ駅前にある
事務所に戻っていった。

『一 多田便利軒、繁盛中』
大晦日から1月4日まで犬を預かる依頼が舞い込んだ。
「家族で主人の実家に帰省することになった」と言って、
佐藤と名乗る女性が連れてきたのはチワワだった。
夫のことを「主人」と称する女も、小型犬も苦手なのに、
チワワを見て、「かわいいワンちゃんですね」と、
多田は快諾してしまったのである。

あまりの小ささと、常に震えていることに不安を抱えながら、
大晦日・元日をチワワと過ごした多田が、2日の夕方
インスタントラーメンを茹でていると電話が鳴り、
山城町の岡から、バスの運行を監視してほしいと依頼される。

翌早朝、多田はチワワをキャリーに乗せ、
軽トラで山城町に向かった。
岡の話では、間引き運転をしているらしいバスの運行を、
岡邸の庭掃除をしながら監視してほしいということだった。

朝5時50分の始発から、夜8時30分の終バスまで、
掃除とチワワの糞の始末に励みながら、監視を終えて
軽トラに乗り込もうとしたとき、放し飼いにしていた
チワワの姿が見えないことに気づき、慌てて庭じゅうを
探しまわるが見当たらず、街道に出た。
するとチワワを抱いた男が、バス停のベンチに座っていた。
それは、都立まほろ高校時代の同級生、
行天春彦(ぎょうてんはるひこ)だった。

行天は容姿端麗で成績優秀だったが、言葉を
発しなかったため、校内では変人として有名だった。
工芸の時間に裁断機を使っていた仰天に、
ふざけた男子生徒数人が飛び込み、
仰天の右手小指が切断されてしまったときの
「痛い」という言葉が、高校3年間で発した
唯一の声だったのである。

仰天が床に落ちた小指を淡々と拾う姿が、
多田の脳裡に浮かぶ。
すぐに救急車で病院に運ばれ、小指は元通りくっついたが、
今も根元には白い傷跡がくっきり浮かんでいた。

多田は仰天を軽トラでまほろ駅まで送ることにしたが、
高校時代沈黙を貫いた仰天は、人が変わったように
饒舌になり、好き勝手にしゃべり続けたあげく、
多田に「今晩泊めてほしい」と言う。

そして一晩だけ泊めることにして、翌朝、アルコールが
そのまま胃に残っているような状態で目を覚ました多田は、
チワワを返す日だったことを思い出し、慌てて仰天を
起こして「悪いけど帰ってくれ」と言うが、聞いているのか
いないのか、逆に「いっしょに行く」という仰天の言葉に
唖然としながら、結局いっしょに佐藤家に向かった。

契約書に書かれた住所を頼りに佐藤家に着いたが、
一家はまだ帰宅していないようだったので、
ふたりは家の前の公園で待ちながら、
ぼそぼそと話し出す。
多田は大学を卒業して社会人となり結婚もしたが、
その相手がひどく料理が下手だった。
そして離婚した。

仰天も離婚して、3歳ぐらいの女の子もいるが
会ったこともなく、年末に会社を辞めて、
離婚した奥さんに貯めたお金を全部送り、アパートを
引き払って実家に戻ったものの、知らない人がいて
そこには居られず、そして多田と偶然再会したという。

ふたりは高校卒業後のお互いの人生を語りながら、
佐藤一家を待っていたが、彼らがなかなか現れないので、
家の横手をまわって出窓から中を覗いてみた。
すると家具がほとんど残っていなかったのである。

隣家に訊いてみると、借金取りが頻繁に来て、
佐藤家は挨拶もなく大晦日に夜逃げしたらしい。
あの日、佐藤夫人は犬を飼えなくなったとは言えず、
チワワはどうぞご自由にという思いで多田に
委ねたのだろう。

「こんなちっちゃい犬、絞め殺してゴミに出しても
分からないよ」という行天の言葉に触発され、多田は
佐藤家の引越し先を突き止めることを決めたのである。

家の前の公園で遊んでいた小学生たちに話しかけ、
佐藤家にはマリという女の子がいたことを教えてもらい、
彼女と仲の良い宇津井シノブから、マリの住所を
聞き出した多田と行天はチワワとともに
小田原に向かった。

