10月の投稿書籍

孤島の鬼包帯クラブ葉桜の季節に告  白キャベツ
横山課長の七日間桃色東京塔5年3組リョウタ組桐島部活やめるってお腹を凹ませたい
楽園のカンヴァスたましくるいま会いにゆきますおのぞみの結末東京DOLL

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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

東京DOLL 石田衣良

東京DOLLのコピー

青い蛍光灯が揺れる、夜の灯台であるコンビニ。
MG(マスター・オブ・ザ・ゲーム)こと相楽一登は、深夜2時に
コンビニの扉をくぐる。
数冊の男性誌と女性誌、大量のミネラルウォーターとスポーツドリンク、
チョコレート、ポテトチップ、ハーゲンダッツにおにぎりとカップ麺を
バスケットに移し、レジに向かう。

「いつもこの時間にくるんですね」
東の女神・蘭揮のようなレジの女性が言う。
「ああ」と答えるMG。
4日ぶりに人から話しかけられ、3日ぶりに声を出す。
帰宅してから食べるであろう白米のおにぎりも4日ぶりだった。

その女性のネームプレートには水科代利と書かれていた。
MGは自分が手がけた新作ゲーム『女神都市Ⅲ〜まどろみのメトロポリス』を
購入し、ヨリ(代利)に名刺代わりだと渡しながら、モデルの依頼をする。
押しても引いても動かなかったパートⅣのイメージが、ヨリと出会ったことで
鮮明になったように感じる。

40畳のリビングダイニング、高さは5mほどあり、窓の向こうにはレインボー
ブリッジが東京湾を横切っている。
MGのつくるゲームと同じ空気、東京湾の寂しさと虚ろさのなかで部屋にこもり、
ゲームを制作している。
ゲームの企画・原案・シナリオ・監督をしているMGの年収は、その年により
5千万円から2億円のあいだを上下する。
これまでの『未来都市』シリーズ3本はすべてミリオンセラー。

人間の女ではなく、欲しいのは完璧にクールな人形だった。
恋愛ではなく、ビジネスとして。
そして『未来都市』パートⅣのモデルに、完璧なバランスを満たした身体を
持つヨリを選んだ。

ヨリは地元の高校・短大と進み、会社に就職したが、美容師への夢が捨てきれず、
昼夜のアルバイトで専門学校の入学金200万円を貯めている。
そこで月給50万円、期間4か月の雇用契約が成立し、ふたりの撮影の日々が始まる。

肩甲骨の下半分を包む濃紺の翼。
肩に天使の羽を持つヨリには、久里浜の特少帰りで、この界隈を締めている
彼氏のヨシトシがいた。
ヨシトシは言う「ヨリには、女神のような特別な力がある」と。

競合ソフト会社とのさまざまな買収工作も絡みながら、東京の夜景をバックに
撮影を続けていくふたりに、やがてビジネスを越えた感情が……

都会の夜を舞台に、洗練され繊細な描写で描かれる長編恋愛小説。

東京DOLL (講談社文庫)東京DOLL
(講談社文庫)

(2007/08/11)
石田 衣良
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

お望みの結末 星 新一

おのぞみの結末  

『一年間』
休日の午後、青年が暇を持て余していると、ふたりの女が訪ねてきた。
ひとり暮らしは不便でしょうからとロボットを勧められ、青年は1年契約で
借りることにする。
はじめのうち、ロボットはつつがなく家事をこなしていたが、
しばらくすると命令してもグズグズ文句を言い出し、いうことをきかなくなった。

ロボット・サービス会社は
「あまり忠実だと人間の思考が単純になってしまう。
命令がやるにあたいするかどうか判断している」のだと言うが、
青年は1年後、契約を解除しロボットを返却した。

やがて青年は恋愛結婚し、はじめのうちはかいがいしく家事をこなす妻と
甘い生活を送っていたが、しばらくすると妻はグズグズ文句を言うようになった。
けれど破局には至らなかった。
すでにロボットで経験済みだったからである。

『ひとつの目標』
研究室でエフ博士がひとり実験をしていると、男が訪ねてきた。
心理学を専攻しているというその男は
「世界征服をめざす我々のグループに入会していただきたい」と、
話を持ちかけてきた。

『あの男この病気』
少し熱っぽかった。
あの男の情報……年齢・身長・顔写真・全身像……は、
すべて頭に焼きついている。
あの男を追いはじめて10か月、旅の連続だ。
盛り場へ向かう途中で易者に手相を見てもらうが、
期待した結果はもらえなかった。
熱が上がってきたようだ。
平凡から脱出したいため、大掛かりな鬼ごっこを決意したが、12か月の
持ち時間は残りわずか。
そのあいだに、あの男を見つけられないときは、打った注射の病原菌により
死亡する運命が待っている。

『侵入者との会話』
夕暮れ時、マンション2階に住む、30歳ぐらいの理性的な面立ちをした
女性の部屋に、若い男が上がり込んできた。
青年からラジオを持ってこいと命令され、女はボタンやダイヤルがたくさん
付いた豪勢なラジと小さなラジオのうち、小さい方を持ってくる。
スィッチをひねると「さきほど、強盗の容疑で逮捕された男が、拘置所から
脱走しました」というニュースが流れてきた。
そう、このニュースの主人公が、ここにいる青年だった。
女は早く出ていって欲しいと言い、青年は逃げるために役立つものが欲しいと言う。
そうこうしていると、30歳ぐらいの2人の男たちがやってきた。
そしてまた別の男たちが……

『現実』
とくに優秀でもなく、財産も美貌も持っていない青年が夢を見ていた。
かつて付き合っていた、美しい女性・明子の夢だ。
愛を語り合い、喫茶店でコーヒーを飲み、宝石店でダイヤモンドを
ちりばめたブローチを買う約束をして、マンションに帰ってきた。
お酒に酔いながら
「忘れちゃいやよ」という声とともに目覚めると、そこには明子がいた。

『親しげな悪魔』
女性にはもてず、特に才能があるわけでもなく、金まわりも良くない青年がいた。
おもけに彼は身体も弱く病院に通っている。
その帰り道、見知らぬ老人に声をかけられる。
以前に会った記憶もないけれど、その老人は青年のことをよく知っていたため、
家に招くことにした。
自分が悪魔だと名乗る老人は、「あなたの望みを3つ叶えてあげましょう」と言う。

『わが子のために』
名士を装った犯罪組織のボス。
50歳を少し過ぎ、貫禄があってすごみを持った顔。
世を欺き、裏で悪事を行っているその男の妻はすでに他界し、最愛の息子は
東京の大学に通っていた。
ある日、弁護士だという男がやってきて、「あなたの息子が人を殺してしまった」
と伝えてきた。

『ある占い』
夕暮れどき、育ちの良さそうな若い女性が、40歳ぐらいの易者に運勢を見てもらった。
「近いうちに危険な目に遭うかもしれません」と告げられた帰り道、マンションの
上階から落ちてきた鉢植えが、危うく当たりそうになったことで、若い女性は
その易者を信じ、通うようになる。

『お望みの結末』
まじめだけが取り柄の銀行員が、ある日上役に呼ばれ、
「うちのお得意先であるレジャー産業会社が土地買収の支払いをするため、
現金を運んで欲しい」と言われる。
聞けば、一生豪勢に遊び暮らすことが何度もできそうな金額である。
銀行員は高額紙幣がぎっしり詰まった2つの大きなカバンを見て目を丸くし、
思わず「メロンライスにガムライス……」と、訳の分からないことを呟いてしまう。
気を鎮めるためのおまじないだと言いつつ、現金とともに相手の会社社員が
運転する車に乗り込み、またおまじないを唱える。
そしてふたりは顔を見合わせた。
それはジャックポット教の呪文だった。
もうひとり同乗してきたガードマンも「メロンライスにガムライス……」と口ずさむ。

『空の死神』
外国行き大型旅客機が、濃い雲の中で落雷に遭う。
緊張した声でエンジン不調の機内アナウンスが流れるが、乗客が多くなかった
からか、騒ぎには至らなかった。
それでもスチュワーデスが一人ひとりに声をかけていく。
夫と、大学を卒業したばかりの息子に先立たれた老婦人。
凶暴になってしまう精神病のため、他人と家族に多くの迷惑をかけ、
借金まで背負った男。
暴力団のボスを父に持つ青年と、検事を父に持つ女性のカップル。
へまばかり、相手の秘密はなにも入手できず、逆に騙され
しゃべらされてしまったマヌケなスパイ。
内職に麻薬の運び屋をしている一流商社マン。
亭主を毒殺した女。
悪徳実業家と、賄賂でのし上がってきた高級官僚。

