8月の投稿書籍

ジャンプ海 人ギャングスタ 1
非正規レジスタンス
食の軍師
ピンポン 第3集 黄色い目の魚まんがで読破葉隠陰日向に咲くリセット
エルフェンリート1こんなにも恋はせつなGボーイズ冬戦争焼肉のことばかり娼   年

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娼年 石田衣良

娼年

10歳のぼくが、病院の霊安室で泣き続ける。
繰り返し見る夢だ。

世の中のすべてがつまらないと思っている大学生で
20歳のリョウ(森中領)は、バイト先のバーで
カクテルグラスを磨いていた。
客は中学時代の同級生で、ホストのシンヤ(田島進也)のみ。

そこにやってきた、長身で高価なロングコートを羽織った
御堂静香を、シンヤがリョウに紹介する。
リョウは彼女の笑い皺に惹きつけられ、母の姿を重ねていた。

14歳で初体験をすませてから、同い年か年上の多くの女の子と
付き合い、セックスと別れを繰り返してきたリョウだが、
今は無理してまで女性と付き合おうとは思っていない。

1週間後、店にふたたび静香がやってきて言う。
「女性もセックスも退屈だと言っていたけど、それを
証明してくれない。あなたのセックスに値段をつけてあげる」

その言葉を受け、母親ほど歳の離れた静香に、
リョウは残酷で挑戦的な気持ちが芽生える。
彼女は注文したギムレットには口をつけず、
12時に迎えにくると言って、店を出て行った。
退屈な人間が作るギムレットは、退屈で虚ろな味がすると
リョウはそのギムレットをひと口確認して、シンクに流す。

閉店後、静香の運転するメルセデスに乗り込み、
連れていかれたのは、古い洋館のレストラン。
次に向かったのは、各階に1戸しか入っていない、
静香のマンションだった。

若い男のセックスを試し、それに値段を付けることが静香の
目的だと思っていたが、マンションの寝室には少女・咲良(さくら)が、
グラスの乗った盆をかかげ、入ってきた。
そして静香は言う。
「私は見ているから、あなたのセックスを試しなさい」と。

静香の視線を受けながらするセックスは、鋭い快感と苦痛をもたらし、
咲良の水のなかに埋まる。
窓際に目を移すと、静香は心から興奮していた。

結果は不合格。
静香がテーブルの上に置いたのは、新券の5,000円札が1枚。
そこに咲良が5,000円札を重ねる。
そしてリョウはぎりぎり合格となった。

静香が経営しているのは、女性に男の子を紹介するクラブ『パッション』。
最低料金は1時間1万円。

咲良が5,000円を足したことで、リョウは最低料金で合格したのだった。

ふたりですれば素敵なことを、心を開かずにひとりでしていると
静香に指摘され、リョウは退屈を抜け出し、情熱を探すため、
クラブに入会する。

単純な男性とは違う、複雑な女性の性。
目の前の女性に注意を集中させ、さまざまな想い、欲望、
心のうちを見つめ、感覚や知性のすべてを働かせて、
女性が望むものを見極め、それに応える。
母の面影を追ってか、年上の女性に憧憬が深く、
器用になれずにどこか母性を引き寄せてしまうリョウ。

精緻でスタイリッシュなタッチの風景やファッション。
尊敬さえうかがえるような筆致で、女性を見つめ、
心を見ることで、豊かな精神を育んでいく恋愛成長物語。

娼年 (集英社文庫)娼年 (集英社文庫)
(2004/05/20)
石田 衣良

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

焼肉のことばかり考えてる人が考えてること 松岡大悟

焼肉のことばかり考えてる人が考えてること

大勢でワイワイ楽しめる。
熱い焼きたてを好きなように食べられる。
ステーキよりリーズナブル。
エンターテインメント性が高い。
などの理由からか、日本人は焼肉が大好き。

しかし気をつけなければならないのは、
ほかのジャンルのお店では決してあり得ない、
客自身が調理するというところ。
上等なお肉も、焼き加減を間違えれば、
美味しくない焼肉になってしまう。
焼肉を愛するほとんどの人が、その落とし穴にはまり、
さらにそのことに気づいていない。

100が満点だとすると、ほとんどの人がお肉の旨みを
70までしか引き出していない。
本書はいかに美味しくお肉を焼くか、焼肉で幸せを
感じられるよう、残りの30をイラスト付きで分かりやすく、
詳細に解説された実用書。

CONTENTS
はじめに
第1章 焼き肉の極意
第2章 美味しいお肉をもっと美味しくいただくために
第3章 美味しい店の探し方
第4章 オーダー前に考えること
第5章 焼肉マナーを知る
あとがき

お肉のこと、七輪やガス、焼き方や焦がし加減、焼き技に
食べ時など、今まで知らなかったことに
「へぇ〜」とか「そうなんだぁ〜」などと唸りつつ読破して、
なんだか焼肉奉行になれそうな気がしてくる。
本から香ばしい匂いが漂うような錯覚に包まれながら決定。
今日の夕飯は焼肉!
といっても、お肉は豚肉のロースかフィレしか
食べられないのだけれど……

焼肉のことばかり考えてる人が考えてること (扶桑社文庫)焼肉のことばかり考えてる人が考えてること
(扶桑社文庫)

(2012/09/01)
松岡 大悟

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパーク7 石田衣良

Gボーイズ冬戦争

12月の深夜、サンシャインに向かう交差点で、大型ワゴン車に
乗ったGボーイズ有数の武闘派ヤマト疾風が、
数人の目出し帽の男たちに襲撃された。

その頃マコトは、アキヒロ(須藤明広)から、マコトの書いたコラムの
借用と映画の出演を依頼され、原作料&出演料なし、食事付きで
依頼を承諾し、撮影に入るところだった。
あとから後悔することも気づかずに。

ロケ地はアキヒロのバイト先であるビデオ屋。
撮影時間は店が閉まっている午前3時から正午。
撮影班がセッティングをしている間の待ち時間、キャストの1人である
Gボーイズのクロウから、Gボーイズナンバー2のヒロト(池内寛人)が、
キング・タカシに内緒でマコトに会いたがっていると聞かされる。

クロウの話では、ヤマト疾風のほかに、π(パイ)というチームも
謎の目出し帽一味に襲撃され、両チームともヒロト派で、
ナンバー2にのし上がって来たヒロトを牽制して、タカシがなんらかに
関与しているのではという噂が広まっているという。

