1月の投稿書籍

魔  笛片桐くん家に猫がいるジェントルマンおいしく食べて体に効恋 人 よ(上)
恋 人 よ(下)紫式部 源氏物語文豪の食彩女神の幼い娘(上)星の王子さま
降霊会の夜まんがで読破 罪と罰深 追 いパンとスープとネコ日マエストロ
 
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

マエストロ1 さそう あきら

マエストロ1

夢を見た
父さんのバイオリンの音

中央交響楽団でコンサートマスターをつとめて10年。
それはプレッシャーとの闘いだった。
しかし今は過去となってしまった。
中央交響楽団は解散に追い込まれ、内外のオーケストラに転出した人、
ほかの道に再就職した人、メンバーはバラバラになった。

そんな香坂に再結成の話が降ってわいた。
1か月後、中央交響楽団 再結成コンサートを開くという。
指揮者は天道轍三郎……誰だよ?

練習場は大森の町工場「厚鉄板 小谷商店」。
散り散りになったメンバーが集まってくる。

そこに現れた運送屋・怪力のじじいが天道轍三郎だった。
練習場のボロい工場には反響版が取り付けてある。

来年からミュンヘンとの契約が決まっている香坂だが、
また中央交響楽団の仲間と演奏したいと、
参加を決意して大森にやってきた。
集まってきた面々には、顔面神経麻痺でオケを辞めた一丁田や
定年で辞めたばかりの村上、エキストラにはフルートの少女と
トランペットの少年も加わっていた。

そして始まった練習。曲はベートーベンの『運命』。
天道が振ったタクトに、強烈なフォルティシモが鳴り響く。
奏者が天道に導かれた音。
皆の目つきが変わった。
天道が叫ぶ。
演奏会までにゼニのとれるオーケストラにすることだと。

『運命』の導入部、頭には休符がある。
指揮者が振るタクトの速度が曖昧だと、演奏は無茶苦茶になる。
この曲を知り尽くしたタクト。ペリエのような指揮者。
天道轍三郎とは、いったい何者なのか……

第1話 『集結』
第2話 『鳥肌』
第3話 『フルートとたくあん』
第4話 『オーボエのリード』
第5話 『ホルンと唇』
第6話 『ホルンとネギとストーカー』
第7話 『天道の謎』
7話で構成された感動の音楽コミック第1巻(全3巻)。

マエストロ (1) (ACTION COMICS)マエストロ (1)
(ACTION COMICS)

(2004/07/17)
さそう あきら
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

パンとスープとネコ日和 群 ようこ

パンとスープとネコ日和

アキコが部屋に入ると、たろは脛に体をこすりつけて甘える。
ベッドに腰かけ抱っこしてやると、恍惚の表情で目をつぶっていた。

ちょうど “a”という店を開店したときだった。
泥まみれでうずくまっていた、グレーのキジトラ猫の“たろ”。
飼い主を探そうと、生花店の奥さんに聞いてみると
招きネコだからという言葉に、背中を押され、
いっしょに暮らし始めたのである。

53歳のアキコは父の顔も知らず、母は6年前に67歳で
亡くなったので、身内は3歳のたろしかいない。
母は、ここで店舗兼住居になっている「お食事処 カヨ」を
経営していたが、小学生だったアキコは、常連客とはしゃぐ
母の姿を見るのが大嫌いで、できるだけ帰宅を遅らせようと、
塾や図書館に通っていた。

大学までの一貫校で、礼節と偏差値の高い中学校に
合格したとき、母から詳しく聞かされた父の話。
父はお坊さんで、母とは30歳も歳が離れていた。
そのときの父の年齢が63歳だと聞き、アキコは落胆した。
その父も、2年前に心臓発作で亡くなったらしい。

当時、母が働いていた食堂の主人が、父が住職をしていた寺の
檀家だったので、父と顔見知りになって身ごもり、
母は実家に帰ると嘘をついて店をやめた。
父は小さな家を母に与えて去っていったという。

母は、アキコが3歳のとき、その家を処分し、父の援助を足して、
ここに店舗付き住宅を建てたとのことだった。

アキコが高校生になると、母に対する嫌悪感が増幅し、
料理の本を片手に、自分の分は自分で調理するようになっていった。

エスカレーター式で女子大学の国文学部に進学したが、
少しずつ母との関係がずれていくなか、大学を卒業して
出版社に入った。
偏差値は高いが頭は悪いと思われる、学生時代から
就職後3年間付き合った彼とは、彼の会社の近くの
喫茶店で別れを告げた。

それからは仕事に没頭するようになり、料理専門学校を
経営している先生の本を作っているときに、アキコも調理し、
料理本を作ることに気合いが入っていたのである。
「料理は五感で作るもの」という先生の教示から、
アキコは料理の面白さに惹かれていく。

夢中で仕事に励むうちに、アキコはあっという間に45歳になり、
65歳の母がいつものように常連客と雑談しているときに倒れて
亡くなってしまったのである。

あまりにも突然のことで呆然としながらも、
押し入れやダンスを調べていると、出てきた3通の通帳。
1通は店用、1通は母名義、そしてもう1通のアキコ名義の通帳の
残高は驚くような金額だった。
その通帳カバーには「お父さんよりアキコへ」と
書かれたメモが入っていた。

食堂存続の方向性が決まらないまま、お世話になった
料理の先生の本の企画が会議を通り、久しぶりに先生を
訪ねて、つい現在の自分について相談すると、
あなたがお店を続けていけばいいと、先生からアドバイスされた。

半月後、アキコは経理部に異動になった。
がっくりして家に戻ると、ふいに先生の顔が浮かび、
先生の言葉は、人事異動の伏線だったのだろうか、
まるで預言者のようだと思い出しながら、ベッドに入る。
そして翌朝、アキコは会社をやめると決心したのだった。

1年間調理学校に通い、調理師免許を取得したアキコ。
白い壁とまっすぐな柱、修道院のような内装。
ボリュームのあるサンドイッチとスープ、サラダとフルーツの
オーソドックスなメニュー。
生花のみのシンプルな空間。
できあがっていく景色に、熱いものがこみあがる感触。

働く女性の苦悩と決断ののち、たどり着いた、安心できる
食材と手間ひまをかけたこだわり。
そして、独りになってしまったアキコのもとに、突然やってきて
くれたキジトラ猫のたろとの至福の時間。
誠実で控えめな女性と、気働きのできるアルバイトのしまちゃん。
喪失感から希望へ。
ささやかで丁寧な生活のなかで小さな幸せが描かれる、
優しいスープとネコものがたり。

物語のなかに猫が登場する話を目にするたび、猫が主人公
だったり脇役や伏線として活躍する小説が多いことを痛感し、
それら既読の本の表紙が脳裏を巡る。

天敵の部類に入るほど昆虫は苦手だけれど、動物と爬虫類は大好き。
今、家族として同居しているのはパピヨン犬のルル。
数年前まで、友だちであり姉妹であり娘だったのが三毛猫のルリ。

犬には犬の、猫には猫の、それぞれ持っている性質があり、
同じ犬や猫でも性格は10匹10色だろう。
脛に体をこすりつけたり、膝の上で恍惚とした表情を浮かべる
という一説に触れると、鮮明によみがえる在りし日のルリの姿。
猫が出てくる物語がいつもそうであるように、本書もまたルリと
再会させてもらえた懐かしさ溢れる1書。

パンとスープとネコ日和 (ハルキ文庫 む 2-4)パンとスープとネコ日和
(ハルキ文庫 む 2-4)

(2013/07/13)
群 ようこ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

深追い 横山秀夫

深追い

職住一体の息苦しさから「三ツ鐘村」と揶揄される
三ツ鐘警察署。
交通課事故係主任で巡査部長、32歳の秋葉和彦は、
中庭で行われている「みつがね交歓会」の様子も
意に介さず、独身寮2階の自室でベッドに転がっていた。
ゆうべ事故処理した1件が頭から離れない。

自転車で帰宅途中、その自転車が車道側によろけ、
4トントラックに撥ねられて即死した会社員が所持
していた、妻とおぼしき女のスナップ写真。
そこには小中学校時代の同級生で、いっとき心を
通わせた時期もある高田明子、旧姓綾瀬明子が写っていた。
事故直後現場に落ちていた、今ではめったに目にすることの
ないポケベルが震え出し、メッセージが表示された。
「コンヤハ オサシミ デス」

通夜に行くか行くまいか逡巡していると、交歓会に参加
している署長から呼び出され、仕方なく中庭に出る。
若い警察官に金や女絡みの不祥事を起こされたくない小心者の
署長が、32歳にもなって独身の秋葉を心配し、
女性との交際を勧める。

お前に惚れているらしい巡視員の小磯はどうだ?という署長の
言葉に、秋葉はげんなりする。
この署はなにもかも上に筒抜けなのだ。
そのとき、渡し忘れたポケベルが、ポケットの
なかで震えだした。
心臓を鷲掴みにされたような衝撃……
「コンヤハ カレー デス」
明子は死んだ夫にメッセージを送っているのか?