『要求』
彼女がいろいろなものを欲しがり、彼女のために何度か強盗を働いた。
そして刑務所に入っているあいだに、金持ちと結婚した彼女に腹を立て、
殺害計画を練っていると、次々と「全国各地でUFO目撃」のニュース速報が流れてくる。

そのまま現実の人生になってしまう夢。
刺激がない生活や平凡過ぎる日常。
大金をつかんで自由になりたい願望。
いつかはチャンスが訪れるという希望。
麗しい親子の結びつき。
因果応報、騙したつもりが、巡り巡って。
他人の不幸の上に成り立つ幸せ。
人類より遥かに高度な知能を持った他星人に、破壊されたことに
よって持たらされた平穏などなど。
ものがたりにのめり込みながら、どんな結末が待っているのか、
ワクワクが止まらない11編からなるSF短編集。

おのぞみの結末おのぞみの結末
(2012/10/26)
星新一
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

いま、会いにゆきます 市川拓司

いま、会いにゆきます

ちょうど1年前の梅雨が明けるころ、愛する妻の澪が病死した。
「1年経ったら、また会いにきます」という言葉を残して。
巧には、そのひとことがいつも胸に貼りついていた。

記憶力障害・心気症・強迫神経症・閉所恐怖症・パニック障害など、
さまざまな不安を抱えながら、小学6年生の祐司とともに暮らし、
司法書士事務所に勤めている巧。
巧の不安や不具合をさりげなくフォローする祐司。

梅雨のある日、いつものように巧と祐司が森を散歩していると、
工場跡地で亡くなったはずの澪と出会う。
澪は記憶を失っていたが、巧と祐司は澪に会えたことに歓喜し、
小さな我が家に連れ帰る。

朝、食事を作り巧を送り出す。
夕飯を作り、2人を迎える。
ときには祐司の散髪をしたり、再び3人の穏やかで幸せな生活が戻ってきた。
そして巧は再び澪に恋をする。

ふたりは高校の同級生だった。
記憶を失った澪に、出会った日のこと、いっしょに過ごした日々、
ふたりの歴史を語る巧。

ある日澪は、巧が祐司の記憶に残そうと、ふたりのことを書いた小説を
読んでしまい、自分の運命を知ってしまう。
別れなければならない悲しみのなか、自分が去ったあとの準備を進めていく澪。

再び出会い、再び恋に落ちたふたりは、再び別れを迎える。

澪が病死した1年前、澪からノンブル先生に託された手紙。
その手紙によって、一気に明らかにされる、澪が戻ってきた謎。

会話のすみずみに感じられる澄んだ空気と透明感。
生きることに付きまとう苦しみ。
時空を超えた6週間の愛の奇跡。
限りない優しさにあふれた傑作恋愛ファンタジー。
 
いま、会いにゆきますいま、会いにゆきます
(2003/03)
市川 拓司
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

手作り豆腐

手作り豆腐

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太子食品
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テーマ : レシピ
ジャンル : グルメ

tag : 本、料理と洋楽

たましくる イタコ千歳のあやかし事件帖 堀川アサコ

たましくる イタコ千歳のあやかし事件帖

昭和6年節分。
島田幸代は姪の安子をともない、生まれて初めて東京を出た。
上野駅から16時間、青森の停車場から奥羽本線に乗り換える。
行き先は、陸奥(みちのく)と呼ばれる青森県の、西の盆地にある
城下町弘前だった。
そこには安子の父親が住んでいる。
祖母は愛情からではなく、義務感から安子を引き取ることを
望んでいた。
幸代は「この子を捨てる」という罪悪感を覚えることを償いとして、
安子を見知らぬ縁者に預けるため、弘前に向かった。

幸代の双子の姉である雪子は、借家の2階でいっしょに暮らしていた男を
刺し殺し、その血で襖紙に
「知ってしまえば それまでよ 知らないうちが 花なのよ」
と書き殴り、みずからも首を吊った。
襖紙に血で綴られていた文は、流行歌の文句だった。

殺された酒田昇は雪子の内縁の夫だったが、札付きで借金ばかり
膨らませていた、どうしようもない男だった。
そのため捜査関係者は、男の不実を恨んだ無理心中という見解を一致
させたが、幸代だけは合意の上の死ではないかと主張する。
雪子は以前にも男と心中をはかった過去があったからである。
その相手は田舎の名家出身で、文学を学ぶ大学生の大柳新志だった。
雪子が妊娠したことに動揺し、両国橋から身を投げるも、
溺れる暇さえなく屋形船に救出される。
その後新志は精神を病み、故郷に連れ戻されて、雪子はひとり
東京で出産した。

そして2度目の心中事件で、娘の安子はたった6歳で、
置き去りにされたのである。

奇怪な事件のため新聞でも騒がれ、安子の祖母の耳にも届き、
孫を引き取る決意をする。

安子を連れて行った弘前で、幸代は新志の末妹であり、市松人形の
ように長い黒髪を持つ盲目のイタコ、千歳と出会うことになる。

イタコを生業としているにもかかわらず、超常現象を論理的に解明する千歳。
幽霊が嫌いなのに、霊の声が聞こえてしまう幸代。
このふたりのコンビが、つぎつぎと起こる猟奇事件に挑みながら、
雪子の死の真相を究明していく。

弘前という土地と昭和6年という時代背景、イタコという独特な雰囲気、
現実と非現実が絶妙に融合した傑作オカルティック・ミステリー。

たましくる―イタコ千歳のあやかし事件帖 (新潮文庫)たましくる
イタコ千歳のあやかし事件帖
(新潮文庫)

(2011/05/28)
堀川 アサコ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

楽園のカンヴァス 原田マハ

楽園のカンヴァスのコピー

 43歳で美術館の監視員をしている早川織絵は、飛び立とうとする
ペガサスが描かれたピエール・ビュヴィス・ド・シャヴァンヌの
絵の前で立ち止まることが多い。

名作の運命は、偶然・慧眼・財力の3要因で決定される。
エル・グレコ「受胎告知」は、この3要因を完璧に得て、
日本屈指の西洋美術品を所蔵する大原美術館に展示されている。

織絵がピエール・ビュヴィス・ド・シャヴァンヌの絵の次に、
エル・グレコ「受胎告知」に陶酔していると、白鷺女子高校の
生徒が見学にやってきた。
遅れて、目が覚めるような長い栗色の髪を揺らしながら入ってきた
少女に近づき、織絵は「館内は飲食禁止です」と注意する。
織絵に注意された少女はガムを飲み込み「なんもねえよ」と、
口を開け、舌をペロペロ動かし反抗的な態度をとる。

織絵の母は名門女子大卒、大手商社に勤務しエリート社員と結婚。
夫の駐在で、ニューヨーク・パリに住み、アメリカ生まれの一人娘織絵は、
美術鑑賞・英語・フランス語堪能、リセを首席で卒業、ソルボンヌ大学で
美術史を学ぶという、人も羨む人生を歩んでいた。
織絵がソルボンヌ大学在学中、大手商社フランス支社長を勤めていた
織絵の父は、不慮の事故により他界し、母は岡山の実家に戻る。

織絵は大学卒業後もアンリ・ルソーの研究を続けていたが、
17年前未婚のまま岡山に帰り、真絵を出産。

昼間、美術館で注意した女子高生が、その真絵だった。

翌日、織絵は館長室に呼び出される。
そこには館長の宝尾と学芸課長の小宮山、それに暁星新聞社
文化事業部部長の高野がいた。

そこで、暁星新聞社文化事業部と東京国立近代美術館が組んで、
ルソーの大規模な展示会を企画していることを聞かされる。
おりしも、ニューヨーク近代美術館MOMAが建て替えることになり、
作品の貸し出しを申し出たところ、チーフキュレーターのティム・ブラウンは、
織絵が交渉の窓口になれば、至宝を貸し出してもいいと言う。

