9月の投稿書籍

薬指の標本お手軽ツボマッサージ グレイヴディッガーK・N の悲劇パイロットフィッシュ
プラナリアブラックジャック地 図 男ピンポン4古 事 記
孤独のとなり竜馬がゆく風精の棲む場所アドルフに告ぐ通 天 閣

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通天閣 西 加奈子

通天閣

各章は幻想的なシーンで始まり、
ふたりの主人公によって語られていく。

“ 俺 ”
目覚めたのは、朝なのか夕方なのか、
時計は5時を指していた。
出窓には、日本中から集めた、動かない時計が
いくつも並んでいる。
牛丼の空容器や発泡酒の缶などが
散乱しているフローリング。
写真集や小説が突っ込んであるカラーボックス。

出窓の外は暗くなってきたから、夕方の5時だろう。
つまり15時間も眠っていたのである。
4年前にエアコンが壊れたまま、暖房のない部屋で、
米軍のMA1を着て過ごしてきた。
ユニクロで買った3,900円の上着が外出着である。

空腹感を覚え、ユニクロの上着を着て、マンションを出た。
右折すると、「日立プラズマテレビ」側の通天閣が見える。
通天閣は幼いころ、親爺に連れられてきたことがある。
あの、存在感ある通天閣に惹かれて、
12年前にこのマンションに決めたのだ。

向かいの部屋の扉には「ジム・キャリーはMr. ダマー」という
映画のチラシが貼られていた。
そこに住む気色悪い男は、いつも俺のことを
うっとりした目で見ている。
俺に惚れているのかもしれない。

外食は「さつきうどん」のキノコあんかけうどんか、
「大将」の塩焼きそばだ。
だが、そこでも中年のオカマに目配せされる。

23歳のとき、雪という5歳で私生児の娘を持つ7歳年上女性と
結婚したが、40歳を過ぎた今、家庭を持つことも他人の子どもと
暮らすことも不可能なだったと思いながらも、なさぬ仲の娘と、
家庭というものを忘れられないでいる。
独りになって日本中をまわり、時計を買っては電池を抜く。
ときを刻まない時計が、俺にはぴったりなのだ。

そして新世界に住み、100円ショップやコンビニに卸す製品の
部品組み立てと、それらを梱包する工場で働きながら、
期待することなく、生きるのではない、こなす毎日を送っている。

“ 私 ”
「よっしゃー」と気合いを入れて布団から出る。
電気代がかさむから、暖房は入れない。
マメがいなくなって半年、夕闇のなかの寒すぎる部屋から、
厚着して自転車にまたがる。

半年前まで花屋でバイトしていた。
夕方5時には仕事が終わり、帰ればマメがいた。
なのに、映像作家を目指すマメは、留学のため
ニューヨークに行ってしまったのである。

夜、マメがそばにいた安堵を失い、花屋からスナック
「サーディン」の黒服・チーフに転職した。
時給が高いことも重要だったが、マメにスナックで
働いていることを伝えて、良心の呵責に
気づかせようとしたのだ。
なのに、必死でマメの気持ちをひきつけようとしたけれど、
だんだんマメからくる電話の回数は減っていった。
お店の扉を開けるときも、気合いを入れないと入れない。
チーフとしての仕事をこなしながら、
マメのことばかり考えている。

私は私生児だった。
最近再婚した母の最初の結婚相手は実の父親ではなく、
痩せて陰気な男だった。
母は実の父と結婚せずに私を産んだのである。

電話が鳴っていた。
マメからかもしれないと思って出たら、母からでその電話に
イライラがつのって電話を切った。
すぐにまた電話が鳴った。
マメだった。
久しぶりの電話なのに、マメは暗い声で言う。
「好きな人ができたから、別れたい」と。

ゲロを吐き、バイトを無断欠勤した。
心配したサーディンのママが「ふたりで通天閣に登ろう」と言う。

通天閣から見る大阪城は小さく、ビルが異様に大きかった。
私の家を探したり、街を眺めたり、
私は気がつくとはしゃいでいた。
そして母の最初の結婚相手を思い出していた。
陰気なのに、どこか温かいものを持っていた父親は、
ある日突然いなくなった。
マメのように。

「もう少し頑張れば、朝日を浴びた通天閣を見られるから」と、
ママが言う。
オーナーもママも知っていたのだ。
サーディンの仕事中、ガラスを磨きながら
「私たちは別れたわけではない」と自分に
言い聞かせていたことを。

“ 俺 ”
感動もなく、たんたんとこなす日常に情けなくて
死にたいと思ったそのとき、「身投げやっ」と、
通天閣の方から声がした。
自分以外に死にたいと思っている奴の顔を
見てみたいと、俺は現場に向かった。

“ 私 ”
ママに先に帰ってもらったあと、自分が住む街を
見下ろしていると、「身投げちゃうか」と、後ろで声がした。
死のうとしている人の顔を、自分とどっちが不幸か
見比べようと覗いてみる気になった。
そのとき空から落ちてきた、白く冷たい塊が
おでこに当たった。
それは私と同じ名前の……

自殺しようとしているのは……
ふたりの主人公はそのあと……

休日が終わるとホッとするという、淋しい日々。
店員に常連客としての応対をされるとうっとおしく
感じるのに、好みを覚えられていないとムッとして、
「いちばん好き」ではなく「悪くはない」などと毒づきながらも、
奥深くに温かい気持ちを持つ不器用な中年。
いつも不機嫌そうで、人の悪いところばかりが目につく“ 俺 ”。

マメとずっといっしょにいられると信じていたのに、
突然去られて、でもきっと戻ってくるという虚しい思いから
逃れられない “ 私 ”。

ぴちぴちのミニスカートに厚化粧でウィンクする
おじさんのタッチさん。
「いらっさーい」が口癖の大将の店主と、慣れなれしく
細い目のぽっちゃり女店員。
すべりっぱなしの「響ボケ」をかます響さん。
客が飽きても接客らしからぬマイベースを貫く
サーディンの女の子たち。
わざとゲロを吐いて、客をぼったくるオーナー。
客が帰るときに、名刺を差し出して自己紹介するママ。
あいつなら死んでもええやろと思えるような気色悪さを
漂わせながら、可憐な表情をするMr. ダマー。

個性豊かすぎる、おかしな人々に囲まれ、少しも前に
進まない主人公ふたりが、通天閣での事件によって、
なにかが変わっていく。

人を疎み、笑い、見下しながら、自分に絶望する
暗い話であるのに、滑稽でツッコミどころの絶妙さに
思わず笑みが漏れる、読後感最高、心の痛みにも
共感できる、阿呆満載の大阪長編小説。

あれはもう7~8年前になるだろうか。
食いだおれ太郎が屹立していたころ、
生まれて初めて大阪の街を訪れた。
都会であるのに、ゴミゴミした感じがなく、10mごとに
オモロイ人に出くわすような楽しい街が、すぐ好きになった。
あのときの大阪の雰囲気がよみがえり、また通天閣に
登ったら、主人公のように新しい自分に出会えるかなぁと
希望が芽生えた1書。


通天閣 (ちくま文庫)通天閣 (ちくま文庫)
(2009/12/09)
西 加奈子

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ルル に なりたい〜!