みすぼらしい市営住宅のひとつ、サッシを取りのぞいた
部屋の祭壇に高田正勝の遺影。
尋常ではない死者へのメッセージが気になり、通夜に
かけつけたが、喪主の位置に17年の歳月を隔てた明子がいた。
喪服の袖口には、5歳ぐらいの娘がしがみついている。

手早く焼香を済ませ、帰り際に悔やみの言葉をかけると、
明子の濡れた瞳に驚きの色が広がった。
明子にポケベルを返そうか迷っていると、「主任」と声が掛かり、
その方向を見る。
喪服を着た交通巡視員の小磯裕美だった。
精密機械工場に勤めながら、ボランティアで紙芝居作りを
していた高田正勝に、裕美は交通安全をテーマにした紙芝居を
作ってほしいと頼み込んでいたのである。

5年前、秋葉がライトバンを白バイで追跡した際、下り勾配の
緩いカーブでライトバンが100km/hを越え、電柱に激突して
28歳の男が死んだ。
その男は連続強盗団のひとりだと分かったが、翌年、
秋葉は交通機動隊を追われた。
警察のなかにある外向けと内向けの顔。
組織が下した「深追い」に対する罰。
以来、秋葉は冷えきり、心が壊死していったが、いま
昔と変わらず美しい明子に会い、心が動いている。

葬儀の日以降、震えるポケベルに秋葉の心も共振した。
それが1週間も続くと秋葉は落ち着かず、明子の様子が
気になってくる。
10日目、勤務を終えた秋葉は明子の家に向かい、
呼び鈴を押した。
戸惑っている明子に、線香をあげさせてほしいと
居間にあがり、そこにいたお下げの娘に「幾つ?」
と声をかける。
「6さい。もうすぐ」と答えたのを聞きながら、
漂うクリームシチューの匂いに、メッセージ
通りだと感じながら、危険な心を持つ自分に
気づく。

高校1年の夏、明子とばったり出くわし、交際するようになった。
薄暗い神社の境内で初めてキスをしてから、明子の女の部分に
興味を掻き立てられ、また神社に誘い、話を遮って唇を重ね、
脇の下に手を滑り込ませた。
明子は身を翻し、悲しげに言った。
「そういうことがしたいだけ?」
その通りだった。自己嫌悪で電話もできなくなった。
あれから何人もの女と付き合い、修羅場のような別れも
経験したが、あの夏の切ない気持ちは忘れることはできない。

「力になれることがあれば言って欲しい」という秋葉の
申し出に、明子の表情は変わらず、言葉だけが虚しく響いた。

秋葉が訪ねた日を境に、ポケペルの震える回数は減っていったが、
それでもポケベルが鳴ると、秋葉は明子の家を訪ねた。
明子は知っている、秋葉がポケベルを持っていることを。
それは、明子が夫ではなく自分を呼んでいることを意味する。

突然、秋葉は所長室に呼び出され、明子のことを詰問される。
秋葉は、小中学校時代の同級生だと答えたが、明子のもとへ
他にも通っている男がいると署長から聞かされ、呆然となる。

所長室を出て、小磯裕美に問い質すと、裕美は署長に
話したことをあっさり認め、高田がいつもコンビニの
おにぎりを食べていたこと、不整脈で入院したときも
明子は一度も見舞いに来なかったことなどを話す。

そのときポケベルが震えはじめた。
「コンヤハ オムレツ デス」
慌てて去ろうとする秋葉を、裕美の言葉が追いかける。
「主任、本当にもうやめたほうがいいから」

警察を辞めることになるかもしれない。
あの下り勾配の緩いカーブに突っ込んでいく感覚がよみがえる。

明子の家に行くと、娘の鮎子が留守番をしていた。
秋葉は鮎子に座布団を持ってきてくれるよう頼み、
その隙に赤い手帳を引き出しから取り出し、夢中でページを捲った。
「K」「押髪さと子」「片桐」「安田」「久保田」
手帳に書かれていたそれらを、秋葉は素早く書き写す。
そのとき、明子が居間に現れた。
明子に手帳を押しつけ、逃げるように家を出た。

30分後には、手帳にかかれていた中学時代の同級生
押髮さと子が住む隣町の県営住宅に着いた。
さと子は歓待してくれた。
3年前に離婚し、2人の息子と暮らしているさと子と
秋葉は近況を語り合いながら、明子の話になる。
同じ会社の人と不倫し、妊娠して捨てられたというさと子の
言葉に、秋葉は相手の名前を聞き出す。
イニシャルKは片桐。
その後、高田という男と一緒になって、出産したらしい。

明くる日、秋葉は年次休暇を取り、駅前通りの喫茶店に
片桐良和を呼び出し、高田明子との関係を問い詰めていく。

初めてポケベルが震えないのに、明子の家に行き、鮎子の
尻に煙草の火を押し付けられたような痕を見つけた。
鮎子を虐待する高田に、明子は弁当を作らず、見舞いにも
行かず、精一杯の抗議を示したのだろうか?
ならば、かいがいしく送られているメッセージは?

寮に戻り、自室で退職願を書こうとしたとき懐が震えた。
「モウ ユルシテ クダサイ」

突如、廊下のスピーカーが鳴る。
《非常招集、非常招集!勝目町3丁目、市営住宅で火災発生!》
明子が住んでいる場所だった。
明子のメッセージ。遺書。母子心中。そんな!

庁舎前にとめてあった事故処理車に飛び乗った。
60、70、80km/h……。
カーブ、下り勾配の緩いカーブ。……。
前方にバイク。
そう思った瞬間、明子の心が見えた。

秋葉が見えた明子の心とは?
高田が死んでからも送り続けられたメッセージにはどんな意味が?
イニシャル「K」は何を指していたのか?

人間の性、刑事の執念と執着心、嫉妬と羨望、義務感と呵責、
恐怖と自責の念、息の詰まる階級社会、根深い憎悪と嫉妬、
軋轢としがらみ、そんな警察社会のなかで苦悩し、自己嫌悪に
陥りながらも、人間としての正義を取り戻していく。
『深追い』『引き継ぎ』『又聞き』『訳あり』『締め出し』
『仕返し』『人ごと』7編の、「三ツ鐘村」と揶揄される
三ツ鐘警察署で起きる短編警察小説。

深追い (新潮文庫)深追い (新潮文庫)
(2007/04/25)
横山 秀夫
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

まんがで読破 罪と罰 ドストエフスキー・作 (バラエティ・アートワークス)

まんがで読破 罪と罰

19世紀、ロシア・サンクトペテルブルク。
貧困のため大学を中退した頭脳明晰でみずから天才と信じている
ラスコリニコフは、家庭教師の仕事も辞め、郷里も貧しく仕送りも
途絶えがちで、家賃も払えない。
お金さえあれば、田舎の家族……母さんや妹のドーニャたちに
迷惑をかけずに済むのにと、思い悩む。

退学前に書いた論文「選ばれた天才には法律なんてカンケーない」が
脳裏を埋め、強欲金貸しの老婆アリョーニャを殺して金を盗んでも、
奪った金を世の中のために使えば、それは正義だと考える。
正義を実行できるものが非凡人、つまり天才になる。
そして自分が凡人か天才かを証明してみせると決意する。

ドイツ人の住居人が引っ越したため、あのアパート4階に
住んでいるのはアリョーニャだけになった。
ラスコリニコフは父の形見だという懐中時計を質草に、
お金を借りながら、アリョーニャの部屋の様子を窺う。

その夜酒場で出会った、役所をクビになった元役人マルメラドフは、
「貧困で家族を苦しめているのに、自分は苦しみが足りない。
だから苦しむゆえに飲む。飲めば飲むほど自分が下劣な人間だと
わかるのです。娘のソーニャを娼婦にしてまで」と言う。

ラスコリニコフがソーニャはいったいどんな娘なんだろう?と
思い巡らしていると、母から、妹のドーニャがラスコリニコフの
学費援助のため、好きでもない男ルージンと結婚すると
書かれた手紙が届く。
自分に力さえあれば……

アリョーニャの妹リザベータが明日7時に不在だと知り、
「時が来た。あの金貸しのババァを殺して金を奪う、
これは正義だ!」と、決行を誓う。

翌日、斧を隠し持ち、上質の銀の煙草入れを質草に
持ってきたと言って、部屋に上がり込み、
アリョーニャの背後から、斧を振り降ろした。
ついにやった。俺はやはり天才‼︎
また未来を取り戻せると思いつつ、金品をポケットに入れている
ところへ、不在のはずのリザベータが戻ってきてしまった。

見られてしまったと、ラスコリニコフは……

ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの長編小説で、
「現代の予言書」とも呼ばれる『罪と罰』
神の存在、現実と理想、良心の呵責、人間回復への願望など
普遍的で哲学的なテーマが描かれた文学の最高峰を
コミカライズされた1冊。

