5月の投稿書籍


心にしみる31の物語人のセックスを笑うな
守 護 天 使
簿 記 3 級介 護 入 門
マ リ モ
ミーナの行進
アロマの力ビタミンF
カンバセイション
おからダイエット図書館の神様
あなた 上
あなた 下幸せな小金持ち


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さくらんぼ日記 4



この家に引っ越した春、小さい頃から憧れていたさくらんぼを
植えることにした。

さくらんぼは違うDNAを持つ花粉を受粉させないと実らない
というので、佐藤錦とナポレオンを購入。

そして4年が過ぎた昨年、はじめて結実し、ようやく黄色から
赤味がかった実を発見して歓喜した翌日、その実が
萎んでいたのである。


ショックは大きかったが、悲劇はそれだけにとどまらなかった。
強風に耐えられなかったナポレオンの枝が、根元近くから
折れてしまったのだ。

泣く泣くホームセンターに走り、今度は高砂を購入して
佐藤錦の近くに植えた。


それから1年が経ち、先月2メートル強に育った佐藤錦が
満開の花を咲かせ、まだ幼い高砂は3つの花を付けた。

そして今朝、水やりをしていたときに見つけた、黄色から
赤味がかった実に、ふたたび歓喜する。


昨年は多分鳥に突つかれたのではと思い、早く防鳥ネットを
かけて、さくらんぼを守らなければと、ホームセンターに
向かうものの、ネットを張る支柱はどうやって立てたら
よいのだろう?

産みの苦しみならぬ、育てる苦しみだなぁと嘆きつつ、
さくらんぼを収穫している様子を思い描くと、頬が緩んでしまう。


めでたくさくらんぼ狩りができたあかつきには、“ドンペリと苺”
ならぬ、“スパークリングワインと佐藤錦”かなぁ……

と、結局なにかにかこつけては、アルコールを
持ち出すわたしはアルchuu予備軍 ⁈



テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

幸せな小金持ちへの8つのステップ 本田 健

幸せな小金持ちへの8つのステップ

著者の携帯電話がなった。
電話は、クライアントの甥で大川健二と名乗る青年からだった。
健二は、叔父から先生のことをうかがい、ぜひ話を聞かせて
欲しいと、著者であるマリちゃんパパに申し出る。

恋人の川端礼子とともにレクチャーを受ける形で始まる本書は
第1章 あなたが「お金に縁のない人生」を送る理由
第2章 「幸せな小金持ち」という生き方
第3章 「幸せな小金持ち」のメカニズム
第4章 幸せな小金持ちになるための「8つのステップ」
第5章 幸せな小金持ちになっていくパターン
第6章 幸せな小金持ちへー日常的にできる6つのこと
で構成されている。

お金持ちになるためには、お金の知性(IQ)と感性(EQ)、
それに心の余裕が必要であり、大金持ちは必ずしも幸せとは
言えない人が多い。
ところが、好きな仕事と愛する人との生活を楽しめる小金持ちは、
幸せな人生を送ることができると語る著者が、お金にまつわる話、
小金持ちになるためのノウハウや気構えなどが、実例を踏まえたり、
チェックシートでの自己分析も交えて解説されている。

重要なのは、長期的な視野・勇気と行動力・アドバイスしてくれる
メンター(先生)の有無・自分の立ち位置の確認・真剣な決意・
人に好かれること・人を好きになること・分かち合うこと、
与えることなどであり、家族や友人知人など、周りのサポートと
愛があってこその幸せが小金持ちにつながる。

実際に小金持ちになれるかどうかを抜きにしても、自分の生き方を
見直し、幸せな気持ちで楽しむ人生を歩めるかもしれないと思えてくる。
わたしも、最終章に書かれている初めの一歩を踏み出して、
いつか小金持ちの幸せを……

幸せな小金持ちへの8つのステップ ‾人生の”宝探しの地図”がここにある‾幸せな小金持ちへの8つのステップ
‾人生の”宝探しの地図”がここにある‾

(2002/04/20)
本田 健
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

あなた 上・下 乃南アサ

あなた 上 あなた 下


ある日、全身で分かった。
あなたを見つめるために生まれてきた、と。
だから、あなたのことはすべて分かる。
弱虫で、偉そうにしているけど小心者。
バカ騒ぎをしても、受験に縛られた心は自由になれない。
でも、軽蔑したりしない。ずっとあなたを見つめ続けるから。

3度めの挑戦に、来年の春には大学生になろうと
思っている川島秀明は、真剣に予備校に通っている。
電車に揺られながら、美菜子からハートマーク付きのメールが届く。
大学に入ったら、美菜子と長くいっしょに居たいから、
1人暮らしをすると決めているのだ。

約束はしたものの、受験生が彼女とクリスマスを過ごしてもいいものか
迷っていると、美菜子から時間に遅れるとメールが届く。
気落ちした秀明がふと隣を見ると、見知らぬ女の子が泣いていた。
結局、沙紀というその女の子とホテルまで行ってしまった。
そしてアドレスを交換した。

元日の未明、胃を掴まれるような痛みと吐き気で目が覚めた秀明は、
トイレに駆け込み、止まない嘔吐に、三が日は苦しみながら臥せっていた。

それは闇のなかで、あなたの中に入り込もうとしていた私を、
あなたが拒否したから。

ようやく回復して予備校で模試を受けた帰りぎわ、
美作の友人から声をかけられる。
名前とは不釣り合いな、平べったい顔の美作麻衣(みまさかまい)とは
予備校の同級生で、秀明は彼女と話していると、
気が楽になる同志のような関係だった。

麻衣の友人の話によると、麻衣が秀明と同じ時期に同じような症状で、
今も苦しんでいるらしい。
言葉では心配しているふりをしながら、内心愉快だと喜んでいる。

あなたはなんて嫌なヤツ。

ホテルで沙紀がシャワーを浴びている最中に、美菜子からもメールが
届いたりと、二浪中でありながら複数の女性に手を出す秀明に、
次々と身体の異変が起きる。
センター試験が済み、私大の入試を控えた深夜の静寂と暗闇のなか、
力の入らない秀明の身体にまとわりつく息吹のような密やかな感触。
そのとき目ではなく、秀明が波動で見たものは……真白なフクロウ?