実は織絵は一介の監視員ではなく、コース最短で博士号を取得、
多くの論文を発表し、ルソー研究で右に出る者がいないと言われた、
かのオリエ・ハヤカワだったのである。

日本に舞い戻り真絵を産んで16年、今ゴトンという音とともに、
閉じられていたパンドラの箱の蓋が開かれた。

ときは17年前に遡る。
伝説のコレクターであるコンラート・バイラーから依頼された、
アンリ・ルソーの『夢を見た』の真贋鑑定。
美術史学会に彗星のごとく現れた若き東洋人研究者オリエ・ハヤカワと、
モダンアートの権威MOMAのアシスタントキュレーターである
ティム・ブラウンの対決が幕を開ける。
期限は7日。
史実なのか創作なのか、筆者が誰なのかも判然としない古書を1日1章読み、
7章を読了したのち、講評の発表となる。

ルソーとピカソの関係。
マティス、アポリネール、ローランサン、ジョルジュ、ブラック、
ロベール・ドローネー、ポール・ジニャックなどの偉大な芸術家との交流。
画家としての命と、情熱のすべてを注いだ、ルソーの大作『夢』と『夢を見た』
ピカソの青一色に浮かび上がる母と子が画かれた『ブルー・ピカソ』
モダンアートの真実に迫る傑作アートサスペンス。

本書を読了した翌日の朝、配達された新聞をめくっていると目に飛び込んできた
『茅野在住 作家・原田マハさん』の見出し。
記事を読むと、原田さんは2011年から、月1回、東京から富士見町に通い自然農を体験。
そして今年2月から茅野市に移り住んだとのこと。
何かに導かれるように起こる偶然と感動。
これだから読書はやめられない。

楽園のカンヴァス楽園のカンヴァス
(2012/01/20)
原田 マハ
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テーマ : レシピ
ジャンル : グルメ

お腹を凹ませたい?だったら腹筋運動なんかやめちまえ! 森 拓郎

森拓郎1 森拓郎2

腹筋運動は腹筋を鍛えるためのエクササイズであり、
お腹を凹ませるエクササイズそのものではない。
脂肪とは鍛えることによってなくなるものではなく、
太っていればいるほど、腹筋運動はすべきでない。

腰痛は腹筋を鍛えれば治るという信憑性のない神話。
10年くらい前までは、スポーツの現場でも治療の現場でも
腹筋運動が推奨されていた。
現在でこそ腰痛に対する理解が深まってきたものの、
まだ腹筋神話は根強く残っているところもあるようである。

腹筋の強いスポーツ選手に腰痛が多いのはなぜか?
その答えが、腹筋を鍛えることが腰痛解消にはならないことを物語る。

生真面目な日本人気質。
しかし真面目に取り組んでも、その方法が間違っていれば
無駄な努力であり、改善しなければならない。

では、どうすればお腹を凹ませることが、腰痛を治すことができるのか?
腰痛の人は腹筋をうまく使うことができず、結果として腰に負担がかかる。
そう、強いか弱いかではない。
腰痛も美しいプロポーションにも、正しい腹筋の使い方が必要。

本書は基本的な身体の構造から始まり、骨と筋肉、アウターマッスルと
インナーマッスル、腰痛や肩こりの原因と筋肉の関係などが詳しく説明され、
なにを実践すればよいか、具体的に教示してくれる。

体脂肪を落とすための非効率的な腹筋運動。
ダメな腹筋運動あれこれ……クランチ、シットアップ、レッグレイズ。
肥満と内臓脂肪。
有酸素運動と食事制限に内臓下垂。
正しいインナーマッスルの使い方と正しい姿勢の保持。
肋骨と背骨と骨盤の関係。
普通に生活しているだけで使われる多くのインナーマッスル。
インナーマッスルを鍛える意識した呼吸などなど。
イラストをまじえて分かりやすく解説されたエクササイズ本。

実は、かくいうわたしも、本書で解説された“ダメな腹筋運動あれこれ……”
のなかのレッグレイズを実践していた。
入浴後、仰向けになり、垂直に上げた両脚を徐々に降ろしていく。
と言っても、数回続けると
「ふぅ〜、疲れたぁ〜」
と、そのままうたた寝してしまうのが常ではあるけれど……
今後は本書を参考に、正しい姿勢を心がけ、意識した呼吸で
アンチエイジング〜!

お腹を凹ませたい?だったら腹筋運動なんかやめちまえ! (impress QuickBooks)お腹を凹ませたい?だったら腹筋運動なんかやめちまえ!
(impress QuickBooks)

(2012/03/27)
森 拓郎
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

マツモトばる ワインと美味と秋の夜

松本バルa
マツモトばる

2年ぶりに前職の友人と会う約束をした。
場所はどこにしようかと考え、真っ先に浮かんだのが
ワインBAR  マツモトばる

以前、別の友人に連れられた折り、スタッフの方々の気配りの
こまやかさと、厳選された食材に感動してから、訪れること数回。
週末は常に満席で、予約なしでの入店は難しい。

白枠の壁にかこまれたガラス窓からは、清潔で明るい店内が一望でき、
その上にはダークオレンジの板にライト輝く「マツモトばる」の文字。
こじんまりとした店内に、カウンターと背の高いテーブル席が並ぶ
スタイリッシュな空間。
案内された席は、行き交う人や通り過ぎる車がのぞめる窓際のベストポジション。

2年ぶりの再会にカンパイし、お料理を注文する。
「シェフの気まぐれな黒板MENU」から、松茸と天然真鯛の蒸しもの、
天然本しめじのガーリックオイル煮、信州いろんな野菜のバーニャカウダ、
清水牧場のチーズ・羊チーズ付き、羊のつくね串焼きスタイル、
大町黒豚のグリルなどなど。

赤いオクラや紫のラディッシュに黒の強いトマトと、初めて見る野菜に
コクと香り高いバーニャカウダが舌の上に広がる。
とろけそうな真鯛の食感と贅沢な松茸の姿に、視覚と味覚で感じる至福の時間。
キラキラ磨かれたガラスの器に盛られた、スティックセニョールブロッコリーや
ミニ大根、パプリカとともに、うっすらピンク色に染まる大町黒豚のグリル。

なんて芸術的なんだろう!と、うっとりしながら箸もつけられず眺めていると、
マネージャーさんが「大町黒豚はイベリコ豚と同じように、クルミなどを食べて
育てているので、脂身がとっても甘いんです」と説明してくれた。
お肉は豚肉のロースかフィレしか食べられず、脂身も苦手なわたしではあるけれど、
それを聞いて勇んで口に含む。
独特な匂いはいっさい感じられず、口中に広がる甘みと香ばしさ。
もともと豚肉は大好きであるが、ひとくちで大町黒豚の虜になってしまった。

いつおじゃましても感動を覚えるお料理の数々に、イタリア赤ワインもすすみ、
気がつけば閉店時間?

やっぱり美味しいお料理があれば幸せ〜と、悦に入り心もお腹も満足しながら、
友人と次の再会を約束して家路へ。

そうそう、ブログアップの許可をいただくため、マネージャーさんに
以前紹介させていただいた白馬のメキシカンレストランTako Tacoの話をすると、
なんとマネージャーさんは数年前、その建物の上の部屋に住んでいて、
レストランTako Tacoのオーナーさんとも仲良しとのこと。
え〜⁈ ビックリ〜!
本と同様、お料理もどこかで繋がっているんだぁ〜と、二重の感動を覚えた秋の夜でした。


テーマ : 小さなしあわせ
ジャンル : 日記

内視鏡検査と秋の桜 コスモス

秋桜

どんなに暴飲暴食してもへこたれない私の胃腸。
なのに環境が変わったり、精神的ダメージが強かったりすると、
ときどき鈍腹痛となってイタズラしたがる。

今年はそのイタズラっ子が少し頻繁に顔を出すようになったので、
ホームドクターに相談したところ、内視鏡検査を勧められ受けることを決意。

長年お世話になっているホームドクターには100%の信頼をおいている。
ただアレルギー科が専門のため、残念なことに内視鏡設備は整っていない。
そこで口コミを頼りに、検査を実施してくれる診療所をネットで検索。

すると驚いたことに、今は鼻からファイバースコープを入れる方法が主流だとか。
医療現場から遠ざかって、いく歳月。
医療技術は日進月歩だと感嘆しながら、とりあえず診察を受けるため来院。

待合室は新築の匂いに包まれ、四方の窓から差し込む陽光がリノリウムの床に反射している。

秋の光を感じながら順番を待つ。
名前を呼ばれ診察室に入り、せんせいと向き合い、問診、検査前の血液検査、
内視鏡検査予約と順調に初診終了。

そして検査前日。
夜9時までに夕食を済ませ、早めに就寝。
実は私には、深夜寝ぼけながら、冷蔵庫から食物を引っ張り出して食してしまう
という悪癖があり、翌朝何を食べたのかも判然としないことさえある。
でも、今夜だけは絶対に夢遊病者のように食べてはいけないと自分に言い聞かせ、
緊張しながらベッドに入る。