河口湖

ほんの少し前まで、確かに夏だった。
そして心の準備もできないまま、突然やってきた秋。
一抹の淋しさを感じつつ、温泉が恋しくなる。

そこで気分だけでも温まりたくて、パソコンを開く。
我が家のご長老・ルルも泊まれる宿を検索。
ヒットした河口湖の『湖のホテル』は、富士山が一望でき、
食事も部屋出しなので、ワンちゃんが独り淋しくお留守番
ということがないと書かれていた。

ホテルの雰囲気もお風呂も、見ているだけで気持ちが昂り、
気分だけのつもりが、いつしか予約ページに進み、
週末に予約を入れていた。
せっかくならランチもと、ワンちゃんOKの
カフェ『パルティータ』も予約する。

「男心?と秋の空」のように、天候が安定しないこの季節、
雨が降りませんように願いを込めて、
毎日天気予報をチェックしながら、
ついにやってきた土曜日。
荷物を積み込み、iPhone の MAP に
『河口湖 パルティータ』と入力し、
ナビに誘導されながら、東へ向かう。

大月ジャンクションで富士五湖線に進み、
河口湖インターで降りる。
MAP に表示された目的地までの40kmという数字に、
少し遠いんじゃない?と感じたが、自分を疑っても、
機械は正確だろうと疑念なく、車を走らせる。

ようやく「目的地に到着しました」という音声ガイダンスに
安堵してエンジンを切る。
ん〜、外観が少しホームページの写真と違うような……
と気にはなったものの、無事に着いた安心感の方が勝り、
ドアをくぐって「予約をお願いしましたhollyzardですが」と、
お店の方に申し出る。
すると「えっ、今日はどなたからもご予約はいただいて
おりませんけど……」というお返事。

えっ?えっ?えっ?
「あの〜、こちらはパルティータさんですよね?」
「はい、パルティータです」

ど、どういうこと ⁇

そして判明。
このお店は正真正銘『パルティータ』さんだった。
が、ここは河口湖ではなく、
な、なんと、静岡県の御殿場だったのである。

死にたくなった。
多くの人が自然に身に付けている感覚の一つか、
あるいは二つくらい……距離感だったり、地理感覚だったり、
状況を客観的に捉える判断力といったものが……
わたしには欠落しているのかもしれないと思ったら、
恥ずかしさで犬になりたくなった。

ルル〜、わたしと入れ替わって〜!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

アドルフに告ぐ 手塚治虫

アドルフに告ぐ

W大時代、学生選抜陸上競技大会に出場経験を持ち、
協合通信社社員である峠草平(とうげそうへい)は、
昭和11年(1936年)8月、オリンピックの取材で
ベルリンに滞在していた。
ちょうどドイツに留学していた弟の勲から、
「明後日の夜8時に下宿に来て欲しい。
ヒットラーが失脚する重要な品物を渡したい」と、
連絡をもらう。

当日、オリンピック競技は棒高跳びがはじまり、
日本の西田選手とアメリカのメドウス選手との
白熱した決戦に、目を離すことができず、
草平は2時間遅れて、勲の下宿を訪れた。
しかし散らかった部屋に勲の姿はなく、
窓から外をのぞいたとき、めった刺しにされた
無残な勲が、街路樹の枝にひっかかり
息絶えていたのである。

なんとか草平が勲を木からおろすと、
爪の間に白い粉が付いていた。
かけつけた西地区警察の署員と名乗る男たちが、
勲の遺体を警察署へ運ぶと言って連れていったが、
遅れたために勲が殺されたと、草平は自分を責めながら、
半年前に兵庫県小浜村の山林で起きた若い芸者の
絞殺事件が脳裏に浮かんだ。
その被害者の爪の間にも、チョークのようなものが
付いていたのである。
その事件は容疑者の某会社社長が、事件後アメリカへ
出張して、そのまま瀕死したために、結局迷宮入りと
なってしまった。

そして勲の遺体は警察署には運ばれておらず、
部屋も5年前から別の居住者がいるという。
不思議な現実に戸惑いながら、
非協力的な日本大使館にも憤慨し、草平は部屋に
残されていた「W.R」と書かれたメモと白い粉を頼りに、
独り勲を探し出そうと決意する。

そのころ神戸には、アドルフというファーストネームの
少年がふたりいた。
ドイツ人外交官を父に持つアドルフ・カウフマンと、
ドイツから亡命したユダヤ人で、
パン屋の息子アドルフ・カミルである。

アドルフ・ヒットラーが君臨するナチスドイツが勢力を
ふるい、ユダヤ人迫害や拷問が横行し、ハイル・ヒットラーが
叫ばれながら、時代は第二次世界大戦へと向かっていく。
東京ではニ・ニ六事件が発生し、不穏な空気が漂う時代背景。

ふたりのアドルフの友情、数奇な運命が、狂言廻しである
峠草平(とうげそうへい)によって綴られる、
手塚治虫後期の代表作。

アドルフに告ぐ 1 (文春コミックス)
(1988/11)
手塚 治虫

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テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

風精(ゼフィルス)の棲む場所 柴田よしき

風精(ゼフィルス)の棲む場所

作家の浅間寺竜之介(せんげんじりゅうのすけ)が、
彼のファンだという西風美夢(にしかぜみめ)とメール交換を
するようになって1年近く経ち、美夢から、彼女が住んでいる
北山の奥地に位置する風神村の祭りで、踊りを披露するから、
竜之介にぜひ見にきてほしいというメールが届いた。

ところが竜之介が風神村を調べてみると、地図にはその村が
載っていなかったのである。
不審に思いながらも、推理小説のネタにしようと、竜之介は
相棒サスケとともに、風神村に向かった。
ツキノワグマの一大生息地である北山を歩くには、熊が嫌う
犬のサスケは竜之介を守ってくれる重要な存在でもある。

土砂崩れで道なき林道を登り、峠を越えたとき、
眼下に里が見えた。
地図に載っていない村は存在したのである。

藁葺き屋根に、煙突からたちのぼる白煙、未舗装の道。
あまりにレトロな風景の先には、迎えてくれる美夢の姿。
歓待されて入った家は、まるで40年前に
タイムスリップしたような光景が広がっていた。

そこへ今年の舞手である美夢以外の3人の女性、
田中真理、池上玲子、松江咲子が、衣装を仕上げるために
やってきた。
黒髪にボブカット、今風でない服装、彼女たちはみな
昭和40年代のファッションを彷彿とさせていた。

彼女たちに見送られて、この村にあるという鎮守の杜に
足を向けた竜之介は、そこで “プー” だと自称する美青年と出会う。
道に迷ったまま住み着いたという美青年は、この林に、
風の精・ゼフィルスの名を冠された幻の蝶
ヒサマツミドリシジミが姿を見せるのだと言う。
半信半疑で幻の蝶を待っていた竜之介の前に現れた
金緑色の宝石。

そして美青年は言う。
この村はゼフィルスに守られた村で、美夢たちの舞は
ゼフィルスの舞だと。
さらに美青年は、舞手の女の子のひとりは、
必ず1年以内に死ぬんだとも言う。

祭り前夜の稽古は神社ではなく、村民会館で行われた。
通し稽古が始まり、顔を青い顔料で染め、幻色の
ゼフィルスを模した衣装をまとった舞手が1頭ずつ
増えていく。
20分ほどの激しい舞を見ながら、竜之介はこの踊りは
風を鎮めるための踊りなのだろうと理解した。

蝶は4頭から7頭になり、いつの間にか8頭に増え、
立ち位置を調整しながら可憐に舞う。
雌だけが1頭ずつずれ、雄が1頭ずつ紫の布の中に消えていく。
そして唐突に囃子がやみ、情熱的な踊りはフィナーレとなった。

拍手のなか、少女たちは顔を上気させ、家族の元に
散っていったが、ちょうどそのとき、「玲子ー!」と叫ぶ声が響く。
壁側に設えた、紫の布で作られた簡易楽屋に、
心臓を一突きにされた玲子が……

神の贈り物として、森を豊かに守り続けるブナの木。
自然のバランスを崩してしまった人間の愚かさ。
懐かしく居心地の良い昔の風景。
井戸水と薪で沸かした懐かしいお風呂。
ときの流れとは別の場所で存在しているような村。
小さな集合体のローカルルールのなかで切望する
少女たちの哀しい願い。
閉鎖された山村での、村を存続させるための巧妙な因習。

昔から天狗やら何やらが多く棲んでいたという北山を舞台に、
時空を超え、古き良き世界が広がる、神秘で美しくせつない
ミステリー&ファンタジー。


風精の棲む場所 (光文社文庫)風精の棲む場所 (光文社文庫)
(2005/06/14)
柴田 よしき

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

竜馬がゆく 司馬 遼太郎

竜馬がゆく

坂本家の三女・乙女は色白で身体が大きく、
剣術が優れていたので、3歳下の末っ子の竜馬(りょうま)に
剣の手ほどきをし、竜馬が12歳のとき母の幸子が
他界してから、母代わりとなって面倒をみていた。