国立はだめだったが、早稲田に入学した秀明は教習所に通い、
モデルのようなカンナと出逢って、その美しさに惹かれる。
そしてまた激しい胃痛に襲われ、意識が遠のくなかで聞こえた声
……ひどいよ。
やがて、その存在はカンナにも牙を剥く。

あなたを見つめ続ける存在に気づいたとき、秀明は……
あなたを愛している存在とは……

あなたを見つめ、憎み、呆れ、哀しみ、怒りながらも愛し続ける
女性の切ない心情が、濃密な心理描写で紡がれる青春ホラー長編小説。

あなた〈上〉 (新潮文庫)あなた〈上〉
(新潮文庫)

(2006/01/30)
乃南 アサ
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あなた〈下〉 (新潮文庫)あなた〈下〉
(新潮文庫)

(2006/01/30)
乃南 アサ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

美ヶ原はトレッキング ? それとも 登山 ?

美ヶ原

真っ青な空にくっきり浮かぶ稜線。
あまりに雄大に映る美ヶ原。
数時間後、あの頂上に立っている自分を、ここ薄川から
眺めていることを想像して不思議な感覚に満たされながら、
アクセルを踏み込む。

山桜やハナモモに彩られた川沿いを走り、三城牧場に着いたのは、
9時を少し過ぎたころだった。
すでに駐車場には、数台の県外ナンバー車がとまっていた。
天気は雲ひとつない晴天。

わたしたちは数種類あるコースのなかから、いちばんマイナーだと言われる
茶臼山コースを選ぶ。
そして、いざゆかん!

小川のせせらぎ。さえずる鳥の声。木々のあいだから射し込む陽光。
けれど清々しいトレッキングも、だんだん雲行き怪しい予感。
うわっ、ゴールデンウィークも過ぎたというのに雪⁈
コケないよう、ポールを使い、4足歩行。
すると、足下から水の流れる音が……
小川の表面に積もった雪が固まって、雪道を作っていたのである。

木に結ばれた道しるべのカラーリボンを頼りに頂上を目指し、
ひたすら歩を進める。
残雪は3-40cmはあろうかと思われる道なき道。
ときどき雪に足が埋まりながら、ようやく枯葉が覗く道に出たと思えば、
カニさん歩きを強いられるような狭い道幅。
眼下は急斜面の山肌。
まさに崖っぷち!

雪道、獣道、急傾斜に息も絶え絶え、
「これはトレッキングじゃない、登山だ!
断じてトレッキングなんかじゃない、登山だ!」
と呪詛のようにつぶやきながら、突然開けたパノラマの眺望。
広大に広がる高原台地の先に聳える、王ケ頭ホテルや電波塔。
懐かしい景色だった。

小学校5・6年生で参加した美ヶ原登山。
5年生のときは少年の家に、6年生では野外にテントを張って1泊。
キャンプファイヤーを囲って踊ったマイムマイム ♩

遠い昔の、ほのかな哀愁に浸りながら、いつかキャンプも
いいかもしれないと、思えてくる。

あ〜、その前にもっと脚を鍛えねば!
明日は階段の昇り降りに難儀すること間違いない。

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

図書館の神様 瀬尾まいこ

図書館の神様

清(きよ)、私の名前。
一代目は母方の祖母・喜代の葬式の日に迷いこんだ忠犬キヨ。
二代目は私が生まれる3日前に死んだ雑種犬のキヨ。
そして私が三代目の清。
早川家で由緒ある名前なのである。

私は清い精神と完璧なアレルギーを持っていた。
そしてとにかくバレーボールが好きで、少女バレーから高校まで、
バレーボールのとりこだった。

そんなバレー少女だった高校3年生の夏、たいした試合ではない
練習試合で、万年補欠だった山本さんが投入され、
大差で勝っていた試合が負けてしまった。
キャプテンだった私は、反省会で厳しいことを言ったらしい。
翌日、臨時全校朝礼で校長が、
山本さんが飛び降り自殺したことを伝えた。

私は退部し、バレーボールを見ることさえ耐えられなくなった。
密かに高校を卒業し、描いていた未来から離れて、地方の小さな
私立大学に進学した私の身体は、精神とは対照的に少し強くなった。

高校の校舎は、どの教室からも海が見えたが、3階の図書室からの
眺めは最高だった。
3年生になって急遽進路を変え大学に行き、日本文学科を卒業して、
高校国語講師になった私は文芸部の顧問にされてしまった。
バレーボール部の顧問になりたくて、高校の講師になったというのに。
文学などまるで興味がないというのに。
文芸部の部員は1名のみ。3年生の垣内くん。

大学2年のとき、お菓子教室に通って、講師の浅見さんと出会い、
付き合うようになった。
なんでも真剣に取り組み、生真面目な浅見さんには、当時婚約者がいた。
しばらくして浅見さんは結婚したが、私たちは今も付き合っている。

どう見てもスポーツ万能の垣内くんは、中学時代にサッカー部
だったのに、サッカーより文学の方がおもしろいと、
文芸部の道を選んだ。
どうしても理解できない、サッカーより文学の方がおもしろいなんて。

先生は教師が似合っていると、垣内くんにすすめわれて、
講師から教師になるため、採用試験を受けることにした。
教師には向いていないと痛感した試験だったのに、
なんと合格通知が届いたのである。

