2月の投稿書籍

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ゆ  び0(ゼロ)R(リアル)0amourR-0  Bete noire火 の 粉ROUGE

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

10年祭 と ひな祭り

おひな様3


10年前、うるう年の2月28日、友人とランチを楽しんでいた。
するとケータイが震えたので、お店のドアを開け、電話に出る。
「おじいちゃんが、もうダメみたい」
小学生の甥からだった。

一瞬、甥が発する言葉の意味が耳に入ってこなかった。
昨日、実家で元気な父と話をしたばかりだったから。
今朝、朝風呂に行くからと車で出かけた父は、ガソリンスタンドに
寄った際、持病である心筋梗塞の発作を起こし、
救急車で運ばれたということらしい。

あれから10年が経ち、先日10年祭を迎えた。
記録的な大雪に、白一色に染められた小高い山に位置する霊園。
お墓に乗っている雪を落とし、お花にお線香とお饅頭をそなえ、
手を合わせる。

それから氏神神社の宮司さんがお見えになり、清祓いの儀が行われ、
祝詞奏上、玉串奉奠と進み、会食のために近くの中華料理店に向かう。
わたしはこの式年祭を、いつも心待ちにしている。
日常の忙しなさから、つい意識の遠くにおいてしまいがちな父を
近くで感じられるということもあるけれど、会食のときに
宮司さんがしてくださる、神道のお話が “いとをかし” なのである。

たとえば、神はよろず存在されますが、決して喧嘩はしない
仲良しなので、神棚に何種類のお札をまつっても構わないだとか、
神道は日本の歴史そのもので、王朝が変わらず2000年も
続いている国は、日本が世界最古であるとか、
県歌『信濃の国』第6章は、『日本書紀』に載っているなどなど、
日本人でありながら知らなかった知識を教示してくださる。

今回うかがったのは装束の話。
「装束には束帯・衣冠・狩衣など種類もさまざまで
用途や格式によって使い分けらます。
たとえば、ひな祭りで飾られるお内裏様は天皇であり、
おひな様は皇后なんです。
お内裏様が被っている冠の後部に立っている黒い帯は
立纓(りゅうえい)と言い、天皇しか用いることができないんです」
「へぇ〜、お内裏様とおひな様は、天皇と皇后なんですかぁ!」

毎年この時期に飾っているおひな様がナニモノであったかも知らずに……
父の10年祭に猛省!

あっ、そうだ、もうそろそろおひな様を
押入れから、お出ししなければ!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

誕生日

バースデー


高校時代、友人がわたしの誕生日に、彼女の自宅に
招いてくれた。
田舎で言うところの旧家にあたるのだろう、りっぱな
門構えに、悠然とたたずむ日本家屋。
……我が生家とは雲泥の差……

広い玄関から伸びる廊下を進み、和室に案内される。
床の間、漆塗りの座卓、ふかふかの座布団。
縁側からは庭石や庭木がのぞく、心落ち着くお座敷。
「ちょっと待ってて」と彼女が席を立つと、遠ざかる足音が、
微かに廊下から響いてくる。

しばらくして「おまたせ〜」と戻ってきた彼女の手には、
いくつかのディッシュが乗ったお盆。
気品漂う漆が煌めく座卓に、つぎつぎと置かれるグリーンサラダ、
オニオンスープ、香ばしくトーストされたイギリスパン、
人参のグラッセやバターポテトなどが添えられた
ハンバーグステーキと、ドルチェのムース。

そして「17歳のお誕生日、おめでとう!」 の一言。

桜の蕾が少しずつふくらみ、枝がうっすらピンク色を帯びる季節。
目の前の景色が滲みそうになる。
言葉もなく感慨でいっぱいになった。
こんなに心のこもった誕生日プレゼントは初めてのような気がして……

昨日、柳 美里 著『ROUGE』の紹介をアップしながら、
ずっと忘れられなかった……「愛する人に何を贈るべきか。
相手にどうしても受け取ってほしいものをプレゼントすべき。
そのためには相手を知り尽くしていないと、相手が
何を欲しがっているかわからない」……の一節に、
17歳のバースデーがよみがえる。