竜馬は12歳になっても寝小便をし、
「坂本の寝小便(よばあ)ったれ」とからかわれて、
近所の子どもたちと遊んでも泣かされ、「坂本の泣き虫」
「洟垂れ小僧」と呼ばれていたのである。
寺子屋でも文字を覚えられず、師匠からも見はなされ、
父の八平も「坂本家の廃れ者になるか」と嘆いたが、
乙女だけは「竜馬は日本に名を残す者になるかもしれません」と、
竜馬への信仰があった。

生まれたときには、背中に旋毛が生えていたので、
たてがみのようだと、父が竜馬と名づけたが、
死んだ母は猫かもしれないと嫌がった。

両親や兄弟、近所の人からも泣き虫だの洟垂れだのと
言われるなか、乙女のほかにひょうきん者の源おんちゃんが
竜馬の支持者で、「大きくなったら日本一の
剣術使いになられる」と予言していた。

それが竜馬は14歳のときから、城下で随一の達人・小栗流の
日根野弁治のもとに通いはじめてから、
顔つきが変わってきたのである。
そして日根野弁治も、竜馬のことを生まれ変わったように
顔が変わったと言い、実際、竜馬は背丈も随分伸びて、
偉丈夫の風格を持つようになった。

正月に日根野道場での大試合(おおよせ)で、竜馬は3人を
初太刀で退け、古参2人の面と胴をとって、
小栗流の目録を与えられた。
わずか19歳で異例の名誉を遂げたことを喜んだ兄の権平と
父の八平は、日根野弁治に相談して、竜馬を北辰一刀流の
千葉周作道場玄武館で、大流儀を学ぶ修行に
行かせることにしたのである。

江戸へ発つ日、嘉永6年3月17日の未明、竜馬は
姉にあいさつするため、乙女の部屋に行くが、
作法や礼儀が苦手な竜馬は足ずもうがお別れには
相応しいと言い出して、2人は足を組み合う。
そこへ権平がやっきて、そろそろ夜明けだと促され、
竜馬は紺の筒袖に野ばかまという旅装で旅立った。

生まれ育った土佐を離れ、竜馬は多くの人と出逢う。
船頭の長左衛門、梶取の七蔵。
人斬り以蔵と呼ばれた岡田以蔵。
泥棒の寝待ノ藤兵衛(ねまちのとうべえ)。
寺田屋のお登勢。
江戸の土佐藩下屋敷で相住いになった器量人の武市半平太 。
長州の桂小五郎と吉田松陰。
三菱財閥の総帥・岩崎弥太郎。
土佐藩士板垣退助指揮の官軍と闘った、会津藩士森要蔵。

そして小千葉道場での修行が始まり、大先生の貞吉、
若先生の千葉重太郎、妹のさな子との出会いがあり、
黒船・ペリーの来航と、世は幕末の風雪時代に入っていく。

竜馬は不思議な魅力を持つ青年だった。

ほとんど口をきかず、突然消えてしまったり、川に入って
ひとりで泳いでいたり、見知らぬ家に上がりこんだりと、
手のかかる変わりもんと言われていた。

他人に決められたことをするのが嫌いで、金の苦労を知らず、
陽気で、あまのじゃくだが馬鹿正直で無邪気、
才気を顔に出さず、情が深い。
天性、既成の道徳を受け容れられない性質で、
国難に役立とうと、千里を征く竜馬になりたいと思うのである。

土佐は同じ藩でありながら、山内家の子孫・福岡家は
御家中であり、長曽我部家の家臣だった坂本家は
郷士という複雑な身分制度の上に成り立っている。

その御家中福岡家の娘でありながら、気さくで心根の優しい田鶴。
無邪気で明るく、かぐや姫のような美しさと天賦の能力を持つ、
山内家の家老福岡家の妹君田鶴が、とんでもないことを、
まるで挨拶をするかのごとく軽く言う。
「みなさんで幕府を倒しておしまいになれば」と。
田鶴もまた、本書に登場する魅力的なキャラクターのひとりである。

尊皇攘夷から攘夷倒幕へと変遷していく時代背景。
南国土佐と江戸を舞台に、剣術・人間・色ごとへと、
のちに乱世の英雄となる竜馬の成長が描かれた
長編時代小説シリーズ第1巻。

竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)
(1998/09/10)
司馬 遼太郎

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

孤独のとなり 三浦綾子

孤独のとなり

夫婦関係が円満なのも、姑とのトラブルがないのも、
仕事がうまくいっているのも、すべて相手の人間性が
優れているからであって、自分の手柄ではないと語る著者が、
愛や生、人生と生き方、言葉や優しさ、結婚などの想いを綴る。

敗戦、虚無感、長い療養生活、恋人の死という、
過酷で暗く孤独な日々を送ったあと、神を信じるようになって、
自分が孤独でないことを知る。
〈孤独のとなりに神がいる〉と。

『愛への出発』6編
『生き続けるということ』8編
『さまざまな生き方の中で』13編
『人の子として』10編
『私の周辺から』13編
『折りにふれて思うこと』16編
『あとがき』

人間とは自己中心的な存在であり、自分自身のことは
許せるが、自分以外の人のあやまちは許せないもの。
「人間とは何か」から始まり、相手を洞察し理解する思いやり、
友情、家族、夫婦、恋愛、信頼などについての教示が、
聖書の引用もまじえて、清廉潔白で敬虔な
クリスチャンである著者によって紡がれた、
優しさと愛と救い、希望にあふれた珠玉のエッセイ集。

孤独のとなり (角川文庫 (5537))孤独のとなり (角川文庫 (5537))
(1983/09)
三浦 綾子

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

古事記 増補新版 梅原 猛

古事記

毎朝の日課、Amazon日替りセールのチェック。
その朝、本書が載っていた。
『古事記』は高校の日本史で、
ちらっと書名を見たぐらいの記憶しかなく
……無知無学が、“ 無知の知 ” ではなく、
“ 無知の恥 ” を思い知る。
無学を猛省しつつ、さっそく購入する。

第一章 国生み
第二章 天孫降臨
第三章 異民族と混血
第四章 大和制覇
第五章 国の発展
第六章 国の衰退
古事記に学ぶ
あとがき
古事記論

天地創造から推古天皇までの歴史。
諺の起源、古い日本の言葉と、古い日本の思想や宗教。
幻想的で悲哀とロマンあふれる伝承。

文学的価値のある神典であり、
日本最古の歴史書『古事記』。

本書を拝読しながら、『源氏物語』が
脳裏に浮かんだ。
古代の歴史とともに、人間が描かれ、
男女の感情をも綴られた独唱と問答。
日本文化の根源を知る貴重な宝庫。
本書は、「歴史はひとつの文学である」と語る著者の、
歴史と文学が融合された『古事記』の現代語訳版。


古事記 (学研M文庫)古事記 (学研M文庫)
(2012/07)
梅原 猛

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

黄緑 の バナナピーマン と 激辛通

バナピー2

最近、スーパーや道の駅に行くのが楽しくて仕方ない。
地場産コーナーに珍しい採りたて野菜が
並んでいることが多いから。

特に味覚障害では?と言われるほどの
激辛通であるわたしは、香辛野菜には目がない。
今まで唐辛子といえば、一味か七味唐辛子や
鷹の爪ぐらいしか店先に置かれていなかったけれど、
最近目にするようになったボタンコショウや
バナナピーマンなど、初お目見えの
生トウガラシ族が並んでいるのを眺めるだけで、
ウキウキしていた。

そんな折り、仕事関係の方から「コショウ要る?」と
訊かれ、持ってきていただいたのが、
地場産コーナーに置かれていたのと同じ、
バナナピーマンだった。
パプリカをバナナのように細長くした容姿に、
艶良く淡い黄緑色が輝いている。