そんなある日、午前中にお店を閉めた浅見さんがやってきて
デートしようと誘われる。
高速を飛ばし空港に行き、そこで彼から、奥さんの由布子さんが
妊娠したことを告げられた。
外は雨だった。

浅見さんと愛し合うことは誰かを傷つけていることだと分かって
いながら、考えてもどうしようもないことが、決心を遠ざける。
けれど、突然電話してしまった返答が「困るんだけど」のひと言に、
別れを決意する。

教師という仕事が楽しくなり、文芸部も朝練を始めるようになり、
やがて卒業のときが……

自分は相手の内面を読み取ることが苦手なので、健康状態を
アピールしてくれる女の子の方が嬉しいと言ったり、ときどき
心を探るような発言をしたり、清自身がさっぱり気づいていない
国語センスを見抜き、ケラケラ笑いながらも、実は中学時代に
辛い経験を持つ垣内くん。

シスコンなのか、ただ海が見たいだけなのか、毎週末清の
アパートにやってくる弟の拓実は、身体は丈夫だが精神は
軟弱で底抜けに優しい。
山本さんのお墓参りには、必ずいっしょに行ってくれる弟。

清く正しくが、果たしてすべてだろうか。
垣内くんに感化され、少しずつ文学のおもしろさに目覚めて
いくと同時に、みずから楽しむ生き方や部活のあり方、
1人の愛より、たくさんのささいな気持ちも悪くないことに
気づいていく清。

共鳴して頷いたり、川端作品を読みたいと思ったり、
文学の魅力や楽しみ方があふれそうなほど描かれた、
心の再生物語。

図書館の神様図書館の神様
(2003/12/18)
瀬尾 まいこ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

おからダイエットレシピ 満腹なのにみるみるやせる! 家村マリエ

おからダイエットレシピ

読者モデルをはじめたことで、ダイエットに取り組むが失敗し、
肌も心もボロボロになってしまった。
その姿を見て心配した母が、おから料理を作ってくれた。
栄養豊富で満腹感を得ながら痩せられるおからに魅了され、
モデルの仕事と並行して、おから関連会社を設立したという著者が、
おからの魅力を語る。

コンテンツ
【徹底比較】
【おからはスゴイ!】
【おからの健康パワー】
【失敗なしのおから!】
1 ラクにおからダイエットを成功させるための基本ワザ
2 200〜300kcalの超ボリューム満点メイン料理
3 100〜150kcalのとってもヘルシー小さなおかず
4 100〜150kcalのじんわり滋味スープ
5 1品うれしい500kcal以下!大満足主食
6 朝はおからスムージーで美健チャージ

ご飯、小麦、ひき肉とおからとのカロリー比較。
高カロリーの米や小麦も、おからと合わせることで、
100kcalに抑えることができる。
3週間で3kg痩せた、肌がきれいになった、
よく眠れるなどの体験者の声。
おからの栄養価や、おからを加えることでランクアップする味。
かさまし効果や食感、大豆のうまみ。
糖質オフのダイエットとお医者さんも推奨。
低糖質食品と不溶性食物繊維で腸内清掃。
脂肪の代謝効率アップ、健骨、美肌・美ボディのおからパワー。

さらに朝昼晩、1日の食事スタイルの例が、成功のポイントを
踏まえて説明されている。
500kcal定食、おからダイエット効果の紹介と進み、
いよいよ具体的なおからレシピに入る。

揚げ物の衣やあんかけのあんの代用、粉チーズにおからパウダーを
混ぜたチーズパウダー、同じように作るおかかパウダー、
シチューのルーに、ご飯と合わせておにぎりにと、まさに
目からウロコの、おからの極意、おからに囲まれた生活が綴られた、
おからを使った栄養とボリューム満点のダイエットレシピ本。

満腹なのにみるみるやせる! おからダイエットレシピ満腹なのにみるみるやせる!
おからダイエットレシピ

(2013/04/18)
家村マリエ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

カンバセイション・ピース 保坂和志

カンバセイション・ピース

幼い頃、父が船員で家をあけることが多かったため、
世田谷にある伯母家族の家に、母と生まれたばかりの弟と
いっしょに同居していた。
そのときは、伯父伯母と4人の従兄妹合わせて9人の大家族だった。
小学校入学前に鎌倉に越してからも、たびたび泊まりに行った
世田谷の家。

ときが流れ、ひとりで住んでいた伯母が亡くなり、広島に出向中の
従兄の英樹兄から住んでくれないかと請われて、小説家の高志は
二つ返事で承諾し、妻の理恵と猫3匹を連れて引っ越した。
猫たちは朝になると、1部屋ずつ匂いを嗅ぎまわる。
まるで、以前住んでいた人間や猫たちの存在を確認しているかのように。
英樹兄は定年後はここに住み、ここで死にたいというほど、
この家が好きなのだと言う。

そして今では、友人の浩介が経営している会社に間貸しし、
妻の姪も同居するようになったため、6人がこの家にいることになった。
1階は浩介の事務所、2階を高志夫婦の住宅としているが、食事は1階の
居間で摂るので、浩介たちといっしょに食べることもある。
1階の奥の部屋には、大学生で姪のゆかりが住み、休日には従兄妹たちも
やってきて、同居人たちとの会話のなかで、あの頃がよみがえる。

静かに流れる時間。
特別な何かが起こるわけでもなく、なんの変哲もない日常に、
懐かしい昔日のシーンが重なる。

マイペースだったり、臆病だったり、それぞれ性格の違う猫たちと
6人の同居人。
ときの隔たりを超えた、幼い頃と変わらない場所。
入り混じっていたり、複数だったり、突然参加したりする会話。
時間と空間に心地よく包まれる家。