そこで羽沢組系氷高組渉外部長のサルに電話して探りを
入れてみたが、裏世界でのパワーバランスを保つのに、
Gボーイズは不可欠な存在であるという。
つまり氷高組の関与はないらしく、マコトの頭は困惑気味。

撮影が終わりビデオ屋を出ると、高価なSUV車が待っていた。
クロウとともに車に乗り込み、連れて行かれたのは
立体駐車場の7階。
そこにガタイのいいヒロトが待っていた。

ヒロトはタカシへの敵対心丸出しで、タカシの親友であるマコトに、
目出し帽を探し出せと命令し、タカシへの宣戦を布告する。
誰かに命令されることが嫌いなマコトは、脳みその足りないヒロトに、
タカシに歯向かうことをやめるよう忠告するが、交渉は決裂。

目出し帽集団にヒロト、そして裏世界のパワーバランスという、
トラブルの中心にいるのに、タカシからの連絡がないことに、
家業である果物屋の店番をしながら苛立つマコトは、
携帯電話を取り出し番号を押す。
電話が繋がるが、明るくまともで普通過ぎるタカシに、
マコトは胸騒ぎを覚える。

目出し帽だけではなく、組織が “影” と呼ばれる男を
雇ったという噂がある危険な状況に、マコトを
巻き込みたくなかったと話すタカシにマコトは激怒する。
そして目出し帽集団の正体を突き止めるため、
池袋の街を奔走する。

平凡な日常に棲む毒蛇。
善人のつもりで傷つけてしまった復讐という猛毒を持つ幽霊。
その幽霊が過去からよみがえる。

小気味好いテンポ、リズミカルな文調、豊かな表現力。
文節の折々に必ず入れてくれる、滑らないオチ。
緊張と弛緩を適度に感じながら、安心して読み進むことができる、
爽快なエンディング。

ほかに『要町テレフォンマン』『詐欺師のヴィーナス』
『バーン・ダウン・ザ・ハウス』が収録された、マコトとGボーイズの
王様タカシとの友情物語連作短編集、I W G P 第7弾。

Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク〈7〉 (文春文庫)Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク〈7〉 (文春文庫)
(2009/09/04)
石田 衣良

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

こんなにも恋はせつない 恋愛小説アンソロジー 唯川 恵 選 日本ペンクラブ 編

こんなにも恋はせつない

『焼却炉』 江國香織
耳鼻咽喉科のわきに咲いているおしろい花をちぎって、
実をそっと引っ張り、糸を垂らして「釣り針」を作る。
それはたんに習慣。

小学4年生の “私” はいやな子どもだった。
嘘つきで、学校も子どもも窓も蛍光灯も嫌いで、
嫌いじゃないものは、裏庭や水道、それに朝礼台ぐらい。
よく保健室に行って、そこで寝て、母に迎えに来てもらうのだ。

“私” の親しい場所・焼却炉は、体育館の裏にあり、
近くにおしろい花が咲いていた。
“私” はその焼却炉でいろいろなものを燃やす。

夏休みのある日、ボランティアの学生が、
巡回影絵の一団として学校にやってきた。
公演のだしものは「赤いろうそくと人魚」で、ほかに
歌やゲーム、紙芝居もあり、学生たちは体育館に
泊まる予定で、そのまま子どもたちははしゃぎながら、
彼らに遊んでもらっていた。

“私” は積み上げられたマットの上で、
ひとりの男子学生を見ていた。
長身痩せ型で、少し長い髪の彼は、
歌うとき無表情だったのだ。
ほとんどの学生が笑顔なのに、ひとりだけ
無表情の彼に、強く心惹かれた。

“私” はずっと彼だけを見て、彼の声に耳を澄ます。
静かで深い笑顔、憂鬱の影。
見ていると苦しいのに、目が離せない。

やがて下校を合図する校内放送が流れても
帰ろうとしない私に、彼が声をかけてきた。
大きくて温かい左手を、“私” の頭にそっと乗せて。
“私” は泣きそうになった。
きっといろいろ話ができて、気が合うのに、それを
彼がわかっていないことがもどかしい。

そして彼は、彼の属している場所、
仲間のもとへ戻っていった。

帰宅しても、彼のことを考え、会いたい、
そして気づいて欲しいと願う。
明朝には学校を去ってしまう。
今日中に会いに行かなければ……

10作のせつない恋の物語は続いていく。
『物語が、始まる』 川上弘美
『倒錯の庭』 小池 真理子
『ドン・ジョバンニ』 高樹 のぶ子
『おそすぎますか?』 田辺聖子
『グレーの選択』 藤堂 志津子
『花を枯らす』 林 真理子
『アンフィニ』 森 瑶子
『天国の右の手』 山田詠美
『月光の果て』 唯川 恵
『恋愛ーーこの割に合わないこと』 唯川 恵

誰かに出逢い、心惹かれ、味わう高揚感、
焦燥、哀しみ、絶望、恍惚と恐怖。

恋愛、それは著者が語るように、
割に合わないものかもしれない。

きらめきや悦び、ときめきや安らぎよりも、
絶対的に悲しみや嫉妬、儚さや虚無感に
支配されることが多いのだから。

愛と性、義務と習慣、束の間の緊張、苦悩と安心、
諦念と自由、こらえる快感、無であるがゆえの永遠。
それぞれの想い、さまざまな恋愛の形を存分に楽しめる1書。

こんなにも恋はせつない (光文社文庫)こんなにも恋はせつない (光文社文庫)
(2004/01)
唯川 恵

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

盛田隆二 先生 との 出逢い

盛田先生本
NowThen


『リセット』の紹介をアップした日、
著者である盛田隆二先生からツイートをいただいた。

「そ、そんなバカな!」
著名な作家先生から、直々にコメントをいただけるなんて……

俄かには信じられなかった。
先生のお名前をかたったイタズラではないかという
疑念さえ抱いたほどに。

文章のプロである方に、未熟者が書いた拙文を
ご笑覧いただくだけで、恥ずかしいことこの上ないのに、
ご丁寧な文面でお礼までいただいたのである。
その日は1日中、まるで地面から10cmぐらい上を歩いているような、
ふわふわ優しい夢心地のなかに浮遊していた。

本が恋人で、本の魅力を少しでも多くの方に知ってもらえたらと
始めたブログで、見知らぬ人と、本によってつながり、
大好きな作家先生とじかに言葉を交わすことのできた悦び。