すぐに頭に浮かんだレシピは、挽き肉といっしょに
ごま油で炒めて、甘辛く味付けした
「ごま風味肉辛味噌」。
フライパンを熱し、たっぷりのごま油を敷く。
そこに挽き肉、みじん切りにしたバナナピーマンを
炒めて、日本酒で溶いた信州味噌とお砂糖を入れ、
全体にからまれば完成。

毎晩、お米は1,5合仕掛けておくが、今日は倍に
増やしてタイマーをセットする。
早く「ごま風味肉辛味噌」で
炊きたてのご飯を食べた〜い。
朝が早くやってきてくれますよう、今夜はもう寝よう!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

ピンポン 第4集 松本大洋

ピンポン4  

走る、ひたすら。
サイボーグと言われているスマイルが、迷いながら
ひたすら走るが、結局どこへも行けずに戻ってくる。
行き詰まっているスマイルを気遣った小泉コーチは
「デートしようか」とよみうりランドにスマイルを誘う。
そして「一度乗ってみたかった」と言うスマイルは、
コーチと一緒にゴンドラデートをするのである。

そのころ裏面打法を取得したペコは、
すば抜けた卓球センスで、彼に適うものがいないほど、
強くなっていく。
けれど右膝の違和感という心配もあった。

インターハイが近づき、海王学園の天才ドラゴン(風間竜一)も
気持ちは荒れて、試合前には恒例行事のように、
トイレに立てこもる。

そして壮絶なインターハイが幕を開ける。
ペコの1回戦の相手は中国人留学生の孔文革(コンウェンガ)。
無名の猛者・星野(ペコ)の登場に、会場はどよめく。
1年前、コンにスコンク(完封)で負けたという過去があるが、
当時とは別人のようになったベコは……

桁違いの実力で勝ち進むスマイルの2回戦シードで
あたる相手は、海王学園の副将・真田。
冷酷無慈悲と言われるスマイルモンスターは……

へんに気遣われることが苦手なスマイル。
「愛しているぜ、ペコ」が口癖で、人間の奥深い機知や
機微を熟知している田村道場のオババ。
スマイルの実力を全面的に信頼している小泉コーチ。

ペコがヒーローとなって戻ってくるインターハイ。
サイボーグと言われていたが、コーチの人としての
指導からか、少しずつ人間味を持つようになるスマイル。
無感情に見えるスマイルも、表情には出さないがヒーローが
戻ってきたことを歓待し、そっと涙する。

ストーリーと画にあふれる迫力とスピード感。
ほのぼのとした友情、夢と希望に満ちた、
爽快なスポ根青春コミックシリーズ第4集。

ピンポン (4) (Big spirits comics special)ピンポン (4) (Big spirits comics special)
(1997/06)
松本 大洋

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テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

地図男 真藤順丈

地図男 

地図帖の千葉県鎌ケ谷市初富の辺りに書き込まれた物語。

1989年3月、絶対音感を持つ音楽の天才児Mが生まれた。
両親は若く、夫婦喧嘩が絶えなかったり、パチンコ屋に
連れて行かれたりと、劣悪な環境を抗議するために、
Mは泣きわめき、深刻な状況であることを悟って、自立を急ぐ。

1歳前に「うた」という言葉を発し、その数か月後には
「うた、うたいたい」と2語の言葉を話し、3歳のとき、
停車していたトラックに飛び乗って家出した。

荷台にはたくさんの楽器が積み込まれ、
そこでMは自作の曲を作り、歌詞まで載せた。
タイトルは『うごくがっきのへや』
2曲目は『かわいいかみさま』
3曲目は『むしみたいなくも』
流れる景観を音符に変えて、次々とオリジナル曲を作る。

とうとう配達される最後の楽器、グランドピアノが降ろされると、
Mは若い女性運転手に見つかってしまった。

そしてMが「レコーディングしたい」と言って、彼女に
オリジナル曲を聴かせると、音楽好きの運転手は知り合いの
音楽関係者に連絡をとってくれた。
それから1992年6月、Mのオリジナル1stアルバムが
レコーディングに入る。

幻想的なエピソード。
それは国土地理院が第5刷として発行した
関東地域大判地図帖に、綴られた物語。
矢印や書き込み、ポストイットやファーストフードの包装紙などが
付箋として貼られ、それぞれの土地の物語が猥雑に記されている。

さまよい歩く地図男が、地図帖へそのロケーションの
物語を語り、書き込む。
語り手である助監督がロケ地を探して走り回るなか、
地図男と出会い、地図帖に魅せられ、書き込まれた物語を朗読する。

年齢不詳、季節感のない服装だが不潔感はない。
関東全域を移動しているらしく、いく度となく遭遇する
神出鬼没の地図男。
希望するロケーションを説明すると、助監督が唖然となるほど
候補地を諳んじる深く詳細な地理情報。

スピーディでユーモアあふれる、語り口調。
リアリズムから少し離れた妄想譚が、
語りかけるような文体で紡がれる。

それにしてもなぜ、地図男はさまよい、
行く先々で物語を書き込んでいくのだろう?
そこには大切な人への想いがあるのだろうか?

矢印にいざなわれ、付箋や挿入紙片に綴られた話の断片を
拾い集めて、助監督がそれぞれの物語と地図男との
接点の謎に迫る、妄想と現実、地図と風景と
エピソードが交錯する物語。

以前、有川浩著『植物図鑑』を拝読した折り、
その『植物図鑑』を片手に、河原や高原を散策したいと思った。
本書を読後、似たような感覚に包まれる。

日本のあちこちをゆっくり旅し、自分が歩んだ軌跡を
思い出しながら、地図にその土地土地での
過去のできごとや想いを書き込んでいく。
そんな哀切と懐古に満ちた旅をいつか……

地図男 (MF文庫ダ・ヴィンチ)地図男 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
(2011/02/25)
真藤 順丈

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ブラックジャック 手塚治虫

ブラックジャック

『第1話 報復』
日本医師連盟に呼び出されたブラックジャックは、
医師免許を取得するよう忠告されるが、拒絶したために
逮捕される。
そこにイタリアの億万長者ポッケリーニがやってきて、
本態性動脈血栓症の孫ピエトロを助けてほしいと懇願される。
しかし拘束されているブラックジャックにピエトロを
診ることはできない。
そこでポッケリーニは、イタリア政府を動かして日本政府を
揺さぶってでも、ブラックジャックを拘置所から出すというが……

『第2話 シャチの詩』
5年前、海辺の丘に家を建てたが、訪ねてくる者はひとりもなく、
ブラックジャックは心底孤独だった。
顔と身体の手術痕を見ては、みんな気味悪がるのである。
そんな折り、傷を負って浜辺に打ち上げられたシャチに
応急処置を施し、ブラックジャックはそのシャチと友だちになるが……

『第3話 閉ざされた三人』
地下水の過剰な汲み上げでデパートが傾き、ブラックジャックに
土木技師の男と、その息子がエレベーター内に閉じ込められてしまう。
男は腹腔破裂して内蔵が飛び出している。
早く手術をしなければ、助からない。
狭いエレベーターで箱のなかの酸素も少なくなっていく。
果たしてレスキュー隊は間に合うだろうか……

『第4話 ときには真珠のように』
ブラックジャックを救い、医者になるきっかけを作ってくれた
世界一の外科医、本間丈太郎から、カルシウムの鞘に
包まれたメスが送られてきた。
何かあったのではと気になったブラックジャックが、
丈太郎の家を訪れると、床に伏した丈太郎が、
ブラックジャックに大手術をしたときの話をしはじめ……

『第5話 からだが石に……』
筋肉が骨に変わっていく進行性骨性筋炎という難病に罹った少年。
その少年を治すため、イタリアへ渡ったブラックジャックだったが、
治療法のない病を治して少年を救うことができるのか……