機転の利いた仰天の発想と行動で、マリを外に
連れ出すことに成功し、そこで多田はマリに
チワワをどうしたいか訊いてみると、
家の経済状況を察しているのだろう、マリはチワワと
いっしょにいたい気持ちを押し殺し、
「ハナ(チワワ)を飼ってくれる人を探して」と言う。

チワワをマリに返すことを諦め、
2人と1匹はまほろ市へ向かった。
彼らの帰るところはそこしかなかったのだ。

子どもたちの警戒心を解いてしまう天性の才能を持ち、
誰からも幼児か動物と同等と思われている仰天。
要領よく人生を送れると思っていたのに、
自分のなかに芽生えた疑念に負けた過去を持ち、
要領の悪い人生を送っている多田。

まほろ駅前で便利屋を営む多田と、
突然やってきた謎だらけの仰天、
飼い主募集中のチワワとの共同生活が始まる。

『二 仰天には、謎がある』
『三 働く者は、満身創痍』
『四 走れ、便利屋』
『四・五 曽根田のばあちゃん、再び予言する』
『五 事実は、ひとつ』
『六 あのバス停で、また会おう』

失ったものは元通りにはならなくても、
修復することはできる。
生きていれば必ずチャンスはあるのだ。
そんな希望と温もりを感じることのできる便利屋物語。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
(2009/01/09)
三浦 しをん

商品詳細を見る

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

禁断のレシピ 多賀正子 枝元なほみ

禁断のレシピ

エダモン(枝元なほみ)
1.炭水化物LOVE!
2.深夜のエンドレス
3.油使いはケチらない

Mako(多賀正子)
1.肉LOVE!
2.大きいことはいいことだ!
3.食後のデザートはマスト

著者ふたりによる食の自己紹介のベージをめくれば、
「お〜!」と、ただ唸って嘆息することしか
できないような写真に、目は釘付け。
それはフルボリュームカツサンド(1,130kcal)と、
ロコモコプレート(1,310kcal)だった。
その写真のなかに、いますぐ入ってかぶりつきたいと
思ってしまう絶品グルメ画のど迫力!

ボリュームもカロリーもダイナミックなお料理の写真を
めくれば、カロリーなんて気にしない、油たっぷり、
お肉ぶ厚く、ソースドボドボと、ふたりによる禁断の
イケナイレシピ談義が、気持ち良いほどバッサリ語られる。

食材や調味料なども、写真とキャプションによって、
使い方や特徴などが解説されているのが、とても嬉しい。
ことに「とうがらしマニア」という行を目にしたときには、
異常激辛好きであるわたしの琴線に触れっぱなし。

本物の肉食、食欲に導かれて生きているという
多賀正子さんの、お肉料理の写真がずら〜っと
並んだ「Makoのワイルド ⁈ 肉食日記」は、
見ているだけでお腹が膨れそう。
バリエーション豊かな「エダモンの満腹エンドレス日記」は、
奇抜で想像力豊かな発想に感嘆とためいきが漏れる。

再びページをめくると、でっかティラミス(3,060kcal)と
丸ごとバナナのリングシュー(4,180kcal)にも圧倒され、
そして続くスイーツにお肉料理、中華やお弁当、
地中海料理、和食に韓国料理などが
ぎっしり詰め込まれている。

「食欲は生きる力だ!」
「トコトコンおいしいことだけを追求して、
力いっぱい腕をふるう」と語る著者ふたり。
がんじがらめに制限される今の世で、たまには自分を
甘やかしても、好きなことを好きなだけ楽しんでも
いいんじゃない!と思わせてくれる、
目にも心にも舌にも優しく鮮やかなレシピ本。

実は、本書はAmazonの日替わりセールにより
99円で購入。
それがあまりの充実した内容に、そんな安価で
いいのだろうかと戸惑ってしまった。
レシピの参考のみならず、読ませる、笑わせる、
魅せる、料理意欲を湧かせる、バラエティに
富んだ優れた1書。

禁断のレシピ禁断のレシピ
(2014/06/14)
枝元 なほみ、多賀 正子 他

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

任侠病院 今野 敏

任侠病院

若いころひどくグレていた日村誠司(ひむらせいじ)は、
阿岐本雄蔵(あきもとゆうぞう)組長に拾われ、ようやく
自分の居場所を見つけることができたと感じていた。

阿岐本組は、ごつい体つきをした三橋健一(みつはしけんいち)、
優男で女ったらしの才能を持つ志村真吉(しむらしんきち)、
元暴走族の二之宮稔(にのみやみのる)、テツと呼ばれている
坊主刈りで、ハッカーとして摘発された経験のある
市村徹(いちむらとおる)に、組長と日村の矮小所帯だった。