午前4時30分。
まだちょっと早い。
午前5時。
そろそろ起きようと、ベッドから這い出し、シャワーを浴び、一連の朝の作業を
終えたのち、病院に向かう。

受付を済ませ、看護師さんに呼ばれ、検査室に入る。
胃の中の泡を消すという検査薬を飲み、肩に筋肉注射を打たれる。
顔を天井に向け、鼻から鼻腔を広げる薬剤を入れられ、麻酔のスプレーをかけられる。
「うっ、にがっ!」……声は出さずに叫ぶ。
薬剤が鼻からのどを伝わり口の中に。

そうこうしていると、せんせいが現れ、ファイバースコープを左の鼻の穴へ。
「えっ、思っていたより太くないですかぁ?」……声は出さずにつぶやく。

ファイバースコープが鼻からのどに進み、そして食堂に入っていく瞬間は、
まるで宇宙ロケットが大気圏を通過する映像を連想してしまうほど、かなり刺激が強い。
「えっ、なんか痛い!」……声は出さずに悲鳴をあげる。
痛みを伴うという想像力が乏しかった私に、現実が容赦なく私の身体に迫ってくる。
スルスルと身体の奥に進む内視鏡の管を見ながら、胃の当たりに神経を集中せさると、
なにやら冷たい感触。
そのうち、空腹で生ビールを一気飲みしたときに感じるような、
胃が破裂しそうな痛みに襲われる。
「せんせえ〜、もう限界です〜!」と、もう少しで叫ぶところだった。

そうだった、私は痛さにとっても弱い人間だったのだ。
ちょっと簡単に考えすぎていたのかも……
やっぱり検査は痛みや苦痛を伴うものなんだぁと、当たり前のことに今さら気づく。

30分ほど経っただろうか、ようやくせんせいの「終わりましたよ」という声とともに、
鼻から管が抜かれる。
まだ朝の9時過ぎなのに、なんだかヘトヘトになってしまった。

医療技術が進んだとはいえ、意識と覚悟をしっかり持って検査に
臨まなければならないことを痛感。
そして、薬品会社さんにお願いです……どうか甘い検査薬を開発してください〜!

と反省と願望を胸に帰路を運転中、目に飛び込んできたピンク色の海。
一面の秋桜畑。
車を降り、風にたなびく華やかな波のなかにたたずむ。
秋の香りにどっぷり浸かれば、さっきまでの苦痛も秋の風とともにどこへやら〜。

テーマ : ダメ人間日記
ジャンル : 日記

桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ

桐島、部活やめるってよ

秋の余韻と冬の予感を含んだ季節に、桐島がバレーボール部を退部することで、
それぞれの立場でそれぞれの思いが語られながら、話が紡がれていく。

『菊池宏樹』
所属は野球部。
運動センスが優れたマルチな男子だが、「やりたいことがない」という
コンプレックスも抱えている。
部活にあまり出ないのに、技量は部内トップ。
沙奈と付き合っているが、ただ可愛いだけだと感じている。

『小泉風助』
所属はバレーボール部。
ポジションはリベロ。
身長は低いが、運動神経と努力でカバーし、根っからバレーボールを愛している。
桐島がやめることで、試合に出られることを素直に喜ぶ。
桐島からは疑う余地もなく、絶大な信頼を置かれていたのに……
桐島の屈託のない笑顔が脳裡に貼り付き、自己嫌悪に陥る。

『沢島亜矢』
所属はブラスバンド部。
部長で、サックス担当。
放課後のグラウンドを楽譜と音符とリズムに変えながら、サックスを吹く。
そしてボロボロのゴールにボールをシュートする竜汰を追ってしまう毎日。
iPodから流れてくるのはチャットモンチー。

『前田涼也』
所属は映画部。
好きなことに打ち込む純真な心を持っている。
映画甲子園と称される高校生映画コンクールで、特別賞を受賞し全校集会で
表彰されるが、映画部の存在すら知らない生徒が多い。
自分が目立たないグルーブに属していることを知りつつ、
中学で同級だったかすみが好き。

『宮部実果』
所属はソフトボール部。
かすみ・梨紗・沙奈と同じグループ。
父と義姉は事故死し、そのことで義母は神経を病み、義姉が生きていると思い込んでいる。
義母を思いやり、義母の前で実果は義姉であるカオリになり切っている。
でも、お父さんが付けてくれた名前・実果と呼ばれたい。

『東原かすみ』
所属はバトミントン部。
涼也とは中学の同級生で、映画好きという共通点を持つ。
実果・梨紗・沙奈と同じグループで、髪はポニーテール。
『ジョゼと虎と魚たち』が好き。

思ったことをそのまま言葉にする。
大きな声で叫び、空を殴るように飛び跳ね、町を切り裂くように走りまわる。
恥ずかしいと思うよりも、そういうことが楽しくて笑ってしまう17歳。

なんの嫌みもなく、晴れたような笑顔を持つ桐島は、男子バレーボール部の
キャプテンでポジションはリベロだったが、部長という立場上、
部員とのあいだに亀裂が生じ退部する。
本人が物語に登場することはなく、誰からも好感度抜群と
評される人物像は伝聞のみで語られる。

桐島がバレーボール部の部長をやめることで、友人たちがそれぞれの
視線に立ち、組織的配置も絡まりながら、友情や利害関係を通して、
それぞれの思いを語るオムニバス青春短編小説。

最近、よく耳にする「スクールカースト」
学校という狭い世界のなかで位置づけられる序列。
人気の度合いや成績、運動神経、目立つ存在か否かなどによって、
クラスや学校のなかでの位置が決まる。

先日、中学のプチクラス会があった。
立案してくれたのは、いわゆる 〝モテるグループ” に属していた女子同級生。
中学時代、わたしたちのクラスは男女ともに仲が良く、クラス対抗の
試合などがあるときには一致団結し、クラスとしての成績は優秀だった。
それが原点なのか、地元に残っている同級生が中心となり、わたしたちは
頻繁にプチクラス会を決行している。
そのときに出る話題は決まって、誰が誰を好きだったとか、誰と誰が
付き合っていたとか、そんな話で盛り上がる。
ここにも存在する 〝モテるグループ” と 〝モテないグループ” 。
それをクラス会のたびに感じる。
当然、わたしは ”モテないグループ” に所属しておりましたけど……

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)桐島、部活やめるってよ
(集英社文庫)

(2012/04/20)
朝井 リョウ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

5年3組リョウタ組 石田衣良

リョウタ組

25歳の中道良太は、マウンテンバイクにまたがり、立ちこぎで
長いのぼり坂を踏み抜いていく。
坂の途中でスピードが落ちないようマウンテンバイクを走らせるのは、
学級運営に似ていると考えながら。
そう、良太は希望の丘小学校5年3組の担任教師である。

希望の丘小学校は、海と山に囲まれた、清崎県清崎市で一番有名な、
由緒正しい名門校で、クラスごとに成績、生活態度、課外活動などの
競争が行われていた。
昨年、良太が受け持っていたクラスは5クラス中最下位だった。
トップは2年4組。
担任は染谷龍一で、冷静かつ優秀な、数少ない同世代同性教師である。
初めて高学年を受け持った良太は「今年はバカ組、リョウタ組とは
呼ばせないぞ」と意気込む。

1.四月の嵐
2時間めの国語の授業。
良太が教え子の本多元也に小説の感想を訊ねると「試験なら解けますけど、
この小説で感じることはありませんでした」という返答が気になり、
元也に注意を払うようになる。
元也には感情がないように見えた。
クラスが騒然としていても、元也だけは顔色を変えないのである。
成績優秀で手のかからない生徒だったが、ある日、4時間めの国語の授業中、
突然元也が教室を飛び出していった。

2.七月の冷たい風
職員会議が終わり、校長室に呼ばれた良太と龍一は、年齢が近い4年2組の担任である
立野英介が先週から病欠しているので、様子を見てきて欲しいと依頼される。
牧田副校長が行ってもドアさえ開けてくれなかったとのこと。
そこには学年主任の陰湿なイジメが!