『カンバセイション・ピース』とは「家族の肖像」という意味らしい。
そこに住む人や動物たちが、家に刻まれていくということなのだろうか。

カンバセイション・ピース (新潮文庫)カンバセイション・ピース
(新潮文庫)

(2006/03/28)
保坂 和志
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ビタミンF 重松 清

ビタミンF

『ゲンコツ』
入社16年目、自販機メーカー営業課主任の加藤雅夫は、妻の恵子、
小学5年生で長男の博人、2年生で次男の和人とニュータウンの
マンションで暮らす38歳。

たるんだ腹の肉や、飲み会でのばか騒ぎに限界を感じる体力、
32~3歳なら「まだ」で、40歳なら「もう」だと思う中途半端なお年頃。

ローヤルゼリーにビタミン製剤とプロポリスに頼りながら、
月一ペースの「夜のおつとめ」も億劫で、それより睡眠を選んでしまう。

同期の吉岡は飲み会のカラオケで、大げさにキックやジャンプを
披露しながら『仮面ライダー』の主題歌を歌い、雅夫は深夜の帰宅時、
心の中でひっそり歌う。
誰にも知られてはいないが、実はカードにワッペンを揃え、
怪人名すべてソラで並べられるほど、仮面ライダーが好きなのである。

最近、若い頃には想像もつかなかった、オヤジ狩りを怖れながら
帰宅する毎日。
そんな折り、社員食堂で小林課長に護身用グッズの『助っ人くん』を
見せられた。
防犯ブザーやレーザーポインター、スタンガン付きの『助っ人くん』を
握ってみると、弱っちい自分の拳に力が入ったような気がした。

しばらくして、同じマンションに住む中学生とそのグループが、
マンションの前をたむろするようになり、妻の恵子から、少年たちに
ひと言注意してと念を押されるが、その時刻を避けるように吉岡を飲みに
誘う自分が情けなくなる。

仮面ライダーのように勇気を持って闘っていた、正義感旺盛だった
小学生のころを思い出しながら、右手をゲンコツにしてみたが……弱っちい。
老化が始まっていることを認めざるをえないと感じながら家路を急いでいると、
例の少年グループが自販機の釣り銭口に、小枝を突っ込んでいた。
雅夫は右手でゲンコツを作り、彼らに立ち向かって行くが……

確かに体力も勇気も衰えていくかもしれないが、奥深い心も
持てるようになった38歳。
少年のころに憧れた正義の味方ヒーローをずっとそっと胸に抱きつつ、
今からでも仮面ライダーになれるかもしれないと思う純真な心。

人生の折り返し地点なのか、中途半端な年齢である主人公たちの
揺れ動く気持ちに、効き目のあるビタミンF。
『ゲンコツ』『はずれくじ』『パンドラ』『セッちゃん』
『なぎさホテルにて』『かさぶたまぶた』『母帰る』の
7編が収録されたオムニバス小説。

その年の大晦日はひとりだった。
テレビから紅白歌合戦の映像が流れるなか、作成途中だったニットの
ロングスカートを引っ張り出し、せっせと棒針を動かす。

しばらくして、編み物にもテレビにも飽きてしまい、除夜の鐘には
まだ1時間ほど間があるし、当時24時間営業のイオン系デパートに
足を向けることにした。
さすがに12月31日深夜のデパートは閑散としている。
わたしの貸し切り⁈ と都合のいい解釈をしながら、
平積みされた本を物色する。

すぐ目に飛び込んできたのは、真っ赤な帯に
「好きな作家アンケート 第2位」と書かれた本書。
心身に効きそうな『ビタミンF』というタイトルを見て、即購入。
孤独な大晦日を、ワクワクする1年の締めくくりに変えてくれた1書である。

ビタミンFビタミンF
(2000/08)
重松 清
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

アロマの力 3つの本質 The Power of Aroma 宰務智子

アロマの力  

大地のパワー漲るグリーンリーフのリースで飾られた表紙。
ページをめくると、真っ白い建物の真っ白な扉の向こうから
漏れる陽光や、緑溢れるガーデンテラスなどの写真に、
気持ちが透き通っていくような感覚に満ちる。

「世界でいちばんの幸せ」になることが目的だという本書は
PART 1
アロマの力の哲学と本質
PART 2
アロマのイメージを変える
PART 3
アロマの力で健康と人間関係と徳を手に入れる
で構成されている。

学生時代にヨーロッパを旅行し、パリに魅せられたのがきっかけで
フレンチレストランをはじめて、アロマテラピーに
出会ったという著者は語る。
自律神経やホルモンに働いて、リフレッシュリラックスできる香り。
叡智療法であるアロマテラピーで、自分らしく充実して生きることが
宇宙の喜びなのだと。

わたしが愛用している化粧品を使って、アロマトリートメントをすべく、
アロマの勉強に通ったのは、もう5~6年前になるだろうか。
毎週末、アロマテラピーアドバイザーの資格を持つ友人のサロンに通い、
スライドとテキストを使って、アロマの歴史に効用・用法などを学んだ。
常にテキストを抱えて、時間に余裕ができると栞がはさまれたページを開く。
久しぶりに真剣に勉強した。

それからはアロマあふれる生活になった。
ボディクリームと化粧水に精油を数滴落としたオリジナルボディローション。
同じように作ったオリジナルハンドクリーム。
キーホルダーになったミニアトマイザーには、沈みがちな気分を
明るくしてくれる南国の花イランイランの精油。
精神安定効果のあるラベンダーと殺菌作用のあるティーツリーが
詰まったエアーシャワー。

本書は、香りが自分らしい心を取り戻してくれるという内容に共鳴できる、
アロマを熟知している人にも、これから勉強してみたいと
思っている人にもお勧めの1冊。

アロマの力アロマの力
(2013/11/11)
宰務智子
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ミーナの行進 小川洋子