盛田先生の作品の素晴らしさもさることながら、真摯なお人柄に
触れることのできた幸せは、とても言葉では言い尽くせない。

本がもたらしてくれた奇跡。
ブログをご笑覧くださっている方々と、
そして盛田先生に心より感謝申し上げます。

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

エルフェンリート 岡本 倫

エルフェンリート1  

偶発的に自然発生した遺伝子異常による、
人間のミュータント(突然変異体)。
適応能力と生殖能力がある “彼女” は前途有望な
怪物であり、神に選ばれた人類だった。
腕が2本ではないディクロニウス(ニ觭人)の “彼女” に、
ホモサピエンスである現代人が滅ぼされる懸念があるため、
離島の収容所に閉じ込められている、

人間が知能の代わりに失った、第六感をつかさどる松果体。
人間はその松果体が5mmほどの大きさしかないのに、
“彼女” の場合、それは卵くらいの大きさを持ち、
そのため精神障害をおこす危険性も持ち合わせていた。
もし “彼女” がここから逃げ出せば、 “彼女” によって
人類は存亡の危機にさらされるのである。

東大卒の才媛であるはずなのにかなりドジで、藏間室長の
秘書である如月が “彼女” に人質にとられ、
首を引きちぎられ、また多くの職員も殺された。
そして “彼女” は収容所を脱走し海へ逃げたのである。
藏間は悔しさと不甲斐なさにいたたまれない思いを抱きながら、
引きちぎられた如月の頭を見遣り、必ず仇を討つと誓う。

15校の大学を受験して、かろうじて補欠入学できたコウタは、
神奈川の従姉妹ユカの家に下宿することになった。
コウタが、迎えに来たユカと浜辺を歩いていると、
角の生えた全裸の少女が海から上がって
ずぶ濡れのまま立っていた。

少女はふたりを見て逃げ出そうとして、缶につまずいて
転び、「ふにゃー」と泣き出す。
ユカが心配して声をかけるが、少女は
「にゅ」としか言わない。
どうやら言葉が通じないらしい。
とりあえず、その少女をコウタの下宿先である元料亭
「楓荘」に連れていくことにする。

コウタはその少女に、病死した妹のカナエを重ねながら、
形見の貝殻を見つめていた。
コウタの表情が悲しそうなのは、貝殻が原因だと
勘違いした少女が、それを割ってしまい、激怒したコウタが
怒鳴り、少女は泣きながら楓荘を飛び出す。

由比ヶ浜で若いカップルと全裸の少女を見たという
目撃情報が警察に届き、猟奇的な男、
特殊部隊SATの坂東に出動命令が出る。

コウタとユカが、冷たい海に入って必死で貝殻を探している
少女を見つけたとき、武装した坂東たちが現れ……

CONTENTS
『妖精』
『にゅう』
「SATの男』
『記憶の消失』
『攻防』
『変身』
『接点』
『MOL』

バイオレンスにエロス、差別やいじめをテーマとして、
グロテスクで残酷なシーンとは対照的に、キュートな
イラストとギャグが盛り込まれた、
サイエンスファンタジーコミックシリーズ第1弾。

エルフェンリート 1 (ヤングジャンプコミックス)エルフェンリート 1 (ヤングジャンプコミックス)
(2002/10/18)
岡本 倫

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テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

リセット 盛田隆二

リセット

折しも酒鬼薔薇聖斗名乗る惨殺事件が世間を震撼とさせた時期と
並行して、この物語も進行していく。

日本人離れした容姿で、小学4年生のとき、ニューヨークから
日本に来た帰国子女の菜々は、高校で同級生の絵梨、桃子、
美和子、あずみにブルセラを強要され、そのあと桃子の母と
同い年で桃子の相談相手である木下の部屋を訪ねて、Sを体験する。
脳がクリアになり、雲の上にいるような気分になった。
ふと見ると、隣室では桃子と木下がベッドで絡み合っていた。

作家で、菜々のシングルマザー・志村曜子は、38歳で編集長の
滝田と同棲しているが、彼が若い菜々に気持ちが向いていくのでは
という不安を抱え、その不安から逃れるためにアルコールに溺れる。

菜々は寝室から漏れてくる母のうめき声を酷く嫌悪し、Sを打ってから
嫌いなはずの滝田の顔が浮かぶ自分に苛立つ。

滝田の離婚した妻でデザイナーの和美は、年下のカメラマン平瀬と
再婚したいと思っていると、娘のしおりから聞かされ、滝田は
まだ小学4年生のしおりのことが心配になる。
また、しおりは菜々に砂の中に埋められる夢を何度も見るのだと、
滝田に打ち明ける。

3年前、曜子の書いた新作が滝田との実話だと思った菜々は、
滝田の家に乗り込んで抗議した。
そのことがきっかけとなって、しおりは寡黙症に罹り、
夫婦は離婚することになった。

ニューヨークに住む異母兄・トマスから実父のショウゴ・ムカイの死を
知らされ、美和子たちからむりやり預けられたパー券の代金を支払うため、
桃子に紹介された池袋の店で演技付きブルセラをする菜々は、
6年経っても日本人になれず、アメリカに帰りたい、生まれたところに戻って、
他人事のような自分の人生をやり直そうと思うようになる。

雑誌編集から書籍出版部へ異動になった滝田の送別会の最中、
神戸の通信社契約記者から緊急連絡が入る。
NHKを映すテレビ画面のテロップには、神戸の小学6年男児惨殺事件、
中学3年生(14歳)の容疑者逮捕の文字。

その頃、菜々はパーティで知り合った店のオーナー桑野と、
彼のウィークリーマンションにいた。
アプリでフワフワした意識のまま、酒鬼薔薇聖斗事件のニュースを観て、
男の子だから血が見たかったんだと、ぼんやり考える。
男なんて血を見たいだけなのだ。

なぜこんなことをしているのか……
母親のせい?それとも滝田?木下と桃子?酒鬼薔薇?
処女は嫌いだという桑野に、菜々から求めた理由の答えも判然とせず、
ばらばらに感じる時間に意識がふらつきながら、「お母さんが救急車で
運ばれた」という滝田からの連絡に、感じるのは自業自得という
冷淡な思いだった。

帰国子女だからすましているという理由でシカトされた中学時代、
菜々を励ましてくれた存在だったのに、なぜかストーカーのようになって
常軌を逸し、家庭では暴力を繰り返す雅也。
麻布のフランチレストランオーナーと、月40万円で契約している絵梨。
デブ・ハゲ・変態の中古車屋と援助交際しているあずみ。
浮気相手宅に入り浸る父と、学園長の愛人になっている母を持ち、
中学3年のとき、イジメられてリストカットをはかった桃子。