3.十二月、みんなの家
長袖Tシャツを着ていても、震えるほど冷たい空気のなか、携帯電話が鳴り響く。
時刻は午前5時15分。
相手は龍一からで、良太のクラスの日高真一郎の家で、火事が起きたという
早朝の緊急連絡だった。
日高は学業抜群で人望もあり、問題がおきるようには思えない子どもだった。
良太も教師生活4年のあいだに、クラスの子どもの家で大きな事故は初めての経験である。
龍一と良太が学校に着くと、待ち構えていたのは地方の民放局きよさきテレビの記者だった。
その記者は「日高家の善一郎くんと真一郎くんが放火をしたと言っている」と言うが……

4.三月、クラス戦争の終わり
奇妙な緊張感に包まれた職員室。
各学年の1位から最下位の5位まで、すべての順位がプリントされ配られる。
良太はこれまで、毎年最下位競争を余儀無くされていたが、授業脱走と自宅放火騒ぎを
乗り越え、クラスの結束は高まっていた。
子どもたちの心がひとつになり、授業の成果もあがり、ついに万年トップの2組と
肩を並べるに至っていたのである。
子どもたちは良太のために、クラス競争の一番を獲得しようと、成績の良くない
子たちの勉強をみてあげることを目論むのだが……

茶髪に髑髏のネックレス。
休日には同僚とドライブにも行く。
合コンらしき飲み会では、ちゃっかり独身女性教師のメールアドレスをゲット。
歳上の女性にちょっとからかわれると、返答に窮してしまう普通の25歳。
けれど、出世より教室で子どもたちと勉強するほうが、部下の教師を
管理するよりずっとやりがいがあると思っている、熱血ぶりと醒めた
バランスがほどよい小学校教師の青春先生物語。

なんだか高校の担任の先生が浮かんだ。
当時まだ30歳そこそこの先生は、若さゆえか、本来持っている性格からか、
生徒からは熱血先生と陰で呼ばれていた。
生徒と同じ状況でありたいと、自動車通勤をやめ、職員寮から数kmの道のりを
徒歩で通ったり、生徒の喫煙が発覚するや、ヘビースモーカーだった歴史に
終止符を打ち、パイぽくんになったり。
あまのじゃくで猜疑心が強い高校生だったわたしには、そんな先生の行動が
パフォーマンスとしか受け取れず、心を開こうとしなかった。
けれど、高校3年の個人面談の折り、希望受験校と狭き門の希望職業を
打ち明けると、ボソッと、でもしみじみと「なれるといいなぁ」と言ってくれた。
不思議とその言葉には深い真実の心が込められていると感じた。

5年3組リョウタ組 (角川文庫)5年3組リョウタ組
(角川文庫)

(2012/10/01)
石田 衣良
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

桃色東京塔 柴田よしき

桃色東京塔 柴田よしき  

自分のミスで、母子を死なせてしまった。
大卒で警視庁に入庁し、ノンキャリアながら出世街道を歩んできた、
警視庁捜査一課に所属する黒田岳彦。
その事件に責任を感じ、挫折感を味わいながら、ある事件の犯人を追うため、
I県とT県の県境近くの無人駅で降り、ベンチに背中をあずけて、
これまでの人生を回想していた。
そこへ猛スピードで岳彦めがけて突っ込んできた1台のミニパト。
「キキキッ!」と鋭いブレーキ音とともに、つんのめるようにミニパトが急停車し、
顔を出したのが小倉日菜子だった。

日菜子は地元の国立大学を卒業し、生まれ故郷であり過疎が進む縹(はなだ)村の
所轄署に勤務していた。
キャリア組の恭一と結婚し順風満帆に思われていた矢先、夫が殉職してしまう
という悲哀を抱えている。

日菜子はバスが脱輪したため運行不能になり、駅まで迎えにきたのであるが、
岳彦を乗せ山道を疾走する日菜子の運転は、あまりに未熟でハラハラ。
岳彦が「運転、代わりましょう」と言いたいのをこらえるシーンはとても印象深く、
気がつくと「私が代わりましょう」と、本に向かって語りかけてしまいそうなほど
コケティッシュである。

ほのぼのとした地方の村での出会いが始まりとなり、舞台を東京に移したり
縹村に戻ったり、事件を通してふたりの心は少しずつ通い合っていく。

都会の汚れたものだけは入ってきても、必要なものは入ってこない限界集落と、
東京タワーが輝く都会。
生まれ故郷を愛しみながらも、煌びやかな都会への憧憬と嫉妬が絡みあう。
そんな状況を背景に、形は違うが同じように心に傷を持つふたりがゆっくり惹かれあう。

『朱鷺の夢』『桃色東京塔』『渡れない橋』『ひそやかな場所』『猫町の午後』
『夢の中の黄金』『輝く街』『再生の朝』の8編が、ふたりの刑事の視点で
紡がれる連作短編集。

はじめて柴田よしきさんの作品に出会ったのは『好きよ』だった。
そこで描かれたファンタジーの波にのまれ、よしきワールドに浸かった。

本書は文庫で購入したが、漆黒に浮かぶ桃色の東京タワーに心奪われ、手にとった。
最終章を読み終え、解説に移ると目に入った新津きよみさんのお名前。
見覚えがあると思いつつ拝読していると、著者の柴田さんとは同じ大学の
同じ学科出身の友人どうしとのこと。
違う点は、柴田さんが都会育ち、新津さんが地方出身ということで、
本書の解説に選ばれた理由を理解するとともに、その地方が信州だと知り、
お名前の既視感の訳と、新たな感動が湧いた。
いうまでもなく、さっそく新津さんの作品を買いに、本屋さんに走った。

桃色東京塔 (文春文庫)桃色東京塔
(文春文庫)

(2012/11/09)
柴田 よしき
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

肉巻きおにぎり

肉巻き

作り方は画像をクリックしYouTubeにて

テーマ : お弁当
ジャンル : グルメ

椿山課長の七日間 浅田次郎

椿山課長

郊外の一戸建てに引っ越してきた椿山和昭と、一回り歳下で妻の
由紀に小学2年生で息子の陽介。
庭には白く可憐な沙羅が咲いている。
その同じ沙羅の花が咲き誇る並木道で、椿山和昭はここがどこなのか、
どこに向かって歩いているのか、どうしても思い出せないでいた。

夏のグランド・バザールに組まれた、対前年120%の無謀な予算。
46歳にしてデパートマンの花形である婦人服課長に出世した椿山だが、
上半期の売上達成がかかっているこのグランド・バザールに
目標達成できなければ、潰されてしまう。
そして午前10時、開店時間である。

ふと気がつけば、道行く人も車も同じ方向に進んでいく。

午後7時30分、初日の予算達成。
閉店後も山のような片付けをこなし、不景気が接待の主客を
顛倒させたメーカーとの会食へ。
そこで突然吐き気を覚えてトイレに駆け込み嘔吐し、
係長の嶋田を携帯電話で呼ぶ。
腰がくだけながら、扉の隙間から手を振り人を呼ぶ。
声を振り絞りメーカーに明日の納品を念押ししたまま、
闇に包まれてしまった。

人も車も白い建物に吸い込まれていく。
不思議に少年のように軽やかで、さわやかな気分だった。
どうやらそこは、現世と来世の中間である、冥土と呼ばれる
中陰の世界へのインフォメーションのようである。

1.申込、2.写真撮影と事務手続きが進み、3で相応の理由がない
自殺者はリセットされ、さらに厳しい人生のやり直しを余儀なくされる。
4.講習免除の者は、りっぱな人生だったということでエスカレーターへ。
ひとりの老女はあちこちからねぎらいの言葉を受けながら、
無事にエスカレーターに乗り、極楽往生。

椿山は5の矢印に沿って26番教室で講習受講。
講習とはその人の現在の立場を説明するものであり、自分の人生を
納得している者、つまり極楽往生の人には講習は必要ない。

教室は〝殺生” 〝盗み” 〝邪淫” 〝嘘” 〝酒” の五戒によって分けられている。
26番は邪淫に溺れた者の講習だった。
部屋の窓からは満開の沙羅の花と芝生の庭が望まれた。
しかし椿山はどうしても納得がいかなかった。
パッとしない風貌の自分に豊かな経験などあるはずがない。
「どうして俺が⁈ お役所仕事もたいがいにしろ!」と、憤慨しながら講習を受ける。