ミーナの行進

光り輝く真鍮製総レース張りの乳母車。
それは朋子が生まれて初めて乗った乗り物。
飲料水会社の跡取り息子で、ドイツ人とのハーフと
結婚した伯母さんから贈られた、もっとも高価な家財道具。

次に乗った乗り物は、父の運転する自転車。
休日には荷台に朋子を乗せ、公園までサイクリングしてくれた父は、
小学校へ入学した直後、胃癌により他界してしまった。

1972年、小学校卒業式と同じ日に、山陽新幹線大阪岡山間が開通し、
その翌日ひとり新幹線に乗り、芦屋の伯母夫婦のもとへ向かった。
父の死後、洋裁の仕事で家計を支えてきた母は、スキルアップのため、
東京の専門学校に行く決心をし、朋子は乳母車をプレゼントしてくれた
伯母夫婦に預けられることになったのである。

洗練された仕草、栗色の髪と瞳を持つハンサムな伯父さんに迎えられ、
メルセデス・ベンツで向かった芦屋にあるスパニッシュ様式の洋館。
アーチ状の玄関ポーチ、クリーム色の外壁、葡萄模様のベランダの手摺り、
17室もある魅力的な部屋に目まいを起こしそうだった。

ドイツ人のローザおばあさん、お手伝いの米田さんと小林さん、
ペットでコビトカバのポチ子、そして身体は弱いが、いつもマッチ箱を
持ち歩いて想像力を発揮する従妹のミーナ。
髪の色も話す言葉もバラエティに富み、万全を期した常備薬より、
先代の社長が開発した、健胃作用のある看板商品「フレッシー」に
信頼をおく家族。

ミーナが喘息の発作を起こすと、家族全員がそれに対処するため、
戦闘体制に入る。

鶴の一声のように、生活の実権を握っているお手伝いさんで、
83歳の米田さんは、性格も見た目も正反対で同い年の
ローザおばあさんと大の仲良し。
庭師の小林さんはポチ子の世話係でもあり、彼らは
ぴったり息の合うコンビ。
寡黙で周りの声に耳を傾けることを好む伯母さんは、
人を朗らかにする達人で皆から好かれている伯父さんを
とても愛している。

小柄で色白美少女、栗色カールの長い髪を持つミーナは、
愛嬌のあるお尻と短い足で、聞こえないふりをするという
特技を持つポチ子が、もっとも大事な問題だった。
そしてミーナは、小林さんが手綱を引くポチ子に乗って、
小学校に通うのである。
ポチ子は自分がすべき務めを全うし、ミーナを乗せて行進する。

家族皆が、それぞれを思いやり、心配し、愛情あふれる素敵な家の
一員になった中学1年生の朋子と、1歳下のミーナが暮らす
1972年から1973年にかけての1年間。
川端康成の自殺やミュンヘンオリンピック、ジャコビニ流星雨などの
懐かしさをともなって、小川洋子が奏でる美しい世界。
温かい幸福と安心に満ちた2人の成長物語。

ミーナの行進 (中公文庫)ミーナの行進
(中公文庫)

(2009/06)
小川 洋子
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

マリモ 山崎マキコ

マリモ


酔っ払うと記憶をなくす25歳の大山田マリモは、上司の思惑に
はめられた新企画の「納豆伝説」によってストレス漬けになり、
システム管理の坂上君を誘っては、飲まずにいられない日々を
送っている。

……カレー味の納豆なんて、誰も食べたいと思わないでしょう……
抑うつに攻撃され、またお酒の力を借りるしかないと思ってしまう。

こんな企画が成功するはずないと思いながらも、そのことを
言い出せずにずるずる1年近く経ってしまった。
ボタンを掛け違えて、日常を困難にしているのに、なぜそうなったんだろう
と考えるとき、いつも記憶の中の先生と会話しているのだ。

3年前、入社試験の面接で、「御社の激辛黄金ほたて貝が
大好物です」と答えた。
そのときの面接官のひとり、とびきりデブの小谷部長に気に入られ、
食品開発部に加えられたが、そのまま筒井さんに預けられ、
昨年、彼からひとりで企画を立てるよう命じられて、黒豆納豆の
アイデアを出したのである。
しかし企画会議で、総務部長と小谷部長の陰謀により、黒豆納豆から
カレー納豆に歪められ、マリモの酒浸り生活が始まる。

マリモは高校1年の7月を不登校で過ごし、登校を決意した2学期の
ある日、授業で奈良原先生が教壇に立ち、話し始めた。
入院していたとき、脅迫性障害の患者さんが手を洗っている水音で
目覚め、それから眠れなくなってしまった。
やがて空が明けはじめたころ、殻を抜け出そうともがく1匹の蝉の
幼虫に気づき、ずっと眺めていたけれど、結局幼虫は諦めて
動かなくなった。殻の中で過ごすことはできない。蝉にならなければ
生きられないとの先生の話に、なぜか涙がこぼれ、授業が終わると、
衝動的に先生を追いかけた。

麺つゆで死ねなかった。頭痛薬も効かない。
過去につながれた心に自由を奪われながら、あのとき自分の存在に
はじめて許しを与えてくれた先生を思い出し、語りかける日々。

新人紹介の社内報で出会ってから、だんだん親しくなった坂上君は、
マリモの酒癖の悪さを知っても、悪態をつきながら温かく接してくれる。
優しい坂上君に対して、冷ややかな目で微笑みながら痛罵する
イヤミな筒井さん。
なのに、坂上君より筒井さんに気に入られたいと思うのは、
現実逃避することで自己防衛する歪んだ価値観ができあがって
しまったためだろうか?