『第6話 はるかなる国から』
心臓中核欠損僧帽弁大動脈弁石灰化に罹ったイングリッドちゃんが、
心臓外科の第一人者と言われるA大の板台教授に
手術してもらうため、スウェーデンからやってきた。
時を同じくして、イングリッドちゃんと同じ病に苦しむ娘を
連れて九州から訪れた男が、板台教授に手術を切望するが、
損得勘定から、教授はその男の話に取り合わない。
男は憤慨しながら、ブラックジャックの元を訪れるが……

『第7話 幸運な男』
イランで石油タンクが大爆発し、多くの日本人も被害に遭った。
奇跡的に怪我ひとつ負わなかったイスラム街出身の貧しい少年が、
日本人技師の天堂が亡くなっているところに出くわし、
パスポートとお財布を盗んでしまう。
天堂が大金持ちの息子だったことを知っていた少年は、
盗んだお金でブラックジャックに整形手術を依頼し、
天堂になりすまして日本に入国するが……

『第8話 二つの愛』
能寿司のタクは老いた母親に、自分の握った寿司を
食べさせたくて必死で修行し、一流の寿司職人になった。
やっと願いが叶い、田舎に帰ろうとしたところ、ダンプに
はねられて両腕切断という悲劇に見舞われる。
ダンプを運転していたのは、前科なし事故なし
模範運転手の有馬明だった。
当然有罪になるはずが、タクは告訴を取り下げ、代わりに
自分の腕になって寿司を握ってほしい。修行を積んで母に
日本一の寿司を食べさせてほしいと、有馬に頼むのだが……

『第9話 タイムアウト』
積載オーバーのトラックが渋滞の道路を運転中、
ワイヤーが切れて鉄材が崩れ落ちた。
運悪くそこを通りかかった男の子が下敷きになってしまう。
渋滞のためにクレーン車の到着には30分かかるらしい。
トラックの持ち主である槍杉建設の社長は、費用は
いくらかかってもいいから、あの子を助けてくださいと言い、
そこに現れたブラックジャックが5,000万円出すなら、
私がやってみようと名乗り出るが……

何十年ものあいだ、目にし耳にした、あまりに有名な医療漫画。
因果応報、動物との友情、告解、親子愛、命、優しさ、贖罪など、
さまざまなテーマを盛り込んだ、一話完結で9編が収録された
コミック『ブラックジャック』シリーズ第1巻。

ブラック・ジャック 1ブラック・ジャック 1
(2014/04/25)
手塚治虫

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テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

プラナリア 山本文緒

プラナリア

山奥の澄んだ渓流などに棲む、扁形動物のプラナリア。

春香はもうすぐ24歳になるというとき、乳がんで右胸を切除した。
翌年、乳房の再建手術をしたが、胸のまわりと背中に傷痕があり、
乳首はまた手術してつけなければならない。

乳がんが発覚する少し前に、春香が勤めていた会社に
アルバイトにきていた豹介と出会った。
人前では無口で内弁慶の彼は大学3年生で、
春香より4歳年下。
当時春香には恋人がいたが、春香の乳がんを知り、姿を消した。
豹介は自暴自棄になった春香を、両親とともに慰めてくれ、
ずっとそばにいてくれる。

飲み会の席で「プラナリアになりたい。切っても切っても
再生するプラナリアになったら、切除した胸も再生するかもしれない」
と言って、場をシラけさせてしまう春香をたしなめ、帰り道、
豹介は春香を部屋に誘う。

お風呂タイムには、春香の全身を洗ってくれ、
髪のブローに眉毛まで揃えてくれる。
そのあとは有無を言わさずセックスとなるが、ホルモン注射のせいで
性欲がない春香には苦痛なのだけれど、愛されているから我慢する。
それから、丁寧に淹れたお茶を出してくれる。

最初のころは、お風呂もお茶も、春香のために尽くしてくれていると
感激していたが、最近は豹介がしたいからしていることに気づいてきた。

優しく面倒見がいいが、春香がふざけ半分で
乳がんのことを口に出すと、逆ギレする豹介。
頭では反論したり悪態をつくのに、従順な態度を繕い、
潔いほど、ひねくれた自分の性格を熟知している春香。

月に1度、大病院でホルモン注射を打つと、めまいや吐き気で、
身体が辛くなる。
大病院は何時間も待たされて、診察はあっさり終わり、
主治医との信頼関係もない。
無職、乳がんという、重く暗いテーマに気分が滅入りつつ……

鬱屈した気持ちや僻み、拗ねた思いに希望のない不安、
周りを思い遣ることのできない自嘲発言や、八つ当たりだと
分かっていて自制がきかないなど、どこかで自分が
いちばん不幸な人間だと思っているような春香が、
わたし自身を投影しているような気がして、しっくりきてしまう。

そしてもっとも共鳴した……〈デブは苛められる。幼稚園に
入った時点で私は気がついた。何故だか私だけが男の子たちに
石を投げられ、女の子たちからは仲間はずれにされた〉

わたしも幼稚園時代、いじめられていた。
ちょいデブでブサイクだったのである。
小学校、中学と進み、さらに横に成長していった。
真剣にダイエットに取り組んだのは、高校に入ってからである。
必ず友人といっしょに実践し、途中で挫折して、
「食べちゃったぁ〜」と報告しあい、性懲りもなく、
再チャレンジを繰り返すのである。

本書に没頭しながら、苦い想いと懐かしさがよみがえり、
プラナリアという見たことのない生物を思い描いていた。

ほかに『ネイキッド』『どこかではないここ』『囚われ人のジレンマ』
『あいあるあした』収録。

プラナリア (文春文庫)プラナリア (文春文庫)
(2005/09/02)
山本 文緒

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

パイロットフィッシュ 大崎善生

パイロットフィッシュのコピー  

札幌の高校時代からの友人である森本は、
記憶の迷路に入り込み、1日中酩酊していた。

弱冠二十歳のころに吐いた、人をバカにし傷つけた言葉が、
消えない記憶となって、いま森本を苦しめ、内臓と脳が
アルコールに冒されて、精神病院に入院してしまったのだ。

泥酔して時を構うことなくかかってきた森本からの電話。
記憶に苦悩する話は、山崎隆二もそこから逃れられなくなっていた。

午前2時、90cmの水槽が据えられ、2匹のロングコートチワワの
モモとクーがじゃれあっているなか、西荻窪の部屋に電話が鳴り響く。

コール音はいったん静まったが、くつろぎの時間を
邪魔するかのように、再び鳴り出した。
仕方なく受話器を取ると、氷の音に続いて届いた「わかる?」の
ひと言に、19年ぶりにもかかわらず、学生時代に付き合っていた
川上由希子の声だとすぐに気づいた。

深夜の静寂のなか、わずかな沈黙が流れ、ぽそりぽそりと話し出す。
結婚して母になった由希子が子どもの話をし、モモとクーの
チワワ談義が落ち着くと、由希子はプリクラを撮りに行こうと言い出す。

あの頃……無気力だった大学3年の夏、決断力のない隆二は、
由希子が探してくれた文人出版に就職を決めた。

会話は熱帯魚の話題になり、バクテリアの生態系で成り立つ
水槽の話は心地よく、高級魚が住める環境を作り、そのあと
処分されてしまうパイロットフィッシュの話に進んでいく。
カージナルテトラやアフリカンランプアイが群泳している水槽の底に、
脱皮したエビの抜け殻を見て、19年の間、成長することで
喪失したものに思いを馳せる。

由希子からの電話で、鮮明によみがえる記憶。
エロ雑誌『月刊エレクト』を刊行している文人出版の創業者で、
人間味あふれる沢井速雄。
出版社で編集をしているのに、『人間失格』しか
読書歴のない五十嵐。

由希子からの電話は、子どもが起きたからと唐突に切れた。
19年のときを経たいま、由希子が電話してきた理由は……
なぜ別々の道を選ぶことになったのか……
そして2人は……

深夜の電話で始まる「いま」と、記憶のなかにある「19年前」が
交わりながら綴られる青春小説。

〈人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。
なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも
記憶とともに現在を生きているからである〉で始まる冒頭。