15分ほどの一般的な説明ののち、スライド上映が始まった。
はじめに映し出された自分の戒名「昭光道成居士」の文字に、椿山は生唾を飲み込む。
映し出されたのは自身の葬儀会場だった。
棺を見つめ泣いている、高校新卒同期入社の佐伯知子。
彼女とは椿山が結婚するまでの18年間、フレンドリーな同期生として、
恋愛感情のない肉体関係を結んでいた。
椿山の結婚も喜んでくれたし、お互いに親友でありセックスフレンドだという
意識を疑うことなどなかった。
知子が自室のガラステーブルに伏している画面に切り替わり、
教官は「プロポーズを待っていた知子に、鈍感な男は18年間も
愛のない邪淫を繰り返した」と言う。
邪淫の定義は相手を傷つけ、真心を利用した罪。

小役人のように面倒がる教官を横目に、椿山は再審査を請い別館に向かう。

若い妻と幼い息子や呆けた父、グランド・バザール中のデパートのことが
気がかりで、極楽往生などできない椿山は、再審査で「相応の事情」が認められ、
〝よみがえりキッド” のカバンを渡されて仮の肉体を借り、
初七日まで逆送できることになる。

横断歩道で車にはねられた、聡明で勘の鋭い小学2年生の少年と、
人違いで殺された、ヨーロピアンの黒ずくめで気さくなヤクザも
逆送を認められていた。

和山椿の姿で現世に戻った椿山がホテルの部屋を出てエレベーターに乗ると、
そこにはダークスーツの紳士がひとり。
ひとことふたこと言葉を交わすうち、いっしょにバーで飲むことになった。
カウンターに腰かけ、自己紹介やら仕事のことなどの会話が進むうち、
ふたりはハッとし、顔を見合わせる。
お互いに 〝よみがえりキッド” のカバンを持っていたのである。

小学生の蓮くんと、ヤクザの武田、それに椿山が仮の姿でそれぞれ気がかりなこと、
思い残したことを片付けに、制限時間の厳守・復讐の禁止・正体の秘匿を胸に、
現世での奮闘が始まる。

人間の習性や生体、心の裏と表、善に悪を熟知した著者の卓越した操りことばに、
漏らさずにはいられない失笑。
そして語られる真髄。
ただただ感嘆するコケティッシュでユーモアあふれる筆致。
心打たれる言葉の数々。
我が身を犠牲にしても守り抜く真実の愛の形。
読後感最高にさわやかで清々しい極楽往生ファンタジー。

椿山課長の七日間 (朝日文庫)椿山課長の七日間
(朝日文庫)

(2005/09/15)
浅田 次郎
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

松茸ご飯

松茸ご飯ブ
               
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テーマ : レシピ
ジャンル : グルメ

キャベツ 石井睦美

キャベツ

なぜキャベツ?
ん〜、とんカツが好きだから。

中学2年生の冬、おやじが死んで、それまで外で働いたことのないおふくろが、
知り合いの会社に勤めることになった。
妹はまだ小学5年生だった。

おふくろの最大の心配事は晩ごはん。
現実認識が甘く、やる気だけは人一倍あるおふくろに、ぼくは言った。
「仕事に慣れるまで、お惣菜とかでいいよ」
「あらダメよ、育ち盛りの子は手作りじゃなくちゃ」と言うおふくろに
「できあいのお惣菜だって、愛情が込められてるんだよ」と返すと
「えっ、そうなの?」と、おふくろは驚いたが、それを聞いたぼくの方が驚いた。
おふくろは肉団子がベルトコンベアで行進していると思っていたらしい。

そんなおふくろだから、ぼくがご飯を作るようにならなくちゃと思ったのだ。
そして浮かんだのがキャベツ。
とんカツが好きだから、とんカツといえばキャベツ!

現在大学生のぼくは、キャベツの千切りも揚げ物も、難なくこなす。
なにごとも日々重ねることが重要。

おふくろが初出勤を終え帰宅した夜、妹の美砂がそばに寄り添いながら、
死んだようにソファーで眠るおふくろと美砂を見て、不安と満足、淋しさと
幸福感に包まれながら、ぼくがふたりを守らなければと誓う。

中学のときは料理を覚えるのに忙しく、高校では部活と家事に受験勉強で、
煙草も麻雀も覚える暇はなかった。
そんなぼくに友人・青ちゃんの「なにが楽しくて生きてんの」という質問に
「料理に読書に妄想」という返答が即座に浮かぶ18歳。

ある日学校から帰ると、うつむいて顔は見えなくても、すぐに美人だと分かる
女の子がソファに座っていた。
しばし眺めていたら、その子は「こんにちは」と挨拶をしながら顔を上げた。
ぼくは、やっぱり美人だと思いながら「いらっしゃい」と返す。
すると唐突に彼女の口から出てきたひとこと「キャベツ、食う?」
その綺麗な女の子は、美砂の友人かこちゃんだった。

妄想しながら家事をこなすぼく。
やんちゃな美砂に言葉攻めにされると、胃が痛くなってキャベツを食べ牛乳を飲むぼく。

胃の痛みの原因は、ストレスなどの脳からの信号で、胃酸が急激に
出すぎるからであり、キャベツは胃壁を守ってくれるビタミンUが豊富で、
牛乳は胃に膜を作って胃酸から胃壁を守ってくれる……などの薀蓄。
ぼくが作る、香りが届いてきそうなお料理の数々。

繊細で丁寧な筆致で描かれ、優しさにあふれた家族の物語。

実はわたしもキャベツは大好物!
少し胃がお疲れかなぁと感じると、必ずテーブルに並ぶキャベツ料理。
サラダ、浅漬け、野菜炒め、ロールキャベツ、ベーコンの重ね煮、
キンピラキャベツ、ミルクスープ、回鍋肉、キャベツの納豆巻、ボルシチ、
ポトフなどなど。
今日の晩ごはんは、キャベツのグラタンホワイトソースがけで決まり!

キャベツ (講談社文庫)キャベツ
(講談社文庫)

(2012/12/14)
石井 睦美
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

告白 湊かなえ

告白

市立S中学校1年B組、3学期終業式。
ホームルームで、担任の森口悠子がクラスの生徒たちに向かい淡々と語る。
「娘の愛美は事故死ではなく、このクラスの生徒に殺された。
だから、まもなく教師の職を辞す」と。
犯人である2人の名前を公表するつもりはないと言いながら、少年Aと
少年Bという仮名で語られるが、それが誰であるかは明白だった。

悠子は中学理科教師で、結婚目前に愛美を身ごもるが、恋人の桜宮正義がHIVに
感染していたことが分かり、正義の意向で結婚は諦め、シングルマザーとして
子育てと教師の仕事を両立していた。

その日、保健室であずかってもらっていた愛美が、プールで水死体となって発見される。
警察は事故死と判断したが、悠子の独自の調査により、教え子の渡辺修哉(少年A)と
下村直樹(少年B)が殺害したことに辿り着き、復習を決意したのだった。

ホームルームの最後に、悠子は少年Aと少年Bの牛乳に、HIVに感染した恋人の血液を
混入したことを告白し、S中学校を去っていく。

死への恐怖とクラスメイトからの制裁。

第1章『聖職者』の悠子の告白から始まり、語り手のかわる、第2章『殉教者』
第3章『慈愛者』第4章『求道者』第5章『信奉者』と続く。

なぜ少年は幼い担任の愛娘を殺さなければならなかったのか?
少年を溺愛する母の異常な思い。
自分を捨てた母への強い思慕。
自己愛と自己憐憫。

第6章『伝導者』で、悠子の語りに戻るが、そこには救いのない結末が……

小説でも映画やドラマでも、復讐に焦点をあてた作品は多い。
もし自分の肉親が酷く傷つけられたり、命を奪われたらと自身に置き換えて考えてみる。
頭で想像はできても、身体の痛みは伴わない。

前職在籍中、同僚から罹患による手術の必要があることを打ち明けられた。
「実はとても怖い」と訴える彼女に、
「命にかかわる病気じゃないし、全身麻酔だから、あっという間に
目が覚めたら終わってるよ」と、軽薄な慰めの言葉しか出てこなかった。
1年後、わたし自身が手術を宣告されたとき、はじめて彼女の恐怖を
身体の痛みとして感じることができた。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)告白 (双葉文庫)
(双葉文庫 み 21-1)

(2010/04/08)
湊 かなえ
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

松茸と栗と深まる秋

松茸信州


我が家の階段を降りながら、まるで目に見えない雲のように、ふわっと香りに包まれる。
深く奥ゆかしいその香りのなかで目を閉じる。
朝食を摂り過ぎたことなどすっかり忘れたお腹が、キュるる〜と鳴く。
あ〜、なんて身体は正直なんだろう。
そして思い出す、2時間前に電子炊飯器に松茸ご飯をしかけておいたことを。