真髄を直視できる坂上君。
疎外された家庭環境に起因され、本当の認識に蓋をして
ダメ人間という刻印を押すマリモ。
生とは、死とはなにかを教えてくれ、自分の存在を許してくれた先生。

生き辛さが共鳴できる切なさ。
辛いからこそ強く感じることのできる温もりと優しさ。
そこから見えてくる明かりが描かれた物語。

ほんの少しだけ、話のなかに登場する人物……手を洗い始めると
やめられなくなる患者さん。
わたしも似たところがある。
お金に触れたら、即、手を洗う。
スーパーの買い物カゴを持ったら、車に乗り込む前に、
薬用ウェットティッシュで手を除菌する。
デパートのトイレでは、ポケットティッシュでノブを
覆ってドアを開ける。
図書館で本は借りられない。
ブックオフでも本を買うことはできない。
周りからは訝しそうな目で見られ、自分でもかわいげのない、
面倒な体質だとウンザリする。

きっと誰しも少なからず持つ、自分の生き辛さ。
その辛さに息苦しくなったときにおすすめの1冊。

マリモマリモ
(2002/04)
山崎 マキコ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

介護入門 モブ・ノリオ

介護入門

金髪でマリファナ常習犯、無職で29歳の主人公が、下半身不随の
祖母の介護という生活でのみ、自分自身の世界が、
生があることを感じている。

痴呆による徘徊によって怪我をし、下半身不随になった祖母の
下の世話をしようと決意してから、それまで家族に見向きもせず、
音楽のことのみを考えていた主人公は、母の偉大さや
痴呆症である祖母の、うちに秘めた真実に気づく。

おばあちゃんの介護で手一杯で、ほかのことを考える余裕など
ないことを、理想的な介護ヘルパーなら、理解してくれるだろうが、
無職だから、することがなく暇だから、祖母の介護をしているとでも
思っていると、無責任な世間や親戚たちを批判する。

何者かにならなければならないという社会への抗議とともに、
ときどき新聞などで話題になる、介護疲れの果ての無理心中や、
先が見えず辛い日々を送っている人々にも目を向けるようになる。
介護地獄とそこから見えてくる家族愛。

ときを選ばず、身近に起こり得る介護という重いテーマを、
独特な筆致で綴られた、タイトル通りの介護入門書。

わたしが小学6年生のころ、祖母はアルツハイマーを発症し、
加速度的に周りの状況を把握できなくなっていった。
家族が気づかない隙に家を抜け出し、帰り道を忘れてしまった祖母が、
派出所の方にお世話になったこともある。

わたしが高校生のころになると、彼女の記憶には、
孫の存在すら抹消されていた。
あのころ、わたしは受験生という大義名分を砦に、
祖母や祖母の世話をする母から目を背けていた。

本書に接し、身勝手なわたし自身の自戒と後悔をともない、
祖母の顔が脳裏を埋めた。

介護入門 (文春文庫)介護入門 (文春文庫)
(2007/09/04)
モブ・ノリオ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

impress QuickBooks どうぶつ教室シリーズ 山田真哉の世界一受けたい簿記3級の授業 山田真哉

簿記3級

簿記の資格は、大学入試・就職・転職などに役立ち、
ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士や
宅地建物取引主任者への資格の前提となる。
医療事務などにも関連性のある簿記はたいへん人気のある資格で、
3級試験は毎回10万人超、年間30万人を超える人々が受験している。

簿記資格には、4級、3級、2級、1級があり、大まかに分けると
商業簿記と工業簿記がある。
商業簿記では仕入れと売り上げが対象となるが、工業簿記は
そこに製造過程が入る。
ただ、工業簿記は3級には出てこない。
工場では「作る」と「売る」を分けて帳簿に記入する。
この帳簿記入を略して「簿記」。

もうずいぶん昔になってしまったが、失業中に簿記を勉強した。
確か最初の授業は、簿記の成り立ち……どういう経緯で、
どこの国の人が簿記という計算方法を編み出したか……
の講義だったように記憶している。
高校までの教科とは別世界の計算論理に戸惑い、なにがなんだか
理解できないまま、ただ先生の教えを丸暗記していた。

本書は動物たちと著者との質問形式で進み、簿記3級とは?から始まり、
決算書、株式会社、仕訳、経費、試算表、精算表、売掛金、買掛金、
総勘定元帳、費用、資産、純資産、貸借対照表や損益計算書まで解かれ、
レベルによってジャンプもできる。
難しい専門用語なども、『パズドラ』などを例にあげてやさしく説明された、
簿記に興味のある初心者に、また経理業に就ている人も、
今まで知らずにいたことを「そうだったんだぁ〜」と思わず唸ってしまう解説書。

山田真哉の世界一受けたい簿記3級の授業 (impress QuickBooks)山田真哉の世界一受けたい簿記3級の授業
(impress QuickBooks)

(2014/01/08)
山田 真哉
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

舞茸とわらびの炊込ご飯

舞茸とわらびの炊込ご飯

作り方は画像をクリックしYouTubeにて

テーマ : レシピ
ジャンル : グルメ

ワラビ と 悦び と 自然の気配

warabi.jpg

「そろそろワラビが出てるかもしれないから、確かめに行ってみよっか?」

「うん、行く行く〜!」

友人からメールをもらい、数時間後には近所の小高い山の麓に到着していた。

もう営業していないのかも、と思わせるようなゴルフ場の駐車場に車を停め、
トレッキングシューズは履いたものの、ジーパンに
化繊のシャツという軽装で斜面を登る。
外気温は20度を超え、急峻な上り道は息切れとともに、身体は熱を帯びる。

厳かな佇まいを呈した神社。
鬱蒼と繁る樹木。
どこからか漂う藤の香り。

春と自然の気配を全身で浴びながら、5分ほど登った山道の右手に、
ちょっとしたスペースの原っぱが突き出していた。
枯れ草で覆われた地面から、ちょこんと頭をもたげた深緑色の植物。