彼女は今、なにをしているのだろうか?
雪が溶け、桜の蕾が膨らむころ、あのときのお礼を綴りながら、
手紙を書いてみようか。
E-mailではなく、和紙の便箋と封筒に、あのときの気持ちと
想い出をしたためながら……

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

ROUGE 柳 美里

ROUGE.jpg

クリスティーナの新製品6色のスーパーリップスティック〈シネレール〉の
イメージキャラクターである北原佑が、広告とポスターの撮影に
現れず、マネージャーの門馬は殺気立つ。

門馬はクリエイティブディレクターの後宮に30分待って欲しいと
懇願するが、後宮の穏やかな口調からは怒りがうかがえる。
42歳の後宮は、彼女抜きでは宣伝戦略が立てられないほど有能だった。

今春デザイン専門学校を卒業して、クリスティーナに入社し、
宣伝部制作課に配属された谷川里彩は、矢嶋へシステム手帳を
届けるよう言いつけられ、撮影現場にやってきた。
そしてスタジオに入ると、ヘアメイクの日比野にメイクルームに
来るように声をかけられる。

化粧品会社勤務なのにノーメイクの里彩がメイクルームに入ると、
里彩の顔は日比野の手で鮮やかに彩られていった。

後宮が部長に撮影中止の電話をかけ終わったところへ、
秋葉が現れた。
秋葉は〈シネレール〉の担当コピーライターで、2人は元夫婦だった。

日本一有名なカメラマンの外岡に日比野は、北原佑が来ないので
谷川里彩でテストしてみては、と促し、代役ではあったがようやく
撮影が始まる。

後宮も外岡も里彩が社員であることに驚きながら、口紅の
キャッチコピーにピッタリだと、明るい兆しを覚え、
里彩はなにかが起きる予感がした。

帰社した後宮は履歴書をとりよせ、里彩を呼んだ。
里彩にスター性を見出した後宮は、彼女が普通のお嬢さんで
あることに奇妙な気持ちになる。
後宮は里彩を入社させた人事部長で不倫相手でもある桜木の
能力にいまさらながら驚き、里彩にモデルとして仕事して欲しいと告げる。

後宮から届け物を頼まれた里彩は、秋葉の事務所に行き、
預かった封筒を渡してから、秋葉にテラスへ誘われる。
珍しい花が咲いているテラスで、モデルの思いなどを
話しながら、里彩は秋葉から食事に誘われるのである。

コピーライターとしては有能な秋葉も、里彩とどんな付き合いを
すればいいのか、アイデアが浮かばない。
思案を巡らしていると、ふとニューヨークで過ごした日々が
脳裡を過る……リムジンとワイン。
食事の約束をしてから、秋葉は里彩と会う日のことが頭から離れなかった。

2人は渋谷のパルコブックセンターで待ち合わせ、
タクシーで六本木の〈京は花〉に向かった。
真剣に耳を傾ける秋葉に、里彩も饒舌になる。
デザートのあとドライブに誘われた里彩は、ぼくは
運転ができないと告げる秋葉が見せる子どものような目に
魅かれはじめていた。

秋葉との付き合いがはじまり、そして新たな出会いも……

普通の生活、ひとを魅きつける平凡さ。
春の風とともに訪れる予感。
これから開かれる新しい世界。
少年のような戸惑いと危うい幼さを持つ敏腕中年コピーライターや、
言葉に衒いやあいまいさがなく、気持ちをストレートに話す美青年の
ゲイたちとの出逢いのなかで芽生える、喪失感に魅かれるひと恋しさ。

切なさと強さが混じり合うピュアなシンデレラストーリー。

「愛するひとに何を贈るべきか、何を贈れば愛情の証になるのか。
男も女も恋人に何をプレゼントすべきかわかってないけど、
それは愛情がないってことと同じなんだ。相手が本当に欲しいと
思っているものでなければ意味がない。ほかの誰にも思いつかないもの、
相手にどうしても受け取ってほしいものをプレゼントすべき。
そのためには相手を知り尽くしていないと、相手が何を
欲しがっているかわからない」……本書を読了して十数年のあいだ、
ずっと忘れられない一節。

ルージュ (角川文庫)ルージュ
(角川文庫)

(2003/11)
柳 美里
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