罪と罰 (まんがで読破)罪と罰 (まんがで読破)
(2007/10/01)
ドストエフスキー、
バラエティアートワークス 他
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

降霊会の夜 浅田次郎

降霊会の夜

しばしば見る夢。
見覚えのある風景が去来するなか、見知らぬ女に導かれ、
ひたすら進む。
私が、罪と思われることは山ほどあるが、懺悔などしない、
と言うと、何を今さら。忘れていたくせにという女の
一言で、いつも夢から覚める。

紅葉の盛り、浅間山の麓の、もともと企業の保養所だった家で、
雷鳴が轟いた。
籐椅子に座り、深い森に続く庭を眺めていると、何か
動くものを見つけ、目を凝らす。
コートを被った女性が蹲っている。
中に入るよう促しても、閃光と雷鳴に怯んで、女はまた蹲る。
そばまでいき手を差し出し、力ずくでひきずって家に転がりこんだ。

そして女の顔を見た。ハッとなった。
それは夢に現れる、あの女の顔だった。
「何を今さら、忘れていたくせに」
低い声が聞こえたような気がした。

女は西の森の住人で、散歩の途中だったと言い、
名前は梓と名乗った。
祖父が、神憑るときに、梓弓の弦を引く口寄せをしていたが、
父がその家業を嫌ったため、自分を梓巫女にして家を継がせようと、
名付けたらしい。

夢の女が意識の垣根をこえて、私の目の前に
立ち現れたのではないのか。

女が恐怖から山荘に帰る気になれないのだろうと察し、
スープを火にかけパスタを茹で始めた。
泊める条件として、神憑りだの霊だのの話はやめてくれと言うと、
「西の森に住んでいるミセス・ジョーンズをご存じですか。
会いたい人はいませんか。生死は関係なく、ジョーンズ夫人が
会わせてくれます」と、女は私の条件を、軽々と踏み越えた。
夢の女の声が甦った。夢の続きに、私は迷い込むのだ。

舞台は変わり、戦後15年のめざましい復興の中で、民族が
大移動している時代。
「山野井清君は転校が多いから、分からないことは
みんなで教えてあげてね」
と、小学校の教室で教師が転校してきたキヨを紹介する。
職と住まいが定まらない混乱期、新学期を迎えるたびに
何人もの転校生が出たり入ったりする。

転校生は子どもらの興味の対象となるものだが、キヨは陰鬱で
学力も運動能力も劣っていて、子どもたちが待望する小英雄で
ないことが、転校初日に暴露されてしまった。
私も類に洩れなかったが、たまたま帰る方向が同じ小学生が何人かで
校門を出たあと、気がつくとキヨと2人だけになったことから、
登下校をともにするようになる。

いっしょに登校した2人は、障害物だらけの登校路を遊び遊び歩いて
遅刻し、廊下に立たされた。
そのうちキヨは膝を抱えて蹲り、半ズボンの中から小便が
溢れ出したのだった。
そして、平然と立ち上がった。
その薄気味悪い態度から、キヨと遊ぶ子どもはいなくなった。
私もキヨと遊ぶことはしなかったが、登下校の付き合いだけは続いた。

キヨは自分の父は銀行員だと言っていたが、実は父親は
ろくでなしだった。
1日中ぶらぶらして、パチンコ屋か横町の飲み屋で酔い潰れている。
そのうえ、パチンコで稼いだ景品をキヨに換金させているのである。

下校の道すがら、建築現場を通りかかったとき、キヨは突然
国道を渡ろうとして、私はあわててキヨを止めた。
まるで自殺行為だ。
そのとき工事現場の底から、泥にまみれた女が這い上がってきて、
「キヨシ、キヨシ」と呼んでいるにもかかわらず、
キヨは突然歩道を駆け出したのだ。
そしていくらも走らぬうちに咳き込みながら、その人が母親ではないと
キヨは言い訳する。
貧しいことが当たり前の時代にあって、さらに貧しいがための悲しい嘘。

夏休みも間近いある日、下校路の交叉点で山野井清と別れようと
したとき、近づいてきた救急車を見て、キヨは車に轢かれて、
2回救急車に、乗ったことがあると言う。

キヨが2度の事故についてしゃべり始めたが、今さら信じる気には
なれなかった。
私は執拗にキヨを責め、キヨは泣き出してしまった。

そこへ交通整理を終えた巡査が歩み寄ってきて
仲直りをしなさい、と宥められ、私たちは巡査の前で
「ごめんね」と言い合った。
それから「さいなら」と言って別れた。

2学期の始業式の朝、校長は私の顔を見てから言った。
「山野井君は転校したんだ。妙な噂を聞いても信じてはいけないよ」

ひどく蒸し暑い日、信号を待っていると、都電の停留所に、
父親とキヨの姿をみつけた。
たぶん、ほんの一瞬の出来事だった。
走ってくるダンプに向かって、父親がキヨを弾き飛ばすのを、
私は確かに見た。
3度目の交通事故。
そしてキヨは死んだ。

ミセス・ジョーンズと彼女の娘・メアリーに梓、そして私の4人が
手を取り合い、テーブルをめぐって繋がった。
ミセス・ジョーンズは紅茶を一口飲んでから言う。
「お会いしたい方の容姿とお名前を念じてください」
少年の名前は覚えていても、容姿が思い出せなかった。

やがて都電の停留所の離れ小島に佇む、貧しい父と子が
浮かんできた。
けれど、霊媒師の身体を借りて喋り出したのは、
キヨではなく、あの子ども好きの巡査だった。
次にやってきたのはキヨの父親。
そしてようやく想いが叶い現れたキヨ。
邪気がなく、恨みや憎しみの感情を知らない、純真無垢で
限りなく優しい心を持ち、自分のことより、ろくでなしの父と、
母のことを考えるキヨ。

世界に対しての体裁だけを繕った、日本の復興の裏で
貧しさに泣いている人々の悲哀。
社会に伝えられている戦争の真実……無差別の殺戮・
集団自決・特攻隊・孤島の飢餓。
弱い者を見捨てて、道徳も道理も考えずに形ばかりを
元通りにした日本。
社会の繁栄が個人の幸福を約束するという、大いなる錯誤。

招霊だけでなく、さまよえる魂を鎮め、依頼人の告解を聞いて
罪障を滅す。そうした古風な儀式から、神を排して人と霊魂を
結びつける降霊会。

降霊会を通して暴かれる罪の数々。
苦悩を知りながら看過した罪。
気づくことのできない鈍感な罪。
卑怯者という罪。
人間の幸不幸がかかっている一言「さよなら」を言えなかった罪。
意識と無意識にかかわらず、重ねてしまう罪。
人はその罪に気づきながらも、向き合うことが怖くて、
ヴェールをかけてしまう。
それでもヴェールに隠された罪の意識は澱となり、呪い続ける。
心の闇の奥深く、蓋をきせ重石を載せた記憶の古井戸。
その罪に決着をつけるため、降霊会はまだ終わらない。

さまざまな問題をモチーフに、苦悩と人間の罪を奥深い日本語、
豊かな表現力で綴られたジェントル・ゴースト・ストーリー。

降霊会の夜降霊会の夜
(2012/03/07)
浅田 次郎
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ジャンル : 小説・文学

星の王子さま (Le Petit Prince Antoine de Saint-Exupery) 訳・浅岡夢二 絵・葉 祥明

星の王子さま

6歳のとき、初めて描いた絵を、大人たちにさんざんけなされ、
画家になる夢を捨ててパイロットになったぼくは、サハラ砂漠に
不時着してしまった。
ひとりで飛行機を修理して、砂漠から脱出しなくてはならないのに、
1週間分の飲み水さえ充分になく、とても孤立していた。

明け方、ぼくはそれまで聞いたことのない神秘な声で起こされたのである。
不思議な格好をした男の子が「ねえ、ヒツジを描いてくれない?」と言う。
その少年は小惑星からやってきた王子だった。
彼がいたという星は、普通の家くらいの大きさしかなく、3つの火山と、
根を張って星を割いてしまうほど巨大になるバオバブの芽と、
1りんのバラがあった。
ある日、大切に世話をしていたバラと喧嘩してしまい、
王子は旅に出ることになったらしい。

最初に訪れたのは、絶対君主の王様とネズミしかいない星。
それから、自分以外みんな自分のファンだと思っている〈うぬぼれや〉が
いる星。
お酒の入ったびんと、空になったびんをたくさん並べた前に、
静かにすわっている〈酔っ払い〉が住んでいる星。
すごく忙しい〈ビジネスマン〉が住んでいる星。
街灯がひとつあって、〈点灯夫〉が1人いるだけの星。
5番目の星より10倍も大きくて、分厚い本を何冊も書いている
おじいさんの〈地理学者〉がいる星。
111人の王様、7,000人の地理学者、99万人のビジネスマン、
755万人の酔っ払い、3億1100万人のうぬぼれやがいる、
つまり約20億人のおとなたちがいる星、地球。
王子が7番目に訪れた星が地球だった。