それは職場の方からいただいた。
その方は山菜採りが趣味だとおっしゃっていたが、そういえば、今秋は多忙で
なかなか行かれないと嘆いていたなぁ〜。
そんな折り、友人がキノコ狩りで採ったキノコを持って来てくれたから、
おすそ分けのおすそ分けと言いながら、たくさんの虚無僧茸と
大きな松茸を2本、譲ってくださった。

国産、しかも信州産の松茸など、スーパーでは見ることがあっても、
我が家の食卓に並ぶことはない。

しばし松茸をダイニングテーブルに乗せ、純白の皮膚を覆う焦げ茶色の
まだら模様と、なめららかに流線型をかたどる傘を眺める。

食べてしまうのがもったいないと思いつつ、食べなければもっともったいないと、
訳の分からない思考回路をさまよいながら、意を決してまな板に乗せ、包丁を入れる。

斜めに石づきを取りのぞき、縦半分に切ったのち、薄くスライスする。
お釜に無洗米・だし昆布・お酒・お醤油・お水を入れ、真打ちの松茸を乗せ、
1時間後にスイッチが入るよう、炊飯ジャーをセット。

そして炊きあがった松茸ご飯!
ジャーの蓋を開けると、香りあふれる湯気の海に顔中が溺れそうになる。
しゃもじで切るように混ぜると、スライスされた凛々しい松茸の存在に
うっとりしながら、たっぷりとご飯茶碗に盛る。

アツアツの松茸ご飯をハフハフしながら口に頬張る。
秋の醍醐味!
やっぱり人間って、おいしいお料理を食べているときがいちばん幸せなのかもと、
食い意地が張っている私は、ロマンのない考えにふける。
まぁ、ロマンはないけど、次はマロンご飯にしよう!と、おやじギャグと
松茸ご飯に大満足の秋の1日に、もう栗ご飯のことを考えている。

テーマ : 日記
ジャンル : 日記

メキシコ料理レストラン Tako Taco タコタコ

Tako TacoTakoTaco1.jpg

タコタコ

昨日まで確かに夏だった。
季節のはっきりしている信州では、秋も突然やってくる。

眼前に悠然と聳える北アルプスのふもと、ここ白馬の黄昏どきはさらに秋の気配が濃い。

メキシカンを求めて数時間のドライビングで到着した先は、レストランTako Taco。
オレンジピンクの壁にグリーンのドア。
その手前には「CLOSED」の看板。

え〜⁈ またおあずけ〜⁇
前回もお休みで食べられなかったのに……
念のため、とドアを引いてみる。
すると、開くではないか!
「すみませ〜ん」と、声をかけて、5時30分開店を拝み倒して、
30分繰り上げていただいた。Tako Taco さん、ありがとうございます!

夕闇迫り、澄んだ外気にさらされながら、過ぎゆく夏の余韻と、
生まれ来る秋の風を感じたくて、テラス席に身をゆだねる。

スレンダーな身体に純白のコスチュームをまとった、端正な面立ちのマスターが
注文を取りにやってくる。

「お久しぶりです、ずっとお待ちしておりました」
「何度か伺ったんですが、タイミング悪く、店休日にやってきてしまってたらしくて」
「そうですか、では今日はゆっくりしていってください」
などと挨拶を交わしながら、再会を懐かしむ。

メキシカンといえば、何と言ってもコロナビールにテキーラ!
まずはコロナビールと、店主オススメの前菜4種盛りを注文。

秋の空気とビールの香りを両方楽しむかのように、半分だけ顔を出した
三日月型に切られたライムを押し込み、瓶を天に向けてカンパ〜イ!

トルティーヤチップスにワカモレ、きのことエビのディッシュにサルサソース、
アスパラ・ブロッコリー・さやいんげんなどの緑の野菜にかぼちゃ・トマトなどの
乗った前菜4種盛りの彩りに、海を渡ってはるばるメキシコまでやって来たような
錯覚に陥る。

「ちゃんと用意しておきました」と、激辛通のわたしたちにハパネロソースを
添えてくれるマスターのお気遣いに感激。

そして、「お〜、メキーコ!」
のナチョスはコーンチップスにスパイシーミート・パプリカなど色とりどりの野菜に、
トロ〜リチーズと緑鮮やかなワカモレがたっぷり。
もちろん、主人公のテキーラはライムといっしょに身体が温まるホットで。

おおとりに選んだ、海老と野菜のガーリック炒め。
香り高いにんにくが鼻腔から食思をくすぐり、アボカドと海老が口中で解け合う。
そして、そのエメラルド&ルビー色輝くディッシュをソフトトルティーヤに包んで
いただく贅沢。

夜も深まるにつれ、肌に刺さるような冷気をブランケットで遮りながら、秋の風と
メキシカンに包まれた幸せな時間。
次回訪れるときは、スキーウェアがいいかな?と、近い未来を思い描けば、雪景色と
テックス・メックスが妙にマッチする。
気候のまるで異なる白馬とメキシコなのに、どこか懐かしい匂いを感じ、邂逅の悦びに
浸りながら、もう一度カンパ〜イ‼︎

メキシカンレストラン Tako Taco in 白馬にて Viva México!!



テーマ : おいしい店紹介
ジャンル : グルメ

信州蕎麦とわさびと秋の空

わさび&そば

秋空に蕎麦の花の白がまぶしい。
信州は蕎麦の産地である。
この季節、北アルプスの麓はいちめんに緑と白に染まる。

と、言いつつ、信州人でありながら、わたしはお蕎麦の味が分からない。
ラーメンやパスタにうどんはコンスタントに外食を楽しむが、
わざわざお蕎麦を食べに行くことはない。
とき折り県外の友人が遊びに来ると、美味しいお蕎麦のお店に連れてってと懇願され、
困ってしまう。
そんなときのために、同県人で蕎麦好きの友人から美味蕎麦情報をいくつか仕入れておいた。

お蕎麦の味が分からないわたしでもお気に入りになったお店。
お蕎麦は好みでわさびや唐辛子を入れるが、そのお店ではすりおろしたわさびではなく、
わさびの茎と花の部分を麺つゆに入れ、お蕎麦とともにいただく。
蕎麦情報の少ないわたしではあるが、そういう食べ方は珍しいのではと思う。

一般にわさびは根の部分をすりおろし香辛料として使うが、
信州では花から茎にかけてお浸しにし、お茶うけやお料理の一品にすることが多い。
少しツンとした刺激のあるわさびのお浸しと、香り高いお蕎麦とが舌の上で融合し、
味覚と臭覚を堪能させてくれる。

そうだ!わさびも信州の特産品。
同じ土で育った食材は相性が良いということにも納得。

その昔、信州に〝わさびーず” というグループがいた。
わさびーずの代表的な歌「わさびの花の咲く頃」の歌詞に、
♪わさびの花は白い十字架♪ とあるように、わさびもまた白い花である。
立ち居姿もお蕎麦と山葵、どことなく似ている。
   

テーマ : 日記
ジャンル : 日記

葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午

葉桜の季節に君を想うということのコピー

一緒に食事したり、夜通し話したり、ただそばにいるだけで安心する、魂が震えるような
恋愛を、出会い系サイトや合コンなどで探し求めている。
にもかかわらず、出会う輩の目的は “援助” のみ。
世俗にまみれず、心と心で愛しあえるような、野辺に咲くタンポポの
ような女性を求めているのに……

白金台のフィットネスクラブに通っている成瀬将虎は、そのクラブで高校の
後輩キヨシに、体調を崩し休会している久高愛子のお見舞いに付き添って
欲しいと頼まれ、南麻布のお屋敷を訪ねた。
ところが愛子の体調が悪いというのは口実で、実は〝おじいさん” が事故に
遭い亡くなったということだった。

その帰り道、麻宮さくらと出会う。

運命の平成14年8月2日午後4時40分営団地下鉄広尾駅2番ホーム。
閑散としたホームで電車を待っていると、何かが落ちていくのが目をかすめた。
将虎は反射的に線路に飛び降り、落ちた女性を助けたのが、麻宮さくらとの
出会いだった。
自殺ではないと言い張るさくらに、俺の誕生日に苦い思い出を刻みたくないから、
今日はやめてくれと諭して、その場を去る……誕生日というのは方便だったが……