組のシマには商店街があり、その商店のツケの取り立てや、
揉め事の収拾、街なかの草刈りなどの雑事を請け負うことで、
住民から信頼を得てきた。
地元を大切にしないと、組の存続はないからである。

ところが最近はマンションやアパートが建ち、
日村たちを冷ややかに見る新しい住人が増えてきた。
暴対法も施行され、世間の風はヤクザに厳しい。

日村が商店街で雑事を頼まれて戻ると、事務所の前に
黒塗りの高級車が駐まっていた。
阿岐本の五厘下がりの兄弟分であるオジキの
永神(ながかみ)が、潰れかけた病院を処分しようと
相談にやってきたのである。
ところが阿岐本は、病院は社会性が大きいから潰さずに
経営に乗り出すという。

日村は泣きたくなった。
今までに同じようなことが2度あった。
出版社と私立高校の再建だったが、
どちらもたいへんな苦労を強いられたのである。
今回の1件は、阿岐本と日村が世田谷にある
駒繋(こまつなぎ)病院の理事になって、
経営を立て直すということらしい。

ついさっきやってきたマル暴の甘糟(あまかす)部長刑事に、
暴力団追放の強化月間だから、おとなしくしてくれと、
釘を刺されたばかりなので、日村ひとりの見送りで、
永神は黒塗りのセダンに乗り込み、帰っていった。

オヤジ(阿岐本組長)の意見は絶対である。
日村のささやかな抵抗も虚しく、結局病院再建を
請け負うことになり、阿岐本と日村を乗せて、
稔の運転するシーマは、駒繋(こまつなぎ)病院に向かう。

その古い建物は、くすんだ灰色の壁に曇った窓ガラスと、
玄関ドアのガラスもくすんでいた。
院内に入り、受付でもナースステーションでも
怪訝な顔をされることを訝りながら、
阿岐本と日村は院長室をノックする。

院長は名刺を差し出して高島一と名乗のり、3人が
初対面の挨拶をしてから、阿岐本が経営再建の話をしても、
高島院長はどこか煮え切らない様子である。
そして院長から病院の内情を聞いていくなかで、業務を
一括して委託しているシノ・メディカル・エージェンシー
という業者に、何か引っかかるものを感じながら、
明日臨時理事会を開くことで、話は落ち着いた。

実はシノ・メディカル・エージェンシーの
バックにいるのは同業者だった。
もともと三軒茶屋に縄張りを持っていた耶麻島(やましま)組が
西の三次団体に吸収され、シノ・メディカル・エージェンシーを
使って、多額のマージンを搾取していたのである。
駒繋病院の経営不振も、それが原因だろうと思われた。

同業者が絡んでいるということは、無闇にくびを
突っ込んだりすれば、西と戦争になりかねないと
懸念する日村とは相反し、阿岐本は意に介さず
出たとこ勝負だと、暢気に言う。
そして翌日テツと稔を連れて、阿岐本と日村は
駒繋病院へ向かった。

旧理事会、新理事会が済むと、テツと稔は外壁の掃除を始め、
阿岐本と日村は高島院長から医師不足の深刻な現状を聞き、
事態は複雑で根が深いことを痛感する。
日村はこれで組長が駒繋病院から手を引いてくれればと、
儚い望みを声に出さずに願うのである。

そしてヤクザが舵を取り病院改革が始まるが、
案の定動き出してきたシノ・メディカル・エージェンシーの
妨害工作に、阿岐本たちは……

追放運動とシノ・メディカル・エージェンシーに
耶麻島組の関係とは……

鋭い勘と洞察力、多くの修羅場をくぐり、
何に対しても動じない、肝のすわった阿岐本組長。
阿岐本の言うとおりにしていれば間違いないと、
全面的に信頼を寄せながら、阿岐本の言葉に
いちいち心のなかで突っ込む日村。

どんな女性にも好意を持ち、その魅力を引き出す
天賦の才がある真吉。
ごつい身体に似合わず、料理の得意な健一。
組長から素人衆に迷惑をかけるなと言われ、
滅多に飲み屋にも行かず、道も端を歩き、
ことが起きれば、地域の人たちのために
体を張っている阿岐本組の面々。