「あった〜!」

昔から山菜採りを体験してみたいと思っていた。
けれど、群生スポットも採り方も分からず、ときどき仕事関係の方から
いただくコゴミやタラの芽に満足していただけの、
ちょっとつまらない山菜生活。
だから、自分の目でわらびを見つけ、自分の手で摘んだ感慨はこの上ない。

ワラビは茎に指をからめ、根本からスルスルと穂先に向け滑らせて、
自然に折れるところで採るのが、プロの採り方であり基本とのこと。

辺りに目を凝らすと、そこかしこに目に留まる深緑色の群れ。
その、ワラビの1本1本に、胸を躍らせながら、とりあえず
1回分調理できそうな量を採って、今日の山菜採り終了。

帰宅し、沸騰させたお湯に少量の重曹を入れ、そこにワラビを
沈めてひと晩おき、アク抜きをする。
それから水洗いして、真水に半日浸す。
さぁ、アク抜き完了。
あとは舞茸と油揚げで山菜ご飯を炊こう!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

守護天使 上村 佑

守護天使

「まあ、仕方ない」
なにかあるたびに呟く魔法の呪文で、すぐに諦めてしまう
須賀啓一50歳。

3年前、親戚にあたる100キロ超の社長から、太っているという
理由で、会社をリストラされた。

それから50社以上面接に挑むが、結局仙台から東京の赤羽に家族で
引っ越し、ようやく就職した。
パートでも収入は啓一の倍稼ぐ、妻で美容師の勝子と、美大生の
長女舞、中学生の長男啓太、雑種犬のゴロの4人と1匹家族。

馬鹿犬であるゴロが用を足す布団で寝ているため、いつも糞尿の
臭いがまとわりついているような気がする。
鬼嫁の勝子から支給される小遣いは2日で1,500円。
しかも、それはもともと啓一の貯金だった。
禿げ上がってきた額、よれよれのスーツ、柔らかい脂肪でできた
身体は、身長160cm。
鬼嫁からは「グズロク」と蔑まれ、啓太からは嘲るように笑われ、
ゴロからは吠え立てられる。
そして、「まあ仕方ない」とやり過ごすのである。

無職のとき、キャリアコンサルタントとカウンセラーの資格を
取った啓一の勤務先は「さわやか若者支援塾」という、
引きこもりやニートのためのNPOである。
事務所は横浜にあり、赤羽からは電車を乗り継いで約1時間。

鬼嫁に懇願して小遣いをもらい、追い出されるように
湘南新宿ラインに乗る。
網棚に置かれた新聞をゲットし、エロなページを開いていたとき、
不意に電車が揺れ、啓一は無様に倒れた。
電車の床には、M字大股開きのモデルが映し出された新聞、
サングラスに全財産である500円玉が投げ出され、啓一は呆然となる。

それらを拾い集め、「大丈夫ですか」と助け起こしてくれた少女。
長い睫毛、白いうなじ、知的で清潔感あふれるセーラー服姿の彼女は、
毎朝文庫本を読んでいる少女だった。
投げ出された持ち物を手渡された啓一は、彼女の美しさに
思考能力を失い、息苦しくなった。

横浜に着き、トイレの鏡に映ったくたびれた自分の姿を見て、
切なさと悲しみに心が支配され、いたたまれなくなる。
これまで、自分の季節なんて、あっただろうか。

翌日、湘南新宿ラインに、少女は乗っていなかった。
奇妙な虚無感と不思議な安堵感を胸に抱きながら、
横浜駅で階段を降りていると、募金活動をしている文庫本の
少女を見かけ、また啓一の胸が痛む。
そこにビジネスマン風の男が少女に接触し、大げさに
舌打ちしたのを見て、啓一は怒りに震えた。

そして啓一は決意する。
ひっそりとした佇まいの美しい、文庫本の女子高生を悪意から
守る守護天使になることを。

切なさとともに、1ページに最低1回は大声で笑ってしまう、
ハゲでデブで冴えない中年おじさんの、この上なく純粋で
美しい無償の愛が描かれた、最高のラブストーリー。

守護天使 (宝島社文庫)守護天使
(宝島社文庫)

(2008/10/02)
上村佑
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

予防接種 と ギネス と 春うらら

Lulu Coinのコピー

年に1回の狂犬病予防接種。
毎年、近くの公民館に獣医さんが来てくだかり、実施される。

その日は春うららの晴天。
「ルル〜、お散歩に行くよ〜」と呼ぶと、なにも知らない我が家の
愛犬は、ピヨヨ〜ン、ピヨヨ〜ンと、身体全体で喜びを表現する。

外行き用のリードに付け替え、とりあえず昂ぶった気持ちを
落ち着かせるため「座れ!」と命令する。
が、耳が遠くなってしまったためか、逸る気持ちを抑えることが
できないのか、わたしの命令に耳を傾けようとしない。

わたしはもう一度、低くドスの効いた声で「ス・ワ・レ‼︎ 」を
繰り返す。
「もう、仕方ないなぁ」とでも思っているのか、
半分お尻を浮かせながら、座ったフリ⁈ をする。
わたしも仕方ないなぁと、半分諦めつつ、ルルの頭を撫でて
「付け!」のひと言で出発。

春うららかな午後のお散歩に、2人⁈ ともウキウキ気分。
が、公民館が近づくにつれ、何かを感じたらしいルルの足取りは
重くなり、後ずさりしながら回れ右をしてしまった。
想定内の行動である。
わたしは軽すぎる彼女の身体を抱きかかえ、受付を済ませて、
獣医さんの前に出る。

「元気ですね?」
「はい、元気です」
「ちょっと、チクッとしますよ」
と言って、太もものあたりにブスッ!