過去に出逢った人、できごと、風景、香り、想い。
それらの記憶は消えることなく存在し、あるときふとよみがえる。
けれど決して手にすることはできない。
ただ、そこに確かに存在しているだけ。

あまりに哀しく、切なく、そして共鳴しうる感覚に、数え切れない、
言い尽くせない感情の記憶がフラッシュバックする。

パイロットフィッシュ (角川文庫)パイロットフィッシュ (角川文庫)
(2004/03/25)
大崎 善生

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

東京 への リトルトリップ chapter3

Skytree2.jpg  

江ノ島を訪れた翌日、文明の利器である “ パスモ ” なるものを
右手に、地下鉄に向かう。
パスモは本当に便利!
駅にホームがひとつしかないような田舎に住む私にとっては、
新宿駅の途切れることを知らない人の波をかいくぐって
券売所までたどり着くことすら、至難の業である。
路線図を見て目的地を探し、料金を確認することも
しなくてよいし、現金に触れる必要もないのだから。

少しドキドキしながら、改札口でパスモをかざし、
そのまま電車に乗り込む。
押上(スカイツリー前)駅で降りると、
目の前には悠然とそびえ立つスカイツリー。

正面エントランスを抜け、出発ゲートに並ぶ。
時刻はまだ9時前だというのに、すでに長蛇の列。
4基あるというエレベーターは、それぞれ四季を
イメージした内装になっているという。
わたしたちが乗ったのは「夏・隅田川の空」。
目的フロアに着くまでのわずかの時間、
壁から天井に映し出された、夜空にきらめく無数の星が、
幻想の世界へといざなってくれる。

そしてフロア350の展望デッキへ。
パノラマに広がる東京の街。
大小さまざまなビルが林立するあいだに流れる隅田川。
少し遠くを見遣れば、懐かしい東京タワー。
天気が良ければ、横浜ランドマークタワーも見えるらしい。

スカイツリーは高さ634m。
この辺りの昔の町名「武蔵」の語呂合わせから
設定したタワーの高さは、世界一だという。

『東京タワー』というタイトルの小説はいくつかある。
そう遠くない未来、『スカイツリー』というタイトルの
小説が出るかもしれない。
そんなことをぼんやり考えながら、高さ世界一のタワー、
スカイツリーの展望デッキを巡る。

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

K・N の悲劇 高野和明

K・N の悲劇のコピー

『プロローグ』
粉雪の舞う神社の境内、本殿裏の小屋で、小学5年生の果波と
クミは、いつも餌をあげていた茶トラ猫の出産を見守っていた。
母猫が仔猫を産み落として舌で膜を取り除き、へその緒を
噛み切る様子を、声を失いながら見ていたふたりは、腹部に
違和感を覚え、神聖な光景に立ちあったことで、
母になる資格を得たと感じる。

『第一章 異変』
結婚して2度目の春を迎えた27歳の夏樹修平と25歳の果波は、
阿佐谷のボロアパートから駒込の新築分譲マンションに引越した。

2年前、修平は編集プロダクション『ブッククラフト』で、壊れやすい
気品を感じさせる果波と出会い、それまで付き合っていた
女性すべてを清算し、果波にエンゲージリングを贈ったのである。

無一文のフリーライターと、プロダクションで事務仕事を
している果波が結婚して2年、ブッククラフトの橋本直紀の
尽力も強力な後押しとなり、修平の著書『快適暮らし学』が
ベストセラーとなった。

新居へ引越した同じ日、6時から赤坂のホテルで、20万部
突破記念パーティに出席し、銀座のバーで二次会を終えて、
高級感漂う高層マンションに入ると、果波は修平に
お姫様抱っこで、新しいベッドに寝かされた。

今までに経験したことのない、常軌を逸した快楽に包まれ、
胎内に熱い液体を感じ、果波は受胎を確信する。

文京医科大学病院精神科に勤務している磯貝裕次は、
元々産婦人科医という経験を生かし、不妊症治療を受けながら
精神科も受診するようになった戸田麻衣子の、急性期うつ病が
始まろうとしていることに、気を引き締めなければと感じる。

麻衣子は老舗料亭に嫁ぎ、義母から跡継ぎをせかされ、
それが原因でうつ病が悪化していた。
そして磯貝の診察を受けた直後、6階の窓から
飛び降りてしまったのである。

新しいマンションに引っ越して1か月が経ったころには、
『快適暮らし学』の販売部数は落ちて、今後の増刷は
見込めなくなっていた。
22万部の印税はマンションの頭金と引っ越し料金、
税金などでほとんどが消えてしまい、果波の収入は、
そのまま月々のローンと管理費にあてられた。

少し浮かれ過ぎていたのかもしれないと反省しながらも、
修平は著作がベストセラーになったことで夢を捨てきれず、
橋本が持ってきた契約社員の話に乗ることはできなかった。

そんな折り、果波は身体の異変を覚え、帰宅途中で
妊娠検査薬を買う。
結果は陽性。
愛する修平との赤ちゃん……嬉しいはずなのに、
なぜか昔から抱いている不安が募る。
検査結果を修平に告げるが、その表情に笑顔が
見られなかったことに、果波の不安は増す。

翌日、果波は文京医科大学病院産婦人科で診察を受け、
広川医師から「妊娠7週目です」と告げられる。

出産・育児・生活費などの計算をしていた修平は
絶望的な気持ちになった。
たとえマンションを売却しても、中古物件となれば、
部屋を失い借金だけが残る。
苦渋の選択ではあったが、病院から戻った果波に、
修平は経済状況を説明し、子どもは今回
見送ろうと言った。

お腹の中に赤ちゃんがいると思うだけで果波は
幸せな気持ちになれた。
なのに、修平から言われた言葉がショックで、気がつくと
デパートのベビー服売り場にたたずみ、涙をこぼしていた。
そのとき視線を感じて振り向くと、自分と同年代の
妊婦さんが果波を見ていた。
その顔に見覚えがあったが思い出せず、彼女を
追いかけようとして見失ってからも、ずっと背後に
人影を感じながら、マンションに向かう。

修平がソファで天井を見つめているとチャイムが鳴り、
インターフォンで返事をすると、玄関の外から
「私が誰だか分かる?」と、聞き覚えのない
女の声が返ってきた。
薄気味悪さを感じながら、修平がドアを開けると、
そこに人の姿はなく、呆然としているところに
果波が帰ってくる。

翌日、果波と修平は文京医科大学病院産婦人科を訪れ、
広川医師に人工中絶の希望を告げると、
中井産婦人科医院を紹介される。
翌月曜日、果波が手術着に着替えて分娩室に消え、
修平が自分自身を責めきれないまま病室で待っていると、
この世のものとは思えない、果波の絶叫が聞こえてきた。
分娩台に上がった途端、全身を痙攣させ気絶してしまったと
中井医師から聞かされる。

病室に戻されてベッドで眠っていた果波が目を開き、
修平とは反対側を向いて「あなたはだれ? さっきも
あの部屋にいたでしょう?」と問いかけている。
そして修平に訊く「あの妊婦さんは誰?」と。
だが修平には誰も見えなかった。

翌日から文京医科大学病院でさまざまな検査を行ったが
異常は見られなかったため、精神科の磯貝に
診てもらうことになったが、マンションに戻ると
果波は「部屋の中に誰かいる」と言う。
そして「やめて」と、か細い声が漏れ、果波の髪が
何かに引っ張られているように逆立ち始めたのである。

やがて声は鋭い金切り声となり、果波の身体は
痙攣して顔つきが変わった。
修平が妻の名を呼ぶと、その女が言う。
「果波じゃないわ。私が誰か分かる?」と。

そして
『第二章 憑依』
『第三章 悲劇』
『第四章 感応』
『第五章 遺志』
『エピローグ』
と、続いていく。

免疫学から、異物を排除するようプログラムされた身体で
あるはずなのに、胎児だけはそれに準じない受胎の神秘。
生命が宿る現象を解明しきれていない現代医学。
旧態依然として残る、嫁を子作りの道具と考える悪しき因習。
ともすれば、抑うつ状態を惹き起こすほど強い女性の妊娠願望。