不安と焦り、絶望と孤立。
世間から忘れられた敗北の人生。
酒鬼薔薇にライバル心を燃やす雅也のリセット。
雅也とは別のリセットを決意する菜々。

醜い心、ずる賢い教師、パワハラ。
KIX、RUSH、アプリ、金魚などのドラッグ、レイプ、隠し撮り、
無防備な高校生の危うい実情。

景気は悪化の一途を辿り、自殺者が3万人を超えて、離婚率も
過去最高となった、暗さが強調された社会情勢。

出世ばかりにとらわれ、家庭を顧みない父親。
自分の見栄を押しつける母親。
母と娘、母と息子、父と娘、家族の複雑な感情と、虚無感と現実の、
静かに迫る恐怖が描かれた傑作長編小説。

紹介文を書くため、我が家の小さな図書館から本書を
引っ張り出して再読する。
いちど読んでいるにもかかわらず、その続きは?それから?と、
逸る気持ちを抑えられない。
そしてデジャヴのごとく、再度盛田さんの描く世界の迫力に圧倒される。


リセット (ハルキ文庫)リセット (ハルキ文庫)
(2005/04)
盛田 隆二

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

陰日向に咲く 劇団ひとり

陰日向に咲く

『道草』
主人公の “私” は、深夜残業のあと、新宿西口に近いコンビニで
煙草とライターを買い、店先のガードレールに腰掛けて
煙草を吸いながら、ホームレスだった昔日を振り返る。

それは、仕事でプレッシャーを感じていたときだった。
会社に向かう、いつもの満員電車にホームレスが乗っていた。
乗客は皆、彼を避けるが、自分だけが懐かしい匂いを感じ、
勝手にモーゼと名付けたそのホームレスのあとについていった。

着いた先は、新宿西口に近い公園で、そこには
自由なホームレスがたくさんいた。
しばらく自由人遊びをしていたが、自由が欲しかったわけではなく、
人生から逃げたかっただけだと気づき、結局会社に戻った。

けれど仕事をしていても、ホームレスを夢見てしまい、あの公園が
気持ちを占拠していることを自覚し、ボロボロのホームレスファッションを
自作して、妻と娘が眠ってから、自室でそれを着て楽しんでいた。
やがてそれだけでは満足できなくなり、公園にでかけて
偽ホームレスの日々を送るようになった。

モーゼとも話をするようになり、彼が背負ってきた人生なども聞き、
着物姿の女性と野球帽をかぶった少年の写っている写真も見せてもらう。
ダンボールと寝袋で小屋らしきものを作り、コンビニのゴミ置き場を漁り、
若いグループにからかわれたりと、ホームレス生活を満喫していたとき、
探偵がやってきた。

最近、超大物若手野球選手K・Yの母親が亡くなり、その母親が
死に際まで父親のことを気にかけていたのを思いやって、
息子のK・Yがホームレスとなった父親を探しているという。
その父親がモーゼだということが判明し、モーゼはK・Yとともに、
公園を去っていった。

それからしばらくして、コンビニで痩せた若いホームレスが
弁当を漁っている姿を見て、自分の愚かさに気づき、
元の生活に戻ることを決意して、住民たちに別れを告げた。
そして思い出を作っておこうと、モーゼのいなくなった部屋に入り、
以前見せてもらった写真やK・Yの切り抜き記事を見ていると、
入り口に見知らぬ男が立っていた。

男はこの部屋の住人だというが……
では、モーゼはいったい……

物語は、 “私” を元の生活に戻したホームレスと思われる
青年が主人公となる『拝啓、僕のアイドル様』とつながり、
『ピンボケな私』『Overrun』『鳴き砂を歩く犬』と、
こみ上げるおかしさ、詰まる思い、ほのぼのとした安らぎ、
次の章では誰が主人公となるか、誰と誰がどう繋がって
いくのか、ワクワクしながら紡がれていく。

少し前まで、大好きな大泉洋さん主演、またまた大好きな
柴咲コウさんヒロインで、劇団ひとりさん監督デビュー作の
『青天の霹靂』が公開されていた。
しかもロケ地は、わが故郷信州の上田ということもあり、
その映画がとても気になっていた時もとき、Amazonの
日替わりセールに登場した本書。
躊躇なくワンクリック購入ボタンに、力強く指を乗せた。

陰日向に咲く (幻冬舎文庫)陰日向に咲く (幻冬舎文庫)
(2008/08)
劇団ひとり

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

美の完成品「トウモロコシとトマト」

SVS.jpg   
農家の友人から、採りたてトウモロコシ&トマトをいただいた。

見よう見まねで、少しだけきゅうりやトマトを作っている素人箱庭
ファーマー作品とは大違いの、芸術的な容姿を持つ
彼らに魅入ってしまった。

なめらかな流円形が流れる弧のなかで、深みのある朱と
黄色が立体を感じさせるミディトマト。
淡い薄緑の皮に包まれ、頭部から実と同じ数の髭を
垂れているトウモロコシ。

はしたなくも、すぐ味わってみたくて、さっそくトウモロコシを
入れた蒸し器を火にかける。
黄色の粒つぶが湯気に輝き、シトリントパーズのようにきらめく。

5分も経たないうちに、トウモロコシの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
もう我慢できず、火を止め蓋をはずす。
もわ〜っと湯気を顔に受けながら、トングでしっかり掴んで、
お皿に乗せる。

髭が生えていた先っぽの小粒に、ふ〜ふ〜乾いた息を
吹きかけながらむしり、口に入れる。
思わず何年も前にお笑い番組で聞いたギャグ
「あま〜い ‼︎ 」と、叫んでしまった。

トウモロコシといって思い出すのは、幼いころ、居間のテーブルに
おやつとして置かれていた、シワシワのトウモロコシ。
どうしてこんなに皺だらけなんだろう?と不思議に思いながらも、
プールから帰ってきたばかりの空腹状態で、かぶりついていたなぁ。

今のトウモロコシはツヤツヤ肌に、はち切れんばかりに膨らんだ実。
甘さも香りも最高。
ただ、あのころ食べたシワシワトウモロコシも、また味わってみたいなぁ。

などと感慨に耽りながら、あっという間にトウモロコシは
あられもない姿に変身!
来年は我が家の箱庭ファームに、トウモロコシデビューかな ⁈

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

まんがで読破 葉隠 山本常朝・作

まんがで読破 葉隠

佐賀鍋島藩、三代城主鍋島綱茂公が病死して
吉茂の代に変わると、奉公人も新しくなり、
新参者が主君をそそのかして、贅を尽くし、
私利私欲ばかりを追求する不義理で
不忠者だらけの世になってしまった。