金色の髪を持ち、よく笑い、夕日が大好きで、一度質問したら、
答えが返ってくるまで絶対にあきらめないのに、
ぼくの質問には答えない王子。
ぼくは飛行機を修理しながら、王子がヘビやキツネと出会ったことで
感じた心や思いに触れていく。

想像力のない人間たち。
みんな忘れちゃっている大切なこと……絆を結ぶ……
もし君がほくと絆を結んだら、ぼくたちはお互いを必要とする、
世界にたったひとりの友だちになる。
大切なことは目に見えないから、ハートで見なくちゃいけない。
バラのために使った時間が長ければ長いほど、
大切な存在になる。
人間はそのことを忘れてしまっている。
いつまでもその人との関係を大切にしなくてはいけない。

ぼくは思う。
王子さまは、バラに対して誠実で、眠っているときでも、
王子さまの胸のなかでは、バラが輝いているんだ。

飛行機の修理が終わり、やがて別れのときが……
砂漠のなかのオアシスみたいな王子さまの笑い声が聞けなくなる。

世界中で読み継がれている、あまりにも有名な童話。
にもかかわらず、わたしは初めて手にとった。

大人には本質が見えない。
何を探しているのかわからないまま、急行列車に乗り込む。

ここに書かれている大人や人間は、まさにわたし自身のことだった。
何度も読み返せば、いつか心の目で本質を見ることが
できるようになるのだろうか。
大人になって、当たり前で常識だと疑うことのなかった諸々が、
実は子どもの心でしか本質が見えないことを、童話が教えてくれる、
比類なき美しいものがたり。

星の王子さま星の王子さま
(2013/02/25)
サン=テグジュペリ
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ジャンル : 小説・文学

女神の幼い娘(上)ArcheAge もみの木と鷹1 ジョン・ミンヒ 田端かや訳

女神の幼い娘(上)

雨上がりの夜、カフェに現れた女。
彼女は乞食が着ているようなマントを羽織り、金箔模様が
ほどこされ、貴重な青い絹のスカートを穿き、狂人と
見紛うようなざんばらな髪と、上腕には華やかな
薔薇の蔓の入れ墨を入れていた。
薔薇は誰かに寵愛を受けている妾の可能性が高い。
そして彼女はたいへん美しかった。

カフェには空席がなかったが、低い間仕切りのある席に
ついている男のそばに座り、知り合いのように声をかけた。
男はしばらく女を眺め、髪を拭きなさいと、ハンカチを差し出す。
周りの客に勘ぐられないよう、2人は会話を続けながら、男が
そのマントはまるで夜の外出みたいだと言ったあと、自分は
メティオンだと名乗る。
女は、エ、ティナ。ティナですと答えた。

メティオンが自分のマントをテーブルの下で渡したとき、
カフェのドアが開いた。
ティナがびっくりし、顔を隠す。
入ってきたのは、兵士たちだった。
ティナはあわてて胸に抱いていた赤ん坊を、メティオンに手渡した。

国王陛下の命令で身分を確認しているという兵士の言葉に、
メティオンは自分はキーサーの息子、メティオンで、ティナと赤ん坊は
私の娘と妾だと説明し、兵士たちは引き下がった。

ずっと赤ん坊を覗きこんでいるメティオンに、
落ち着かないティナが赤ん坊を返してくださいと
懇願するが、メティオンは話が違うのでは?
望みはこの娘だと答えるだけだった。

エペリウムの王ローアンドロスは、“王の助言者”と
呼ばれるアンタロンの意見を参考にしていた。
サビーナ王妃は細い腰と立派な尻を持ち、9年前に憧れの
座にのし上がったが、当時24歳だった彼女は、ローアンドロスの子を
死産してしまい、その後、生を受けることはなかった。

ローアンドロスには何人かの後宮の女たちがいて、
いま33歳のサビーナは孤独であった。
王の寝所を守る女性たちも誰1人子どもができなかったが、
ローアンドロスが王子時代に、街の舞姫とのあいだに
生まれた赤ん坊がいた。
しかしその子と母親はローアンドロスの父王によって、
誅殺を命じたられのである。

ある夜、アンタロンがとても若く美しい舞姫を連れてきた。
そしてすぐに妊娠し、10か月後に息子が生まれた。
美しい舞姫は王子の母、エレクティナという名前を授けられた。
数日後、サビーナは実家に代々仕えているリヴォラ将軍に内命する。

ティナが赤ん坊を抱いて歩くメティオンのあとを追っていると、
突然メティオンが振り返り「お入りなさい」と言う。
そこは洋裁店のようだった。
メティオンに言われるまま、チュニックに着替え、髪を結い、
外に出てあとをついて行く。

路地をいくつか抜けると、突然現れたヒエモラの城壁。
去年通ったのは、平民たちが出入りする「ロバの門」だったが、
今見えるのは王と王族に貴族だけが通ることができる
「満月の門」だった。

夜が明けて、寵姫エレクティナと王子ポリティモスが行方不明になった。
国王は、すぐに軍隊規模の捜索隊を放った。
リヴォラが2人を王宮の外に誘引して殺そうとしたが、
エレクティナがそのことに気づき姿を隠したのである。
陛下の恐ろしさに震えながら、サビーナはリヴォラから長兄である
ロディオンの手紙を渡され、読んでいるうちに表情が変わっていった。
「アユブを呼びなさい、はやく」
悪鬼呪術を扱う者の標である赤いムカデ模様の烙印を額に持つアユブに、
死体は好きにしていいという条件付きで、2人を探し出して殺すよう命じた。

葦が生い茂る沼地を歩き、メティオンとティナは廃墟となった
水車小屋にたどり着いた。
赤ん坊が突然泣き出し、ティナも泣き出しそうにメティオンを見つめた。
赤ん坊がティナの胸に戻り、ため息をつきながらつぶやく。
「アニルよ、ありがとうございます」
芸人たちの女神であるアニルが、メティオンのいるカフェに
引き寄せてくれたのだと、ティナは信じていたのである。

「私はあなたをピロアスに連れていくつもりだ。そこに家を建てて
3人で暮らそう。私は母親が死ぬのを見過ごすことができないんだ」と、
メティオンが言う。
そして、「旅支度ができなかったから、少し待ってて欲しい。日が暮れるまでには
帰って来るから、ここであなたとジンが迎えてくれたら嬉しい」と。
ティナが「ジン?」と訊くと
「ユージニアが男の子なら、ジン。ポリティモス王子殿下とは
呼べないし。それから私はキーサーのウルスの息子ではなく、
名前はラパンだよ」と言う。
ラパンはエケノース家の末っ子であり、サビーナの弟だった。

PCオンラインゲーム原作小説で、
『ArcheAgeもみの木と鷹』シリーズ第1弾。

巻末のゲーム紹介には
「小説で綴られた世界は、実在する。リアルで美しい世界。
圧倒的な自由度と美しさ。そして極限まで作り込まれた
世界観を楽しめる」と説明されている。

わたしはゲームにハマると、生活のすべてがゲームをするために
動くようになってしまうため、できるだけ手を出さないことにしている。
でも、本書のゲーム紹介に触れ、その美しい世界を映像で捉えながら、
小説を再体験してみたいという誘惑に負けそう……

女神の幼い娘(上) ArcheAge もみの木と鷹1 (ゲームオン)女神の幼い娘(上)
ArcheAge もみの木と鷹1
(ゲームオン)

(2013/06/14)
ジョン・ミンヒ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

文豪の食彩 原作 壬生 篤 作画 本庄 敬

文豪の食彩のコピー

本社の政治部から深川支局に配属されて2か月、川中啓三は
黒田デスクから企画を出すよう要求され、明治期の食について、
当時の代表的な文化人の書き残したものなどを通して
探求していく企画を提案する。

ほとんど口から出まかせのレベルに、黒田デスクは
乗り気になり、早急にもう少し煮詰めた企画書を
出すよう催促されたため、漱石作品を読み直さざるを
得なくなった。
すると不思議なことに気づく。

日本人のほとんどが内容を知ったつもりでいる『坊ちゃん』は、
かなり間違ったイメージが埋め込まれているのが分かる。
例えば坊ちゃんにとってマドンナは仇だったとか、坊ちゃんが
惚れた女は実家の下女である清(きよ)だったとか……

そして坊ちゃんが子どものころ、清に買ってもらっていたのが、
浅草の仲見世に今もある梅林堂の紅梅焼だった。
川中と黒田の子ども時代にもおやつになっていた紅梅焼を
食べながら語る。
享保期、紅梅焼は浅草寺にあった梅の銘木に因んで生まれた菓子であり、
日露戦争後、イギリス帰りの漱石が日本の偽の近代化を恐れて『坊ちゃん』
という小説のなかで、警鐘を鳴らした、と。
紅梅焼にはそんな漱石の思いもこめられている。