人間のエゴと傲慢、夫婦と性、恐怖と戦慄、罪と贖罪、
生命誕生の不思議が緻密な構成で描かれた
サイコホラーサスペンス。

それにしても高野和明さんの著書はどれも超長編にも
かかわらず、読み手は最終ページまで息継ぎもせずに
たどり着くほど、魅了されてしまう。
ナポレオンの辞書に「不可能」という文字がないように、
高野氏の著作には「飽きる」という言葉が存在しない。
文庫本『K・N の悲劇』全415ページ、
きっと全速力で駆け抜けることと思います。

K・Nの悲劇 (講談社文庫)K・Nの悲劇 (講談社文庫)
(2006/02/16)
高野 和明

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

東京 への リトルトリップ chapter2

江ノ島2

ゆるい風になびかれ、白く泡立つ波。
遥か遠くで、静かに揺れる何十艇もの
ウィンドサーフィンの列。

潮風に吹かれ、ラム酒入りのグラニィータに
少し酔いながら、テラス席で湘南の海を眺める。
酔っているのはラム酒のせいばかりではなく、
憧憬の深い海と優しい潮風の香りに
魅せられていることもあるのだろう。

雄大な海を感じながら、このカフェに
たどり着くまでの光景が脳裡をめぐる。

階段の多い江ノ島を、息を切らしながら歩きまわり、
そこここで遭遇する、おとなしくキュートな猫たち。
猫の街と呼ばれる江ノ島。
道端で寝転んでいる猫、店番をしている
看板娘猫など、いたるところで猫に出逢う。

水上バス乗り場がある海岸に降りると、
優しく岩に打ち寄せる波。
その岩に沿って横歩きする数匹のカニたち。
来た道を戻り、また息を切らしながら長い階段をのぼる。
雨も上がり、いつの間にかさしてきた陽射しを
背に受けて、情報誌を頼りに、目的のカフェに向かう。

ストローでグラニィータをすすりながら、
江ノ島の風景を頭に描く。
猫大好き、海大好きのわたしには、
この上なく幸せなひととき。
儚い願いだと知りながら、この時間が
永遠に続きますよう哀願しつつ、
しばし記憶の時空旅行にまどろむ。

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

グレイヴディッガー 高野和明

グレイヴディッガー

警察内部の犯罪を摘発する、人事一課監察係の剣崎と、
元公安部員の西川と小坂は、異常な事件・変死体の
盗難事件を担当していた。

昨年6月、調布北署管内。
覚醒剤の密売をしていた野崎浩平(27歳)が、通行人の面前で、
客の権藤武司(47歳)を刺殺して乗用車に押し込み、逃げ去った。

2週間後に野崎は逮捕されたが、権藤の死体が
発見されず、立件は見送り。
年が明けた9月、奥多摩の今生沼で、
死後間もない変死体が引き上げられた。
ところが指紋照合から、その死体が1年3か月前に殺されたはずの
権藤武司だと断定されたのである。
さらに法医学教室に安置されたその遺体が盗まれてしまい、
剣崎は公安部に疑いの目を向けたが、結局、本事案は
警察関係者による犯行ではないと結論付けた。

悪党面の八神俊彦は、明日から骨髄移植のための入院準備を終え、
金策のために、島中圭二が住む、八神が借りた部屋へ向かった。
警察から逃れるため、悪党2人は部屋をすり替えていたのである。

部屋に着くと、浴槽の煮えたぎる赤い液体のなかで、
島中が死んでいた。
栓を抜き、死体の頭を持ち上げると、左胸の大きな刺し傷と、
交差し縛られた両手足、十字印のような切り傷があらわになった。

八神が事情を把握できないまま困惑していると、携帯電話が鳴った。
移植コーディネーターの峰岸雅也からだった。
峰岸との通話中にノックの音が響き、八神は
自分が置かれている状況に愕然となる。
借主が入れ替わっていることが分かれば、
過去の悪事が露見されてしまう。
それに島中殺しの濡れ衣を着せられるかもしれないのだ。

ドアの鍵をかけていないことに気づき、ノブに手を伸ばすと
同時に扉が開き、3人の男が立っていた。
八神は目の前の男を殴り、ベランダから隣のビルに飛び降り、
追ってきた3人と格闘しながら、なんとかタクシーに乗り込んで
病院に向かう。
移植を待っている白血病患者を死なせるわけにはいかない。
どうしてもたどり着かなければならないと。

警視庁巡査長古寺は機捜車に乗り込み、
東大泉の住宅街に向かった。
被害者は田上信子、58歳。
後頭部を殴られてから、浴槽に投げ込まれ、発見したときには
お湯が沸騰し、両手足は交差状に縛られ、
さらに十字の切り傷があった。
証拠品袋のなかに入っていた1枚のカードには、
「ドナーカード 骨髄移植」と書かれていた。

副隊長から赤羽に急行するよう指示を受けた古寺は、
東大泉から八神の部屋に向かう。
そして浴槽を見るなり、連続猟奇殺人だと直感する。
少年課にいたころ、八神を知っていた古寺は、死体が彼ではないと
断言し、八神は重要参考人として手配された。

大泉警察署で特別合同捜査本部が設置され、
キャリアの越智警視が河村警視監らに向かって報告する。
2件の現場を1時間で移動するとしたら、手段はバイクか、
あるいは複数犯の仕業か?
そこに古寺から電話があり、被害者ふたりともにドナーカードを
持っていたと連絡が入る。

自分が貧乏だったことを思い出した八神は、タクシーを降り、
水上バスに乗った。
船に揺られながら、過去の悪事を思い出し、悔恨の念にかられて、
自分が提供する骨髄の相手が小さい女の子ならいいのにと願っていた。

辺りは日没を過ぎ薄暗くなった甲板で、荒川遊園発着場から
乗り込んできた3人の男たちに突然襲われそうになった八神は、
隅田川に飛び込んだが……

大都市東京で殺戮を繰り返す犯人とはいったい?
なぜ八神が狙われるのか?
盗まれた変死体、公安部、骨髄移植、連続猟奇殺人との関係は?
『グレイヴディッガー(墓堀人)』は誰なのか?

魔の手からも警察からも追われることになった八神は、
無事に病院にたどり着き、ドナーに骨髄を提供することが
できるのだろうか……

まだ20代の若さながら、警視庁捜査一課の管理官である越智警視。
警察権力を笠に、悪事を働く悪徳警官を退治することが、
正義の貫徹だとみずから配置換えを希望した剣崎。
ベテランの機捜隊員古寺。

これ以上ないほど悪党面した悪党なのに、
マヌケでひょうきんで憎めない八神。
初めての善行、骨髄を提供して、見も知らぬ誰かの命を
救えたら、悪党人生から何かが変わるかもしれないと、
必死の逃走を続けて病院を目指す。

恐怖や焦燥、スリルにアクション、スピーディーなストーリー展開に、
読み手みずからも疾走しながら、緊張のなかで醸し出される
八神のコントのような台詞と、悪党のくせに奥深く潜む純真な心に
ホッと気持ちが緩みつつ、次の展開を期待してページを追う、
傑作長編サスペンスホラー。

グレイヴディッガーグレイヴディッガー
(2002/08)
高野 和明

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

東京 への リトルトリップ chapter1

江ノ島a  

週末の天気予報はくっきり晴れマーク!
だからなんの心配もなく、日傘を持って出かけたのだ。

朝7時30分、インター前の停留所から
東京行き高速バスに乗車。
女性専用シートだから、隣りの座席には当然、
見知らぬ方ではあっても同性なので、快適バス旅行である。
もちろん恋人も同行。
今日は、中島らも著『ガダラの豚 1』。
超常現象とマジックの世界に入り込みながらも、
スムーズなドライビングに少し睡魔に襲われつつ、
予定通り10時30分新宿到着。