殿様のお側役人で祐筆役(武家の秘書役)を承っていた
田代陣基(たしろつらもと)は、お家の憂いを看過できず、
周りに苦言を呈したり、上の者に意見したりしてみるが、
逆に疎んじがられ、勤めの場で孤立していった。

そして体調を崩して休みがちになり、休職を命じられる。
失意のどん底で、佞臣(ねいしん)どもを斬り捨て自分も
切腹しようと考えていたとき、先輩である金丸郡右衛門が
訪ねてきて、本当の武士道の覚悟や真のご奉公を知るために、
山本常朝殿に師事しなさいと言われる。

陣基は金立山の麓に向かい、庵・草庵の門をくぐる。
常朝は、二代光茂公が逝去したのを機に、
42歳で世捨て人になった。
それから10年間、侍の鑑と言われた常朝は、
人々から慕われ、草庵を訪れる者は多い。

このお方なら、お家の問題によい答えを出してくれるものと信じ、
陣基は草庵の近くに住み、談話を聞きながら、
常朝の言葉を後世に残さなければと、編纂につとめるのである。

礼儀と謙虚の心で人につくす。
自分に厳しく人に慈悲。
よい行いは苦痛に耐えること。
真実は行動のなかに生まれる。
一瞬一瞬を我がものに生きる。
先人を知り、敬い、倣う。
など、葉隠れ武士道が訥々と説かれ、徳、真心を唱えた、
山本常朝作『葉隠』のコミカライズ版。

葉隠 -まんがで読破-葉隠 -まんがで読破-
(2013/06/28)
山本常朝、バラエティ・アートワークス 他

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テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

黄色い目の魚 佐藤 多佳子

黄色い目の魚

『りんごの顔』
両親が離婚して7年8か月、小学5年生の木島悟に、
突然父親のテッセイ(哲生)から会いたいと電話があり、
顔も覚えていない父と新宿アルタの前で待ち合わせた。

ヴェルディのフラッグを持ってきたり、大人料金の切符を
渡したりするテッセイといると、小さな子どもになったり、
大人になったりするような気分になる。

母から聞くテッセイの話は悪口ばかりだけど、本当の姿を知りたくて、
アパートに連れていってもらうと、2つの部屋にはいたるところに
油絵が飾られていた。
画家ではなく、ただ1人で絵を描いていたと母から聞いていた。
悟は、その絵のなかに人物画がないことにがっかりする。

人を描くのは苦手だというテッセイの顔を描こうとしたが、なぜか描けず、
代わりにリンゴをモデルにテッセイからデッサンを教わり、帰りたくないと思う。
妹の玲美の話をすると、柔らかい目をするテッセイを見て、泣きたくなった。

その夜、リンゴの夢を見た。
それはとても怖い夢だった。
夢のなかでリンゴに脅迫されているのかもしれないと思って目覚め、
デッサンで描いたリンゴの絵に顔を付けなければと鉛筆を持つが
うまくいかず泣き出してしまった。
テッセイが起きてきて、代わりに描いてくれると言ったので、安心する。
そしてテッセイは最高だと、悟は思う。

翌年の秋、テッセイは肝臓病で他界した。
油絵の道具を悟あてに残して。

『黄色い目の魚』
小学校1年のとき、動物という課題で描いた三角の黄色い目をした
太った魚の絵は、叔父で漫画家兼イラストレーターの
通(とおる)ちゃんのアトリエの壁に飾ってある。

通ちゃんはその絵を元に『サンカク』というキャラクターの漫画を描き、
人気が出た。
手下でマヌケなホタルイカのユラユラと、ジンベイザメの
デカスギも登場する。

大磯駅から少し海寄りにある小さなマンション。
そこが通ちゃんのアトリエで、みのりのいちばん好きな場所だった。

かんしゃく持ちで短気なみのりは、家族から怖い目の『サンカク』だと
言われ、嫌われ者だ。
アトリエにはデブ猫の弁慶と、丸いアクアマリンがいて、
壁にはたくさんの絵が飾られている。

通ちゃんは35歳独身で、しょっちゅう機嫌が悪いが、
子ども扱いも大人扱いもしない。
みのりが通ちゃんのアトリエに行くと、みのりの変人ぶりが
パワーアップしそうだと、家族は嫌がる。

中学校に入学して、3か月で3人の女子と絶交して、クラスで
浮いてしまったが、もう1人あまっていた美和子になつかれて、
彼女はやりたい放題のみのりのあとをついてくる。
それはまるで、サンカクとユラユラのようだと、みのりは思う。

夏休みには通ちゃんのアトリエに泊まり込んで、アシスタントを雇わない
通ちゃんの漫画の手伝いや賄いをしていたが、
家族に連れ戻されて噴火した。
噴火は中学校に入学して3回目だった。

2学期になると男子も荒れて、美和子へのイジメはタチが悪くなった。
みのりが先まわりして男子と戦うことでクラスは険悪な空気が漂い、
HRで問題になった。
美和子を助けるためにしたことなのに、担任もクラスメイトもみのりを責め、
下を向いてなにも言わない美和子に苛立ち、皆の前で思わず
美和子を好きだと思ったことはないと、叫んでしまった。

翌日から美和子は不登校になった。
母に連れられ謝罪に行っても会ってもらえなかった。
通ちゃんが仕事している姿を眺めながら、涙が止まらず、
通ちゃんに学校での出来事を話して、黄色い目の魚の絵を
返して欲しいと頼む。
美和子が通ちゃんのファンだから、その絵を渡したいと言って、
自分が最低だったことや学校に来て欲しいことなど、長い手紙を添えて、
通ちゃんに送ってもらった。

数日後、不登校だった美和子は彼女の席についていた。
みのりがドキドキしながら近づくと、笑って「おはよう」と言ってくれた。

そして
『からっぽのバスタブ』で、
落書きばかりしている悟と、親友という言葉が大嫌いなみのりが、
高校の同級生となって出会うことになる。

『サブ・キーパー』
『彼のモチーフ』
『ファザー・コンプレックス』
『オセロ・ゲーム』
『七里ヶ浜』

と、続いていく物語は、2人が出会ったことで、真剣にお互いを、
現実を見つめ、真髄を見極めていく。
どこにでもいそうで、でもやっかいな心を持つ魅力的な2人の高校生の、
学校生活や家族、友人や恋などの思いが、湘南を舞台に描かれた青春小説。