上品な住宅街の白金台とは一線を画す白金のひかり荘。
無職の妹・綾乃とふたり暮らし。

両親は先年他界し、上の兄・竜悟は将虎が高校に入る前、東大在学中に夭逝している。
毎日5時起床、ストレッチ、ジョギング、新聞斜め読み、朝食、警備の仕事や
パソコン講師などの日々を送っていた将虎に、8月8日非通知表示の電話がかかってきた。
それは麻宮さくらからだった。
広尾駅では自殺だったことの告白と、助けてくれたお礼がしたいという。
そこで10日午後1時、都ホテルで会う約束をする。
会話を終え、将虎はケータイを握ったまま目をつぶるが、彼女の顔は思い出せない。

さくらと会う約束の日、「コロシだ。殺されたんだよ」と、キヨシから電話がかかってきた。
要領を得ない電話で、てっきり愛子が殺されたと勘違いした将虎だったが、有栖川宮記念公園で
キヨシと愛子を車に乗せ事情を聞くと、〝おじいさん” の死は事故ではなく、保険金目当ての
ひき逃げだという。
有名企業の元役員だった隆一郎が、蓬莱倶楽部の詐欺商法にひっかかり5千万円も
商品を買っていた。
死後、損保会社から、隆一郎が羽田倉庫管理という会社と法人契約が結ばれており、
その会社が受取人の保険がかけられていたと電話で告げられた。しかも羽田倉庫管理
というのは架空会社だという。
別の損保会社2社からも同じような電話がかかってきた。
隆一郎の尊厳を守るため、警察には知らせたくないからと、将虎が蓬莱倶楽部の内偵を
ふたりから依頼される。

とんでもない依頼に戸惑いながらも承諾し、急いでさくらとの待ち合わせ場所である
都ホテルへ。
再会したさくらは先日とは雰囲気の違う、黒髪とシックな装いで謝辞を述べ、お礼の品と、
方便だったことに気づかず誕生日プレゼントを渡した。
それからふたりのぎこちない付き合いが始まるが……

並行して登場する古屋節子は夫に先立たれ、ふたりの息子は独立し、3匹の捨て猫と
暮らしているが、なんでも買ってしまう女だった。
ある日、節子の部屋のポストに1枚のチラシが入っていた。
その蓬莱倶楽部のチラシは邪悪な泥沼への片道キップだったのである。
あやつり人形の日々が1年半ほど続いた平成14年7月、節子は久高隆一郎と出会う。
邪悪のしもべとなった節子とは……

蓬莱倶楽部の実態調査に乗り出していく将虎。
高校卒業後、新橋の明智探偵事務所で働いていたヤクザ探偵時代の回想。
麻宮さくらと古屋節子。

自分のなかでイメージして読み進んできた情景が、あるとき一変する。

言葉のマジックなのか、凝り固まった既成概念によるものなのか。
あるいは想像力不足か。
まんまと著者に騙され、後半まで引っ張られてしまった。

最後に語られる……
《人生の黄金時代は老いていく将来にあり、過ぎ去った若年無知の時代にあるにあらず》
……そんな生涯でありたい。

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)葉桜の季節に君を想うということ
(文春文庫)

(2007/05)
歌野 晶午
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

包帯クラブ 天童荒太

包帯クラブ1  

高校2年生のワラが、病院の屋上でディノと出会う。
そこで見かけたフェンスに巻きつけられた包帯。

ワラとディノ、それにタンシオと、メル友であるギモの4人が
「包帯クラブ」を結成し、傷ついた場所やモノなどに包帯を巻いていく。
街中にあふれる包帯。
しかし誰の仕業か、この活動が密告され、警察や学校で問題となってしまい、
街から包帯が消えていく。

それぞれにそれぞれの傷みを持つ高校生たち。
友情と他人の痛みと自分の傷。

痛みは、それ自体が同じ強さでも、人により、さまざまな状況により、
受ける側の傷も違い、分かりにくい。

周りからみれば些細なことでも、本人が傷ついていれば、それはりっぱな傷。
だからそこに包帯を巻くことで、周りにも自分自身にも、傷みを知らせることができ、
そのことによって傷が癒される。

“手当て” とは、傷口に手を当てるから、手当てという。
傷ついた場所に優しく触れ、そっと包帯を巻いて、傷みをやわらげてくれる本書。
装丁も淡く優しいライムグリーンの新鮮な新書版である。

小さいころ、お腹が痛くなると、母がわたしのお腹をさすり、揉んでくれた。
わたしはそれがくすぐったくて、笑い出してしまい、いつしか腹痛も治まってしまう。
ふと、遠い昔がよみがえる。

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)包帯クラブ
The Bandage Club
(ちくまプリマー新書)

(2006/02/07)
天童 荒太
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

孤島の鬼 江戸川 乱歩

孤島の鬼  

30歳にもならぬ箕浦金之助は、白頭宰相といわれた人にも劣らぬ綿帽子をかぶっている。
その妻は右腿上部に、恐ろしくむごたらしい赤痣がある。
それはそこから生えていた足を切り落としたような傷跡だった。
無遠慮な人々から、これらのことについて訊ねられるが、上手く答えられないがため、
小説にすることにする。
……という理由により、語り手である箕浦金之助のものがたりが幕を開ける。

当時25歳だった金之助は、丸の内の貿易商で算盤をはじいていたが、芸術好きで
友人もいないオフィス勤めは味気なかった。
ところが、その半年ほど前に金之助の好みの容姿を伴った、18歳の初代が
見習いタイピストとして入社してきた。

半年もの間、ことばを交わさなかったが、ある日ふと初代のそばによると、
彼女がタイプライターで打っていた紙には「HIGUCHI」という姓が
模様のように刻まれていた。
そのことがきっかけで、ふたりは帰り道を楽しむようになり、ついに場末の
ホテルに足を運んだふたりだったが、気まずさからベッドに腰かけ、系図書きを持って
置き去りにされた3歳の初代を、今の両親が養女にしてくれた話を始めたのである。
そして幼心に覚えている2つの思い出を語り、その光景を金之助が絵に書き留める。

やがて銘々の母親にお互いの意中を知らせ、金之助が指輪を贈り、
お返しに初代は系図帳を渡した。
その系図に載っていた、以前初代がタイプライターで打って、模様のように羅列されていた
“ 樋口 ”という姓。

翌日、金之助は諸戸道雄が初代の母を介して、初代への求婚運動をしていることを知らされる。
諸戸道雄は医科大を卒業後、研究室で奇妙な研究をし、1か月前まで金之助に同性の
恋愛感情を抱いていた高貴な美青年であった。
諸戸の不可思議な行動に、金之助は初代を奪わんがために諸戸が求婚しているのでは
という猜疑心が芽生える。
しかし諸戸の激しい求婚活動に反し、金之助と初代は深く結びついていった。

ところが幸せな日々は長く続かなかった。
ふたりが初めて言葉を交わすようになって9か月めの大正14年6月25日、初代は
世にも不思議な殺人事件の被害者となってしまったのである。

実は、死の数日前、初代は怯えながら、夜更けに無気味なお爺さんが格子窓から
覗いていることが3度もあったと訴えていた。
初代の死を知らされたのは、ふたりが新時代の青年風俗を真似た格好をして、
銀座で夕食を楽しんだ翌日、金之助が出社してのことだった。

深く愛している恋人の突然の死。
烈しい痛みのために忘れていた涙。
骨上げに参列し、愛しい恋人の灰を盗み、野原で胃の腑へ入れてしまった、
心が壊れてしまうほど、底の知れない悲しみ。
身も世もあらぬ嘆き。

そして決意する。心から愛した初代を殺した下手人を探しだし恨みをはらすため、
探偵をしようと。
けれど、その先に待っていたのは、友人の死と活地獄だった。
密室殺人と、群衆のなかで誰にも姿を見とがめられず起きた殺人。

想像を絶する恐怖。
戦慄する事実。

昭和4年、江戸川乱歩が1年以上に渡り、大衆雑誌『朝日』に連載し、
単行本化された長編探偵小説。

孤島の鬼 (江戸川乱歩文庫)孤島の鬼
(江戸川乱歩文庫)

(1987/08)
江戸川 乱歩
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テーマ : 本の虫
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

Hollyzard

Author:Hollyzard
本が恋人です。
料理は大嫌いですが、でも実は天才なんです(笑)。
外でおいしいお料理に出会うと、勝手にアレンジしてマイレシピにしてしまいます。