古い住人たちに慕われ、町と阿岐本組は
いい関係を保ってきたが、世代交代が進むとともに、
新しい住人もやってきて、地域と阿岐本組の関係も
崩壊しつつある昨今。

命の尊厳に関わる聖職というプライドを持ち、
きつい責務を果たす駒繋病院のスタッフたち。

どの巨大暴力団の傘下にも属していない総勢6人の
矮小ヤクザ阿岐本組と、医療従事者として、人間としての
強い意志を持った駒繋病院の職員たちが誇りを守るため、
正義を貫くため、悪意あるトラブルと闘っていく。

医師不足に看護師不足、医療関係者の過酷な労働と
病院経営のあり方などの問題を盛り込んだ、
一所懸命生きている人には精一杯力を尽くし、
頼られたらきっちりそれに応える義理と人情が描かれた、
痛快極道メサイア物語。
任侠病院 (ジョイ・ノベルス)任侠病院 (ジョイ・ノベルス)
(2013/09/12)
今野 敏

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

蟲師(むしし)1 漆原友紀

蟲師(むしし)1

『緑の座』
ヒトはいつしか、下等で奇怪な異形の一群を
「蟲」(むし)と呼ぶようになった。

人里離れた山奥に住む五百蔵(いおろい)しんらには、
幼いころから左手でものの形を象(かたど)ると、
それが生命を宿すという不思議な力があった。
けれど、ヒトが新しい生物を生み出していいはずがないと、
しんらは祖母に左手でものを描くことを
禁じられてしまう。

調査依頼に山奥を訪れた蟲師のギンコは、しんらに
調査を断られたものの、今夜は泊まってほしいと請われ、
ふたりは夕餉に果実酒を酌み交わす。

そして幼少時、ひとりになると、いろいろなモノが現れ、
それらを写生して祖母に見せたのだが、
「こんな幻(ゆめ)は忘れておしまい」と
祖母は言うのだと、しんらは淋しそうに話す。

「蟲」あるいは「みどりもの」と呼ばれる生命の
原生体(そのもの)に近いモノたちは、形や存在が
あいまいで、おばあさんにはそれらが見えなかったのだと、
ギンコは言う。

実はしんらが死んだと思っていた祖母の廉子は、
ヒトと蟲のあいだのモノとして、しんらを見守っていた。
蟲の宴で手渡された盃の酒を飲み干すと、ヒトは
蟲の住人になるが、宴が途中で中断されて廉子は
「半分」になってしまったのである。
しんらの力を使えば、廉子を完全に蟲にすることが
できると、ギンコは言う。
しんらは祖母に会いたいがため、宴で廉子が持っていた、
見たことのない盃を左手で描くことに……

しんらの元を去る蟲師ギンコの、異形・蟲の旅は
『柔らかい角』『枕小路』『瞼の光』『旅をする沼』
へと続いていく。

ノスタルジックな原風景にかこまれ、静かな恐怖とともに、
どこか懐かしさも感じられるコミックシリーズ第1巻。

蟲師 愛蔵版(1) (KCデラックス アフタヌーン)蟲師 愛蔵版(1) (KCデラックス アフタヌーン)
(2013/11/21)
漆原 友紀

商品詳細を見る

テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

小袖日記 柴田よしき

小袖日記

会社の上司と不倫して、その結果捨てられた。
信じていたわけではない。
男の妻よりはマシだと思っていた驕りと自信過剰。

彼の妻は意地悪な先輩だった。
だから復讐心と優越感を満たすため、
美形の上司と付き合いだした。
でも、別れを切り出すのは自分からだと
思っていたのに……

「女房が妊娠して、不倫は子に申し訳ないから」と、
彼から別れを告げられた。
笑顔で「おめでとう」と強がって、喫茶店を出たが、
あの男に惚れていたことを思い知り、死のうと思った。

自殺の方法を考えながら、夜道を歩いていたら、
いつの間にか公園にいた。
真夜中で人の姿はない。

幼い頃、両親が離婚して、母と弟の3人暮らしになり、
姉弟はアンパンマンのビデオで育ったが、
私は今でもジャムおじさんを尊敬している。
そんなことを考えていたら、自殺するのが
バカらしく思えてきた。
そのとき、頭上で何かが鳴り、全身が大きく震えた。
そして暗闇に落ちていった。