黄色い目の魚 (新潮文庫)黄色い目の魚 (新潮文庫)
(2005/10/28)
佐藤 多佳子

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ピンポン 第3集 松本大洋

ピンポン 第3集

最強エリート集団である海王学園は、
インターハイ団体2回戦敗退という結果に終わった。

右シェイク、F面裏ソフトB面ツブ高、カット主戦型、
インハイ県予選3回戦敗退、片瀬高等学校1年の
月本誠(スマイル)。
右ペン、表ソフト速攻型、インハイ県予選4回戦敗退、
片瀬高等学校1年の星野裕(ペコ)。

右中国式ペン、裏ソフトドライブ攻撃型、インハイ県予選
4回戦敗退、中国人留学生の孔文革(コンウェンガ)。

右シェイク、裏ソフトドライブ主戦、オールラウンド型、
インハイ個人戦優勝、海王学園2年の風間竜一(天才ドラゴン)。
右ペン、表ソフト速攻型、インハイ県予選ベスト4、
海王学園1年の佐久間学(アクマ)。

スマイルと幼なじみのペコは卓球に自信をなくし、
ゲームセンターに入り浸る。
タバコとスナック菓子漬けで、会う人会う人に「太った?」と
訊かれるほど、スポーツ選手らしからぬ自堕落な日々を送っていた。

スマイルは朝5時から、コーチとともに10km走に筋トレをこなすが、
部員たちからは見下していると思われ、浮いた存在と、
並外れた才能から、密かにサイボーグと呼ばれる。

卓球道場タムラでいっしょだったスマイルに試合を挑むアクマが、
片瀬高校にやってくるが、スマイルに惨敗し、個人的な対外試合を
禁止されている海王学園卓球部の退部を余儀無くされる。
不器用なアクマが、人の何倍も努力して築き上げた卓球の地位も、
スマイルからあっさり才能がないことを告げられヤケになってしまう。

卓球は辞めたはずなのに、卓球の話ばかりしては、
しばしばタムラに足を向けるペコ。
そこにふっ切れた気持ちのアクマがやってきて、
「ペコは才能に恵まれているんだから、卓球を続けろ」と諭す。
アクマの気遣いに心動かされたペコは、タムラの主人オババに
指導を頼み込み、それから二人三脚の特訓が始まった。

高校生離れした才能を持ち、ロボットのような卓球をするスマイルも、
才能がないことを受け入れたアクマも、幼いころから
ペコをヒーローだと感じている。

伝説のプレイヤーだった小泉丈に信頼を寄せ、
みずからハードな試練を課すスマイル。
自分の限界を知り、傷心ながらも、ペコを励ますアクマ。
ようやく自分の殻から抜け出す決心をしたペコ。

目を瞠るラリーの応酬、スピード感と迫力に圧倒されるイラストで
描かれた、スポ根友情コミックシリーズ第3集。

ピンポン (3) (Big spirits comics special)
(1997/02)
松本 大洋

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テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

神秘の色 ビーツ レッド

ビーツ1


「道の駅」が好き。
朝採れ野菜が並ぶコーナー。
地場産の果物などを加工した瓶詰めが置かれた棚。
そう広くはないスペースに誂えた、その土地の歴史を
忍ばせるメニューを味わえるイートインプレイス。

最近ずっと探していた、ロシア料理などに使われるビーツ。
近くのスーパーを何軒かまわったけれど、
出逢うことはなかった赤いカブ。

たまたま通りかかった「道の駅」に足を踏み入れると、
採れたて野菜のブースにポツンと置かれていた1束のビーツ。
それはまるで奇跡のようだった。
あれだけ探して、でもずっと出逢えなかった、
深く濃いワインレッドの輝き。

1束だけ残っていたことも、巡り会える運命にあったような、
ストーリー仕立てにしてしまうほど、深い感慨に包まれる。

残っていた、今日しなければならない用事もそっちのけで、
勇んで帰宅してキッチンに立つ。
なにを作ろうか迷いつつ、やっぱりあの鮮やかな
ワインレッドを生かすには、そのまま火にかけるスープの
類いがいいかなと、ラタトゥイユに決める。

いっしょに購入した、丸いズッキーニとナス、ブナしめじと
ベーコンにトマト、そしてビーツに、実と同じ赤く染まった茎も
大鍋に入れてに煮込むこと20分。

グツグツ音を立て、湯気がこぼれる蓋を取れば、
食欲をくすぐる香りに満たされる。
白い器に盛ると、ダークピンクに染まったズッキーニやナスが、
深いワインレッドのスープに浮かんでいた。

この神秘的な色にしばし見惚れ、真上から、斜めから、視線を
移して眺めながらふと思いついて、急いでデジカメを取りにいく。

食べてしまうのを逡巡してしまうほど美しいピンク色に言葉を失う。
そして思う……う〜ん、これはまさに “美ーツ” だぁ〜!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

食の軍師 泉昌之 作・久住昌之 画・和泉晴紀

食の軍師

主人公であるトレンチコートの中年男・本郷が、
食に関して真剣に向き合い対峙する。

その、あまりに真摯な姿勢は、滑稽にすら思え、
思わず失笑してしまう。
そして偶然とは思えないほど、行く先々の料理店で遭遇し、
ライバル心を燃やす力石に、妄想のなかで敵対し、
ことごとく敗北する。

舞台は行きつけのおでん屋から始まり、
東海道新幹線のぞみ号まで、どこにでもいそうなオヤジ的
おっさんが繰り広げる、食の異常なこだわりとダジャレ、
一人相撲に撃沈するグルメ三国志。

おでんの軍師
もつ焼の軍師
寿司の軍師
蕎麦屋の軍師
とんかつの軍師
バイキングの軍師
餃子の軍師
焼肉の軍師(全編)
焼肉の軍師(後編)
弁当の軍師
の10編収録。

わたしの友人はグルメが多い。
食べ歩くことが大好きなわたしは、常に「グルメの先輩」である
友人たちに情報を伝授され、新店開拓を試みる。
和食、イタリアン、中華、居酒屋、カフェ、BARなどなど。