そして連載がはじまった。
タイトルは『文士のお取り寄せ』

坊ちゃんの家庭環境は両親からはかまってもらえず、
下女の清だけが何かにつけかばってくれるという、
少しもお坊ちゃんらしくなかった。
清が坊ちゃんと呼んでいるだけなのである。
江戸を引きずり、近代化とソリの合わないキャラクターの
ようである坊ちゃん。
物語のなかで喰うことに関するエピソードが多く、
共通しているのは、すべて特に変哲のない食べ物ばかり。
その点が優れて珍しい作品といえる。

漱石が『坊ちゃん』とほぼ同時期に書いた『吾輩は猫である』の
主人公・苦沙弥先生は胃弱であり、いわば漱石の自画像だった。
胃弱に悩みながらも、「西洋薬を効かぬ」と服用を拒否し、
その結果として食に関するエピソードが多く綴られる。
それらは、現在ではなかなか購入するのが難しいと言われる
珍品・逸品ばかりである。
食いしん坊であり、名前のない猫の食い意地が、悲劇的な
結末への伏線になっていく。
メインテーマは日本の近代化に対する強い疑問であり、
当時の西洋文明とは、不満を増幅していくだけだと喝破している。
最大の読ませどころ、毒舌家の迷亭君や苦沙弥先生その他
オールキャストが一堂に会した文明批評大会。
客の残したビールをヤケ呑みし、酩酊状態で水瓶に落ちて
死んでゆく猫。
猫は最期に言う……〈太平は死ななければ得られぬ。
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい〉と。

第1話「坊ちゃん」の好物は?
第2話 再現!正岡子規の“食”
第3話「にごりえ」のカステラ(樋口一葉)
第4話 荷風と美食
第5話 芥川龍之介「本所両国」の食
第6話 太宰と酒

『「六人の文豪」ゆかりの食を訪ねて』の書き下ろしコラムと
漫画で描かれた、日本を代表する作家たちの作品を通して、
ゆかりの食が綴られた文豪探訪記。

文豪の食彩 (ニチブンコミックス)文豪の食彩
(ニチブンコミックス)

(2013/05/18)
壬生 篤
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

紫式部 源氏物語 完全版 与謝野晶子訳

紫式部 源氏物語 完全版

『桐壺』
どの天皇様の御代(みよ)だったか、深い御愛寵(ごあいちょう)を
受けている人がいた。
ほかの女御たちからねたまれたり恨まれたりされたせいか、
病気がちになった更衣は、実家へ帰ることが多くなり、
帝は更衣のことばかり気にかけるという御様子。
そして桐壺の更衣へ休息室としてお与えになった。

2番目の皇子が3歳の夏、御息所(みやすんどころ)……皇子女の生母
……が病気になり実家へ帰ろうとしたが帝はお許しにならず、
そのうちに重体になってしまった。
母の未亡人はお暇を請うたが、皇子だけを宮中に残して帰宅させた。

帝は眠れないほど心を痛めている状況で、待ち侘びる
実家へやった使いの返答は
「夜半過ぎにお亡くなりになりました」
という非常なものだった。
帝のお悲しみは尋常ではなかった。
優しい更衣のことを思い、女官たちは皆寂しがっていた。
母である未亡人の心はどんなに悲しかったであろう。
そして宮とお別れするのが悲しいと、未亡人は言って死んだ。

それから若宮は7歳のときに書初(ふみはじ)めの式が
なされ、学問をお始めになったが、皇子の比類なき聡明さに
帝はしばしば驚かれていた。

だれもこの子を憎まないでしょう。母親がいないこの子を
かわいがっておやりなさい、と帝はおっしゃり、
弘徽殿(こきでん)へもごいっしょされ、そのまま御簾(みす)の
中へお入りになった。
剛腕の武士も仇敵(きゅうてき)も、皇子を見れば、
自然に微笑んでしまうと思われる美しい少童(しょうどう)でしたから、
女御も愛情を感じずにはいられなかった。
女御の姫宮の方々よりも第2の皇子のほうがおきれいであった。
皇子は学問も音楽の才も豊かで、まるで天才児であった。

その時分、高麗人(こまうど)のなかに、上手な人相見の
者が混じっていて、帝がこっそり皇子を会わせると、その相人は
頭を傾け言葉にする。
「最上の位の人相であるが、それは幸福な道ではない。
帝王の輔佐もまた違うようです」

聡明な帝とほとんど同じことを占った相人に価値をお認めになったのである。
自分の代もいつまで続くか分からないのであるから、頼もしい位置を
この子に用意してやらなければならないと、以前にもましていろいろ
勉強させたのである。
元服後は源氏の某(なにがし)にお決めになった。

ずっと帝は桐壺の更衣を忘れられなかったが、典侍(ないしのすけ)の、
后の宮様の内親王様があの方に似ていらっしゃいますという言葉を聞き、
熱心に入内をお勧めになり、兄の兵部卿(ひょうぶきょう)親王も賛成され、
先帝の第4の内親王は当帝の女御になられた。
御殿は藤壺である。
姫宮は桐壺の更衣にそっくりだった。
帝にまた楽しい生活がよみがえったきた。

源氏の君は母に似た藤壺の宮を恋しく思い、
あなたはこの子の母親にそっくりだから、彼を愛しておやりなさい、
という帝のおとりなしに、源氏の君は美しい花を、
この宮へ差し上げたいと思うようになる。

源氏の美貌を世間の人は光の君と言い、
源氏の君は十二の歳に元服し、その夜左大臣家へ婿に行った。

左大臣の令嬢は美しい貴族の娘だったが、源氏の心には
藤壺の宮を妻にしたいという思いが溢れていた。
元服後、藤壺の御殿の御簾へは入れなくなり、その方が
お弾きになる音色やお声を聞くために、宮中の宿直(とのい)が
好きだった。

5、6日御所にいて、2、3日大臣家へ行くなどの通い方を大臣から
とがめられることもなく、贅を尽くした生活が藤壺の君と
いっしょだったらとしばしばため息をついてしまう。

光の君という名前は高麗人が、源氏の美しさと才能を讃えて
つけた名だと言われたそうである。

『桐壺』に続く
『帚木』『空蝉』『夕顔』『若紫』『末摘花』『紅葉賀』『花宴』
『葵』『榊』『花散里』『須磨』『明石』『澪標』『蓬生』『関屋』
『絵合』『松風』『薄雲』『朝顔』『乙女』『玉鬘』『初音』『胡蝶』
『蛍』『常夏』『篝火』『野分』『行幸』『藤袴』『真木柱』
『梅が枝』『藤のうら葉』『若菜(上)』『若菜(下)』『柏木』
『横笛』『鈴虫』『夕霧一』『夕霧二』『御法』『まぼろし』
『雲隠れ』『匂宮』『紅梅』『竹河』『橋姫』『椎が本』『総角』
『早蕨』『宿り木』『東屋』『浮舟』『蜻蛉』『手習』『夢の浮橋』
の全54帖

紫式部が生み出した、くるおしくも切ないラブロマンスが、1000年の
ときを経て、情熱的な女性作家・与謝野晶子の手によって
現代語訳された『源氏物語』。
日本文学の美と繊細な感性に、平安時代の華やかな情景と、
愛するがゆえの苦しみが時空を超えて再燃する。

中学生までは、想像を要する数学が好きだった。
進学して、記憶力の数学に変わり挫折したが、同時に古文に
興味を持つようになり、定番の『徒然草』や『枕草子』の
授業が新鮮に思えた高校時代。
なかでもやっぱり『源氏物語』に魅了され、必ず全帖制覇しようと
思いつつ、いまに至ってしまった。

単純で頑なに一途だと信じていたあの頃には、理解しがたかった
光源氏の揺れ動く心。
今は別の角度から共鳴できそうな気がする。

源氏物語 完全版源氏物語 完全版
(2013/05/02)
紫式部
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

恵方巻きロールサンド

恵方巻きロールサンド

作り方は画像をクリックしYouTubeにて

テーマ : レシピ
ジャンル : グルメ

田舎色 と 素敵な 美容室

UN JOUR1

長年通っていた美容室。
カット直後の「今切りました感」がなく、ナチュラルに
仕上げてもらえるさりげなさが気に入っていた。
けれど、ある時突然の閉店を告げられ、それから
美容室探しに流浪の旅が始まった。
フリーペーパーや情報誌をチェックしては、雰囲気や
料金形態などを見て、良さそうなお店を訪ね歩くこと数年。
なかなか満足のいく美容室が見つからない。

そんな折り、たまたまポストに投げ込まれた「UN JOUR」のチラシ。
家から近いし、クーポンも付いているし、試しにカットして
もらおうかなぁと、初めて訪ねたのが3年前。

今では
「今日はどれくらい切りますか?」
「ウィービングの色は、もう少し明るくしてみましょうか?」
などの質問や提案に、わたしからの答えはひとつ。
「お任せします」

自分で決められないという理由もあるけれど、アンジュールの
ディレクターさんの腕とセンスを全面的に信頼しているので、
安心してすべてお任せ。
それにシャンプーとヘッドスパを担当してくれる若くて
可愛らしい美容師さんのマッサージは、快感をくすぐるツボを
熟知しているように、甘い睡魔を誘引してくれる。