奇妙な抑揚のある外国語のような言葉で
「小袖、しっかりしてちょうだい」というような
意味の声が響いて、目が覚めた。
「小袖、生き返ったのですね」
声が続き、歓声とともに念仏が唱えられはじめた。

目を開け、周りを見て、悲鳴をあげた。
おかめ、おかめの大群が……

かなり個性的な匂い。
簾のようなものが垂れさがった薄暗い部屋。
布を重ねた布団。
下膨れに青白い肌。
一重まぶたに楕円形の眉毛。
水に映すと、自分の顔もおかめだった。

雷に打たれ、どうやら平安時代にタイムスリップして、
小袖という女性と入れ替わってしまったしたらしい。

少し落ち着きを取り戻し、この状況を整理してみる。
たんにタイムスリップしたわけではなく、
別宇宙に来てしまったらしいことに気づく。

高校の文芸部時代に読んだ、節操がなく色魔で
ロリコンの光源氏が出てくる源氏物語は嫌いだが、
その源氏物語が書かれた時代で、
私は小袖という女の肉体に入っている。
本来の平安時代とは微妙にずれている世界。
つまり史実に小袖という人物が
存在していたかは怪しい。

源氏物語は紫式部作と言われているが、
紫式部はペンネームで語り手と書き手で構成され、
語り手は宮中の女房らしい女が中心で、
書き手はひとり。
この世界で、その書き手は、宮中で
香子(こうし)さまと呼ばれている女性。

千年も昔にタイムスリップして混乱していたが、
1か月も経ったころには、この世界に順応して、
それまで持っていた概念とはかなり違う平安という時代に
戸惑いながら、宮中の噂やネタを小袖として収集し、
香子さまに提供して『源氏物語』執筆の
手伝いをしていくが……

私は果たして元の、今という時代に
戻れるのだろうか……
聡明で優しい香子さまに出逢い、たくさんの女たちとの
宮中での体験のなかで、生と死、恋愛というものを
見つめ直す。

現代と平安時代が融合して身近に感じられる『源氏物語』が、
小袖のツッコミによりユーモラスたっぷりの筆致で
描かれたSFエンターテイメント。

小袖日記 (文春文庫)小袖日記 (文春文庫)
(2010/07/09)
柴田 よしき

商品詳細を見る

テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

逆境に強い人ーー折れない心のつくり方 加藤諦三

逆境に強い人

第一章 危機を元気に乗り切った経営者たちの
「三つの共通点」

『変化を楽しめる人は危機に強い』
スーザン・コバサ教授の調査により、会社の危機を
元気に乗り越えられる経営者には、共通点が
あることが分かった。
困難に対して、やりがいのある仕事と感じ、
変化で自分自身を高揚させ、楽しんでいる。
さらに変化するエネルギーを持っている。

『「惨め依存症」と「うつ病」の人が抱く変化への不安』
逆境に強い経営者の対局にいるのが、
惨め依存症とうつ病者である。
それは双方とも、変化に不安を覚えてしまうためである。

『「幸福な人」「不幸な人」の違いとは?』
幸福な人は不幸を知っているから、幸福になろうと
変化させることができるが、不幸な人は変化を
怖れて現状に留まってしまう。

『身近な存在との深いつながりに価値がある』
日本よりはるかに家族を大切にするアメリカでは
離婚も多い。
それは不幸を脱して、幸せな今の家族を
大切にしているからである。

『アメリカの家族観と「変化」に対する価値観』
家族が重要であり、家族の価値を重んじるアメリカでは、
離婚率も多く、職もよく変えると言われるが、
それは満足できない現状を変えることを厭わない
アメリカ人の国民性に由来している。

『現状に不満を言うだけの人、変える努力のできる人』
変えられるなら変える。変えられないのであれば耐える。
危機を元気に乗り切った経営者は、自らの判断で決断し、
「自分がコントロールしている」という感覚を持っている。

そして
第二章 逆境に強い人のメンタリティとは
第三章 逆境は「不幸」か?ーーあなたの “ 解釈 ” で
世界は変わる
と続いていく。

あとがきに書かれている
《「この逆境を乗り越えれば、その向こうに素晴らしいことが
ある」と夢を捨てなかった人が、チャンスをつかみます。
逆境とは、一つの文化です》に、経営の神さまと言われる
松下幸之助氏の「不況もまたよし」の名言を思い出す。
不況下での努力や創意工夫を考える機会になるから、
不況も良いのだという。