本書に書かれた
〈おでんは注文の順番に、そのおでん者の知力・能力・経験が現れると
言われる〉という台詞に、ほんまかいな ⁈ と思いつつ、
おでん屋さんに行って、周りのお客さんがどんな順番で注文しているのか、
マンウォッチングしてみたくなる。

また、とんかつはまず塩で制し、それからとんかつソース、ウスターソース、
醤油、塩レモン、カラシ、そしてお刺身のヅケのように、とんかつソースを
たっぷりつけて寝かすというさまざまな食べ方に、今度の休日ランチは、
『かつ玄』……ローカルな話題ですみません……に行って
試してみようという気持ちになる。

本書は笑いとともに、食が恋しくなり、お腹が鳴りそうな1書。

食の軍師 1食の軍師 1
(2014/06/06)
泉昌之、久住昌之 他

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テーマ : アニメ・コミック
ジャンル : アニメ・コミック

非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークⅧ 石田衣良

非正規レジスタンス

『非正規レジスタンス』

非正規ワンコールワーカーは、労災も健康保険や厚生年金にも
加入していない者がほとんど。
擦り切れた服を着て、ネットカフェやファーストフード店で夜を過ごす。

正月休み明けの月曜日、20歳前後の若者が、店のフィリピンバナナを
凝視していた。
店番をしていたマコトがにらむと、擦り切れたジーンズを穿き、
ショルダーバッグをかけたその若者は、右足を引きずりながら
去っていった。

90分後、ふたたび現れた若者は、90分おきに店の前で立ち止まり、
並んでいる果物に熱視線を向けるのである。
さすがに気になったマコトはフィリピンバナナを差し出し、コラムの
原稿を書くため話を聞かせて欲しいと、交換条件を出す。

お金がないからとためらう若者に、自分が払うとマコトが促し、
2人は東京芸術劇場2階にあるカフェに入った。
若者は柴山智志と名乗り、愛おしそうにコーヒーを飲む。
久しぶりの贅沢だと言って感激している智志を見て、マコトはいつから
日本はこんなに貧しくなったのかとやるせない気持ちになった。

聞けば、地方から出てきて家もなく、ネットカフェのナイトパックと、
タンス代わりのコインロッカーを利用し、必需品はショルダーバッグに
入っているという。
人材派遣会社最大手のベターデイズに登録して、メールで仕事の
依頼を受けるその日暮らし。
事務所移転のバイトで、コピー機を運んだときに腰をやられたと話す
智志の夢は、脚を伸ばして寝ることだという。
文句も言わず、格差のどん底に落ちていく若者の存在に、
マコトは愕然とする。

数日後、智志に電話するが連絡が取れずに気になっていたところへ、
池袋のホットライン、キングのタカシからの紹介で、東京フリーターズ
ユニオンの代表で、黒いメイド服を来た萠枝と名乗る女性がマコトを訪ね、
「柴山智志さんが右膝をギプスで固定され、区の福祉施設に
宿泊している」と話しはじめた。
智志がアルバイトの帰り道に、何者かに襲われたと聞かされ、
トラブルシューターのマコトが池袋の街に繰り出していく、
ご存知池袋ウエストゲートパークシリーズ第8弾。
ほかに『千川フォールアウト・マザー』『池袋クリンナップス』
『定年ブルドッグ』収録。

池袋の果物店を営む母とふたり暮らしのマコトは、原稿料と
店番収入で年収200万円台。
うわっ、同じ。わたしも!と、妙に親近感を抱きつつ、フットワーク軽く
リズミカルで軽妙な文調に包まれる。
低所得の虚しさもどこへやら、石田作品に触れられる悦びに、心より思う。
あ〜、なんて幸せ!

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉 (文春文庫)非正規レジスタンス―
池袋ウエストゲートパーク〈8〉
(文春文庫)

(2010/09/03)
石田 衣良

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ギャングスタ GANGSTA 1 コースケ

ギャングスタ GANGSTA 1

荒んだ街、エルガストルム。
そこでヤバイ仕事を請け負う便利屋の2人。
眼帯をしているが、睫毛が長く美男で、
ジゴロが本業のウォリック。
元傭兵で耳が不自由だが、目の利きが鋭いニコラス。
暗い過去を持つウォリックと、タグを付けているニコラス。

チャド警部から、この街の禁止区域にまで活動範囲を
広げている組織を殲滅するよう依頼された2人が、
バリー・アポット一味を退治する。
バリーの女で行き場のないアレックスは、売春を
強要されていたが、2人に助けられ、彼らと行動を
ともにするようになる。

ニコラスに手話を習うという口実でやってくる12歳のニナは、
看護師としてテオ先生のもとで働いている。
ニナはニコラスの薬とテオ先生からの依頼を持って、
彼らの部屋を訪れたのである。

その依頼とは……組織に入れと恐喝されている黄昏種(トワイライツツ)を
片づけて欲しい……というもので、テオ先生のもとへ急ぐニコラスとニナ。

タグは「猛犬注意」の警告であり、階級が表示されている。
ニコラスのタグは最上のA0級。

ニコラスがタグB級の馬鹿力と闘っている最中に、片手間に
テオ先生とやりあったり、ウォリックがアレックスのお尻を
さわさわしたり、マフィア世界の話だというのに、
ユーモラスな魅力が光るファンタジーコミック。

GANGSTA. 1 (BUNCH COMICS)GANGSTA. 1 (BUNCH COMICS)
(2011/07/08)
コースケ

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

海人 UMINCHU 小林照幸

海人

2003年3月、先月76歳になった海人(ウミンチュ・漁師の意)の
照屋規正(てるやきせい)は、3トンのポンポン船「第5照丸」に乗り、
辺野古沖で漁をしながら、不思議に思う。
その日、収獲が0だったのである。
1936年、9歳のとき、糸満売りで親に売られて海人になり、
それからの長い漁師生活で、初めてのことだった。

石垣島で海人になって最初の仕事は、近海こと
イノー(礁池)での貝採りだった。
23歳で初めて自分の船「照丸」を持ち、「第5照丸」は5台目である。

朝6時過ぎに辺野古漁港を出て、「第5照丸」を
歩かせ(船で漁をすること)、高級魚を狙って一本釣りし、
午後6時に帰港する。
規正の釣った魚は、鮮度抜群で高い値がつく。

辺野古漁港には72歳の妻・スミコが待っていた。
スミコは1匹も釣れなかったことを聞いても、驚く様子も見せず、
規正を車に乗せて運転する。
北へ向かい、辺野古社交街、キャンプ・シュワブを越え、
規正のマイホームである「いま魚(イエ)の店 照屋」に着く。
「いま魚」とは、沖縄の方言で、新鮮な魚を意味する。