あっという間に予防接種は終わり、帰路につく。
が、ルルの歩き方がおかしい。
注射を打たれた方の脚を、地面から浮かせながら歩いている。

心配になったわたしは、抱き散歩に変え、歩きはじめた。
ところが5分も経たないうちに、降りたいのか、わたしの肩に
登ろうとして暴れるので、
それなら、と、ふたたび普通のお散歩スタイルにする。
心配だった脚も大丈夫だったようで、歩きもリズミカル。
いや、もしかしたら演技だった⁈

今年14歳になる、我が家いちばんのご長老。
ここ数年、この時期になると必ず思う。
来年も予防接種に来られるだろうかと。

そんな思いを胸に秘め、わたしの隣をチョコチョコ
歩くルルに声をかける。
「接種回数最多記録をギネスに飾ろうね!」
耳が遠くなったルルに、その言葉は届いたのだろうか……

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

人のセックスを笑うな 山崎ナオコーラ

人のセックスを笑うな

睫毛と、目尻のシワがかわいい39歳。
美術専門学校講師の猪熊サユリは、ユリちゃんと呼ばれ、
授業は生徒に人気がある。

磯貝みるめ19歳のオレは高校卒業後、1年間予備校に通い、
美術専門学校に入学した。

晩秋に開かれた小さな飲み会の帰り道、オレはユリちゃんと
渋谷駅の周りを一周し、彼女から「君が好きなんだよ」と言われる。
改札で手を振って別れ、ため息をつくユリちゃんを見て、
オレは思う……淋しいんだろうか……。

それからモデルを頼まれ、ユリちゃんのアトリエである
二子玉川のアパートで、ただモデルになっていた。

渋谷駅の周囲をまわっているとき好きだと言ったのに、
アパートではそんな気配を見せず、またモデルになって欲しいと
言ったのに、その後の依頼はなく、オレはイライラする。

3週間後にようやく、再度モデルを頼まれ、それから1週間おきに
絵を描いてもらうようになった。
ヌードじゃないと言ったのに、脱いでと言われ、
オレはトランクスと靴下だけになった。
そしてユリちゃんとセックスをし、冗談を言い合って眠った。

彼女以外のことはどうでもよくて、ただ彼女に夢中になり、
既婚で20歳も歳上のユリちゃんとの楽しくて幸せな時間が続くが、
だけど……

今はゆがみたいと思っているユリと、ユリに惚れ過ぎてしまったみるめとの
物語が、心の葛藤とともに、待つことの辛さ、隠そうとしても現れてくる
嫉妬心、無邪気ゆえの残酷な罪が、淡々と描かれたピュアな恋愛小説であり、
文藝賞受賞作。

人のセックスを笑うな人のセックスを笑うな
(2013/02/15)
山崎ナオコーラ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

心にしみる31の物語 仕事の作法・生き方の仕法 小倉 広

心にしみる31の物語 仕事の作法・生き方の仕法

「本日のAmazon日替り書籍はなんだろう?」と、胸をときめかせながら
ハイパーリンクをクリックする。
載っていたのは『心にしみる31の物語』。

とても気になるタイトルではあるが、名前負けしてはいないだろうかと、
訝る気持ちは拭いきれず、レビューをのぞいてみる。

ひとつとして悪評はなかった。
「感動した」あるいは「何度も読み返すだろう」という感想が
ほとんどであることに気分を良くし、自信を持って ⁈ ワンクリック購入。
そして、逸る気持ちのまま表紙をめくる。

Chapter 1 心にしみる「名経営者」の物語
1 『からっぽの丼にかけられた真っ白い布』の、第1章トップの話は、
横内会長が会社の近くにあるあけぼの食堂に行き、カツ丼を注文すると、
お店の主人が顔を出して「お代は要りません」と言う。
不思議に思った会長に、主人は話を続けた。
「長く食堂をやっていて、出前もたくさん注文をいただくようになりました。
ですが、丼を回収するときに、この商売がイヤになる。食べ散らかして
汚れた丼が無造作に置かれているのを見て、情けなくなるんです。
ところが横内会長の会社では、きれいに洗われた丼に、真っ白い布が
かけられて、棚に整然と並べられている。とてもありがたい気持ちになります。
ですから、そのお礼です」
という主人の話を聞いて、自分の志を社員が理解し実践して
くれていることを知り、会長は涙した。

そこまで読んで、知らず識らずに傲慢になってしまう心を自戒するとともに、
感謝の念を忘れない社風に感銘を受けていた。
そして、その次のページをめくって驚嘆してしまった。
1行目に書かれていた「長野県の一中小企業でしかなかった富士弦楽器」
という名前に。

富士弦楽器(フジゲン)はよく知っていた。
といっても、場所と存在、それに社屋の外観とギターを
製作している会社だということだけを。
どのような会社精神と経営理念を持っているのか、そしてフェンダー、
ギブソン、マーチンを追い越して世界一の会社にまで
昇りつめたなどということは存じ上げず……
気がつくと、一気に第1章から第4章まで読了していた。

Chapter 1 心にしみる「名経営者」の物語 (11話)
Chapter 2 心にしみる「プロフェッショナル」の物語 (6話)
Chapter 3 心にしみる「現場リーダー」の物語 (5話)
Chapter 4 心にしみる「日常」の物語 (9話)
の4章で構成され、伝えたいメッセージと感動的なエピソードが
セットで綴られた、仕事上でもプライベートにおいても、
心が豊かになれる珠玉のエッセー集。

心にしみる31の物語 仕事の作法・生き方の仕法心にしみる31の物語 仕事の作法・生き方の仕法
(2012/10/10)
小倉 広
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ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。