世に起こる事象事態に性格があるわけではなく、
幸か不幸か決めるのは個人それぞれなのだ。
本書を参考に、逆境や不幸な状況でも、そのことを
楽しめるような、大きく、味のある人間でありたい……
そう、成長したい……なれたらいいなぁ……

加藤諦三講演集 逆境に強い人―折れない心のつくり方加藤諦三講演集 逆境に強い人―折れない心のつくり方
(2014/02/19)
加藤 諦三

商品詳細を見る




テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

おいらん姐さん 1 鈴木あつむ

おいらん姐さん 1

吉原の新嬉楼(しんきろう)に、なみじという名の、
花魁(おいらん)の雑用係兼遊女の卵である
禿(かむろ)がいた。

余談ではあるが、花魁という名は禿が「オイラん姐さん」と
呼んだことが由来らしい。

なみじのオイラん姐さんである橋立(はしだて)花魁は、
人気高い美女であったが、地獄大夫と呼ばれていた。
なみじが琴の習いをさぼると、キセルで
お仕置きをしたり、客にもろうそくの火を垂らしたり、
鬼のようにキツいからである。

しかし、その根底にあるのは、なみじが将来岡場所で
働かなくても、琴の師匠になって自立できるよう
躾けてくれていたのだった。

遊女たちは妊娠に人一倍神経を遣ってはいたが、
しくじることもあり、その場合、堕胎専門の
女医に施術される。
楼主が金を出し渋るときは、遊女みずから
処理して失敗し、死することも多かった。

それでも出産にいたる遊女もいて、生まれた子は
箕輪の農家に里子に出されるのである。
なみじもそのひとりだった。

そして橋立花魁は8年前に子を産んでいたのである。

目次
第1話 よく咲く桜
第2話 オッカア
第3話 おととい〜前編〜
第4話 おととい〜後編〜
第5話 火傷と金魚
第6話 ザマミロな晩
第7話 浅葱裏〜前編〜
第8話 浅葱裏〜後編〜
第9話 役者・川村喜三郎
第10話 箸袋の名前〜前編〜
第11話 箸袋の名前〜後編〜

例えることの困難な快楽の悦びを、かわいいイラストで
表現する想像力豊かな描写。

観察力に優れ、恵まれているとはいえない境遇で
ありながら、橋立花魁を慕うコケティッシュななみじ。
見惚れてしまうほどの美しい顔で、天狗の鼻を
へし折るのが大好きという、強者に屈せず、
鋼の意志を持つ凛々しい橋立花魁。

江戸時代の遊郭を舞台に、もの悲しくも、
爽快で痛快な吉原遊女ものがたりコミック第1巻。

おいらん姐さん1おいらん姐さん1
(2014/01/20)
鈴木 あつむ

商品詳細を見る


テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

ガダラの豚 1 中島らも

ガダラの豚 1

マタイによる福音書の引用から始まるプロローグ。
ジョークの好きな隆心(りゅうしん)老師は、過酷な十万枚護摩焼供
という荒行に挑むが、7日目、炎のなかに虚空のごとく
暗い顔を見て力尽きる。

大生部(おおうべ)多一郎教授と助手の道満(どうまん)光彦は、
スタッフに導かれてテレビ局の控え室に入り、
番組の出演を待っていた。
大生部はブリーフケースから、ホワイトホースの
ハーフボトルを取り出し、栓をあけてラッパ飲みする。
8年前、東アフリカで不可解な事故により
娘の志織(しおり)を喪ってから、四六時中
アルコールを手放せなくなってしまったのである。

民族学の分野、アフリカにおける呪術医研究の権威である
大生部が、東アフリカの辺境で現地人と寝食をともにして
収集したデータは、彼の理論を科学的に
立証する衝撃的なものだった。
学界の反応は冷たかったが、マスコミは過剰反応と
いえるような対応で、単行本を出し、ワイドショーにも
出演するようになった。
骨の髄まで学者である大生部だったが、虚名を売って
アフリカへの調査費を捻出するため、テレビ番組に出演している。

出演者は、司会がタレントの小柳風太、アシスタントは
アイドルから毒舌女に転身した石野ふるみ。
超能力青年・スプーン曲げの清川慎二と、手品師で超能力狩りの
ミスターミラクル、行によって法力を得たという
呪禁道(じゅごんどう)の呪術を持つ荒井統嶽。
プロデューサーはとんでもなくでかい男の馬飼(まがい)。
ディレクターは痩せぎすの水野である。