入室するときも退室するときも、満面の笑顔を向けてくれる
スタッフの方々の気持ちの良い接客に、心から脱帽。

そして先日伺って驚いたのは、ビネガーを使ったカラーの染料薬。
確かに髪に塗布しているときには、あの独特のツンとした匂いに
少し戸惑いがあったものの、その香りはヘルシーを象徴してくれる気分。
仕上げの艶やか感にも目を瞠るものがある。
その後も、シャンプー時に感じる、髪のなめらかな手触りが心地よい。

この田舎町に移り住んで十数年。
どこかで田舎だからとバカにしていたのだろう、
以前は美容院も病院も街なかまで足を運んでいた。
けれどここ数年、田舎も捨てたもんじゃないということに気づく。
センスのいい美容師さんも、腕がよく良心的なお医者さんもいらっしゃる。
最近はこの町のみでこと足りる生活をしている。
ますます田舎色に染まりそうだなぁ……

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

恋人よ 野沢尚

恋人よ 恋人よ-下

結婚式を3時間後に控えた今、フェルメールの絵に漂う静謐は、
結城愛永の心を捉えていた。
右手に鵞ペンを持ち、手紙を書こうとしている女性が、
かすかに微笑み、愛永を見ている。

まるで「所詮言葉なんて」と言っているかのように。
それは自分を軟禁しているこの部屋にふさわしい。

椿山荘のスィートルーム、昨夜8時から愛永はこの部屋で1人ぼっちでいる。
仕事に忙殺された遼太郎は、ここに来ることはできなかった。

数種の職を経験して、銀座の老舗「ボーダー」で、女性バーテンダーとして
シェイカーをふっていた愛永は、ドライ・マティーニが得意だったが、
その辛口は遼太郎への当てつけと強い思いだった。

遼太郎が仕掛けた恋。
愛永はそれを真剣な恋に変えた。
愛永からプロポーズし、寝起きの悪い男に決断させたのだ。
それから4か月後、今日が結婚式である。

独身最後の夜、愛永はひとりだった。
神戸の父に「娘さんをください」と言ってくれないのは何故。
次々と吹き出す思い、遼太郎への失望と愛情の間をさまよっていると、
チャイムが鳴った。
懸命に武装しているような女の姿は、愛永の記憶にあった。

一枝季里子と名乗る女は、愛永が勤めていたバーに、
遼太郎といた女だ。
そのとき遼太郎の気持ちがこの女にないことはすぐに分かった。

女は部屋に入り込み、遼太郎の部下でいつも叱られ、そのあとに
お酒をご馳走してくれると話し出して、ソファにすとんと座った。
そして水を要求し、自分は遼太郎に捨てられた恋人だと訴える。
「部長はあなたを愛してない。あなたは幸せにするって
言われましたか?
あなたも私も同じなのに、どうしてあなたは結婚できるんですか
……遼太郎さんを返して」
女を錯乱に追い込んだのは、遼太郎の不実かもしれない。

愛永は女を哀れに思えてきた。
「遼太郎さんが来たら、3人で話し合いましょう」
愛永は不思議に迷いが消え、一枝季里子の出現によって
何もかもハッキリするような気がした。

そんな愛永の思いとは裏腹に、季里子は洗面室で手首に
剃刀を当て自殺をはかる。
以前看護師をしていた愛永は、すばやく応急処置をし、
それから病院へ連れて行った。

椿山荘へ戻るタクシーのなかで、この結婚は間違っていると、
愛永は強く感じる。

その頃、遼太郎は倒産したクィーンズ商会の松崎社長の行方を
突き止めることに奔走しながら、愛永は俺を待っている。
愛永は俺を愛し続けると信じている。
遼太郎は女の心にうとすぎるのである。

もうひとつのスィート・ルームには、同じく結婚式3時間前の
カップルがいた。
20代で東京近郊の住宅地に1軒の店を持つ、妊娠3か月の
小野粧子と、体育会系の歌舞伎役者のような風貌を持ち、
自然体で飄々としている体育短大講師の宇崎航平。
粧子はどんなわがままにも決して笑顔を絶やさない航平に、
秘密を告げられずこの日を迎えてしまったことに罪悪感がつのる。

毎年、女子学生のために「宇崎賞」と称し、ネーム入りの
タオルをプレゼントしていた航平は、「コットン・サーカス」
という粧子が念願の独立を果たした店を訪ね、粧子に
一目惚れして、付き合うようになる。

航平がアルバイトでトレーナーをしているヤクルト・スワローズの
ルーキーが将来を棒に振った事件が起き、それは自己管理の甘さだったにも
かかわらず、自責の念に苦しむ航平の姿を見て、
粧子が元気づけるために出た言葉は女からのプロポーズとなった。

それは航平にとって青天の霹靂のような出来事であり、粧子も、
昔の恋人を忘れたいというのが本心だったとしても、航平が一緒に
いてくれたら、幸せになれると思ったのである。

ホテルの部屋で、粧子は、これ以上嘘をつき通しては
ならないと決意し、打ち明ける。
「今年の2月に街でバッタリ再会して……1度きり。
もう終わったことだけど、妊娠したって分かって、
もしかしたらあの時の……。
結婚をどうするか、決めて欲しい……」
航平は部屋を出て行った。

愛人の子として育った航平にとって、自分の子どもの存在は
父親への復讐なのかもしれない、生まれてくる子どもの父親は
どっちなのか、粧子を許せるのか、さまざまな思いが脳裏を
巡りながら、一向に決断に辿りつかない航平が、視界のすみに
佇む愛永に気づく。

2人はどちらともなくお互いを邪魔そうに一瞥していた。
彼らが陣地を取りっこする子どものような言い合いをはじめ、
航平が欄干に両手をついた時、竹の造りが折れて池に転落した。
愛永は助けようと手を差し伸べたが、引きずりこまれてしまい、
ずぶ濡れの2人は笑い出す。

着衣が濡れたままの格好で、お互いそれぞれの部屋に向かうが、
航平は粧子の待つ部屋には入ることができず、愛永の部屋をノックする。
結婚式2時間前に、全身ずぶ濡れの男女が、1つの部屋に入った。

2人はコーヒーを飲みながら、お互いが抱える事情を吐露する。
夫になる男の元恋人に手首を切られた女と、
妻になる女の過ちを知らされた男。

「何か月かして、どこかの町で会おう。
幸せになれたかどうか……」
2人は航平の誕生日である10月20日に再会することを約束し、
微熱のような感情が通い合い、唇を重ねた。

そして2組の結婚式が終わった。

半年後の再会の日に、2人は幸せをまとって会うことができるのだろうか……
愛に苦しみ、愛を我が手に入れたいと悩み切望する恋愛心理小説。

恋人よ〈上〉 (幻冬舎文庫)恋人よ〈上〉
(幻冬舎文庫)

(2001/06)
野沢 尚
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恋人よ〈下〉 (幻冬舎文庫)恋人よ〈下〉
(幻冬舎文庫)

(2001/06)
野沢 尚

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

山国信州 と トレッキング

Northern Alps

ピンと張り詰めた冷気に、山々の雄姿が映える。
氷点下、極寒の朝に観る北アルプスや美ヶ原は荘厳で神々しい。

友人からトレッキングに誘われた。
「行く行く〜、何時にする?」
たぶん山は鋭く鮮明に映る朝がいちばんだろうと思うものの、
つらぬくほど痛いような寒さに腰が引け、太陽が高い時間帯に
設定してもらう。

少し遅らばせながらの山ガールデビュー⁈……というほど
本格的なものではないけれど、それなりの支度をして
山に向かうのは、中学時代の燕岳登山以来。

松本市街地を南東に進み、山道らしい登り坂に入る。
排気量660ccの軽自動車では、かなりキツイ急勾配。
アクセルをいっばいに踏み込んで、シフトダウンしながら、
なんとか中山霊園の頂上駐車場に到着。

ジャンパーのファスナーを上げ、スニーカーの紐を
しっかり結び、リュックを背負い、いざ出発。
両手を広げて、天を仰いでいるような落葉樹が林立する
あいだに作られた遊歩道を、しっかり土を踏みしめながら
上がったり下がったり、山道を散策する。
ふだん、あまり歩くことはない。
これといって運動もしていない。
今までのぬるま湯に浸かった生活で、脚には筋肉が感じられず、
細く急峻な山道を歩いていると、ふらふらと重心が落ち着かない。

途中、3年前の松本南部地震で崩れてえぐられた山肌を覗き込む
……めまいを起こしそう。
荒くなる呼吸。吐く息が白い。なのに体内はぽかぽかと
湯気が生まれてくる。
切り株がそこかしこに点在する近くに2脚のベンチがある。
ひと休みひと休み。
友人が持ってきてくれたコーヒー。
ベンチに腰掛け、マグカップに注がれたコーヒーをいただく。
冷気で冷やされた手に心地よい温かさが沁みてくる。