規正が収獲した魚は、いったんセリに出され、そこでスミコが
買って店に並ぶこともある。
一本釣りをする次男・勝巳の魚もセリに出される。

大漁のときは勝利の美酒に酔い、思うように
釣れなかったときには機嫌が悪い。

1匹も釣れなかった初めての体験は、規正をあれこれ悩ませたが、
実際に魚は年々採れなくなっている。

本土に復帰してから開発が進んで、赤土汚染が見られるようになり、
辺野古沿岸に、米軍の海上基地建設の予定もある。
環境が変化してしまうだろう今後に不安が募る。

ジュゴンが生息するという辺野古沖。
ターコイズブルーの海。
青緑に広がる沖縄の海が、影響を受け続ける基地問題。

赤胴色の肌。
マーブカー(鮫)の歯型である、広い範囲に及ぶ深く窪んだ傷痕。
石垣島、沖縄本島で、海人ひとすじの人生を送ってきた
照屋規正氏が主人公の沖縄史が、資料収集や綿密な取材を重ねて、
著者小林照幸氏の手によって紡がれる。

あとがきに記される
〈私は山国・信州に生まれ育った。長野市の実家からは今も晴天時には、
北アルプスの偉容を眺めることができる。山が珍しくもない環境のためか、
子どもの頃、私は山よりも海に関心があった〉
同郷という環境もさいわいしてか、小林氏の著書に共鳴するところが多く、
飾らないお人柄も合わせて、大好きな作家である。

海人(UMINCHU)海人(UMINCHU)
(2003/12/01)
小林 照幸

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

マンゴー と 『海人』

マンゴーマンゴー2


近所の方からマンゴーをいただいた。
石垣島から送られてきたばかりだという。
手にした冷んやり感が、クール便で海を渡ってきたことを物語っている。

それはずしりと重く、赤に近いビンク色の肌は、少し力を入れれば、
指がのめり込みそうなほど、よく熟れている。
冷え具合いも熟し加減も、まるでマンゴーから「早く食べなさい」という
メッセージを発しているように感じ、さっそくいただくことにする。

縦長のマンゴーの幅が狭い面がおもてを向くようにまな板に乗せ、
中心の幅を2cmぐらいにして、縦に2本包丁を入れる。
両側の2つは、皮まで切らないよう、切った面に切り込みを入れ、
皮を裏返すように押し上げる。
濃厚なイエローオレンジのマンゴーが花開き、
部屋は南国の香りに満たされる。

スプーンですくって口に含むと、深い甘みが口中に広がる。
そして脳裏を過った『海人 UMINCHU』の装丁。
実はつい先ほどまで、紹介文を書こうと、沖縄本島と石垣島が舞台の
『海人 UMINCHU』を再読していたのである。

石垣島のマンゴーと『海人』。
あまりに信じられないような偶然に、驚きと喜びが沸点を超え、
本がマンゴーを呼んでくれたんだなぁと、
またまた本がもたらす奇跡を実感!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

ジャンプ 佐藤正午

ジャンプ

人はときに、原因を突き止めようと奔走する。
核心が、あたかも自分以外の、周りにあるなにかであるように
思い込むことで、決着をつけようとするのかもしれない。

1杯のカクテルが人の運命を変えてしまうこともある……という
語り出しで、この物語は始まる。

『第一章 失踪まで』
蒲田駅から、ガールフレンドの南雲みはるのマンションへ向かう
三谷純之輔は、かなり足元がふらついている。
アブジンスキーという、聞いたこともないカクテルを飲んだために。

翌日の出張で、朝一番の飛行機に乗ることになり、羽田に近いみはるの
マンションに泊まることにし、日曜日の夕方、みはるの勤め先のある
横浜で待ち合わせ、中華街で夕飯を摂ってから、彼女の行きつけの
カクテル・バーに寄り、奇妙なカクテルを飲んだのである。

途中の自販機でウーロン茶と間違えて押したカルピスウォーターを
一気飲みしているとき、みはるの携帯電話が鳴るのを聞きながら、
純之輔は自販機の横で吐いた。
みはるがサンクスで買い物をして、また2人は歩き出し、マンションに着く。
郵便受けの前でみはるはふいに考え込み、
忘れ物をしているような気がすると言う。
なぜか純之輔も同じように、気がかりな思いにとらわれていた。

みはるの忘れ物は、純之輔からオーダーされていたリンゴの買い忘れ。
純之輔の気がかりは、さっきみはるにかかってきた電話が
誰からだったのか?という疑念。
そのときまたみはるの携帯電話が鳴ったが、彼女はひと言も話さず、
純之輔の顔を見て、ため息をついた。
純之輔が誰からか訊くと、みはるは無言電話だと答え、鍵を差し出して、
先に部屋に入っていてと言い残し、リンゴを買いに夜道に消えた。

なにかまだ心の片隅に気がかりを抱えつつ、彼女のベッドに
横たわったまま眠りに落ちた。
奇妙で物悲しい夢から覚めると、5時30分になっていた。
みはるが帰ってきた形跡はない。
そして、その朝が2人の分岐点となってしまったのである。

仕事はきっちりこなすが、過去に付き合った女性からは優柔不断と
評される純之輔は、「なぜ?彼女はどこへ?」を自問しながら、
安否を気にかけながら、結局飛行機に乗った。

そして物語は
『第ニ章 捜索願』
『第三章 アクシデント』
『第四章 ヒント』
『第五章 八日目』
『第六章 十四日目』
『第七章 一カ月後』
『第八章 半年後』
『第九章 五年後』
と続く。

アルコールがあまり得意ではない純之輔は、
なぜアブジンスキーを飲んだのか?
みはるは自分のマンションと純之輔を捨て、
どこへ行ってしまったのか?

淡々と綴られる日常、優柔不断でどこかズレた思考を持つ主人公に
親近感を覚えながら、わたし自身の想いとリンクする。

その昔、大好きだった人が、わたしの元から去っていった。
理由はいまだに分からない。
あの頃、毎日「なぜ?」と、届かぬ哀しい疑問を燻らせていた。
その「なぜ?」が明確になったからといって、離れてしまった心が
戻ってきてくれるわけではないのに。
そんな遠い昔の哀切に触れた1書。

ジャンプ (光文社文庫)ジャンプ (光文社文庫)
(2002/10)
佐藤 正午

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。