そして噂には聞いていた、でも実物は見たことのない
“ パスモ ” なるものを購入。
田舎では、そんな文明の利器が使える改札口が
存在する駅はないのである。

さすが都会!
パスモ もだけれど、小田急線の混雑にも都会の凄まじさを
感じつつ、藤沢で江ノ電に乗り換えたあたりで、雨がパラパラ。

江ノ島に着いたころには、雨あしも激しくなり、日傘は雨傘に変身。
予約していた富士山が見えるテラスのあるカフェを
急遽キャンセルして、バラエティに富むメニューが
自慢のレストランに入る。
生しらす&釜揚げしらす丼と、海鮮天ぷら盛り合わせを注文。
しらすは大好き。でも生のしらすは食べたことのない、
山ザル信州人なので、ただただ新鮮なしらすが生で
食べられることに感激。

海の幸がもたらす幸せを噛みしめつつ、
ふと脳裡をよぎった富山の想い出。
名物の白エビを昆布でしめた白エビ鮨と、
カラッと揚がった白エビの唐揚げ。
江ノ島はしらす、富山は白エビ。
どちらも山国信州では味わえない、海からの恵み。

山も山菜も大自然も、常にわたしの近くに寄り添ってくれることに
感謝しながらも、海の近くに住みたいと思ってしまうのは欲張り?
あるいは浮気性なのだろうか……

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

ひとりでできる お手軽 ツボ & マッサージ 入門 古賀直樹

ひとりでできる お手軽 ツボ & マッサージ 入門  

東洋医学では、身体のいたるところにツボがあり、それらは
体調不良や異常を示す反応点であるとともに、
身体を癒す治療点にもなると考えられている。
今、西洋医学でも、ツボによる免疫力アップ、血行促進、
自律神経の調整などの効果が注目されつつある。

本書は、中野坂上治療院院長である古賀直樹氏が、ツボの
場所や刺激方法などのツボ療法と、効果的な体操も
あわせて、イラスト付きで分かりやすく紹介している。

《目次》
前書き
1章 上手なツボ&マッサージを覚えよう
2章 【頭〜首】頭痛や眼精疲労がとれないとき
3章 【肩・肘・胸部】肩こり、肘の痛みが気になったとき
4章 【腰〜足】足腰の痛みが消えないとき
5章 【内蔵疾患系】胃腸の疾患や生活習慣病が原因のとき
6章 【体調不良系】気分のすぐれない症状が続くとき
あとがきにかえて
著者プロフィール

誰しも大なり小なりの差はあるものの、きっと持っているもの……
わたしの中にも頭の天辺から爪先にいたるまで、
しょぼしょぼと身体に悪さする友人が棲んでいる。
彼ら(病気)の機嫌が悪かったりすると、
それぞれいろいろな形で症状が現れる。
ときにそれは、大事にいたることを回避してくれる重要な
サインだったり、スケジュールをことごとく破壊してくれる
困りものだったり、さまざまな意味でわたしに影響を及ぼす。

でも、ツボ療法によって、もっと上手に彼らと向き合えたら、
きっととても良い友好関係が保てるのではと感じることのできる、
心身を安心させてくれる実用医学書。

個人的には、「花粉症、下痢、便秘、しゃっくり、風邪、不眠症、
イライラ、眠気に効くツボ」が嬉しい1書。

ひとりでできるお手軽ツボ&マッサージ入門ひとりでできるお手軽ツボ&マッサージ入門
(2013/05/24)
古賀直樹

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

薬指の標本 小川洋子

薬指の標本

海の近くにある工場で、サイダー製造の仕事をしていた “わたし” は
タンクとベルトコンベアの接続部分に指を挟まれ、
左手薬指の先の肉片が欠けてしまった。
一瞬のことで痛みもなく、心も傷つきはしなかったが、
指先は見つからず、サイダーを飲もうとすると、口のなかで
桜貝に似た肉片を感じるような錯覚に陥り、
サイダーが飲めなくなってしまった。

そして工場を辞め、街を出てさまよっているときに、
古びたアパートのような建物のなかにある標本室と出会い、
「事務員求む」の貼り紙を見つける。

中庭に面した一室で面接が行われ、澄んだ目をした
白衣姿の弟子丸氏に、研究室の説明を受ける。
元々アパートだったので、そこに古くから居た老婦人2人が、
今も住んでいること、勤務条件や仕事内容などを聞いてから、
きつく握手された。

採用が決まり、標本を見せて欲しいと弟子丸氏に請うと、
彼が持ってきたのは、きのこの標本だった。
両親と弟が焼死し、頬に火傷の跡がある16歳の少女が持ってきた、
家の焼け跡に寄り添うように生えていたという3本のきのこ。
失ったものを、きのこといっしょに封じ込めたいと、少女は言ったという。

標本室では、弟子丸氏が標本を作製し、 “わたし” は
来訪者応対と記録簿整理にこまごまと雑用をする。

勤め出して1年ほど経った夏の日の終業時、弟子丸氏から
話があると言われ、2人で乾いた浴場に行き、浴槽に並んで腰かけた。
弟子丸氏から、標本のためによく働いてくれたお礼だと、
黒いリボンの付いた高価そうな黒い革靴を渡されて、
古い靴を脱がされ、代わりにはかされたその黒い革靴。
それはあまりにぴったり “わたし” の足に馴染んだ。
彼は古い靴を投げ捨て、新しい靴を1日24時間、
毎日はいて欲しいと言う。

それから2人はしばしば浴場でデートを重ねるようになる。
浴槽に腰かけていろいろなことを話し、浴槽の底で服を脱がされる。
黒い革靴だけをはいたまま、抱き合うのだった。

タイルの上で身体を密着させながら、標本にしたいものはないか
訊かれると、左手の薬指が彼のなかですでに標本に
なってしまったような気分になった。

秋風が吹き始めた頃、以前きのこを持ってきた少女が、
頬の火傷の跡を標本にして欲しいと訪れる。
弟子丸氏が彼女の肩を優しく抱いて、 “わたし” がまだ足を
踏み入れたことのない地下にある標本技術室へと消えていった。
2人を待ちながら、、来訪者の応対をしていると、文鳥の骨を
標本にして欲しいとやってきた靴磨きの老人に、その靴は高価で
貴重な代物だけど、足を侵し始めている。
四六時中はいてはいけないと忠告される。

老人が帰り、月が見え始めるまで待っても、
結局2人は地階から上ってこなかった。
翌日から、標本保管室で火傷の標本を探しまわったが
見つからず、それよりも弟子丸氏が彼女にどんなことをして、
彼女をどこにやったのかと思うと苦しくなった。

木枯らしが吹くようになると、依頼人は激減し、することもなく、
”わたし” は散歩に出た。
以前靴磨きの老人から聞いていた交差点に行き、
文鳥のおじいさんに靴を磨いてもらう。

「足が靴に飲み込まれる寸前だから、きちんとけりをつけた方がいい。
標本にしたらどうだい?」と提案され、しばらく沈黙したあと、
“わたし” は答えた。
「この靴をはいたまま、彼に封じ込められていたい」と。

標本室に戻ると、標本にするために必要な作業に入る。
和文タイプで試験管用のシールを作る。
標本名は薬指……

依頼者から預かった無機物の数々は、弟子丸氏の手で
標本になり保管される。
標本の意義は、封じ込め、分離し、完結させること。
別れた恋人からもらった処分できない自作の曲、
丁寧に清書された楽譜の音の標本。
ヒヤシンスの球根、知恵の輪、インク壺、かんざしなど、
いろいろな標本に封じ込められた過去の時間が漂う保管室。

老婦人から聞いた、標本室に勤めていた子の多くが、
突然来なくなったという話。
“わたし” の前に事務をしていた若い女性は、
ささやくような靴音を響かせ、地下室に向かったまま
戻らなかったらしい。

神秘的な肉体の存在と、奇妙とも思える2人の関係が、
ミステリアス感漂う文章で紡がれる。

薬指の標本 (新潮文庫)薬指の標本 (新潮文庫)
(1997/12/24)
小川 洋子

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

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Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。