槍ヶ岳や常念岳が一望できる、突然ひらけた
その山の頂上で折り返し、来た道を戻る。
駐車場に着くころには、脚はガクガク、呼吸はゼ〜ゼ〜。
でも、気分は軽快。さわやかな疲れに包まれる。

負のイメージしか残らなかった中学時代の燕岳登山は、
わたしを山から遠ざけた。
贅沢なほど自然に溢れた山国信州で、これまでもったいない
生き方をしていたのかもしれない。
暖かくなったら、タラの芽やワラビを探しながら、
再びトレッキングに行くぞぉ〜!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

おいしく食べて体に効く!クスリごはん ヘルシーライフファミリー

おいしく食べて体に効く!クスリごはん

 幼いころ、風邪の症状があらわれると、母が千切りの大葉と
おろし生姜に蜂蜜を入れ、そこに熱湯をかけた特効薬茶を
作ってくれた。
蜂蜜の甘さと大葉のさわやかな香り、スパイシーな生姜が
熱々にブレンドされ、身体の芯からポカポカしたものである。

大葉には鎮咳・殺菌・免疫力を高める効能があり、生姜はそれらに
加え身体を温めてくれ、蜂蜜は喉の痛みを和らげるとともに、
すぐにエネルギーに変わるので体力回復につながる。

初期の風邪なら、この特効薬茶を飲んで、暖かくして睡眠を摂れば、
朝には元気に目覚めることができる。

毎朝、ブログの確認をしたあと、楽しみにしているAmazonの
日替わりセールを覗く。
その日、『クスリごはん』というタイトルに引き寄せられ
購入した本書は、日常のなかで崩しやすい体調に効果がある
食品やレシピが、明るいママのケロミ・一家の大黒柱ヒロシ・
健康第一のばーば・パパ大好きなお姉ちゃんプーリン・
よく笑いよく泣く小さな弟くんダイちゃん・我が家のアイドル猫
にゃんこ先生たち家族によって、漫画を通して分かりやすく説明され、
6章で構成されている。

第1章 かぜ・アレルギーに効く食べものとレシピ
かぜ、のどの痛み、せき・痰、発熱、頭痛、鼻づまり、花粉症、
アトピー性皮膚炎、湿疹・じんましん

第2章 疲れに効く食べものとレシピ
疲労・だるさ、肩こり、目の疲れ、むくみ、筋肉痛、夏バテ、
ストレス・イライラ、不安・うつ、不眠、心に効くハーブ、
食欲不振、二日酔い

第3章 胃腸・泌尿器に効く食べものとレシピ
胃痛、胃もたれ・胸やけ、吐き気・嘔吐、お茶の効能、下痢、
便秘、食中毒、痔、膀胱炎、頻尿

第4章 美容にいい食べものとレシピ
美白(シミ)、肌荒れ、ニキビ、フェイスパック、アンチエイジング、
髪の傷み、ダイエット、メタボリック症候群、骨粗鬆症、腰痛、
体臭、口臭、口内炎

第5章 婦人病に効く食べものとレシピ
生理痛、生理不順、貧血、冷え性、子宮筋腫、不妊症、つわり、
妊娠中毒症、流産・早産防止、母乳不足、更年期障害

第6章 子どもの病気に効く食べものとレシピ
季節の病気、おうちでかぜケア、かぜ気味、せき、鼻づまり、
発熱、下痢・嘔吐、外用薬になる食べもの

思わず「へぇ〜!」と、唸ってしまう。
たとえば、頭痛持ちのわたし、頭痛には玉ねぎと生姜。
レシピは玉ねぎの味噌漬けと黒糖生姜紅茶。
アトピー性皮膚炎には、小松菜とニンニクにウーロン茶。
レシピはニンニクの蜂蜜漬け、小松菜ののり巻き。
肩こりには、柑橘類と大豆。
レシピはシトラスジュースと大豆のレモン酢漬け。
外用薬として、虫さされにはすりおろしたキュウリ、
やけどには蜂蜜や塩水などなど。

ふだんなにげなく口にしている食材が持つ、魅力的な効能に
感嘆し、そんなクッキング方法もあったんだぁと驚嘆する、
ミニ家庭の医学書兼、一家に一冊の効能レシピ本。

クスリごはん―おいしく食べて体に効く!クスリごはん
おいしく食べて体に効く!

(2010/08)
ヘルシーライフファミリー
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

ジェントルマン 山田詠美

ジェントルマン

女性写真家アニー・リーボヴィッツによって撮られた、
黒いセーターとブルージーンズを身にまとったまま横たわった
ヨーコ・オノに、素っ裸のジョン・レノンがしがみ付いているショット。
夢生のいちばん好きな写真。

長い年月をかけて培った2人の関係。
それがこの写真で完成された。
愛情という名の通貨で、天国行きの切符を買ったのだ。

ここ僕の部屋には、あの写真と同じようにベッドがあるが、
きみがそこに身を委ねることはない。
告解をするきみ。耳を傾けるぼく。ここは懺悔室なのだ。
ぼくは哀しみに耐えながら、眠っているきみの体を
横向きにして、しがみ付く。
まるで、あの写真のように。

成績は常に上位、運動能力抜群、眉目秀麗のみならず、
ほんの少し自分を貶めて笑わせるという術を持ち、非の
打ち所がない坂井漱太郎。
入学当初から、生徒たちは漱太郎に注目し、それは
夢生も同じだった。

夢生は漱太郎を観察し始めた。
礼儀正しく、周りを不快にさせない、豊かな家庭環境。
自分になかったものへの想像が、夢生の心を疼かせる。
自分の手に届かない憧れの世界。

下劣な要素がなく、相手を悦ばせることのできる言動。
自分が付け込まれる余地を残すことができる才人なのだ。

女子のあいだで、漱太郎による自分が受けた優しさ自慢へと
発展していくのを眺めながら、夢生は疑問を抱く。
自分とはかけ離れた清廉なイメージを持つ漱太郎だから。
けれど目が離せない。
彼に対して悪意は微塵もないが、少々ひねくれた傍観者は、
漱太郎劇場を楽しみながら眺めていた。
自己満足に浸りつつ。

しかしある時、漱太郎を自分と同じように見ている女生徒の
存在に気づいた。
こうして藤崎圭子は、夢生の親友になった。
初めて目が合った瞬間、圭子とは何でも話し合えると
解ったのである。
2人きりのときには、ユメ、ケイと呼び合い、
珈琲店のスタンドで、放課後を過ごしたのだった。

漱太郎と別のクラスになった、高校2年の激しく雨が降り始めた
夕方、忘れ物に気づいた夢生はひとり茶室にもどる。
茶室の引き戸を静かに開けると、閉じられた障子の奥で人の
気配がし、異様な呻き声を聞いたような気がした。
雨のせいで外は真っ暗なのに、茶室には灯りが点いていない。
夢生は障子に手をかける。
唸りに似た音と、男の低い笑い声。
聞き覚えのある声だった。
漱太郎の輪郭が夢生の内に甦った。

何が起こっているのか、夢生は見たいと思った。
ただの欲情した漱太郎が待ち受けているのか。
人でなしの証明がなされているのか。

共犯者になることで、守り抜き、愛し抜くと決意する夢生。

犯罪者と共犯者。叶わぬ想い。
断ち切るという行為で、固く結び付く絆。
絶望、狂気、胸が詰まる哀しい結末の向こうには、
究極の愛があるのだろうか。
著者の持つ卓越した繊細な描写、ふくらみと余韻に
魅了されるピカレスク長編小説。

ジェントルマンジェントルマン
(2011/11/26)
山田 詠美
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

片桐くん家に猫がいる 吉川景都

片桐くん家に猫がいる

片桐くんが帰宅すると「おとうさん、おとうさん」と
ハートマークをふりかざしながら出迎えるハツ。
「かえってきたのね、あなた」と、偉そうな態度で
冷蔵庫の上に寝ころんでいるミノ。
食器棚に入り込んで降りられないぎあら。
キャットフードが入っている買い物袋をあさる、
いたずらっ子、3匹の猫たち。

2年前、3年ぶりに訪れたじいちゃんの家。
「猫、よろしく頼む」と書かれたじいちゃんの遺書。
そこには猫の世話に関することが、几帳面な字で
こまかく書かれていた。
忙しいことを理由に、祖父の家にも入院していた病院にも
ほとんど顔を出さず、じいちゃんは急逝してしまった。
「アオーン、アオーン」と、じいちゃんを呼んでいる猫と遺書を
見て、片桐くんは祖父の家に住むことを決意する。

そして、片桐くんと猫たちの生活が始まる……回している洗濯機の
上に乗って止めてしまったり、新聞を探していると、猫の下敷きに
なっていたり、前を占領されて、ストーブにあたれなかったりと……