番組はミスター・ミラクルと清川のバトルから、超常現象の
種明かしへと進んだあと、心霊手術のドキュメントフィルムなどを
流して終了となったが、大生部はミラクルに
憎からぬ感情を抱いていた。

大生部が帰宅すると、中学2年の息子・納が
冷蔵庫を覗き込んでいた。
妻・逸美の姿が見えないので訊いてみると、
近所の間辺さんたちと5泊の旅行に行ったという。

愛らしい顔立ちの逸美は志織の事故以来、秋山ルイという
心理学者のサイコセラピストにかかっているが、精神的症状は
悪化を抑える程度で、放心状態やヒステリーを
起こすことがしばしばあった。

8年前、大生部についていった東アフリカで、ガイドのオボテが
持ってきたバルーンの話に、アフリカ生活が飽きてきた志織は
強く興味を示した。
逸美は奇妙な不安にかられ、中止を申し出たが、7歳の志織は
頑として聞き入れず、結局気球操縦士のヘムリとオボテ、
それに志織が気球に乗ることになった。
しかし途中から気球は尋常でない高さまで昇っていき、
空の彼方に消えてしまったのである。

気球は3日後に発見されたが、ヘムリは顔面と内臓を動物に
食い荒らされた状態で死んでいた。
オボテは左腕だけが残っていた。
志織は死骸すらなかったのである。

志織を喪った喪失感から抜け出せない逸美は、
間辺に誘われて新興宗教「聖気の会」の
「ご縁の日」に参加したのである。

教祖である心玉尊師は煮え湯に腕を差し込んだり、
真っ赤に灼けた鉄棒を素手でしごいたり、刃を上向けた
2本の日本刀の上を歩いたり、床上40cmあたりを浮いたり、
灼けた松の炭を渡ったりして、これらの奇跡は
大宇宙の聖気と同調することであり、すべての問題が
解決できる証明で、幸運に導くことがなすべきことであると言う。

逸美は非日常的な行為で注意力が散漫になり、そこへ説法が
流れ込んできて、だんだん信じたいと思うようになっていった。
ただ自分の業苦から救われたいという願いから。
そして入信し、4泊5日で125,000円の合宿研修を申し込んだ。

研修から帰った逸美は洗脳されたような言動をとるようになり、
毎日聖気の会に通い詰めるようになった。
家のこともうわの空で、林間学校の費用も出してくれてないと
納に言われた大生部が、現金を銀行からおろそうと通帳の
入っている戸棚を開けると、逸美名義の通帳が解約されていた。
金額は400万円。

その夜は修羅場となった。
翌日、逸美に投げられたグラスで負った傷に派手な絆創膏を
貼り、大生部はミスター・ミラクルを訪れた。

そしてミスター・ミラクルと大生部、助手の道満が、
逸美を新興宗教から救い出すため、聖気の会の
トリックを暴くべく奔走する。

濃い眉毛に小さな目、ワシ鼻とすぼまった口から、
陰で「肛門」と呼ばれ、素っ頓狂な持ち味が人気の
大生部教授。
洞察力が鋭く、少林寺拳法をたしなみ、
大生部教授を慕う道満光彦。
母親似の美形、母を守るためヤクザにも怯まない
勇気ある中学生の納。
プロマジシャンで、エセ・サイキッカーたちを憎悪し、
インチキ超常現象を暴くミスター・ミラクル。
彫りの深い顔とバツグンのプロポーションで、
お色気たっぷりに純情な道満をからかう、
サイコセラピストの秋山ルイ。
身長190cm、空手ダコのあるこぶしに、
ヤクザのような風貌のプロデューサー馬飼。
信者の名前すら間違える、エセ教祖沢井心玉尊師。
殺人を犯したこともある、元ボクサーで
ヤクザあがりの福田導心。

怪しげで魅力あふれる登場人物。
聖書に法話、新興宗教。
超常現象にマジック。
アル中にうつ病と、現代社会の闇がテーマにされたなかで、
キラリとユーモアが光るエンターテイメント。

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)
(1996/05)
中島 らも

商品詳細を見る


テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

カウンタ
Kindle 電子書籍の購入
電子書籍リーダー
honto 電子書籍の購入
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
09 | 2014/10 | 11
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
最新トラックバック
検索フォーム
カテゴリ
リンク
おすすめ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示
プロフィール

Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。