テーブルに置かれたシャケを見つめる猫たちの目。
シャケを盗んだお仕置きをやり返すぎあら。
すぐ片桐くんの真似をする、愛らしくてちょっとおバカなハツ。
襖を開けることができて、わが道をゆき、要領がよく、頭のいいミノ。
家を抜け出したまま中々帰らないぎあらを心配して涙目になったり、
頬をひっかかれて、どうして猫を飼っているのかと、
少し戸惑い気味の片桐くん。
職場で叱られ、ハツに八つ当たりしてしまったのに、気がつくと
片桐くんの足のあいだで丸くなって眠っている3匹の猫たち。
1人と3匹で、ギュウギュウ詰めの布団。
そして定員いっぱいの家に、仔猫ノラの新しい家族が増えて……

『最初の話』『出会った話』『魚の話』『逃げた話』『遅刻の話』
『叱られた話』『写真の話』『トイレの話』『寝る話』『探し物の話』
『パソコンの話』『首巻の話』『お風呂の話』『ゆうた話』『拾う話』
『育てる話』『お見合いの話』『ワルい話』『異変の話』『病気の話』
『なじんだ話』の21話。
地味なのにモテる片桐くんは猫男子。
その片桐くんが猫たちに振りまわされながらも、仕事が終われば脇目も
振らず帰宅し、休日も猫たちといっしょに過ごすハートフルコミックス。

いつもルリといっしょに寝ていた。

三毛猫のルリは、少しだけ開けておくサッシの隙間から、
自由に出入りし、昼間は気ままに遊び歩いても、夜には必ず
わたしといっしょに寝るために帰ってくる。
布団に寝ころんだわたしの右腕に小さな頭をちょこんと乗せ、
静かな寝息を立てながら眠るルリ。
そしてときどき私は怖い夢にハッとなり起こされる。
そういうとき、必ずピンと伸びたルリの後ろ脚が、
わたしの心臓に乗っているのである。

今は天国で誰に腕枕をしてもらっているんだろう……
 
片桐くん家に猫がいる 1巻片桐くん家に猫がいる 1巻
(2012/09/01)
吉川 景都
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

初詣 と 午年 と おみくじ

初詣

苦しいときの神頼み……もとい……苦しむ前の神頼み。
今年も初詣に行ってきました〜。
葉の落ちた銀杏の木に囲まれた境内。
敷地の脇には、クレープやたこ焼きの香りを漂わせた屋台が並び、
お詣りをするために寒風を堪えて待つ長蛇の列。
極寒のなか、さすがにその列の最後尾に並ぶ気力はなく、本殿の
脇寄りに設えたお賽銭箱に小銭を投げ入れ、神さまにお願いする。
「今年も無事に過ごせますよう」

お詣りが済めば、毎年恒例のおみくじ引き。
昔と違い、ストラップにカプセルやマスコットなど、豊富な種類が
揃えられているなか、やっぱりおみくじといえば、角柱のみくじ箱を
振って、細長いみくじ棒を取り出す、あの昔ながらの方式がいちばん!
と、100円を差し出し、しゃかしゃかと六角拄を振る。
長い竹串のようなみくじ棒の真ん中には「19」の数字。
白衣と緋袴をまとった初々しい巫女さんに引いた数字を告げたあと、
いただいた御神籤を拝見する。

運勢は末吉。
「はなされしかごの小鳥のとりどりにたのしみおおき春ののべかな」
との文言。
なんだかとても明るい情景が浮かんでくる2014年!
今年は素敵な年になりそうな予感に、ひとりニヤニヤと顔が緩んでしまう。

嬉しさで、ふたたび御神籤を目の前にかざす。
飛び込んできたのは「世の為人の為に尽くしなさい」
そうでした、自愛のみではいけないと、今年も自省と自戒から始まった年初め。
「世の為人の為に」を胸に、またまた神さまにお願いする……
希望と願いが、午(うま)く叶いますよう!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

魔笛 野沢 尚

魔笛のコピー

坂上輪水に死刑判決がくだったニュースを耳にし、
私はボタンを押した。

瞬時に街は白濁した。
映像、爆音、そして殺戮が始まった。
交差点にいた多くの人生が終わりを告げ、黒煙と
路面を濡らす血。まさに地獄絵図。

「助けて」と眼差しを向ける中年女性に、私は一瞥をくれただけで、
道玄坂を上り、不意に涙がこぼれそうになって狼狽えた。
ーーなぜ泣くのです?
聖仙(りし)の声が耳の奥底で聞こえた気がした。
ーー泣いてはいません。
ーーあんたは黙ってろ。
私の内部で共存する、聖仙への返答、従順と反発。

渋谷スクランブル交差点爆発事件・特別捜査本部は、
所轄所、本庁捜査一課、機動捜査隊で組織された。
大規模な捜査本部の中に、渋谷署刑事課巡査部長で32歳の
鳴尾良輔がいた。
浅黒い肌に筋肉質の鳴尾は獄中に妻がいたのである。

49歳で本庁刑事部長の常盤政宏が捜査本部長であり、常に
「メシア神道」関連事件で矢面に立たされてきたことが、
眼光を鋭くしている。
本庁捜査一課の渡辺俊彦と、渋谷署の署長である勝部史郎は警察学校の
同期であり、2人とも凄惨な事件に青ざめた視線を向けている。
警察庁警備局公安第一課の課長で52歳の阿南威一郎は、特殊組織犯罪対策の
責任者であるが、通称「トクタイ」の責任者が表舞台に出ることは
かつてなかったことである。

阿南が雛壇に座ったことは、今回の事件がメシア神道信者と
関係する大規模都市型テロの悪夢再来であることは一目瞭然だった。
メシア神道教団に、テロを再び行うだけの余力は残っていない、
それが政府の判断であったが……

3か月前に鳴尾は奥多摩から渋谷署に返り咲いたが、
捜査の一線から外される日が続いていた。
事件の証拠品である焼け焦げたプラスチックの残骸は、
どれも中心部に穴があいていた。
もっと多くの残骸を発見できるかもしれないと、鳴尾は捜査に走る。
そして実行犯の照屋礼子を突きとめていく。
実は礼子はかつて公安がメシア神道に送り込んだ人物だったのである。

照屋礼子が事件を綴った小説という形式で進んでいくストーリーの巧みな構成。
死への情念、自己崩壊、心の闇、最後の1行が意味するものは?
魔笛が奏でる音色はどんな響きだったのだろうか?
抜群の筆力、細やかな描写で迫る傑作ミステリーサスペンス。

魔笛 (講談社文庫)魔笛 (講談社文庫)
(2004/09/14)
野沢 尚
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

お正月飾り と ハンドメイド と 今年の抱負

20140103a.jpg

ある時期、仕事を1年間休職していた。
当然、経済的に余裕のない生活は倹約しなければという観念にとらわれる。
炊事は手抜きをせず、お惣菜は買わない。
根菜は皮まで使う。
必需品以外の買い物は、購入決定を翌日まで伸ばす。
歩いて行かれる範囲なら、車は使わない。
など、ふだん気にもとめなかった当たり前の節約に心がけていた。
なにしろ、時間だけは贅沢に持ちあわせていたのだから。

そしてできるだけ手作りに徹しようと、お正月飾りもみずから作ることに挑戦。
材料を買えば、節約にならないので、身近にあるものを利用する。
実家の庭に伸びている松の枝や、朱色の実が輝く南天、落ちている
松ぼっくりなどをいただいて持ち帰る。
材料が揃ったら、ワイヤーで丸く軸を作り、そこに使い残した和紙の包装紙を巻き、
松の枝・南天・松ぼっくりを飾って、お祝いやお見舞いでいただいた
のし袋の水引をアクセントに用いれば完成。
同じものはふたつとない、オリジナル感に自己満足していた。

年の瀬、スーパーの壁一面に所狭しと並べられた、さまざまな種類の
お正月飾りを眺めながら、ふと脳裏によみがえった遠い昔。
忙しさにかまけて、手作りの楽しさを忘失していた今日このごろ。

今年は既製品で間に合わせてしまう自戒と新生を心に、
2014年の抱負に掲げよう。
I will challenge handmade!

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

12月の投稿書籍

クローズド・ノート悪  人幼年期の終り切り裂きジャックの桜庭一樹短編集
竜 の 涙シナリオ集氷の世界春秋山伏記僕の心臓を盗まないでつんどく
シンメトリー越  境星々の舟パラダイス・ロストお面屋たまよし

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

元日の朝に感謝を込めて

あけましておめでとうございます。
昨年は当サイトをご訪問くださり、ありがとうございました。

ブログを開設したのが、昨年の4月。
それから9か月弱。初めてのお正月を迎えることができました。
ひとえにみなさまのおかげだと、感謝いたしております。

拙文をご笑覧くださるみなさま、コメントをお送りくださる方、
感想をメールしてくれる友人、書く場を与えていただいた偉大な師。
心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。

みなさまにとりまして、幸多く素敵な1年になりますよう、
衷心より祈念いたしております。

本年も、どうかよろしくお願い申し上げます。

テーマ : つぶやき
ジャンル : 日記

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Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。